刑事訴訟法 第342条の7
クイックジャンプ
- 裁判所は、第三百四十二条の二の許可を受けた者が、入管法第四十条に規定する収容令書若しくは入管法第五十一条に規定する退去強制令書の発付又は入管法第四十四条の二第七項に規定する監理措置決定を受けたときは、決定で、当該許可を取り消さなければならない。
- 2.裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、検察官の請求により、又は職権で、決定で、第三百四十二条の二の許可を取り消すことができる。
- 一第三百四十二条の二の許可を受けた者が、正当な理由がなく、指定期間内に本邦に帰国せず又は上陸しないと疑うに足りる相当な理由があるとき。
- 二第三百四十二条の二の許可を受けた者が渡航先の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。
- 3.前項の規定により第三百四十二条の二の許可を取り消す場合には、裁判所は、決定で、帰国等保証金(第九十四条第一項の保証金が納付されている場合にあつては、当該保証金。次項において同じ。)の全部又は一部を没取することができる。
- 4.第三百四十二条の二の許可を受けた者が、正当な理由がなく、指定期間内に本邦に帰国せず又は上陸しなかつたときは、裁判所は、検察官の請求により、又は職権で、決定で、帰国等保証金の全部又は一部を没取することができる。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第342条の7は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第342条の7の条文原文は「裁判所は、第三百四十二条の二の許可を受けた者が、入管法第四十条に規定する収容令書若しくは入管法第五十一条に規定する退去強制令書の発付又は入管法第四十四条の二第七…」で始まります。
- 刑事訴訟法第342条の7は第五節 公判の裁判に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第342条の7の前の条は刑事訴訟法第342条の6です。
- 刑事訴訟法第342条の7の次の条は刑事訴訟法第342条の8です。
- 刑事訴訟法第342条の7には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第342条の7 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第342条の7(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/342_7
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法342条の7は、海外渡航許可を受けた被告人が帰国期限を破るなど条件に違反した場合、裁判所が許可を取り消し、帰国等保証金の全部又は一部を没取できると定める。
Q · 裁判所の許可で海外に出た被告人が帰国期限を破ったら、どうなるの?
許可が取り消され、帰国等保証金の全部又は一部が没取されます
刑事訴訟法342条の7により、海外渡航の許可(342条の2)を受けた被告人が、正当な理由なく指定期間内に帰国・上陸しない、または渡航先制限などの条件に違反した場合、検察官の請求または職権で許可が取り消され、帰国等保証金の全部又は一部が没取されます。さらに入管法上の収容令書・退去強制令書の発付や監理措置決定があった場合は、裁判所は許可を「取り消さなければならない」義務的取消となります。没取は「全部又は一部」であり、正当な理由や違反の程度に応じて裁判所が裁量で調整します。
解説
2023年、日本の刑事司法に開いていた大穴が静かに塞がれた。きっかけはカルロス・ゴーン氏が保釈中の身で国外へ消えた事件だ。その反省から、保釈中の被告人が海外に出る必要があるとき、裁判所は条件付きで渡航を許可できるようになった(342条の2)。だがこの342条の7が示すのは、その許可がいつでも引き剥がせるという冷たい現実である。あなたが許可を得て海外にいるとき、入管法上の収容令書や退去強制令書を受ければ、裁判所は許可を「取り消さなければならない」。義務的取消で、あなたの意思は一切関係ない。さらに、正当な理由なく帰国期限を破る、渡航先の制限を破る、こうした場合は検察官の請求または職権で取り消され、しかも「帰国等保証金」を全部または一部没取される。保釈保証金を積んでいればそれが没取対象になる。数百万、数千万円が一通の決定で消える。海外出張のつもりが、財産と身柄の両方を失う引き金になりうる。
法的な位置づけ
刑事訴訟法342条の7は、海外渡航許可の取消しと帰国等保証金の没取を定める規定である。収容令書・退去強制令書の発付や監理措置決定があれば義務的取消し、正当な理由のない帰国期限の徒過や渡航条件違反があれば任意的取消しと保証金没取の対象となる。許可後の条件遵守を経済的に担保する制度的仕掛けとして機能する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.渡航前に許可条件を文書で確認 342条の2の許可を受けたら、帰国期限・渡航先制限・その他裁判所の定めた条件を許可決定書で正確に確認する。口頭理解で済ませず、条件違反が一つでも取消・没取の引き金になることを前提に段取りする
- 2.母国の在留資格・入管手続の動向を監視 外国籍の被告人は、母国の在留資格や日本の退去強制手続の進行を常時把握する。収容令書・退去強制令書の発付や監理措置決定があれば許可は義務的に取り消されるため、兆候段階で弁護人と対応を協議する
- 3.帰国困難な事態が起きたら即座に証拠化 欠航・急病・現地拘束などで帰国期限に間に合わない恐れが生じたら、その瞬間に欠航証明・診断書・現地当局の通知を確保し、ただちに弁護人と裁判所へ連絡する。証拠取得の前に期限を過ぎると同じ事情でも没取は避けられない
- 4.没取決定前に「一部没取」を主張 裁判所が没取額を裁量で決める段階で、弁護人を通じて違反の不可抗力性と帰国努力を具体的資料で示し、没取を「一部」にとどめるよう主張する。決定後の不服申立て(即時抗告)は格段に通りにくいため、決定前の主張が勝負どころ
よくある質問 AI による整理
Q1帰国等保証金とは何ですか?
海外渡航許可を受けた被告人が帰国を担保するために納める保証金です。保釈保証金が納付済みの場合はその保証金が対象となり、条件違反時は没取されます(342条の7第3項)。
Q2海外渡航許可の取消しは義務的ですか任意的ですか?
二種類あります。収容令書・退去強制令書の発付や監理措置決定があれば義務的取消(1項)、帰国期限徒過や条件違反は検察官請求または職権による任意的取消(2項)です。
Q3保証金の没取は必ず全額ですか?
いいえ。条文は「全部又は一部」と定めており(3項・4項)、正当な理由の有無や違反の程度に応じて裁判所が没取額を裁量で調整します。一部にとどめる主張の余地があります。
Q4退去強制令書を受けたら海外渡航許可はどうなりますか?
裁判所は許可を取り消さなければなりません(1項)。義務的取消であり被告人の意思は関係なく、入管手続の進行がそのまま渡航許可の生死を握ります。
Q5帰国できない正当な理由とは何ですか?
航空便の欠航、急病による搬送不能、渡航先当局による出国制限など不可抗力の事情です。欠航証明や診断書など客観的証拠で立証できれば取消・没取を回避できる余地があります。
Q6渡航先を制限されるとはどういう意味ですか?
裁判所が「シンガポールのみ」など渡航国を限定する条件です。許可を得た国以外へ移動すると条件違反となり、それだけで取消しと保証金没取の対象になります(2項)。
Q7この条文はいつ新設されましたか?
令和5年(2023年)法律第28号で新設されました。保釈中等の被告人の国外逃亡を防止する一連の改正の一環で、カルロス・ゴーン氏の国外逃亡事件が立法の契機です。
Q8保証金没取の決定に不服がある場合はどうしますか?
没取決定が出る前に違反の経緯や帰国努力を資料で示し「一部没取」を主張するのが有効です。決定後は即時抗告の余地を検討しますが、決定前の主張が決定的です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1保釈中でも裁判所の許可があれば、海外旅行に行けるんですか?
観光目的の「旅行」が認められるかは別問題です。342条の2の許可は渡航の必要性が前提で、業務や親族の重病など正当な理由が要ります。許可が出ても帰国期限と渡航先が指定され、違反すれば342条の7で取り消され保証金が没取されます。実務のポイント:実務では海外渡航許可のハードルは極めて高く、検察官は逃亡リスクを理由に強く反対します。許可を得る鍵は、帰国を担保する具体的事情(家族・職・資産が日本にあること)をどれだけ示せるかにあります
Q2帰国が一日遅れただけでも、本当に保証金を全部取られるんですか?
条文は「全部又は一部」と定めており(342条の7第3項・第4項)、必ず全額没取されるわけではありません。「正当な理由」があれば没取そのものを免れる余地もあります。実務のポイント:航空便の欠航、急病、現地当局による出国制限など不可抗力の事情は、証拠さえあれば没取を大きく減額または回避できます。逆に証拠がなければ単なる言い訳として扱われる。帰国できない事態が起きた瞬間に証明書類を集め始めるかどうかが、財産を守る分水嶺です
間違えやすい点 AI による整理
- 裁判所の許可が出れば、もう自由に海外を動けると思い込みがちだが、許可は条件付きの一時パスにすぎない。条件違反や入管手続の進行があれば、いつでも取り消される。手にしているのは自由ではなく、撤回可能な仮免許だ
- 「保証金を没取される」ことは知っていても、その金額の重みを理解している人は少ない。帰国等保証金は逃亡を防ぐ水準で設定されるため、保釈保証金に匹敵する数百万から数千万円規模になりうる。たった一日の帰国遅れが、家一軒分の財産を奪う
- 「没取は全額か、無罪放免か」の二択で身構えるのは誤りだ。条文は「全部又は一部」と書いている。正当な理由の有無、違反の程度に応じて裁判所は没取額を調整する。だから諦めず、一部にとどめる主張をする余地が残されている
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 取消しの性質 | 342条の7:渡航許可の取消し(1項は義務的、2項は任意的) | 342条の2:取消しの対象となる海外渡航許可そのもの 96条:保釈の取消し及び保証金没取 |
| 取消しの引き金 | 収容令書・退去強制令書の発付、帰国期限徒過、渡航条件違反 | 渡航の必要性と帰国担保(許可の発付要件) 逃亡・罪証隠滅・住居制限違反など保釈条件違反 |
| 没取される金銭 | 帰国等保証金(保釈保証金が納付済みならその保証金) | (許可段階のため没取規定なし) 94条の保釈保証金 |
| 没取の範囲 | 全部又は一部(裁判所の裁量で調整) | — 全部又は一部(裁判所の裁量) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は限制出境出海の制度と保證金沒入で逃亡を担保する。海外渡航許可の取消しという固有の枠組みではないが、出国制限と保証金没取で被告人の在廷を確保する点で機能的に近い
韓国は保釈保証金の몰수(没収)と出国禁止措置で逃亡を防ぐ。日本の帰国等保証金没取に対応する経済的担保の発想を共有する
ドイツは Sicherheitsleistung(保証金)の供託と、義務違反時の Verfall der Sicherheit(保証金の喪失)で被告人の在廷を担保する。日本の没取制度と構造が類似
米国は保釈(bail)と不出頭時の bail forfeiture で逃亡を抑止する。連邦と州で扱いが分かれるが、保証金没取という担保構造は共通
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし渡航先で母国の在留資格を失い、退去強制令書を受けたら、日本での裁判の権利はどうなるのか。この条文が答えを用意している。裁判所は許可を取り消さなければならない、義務的に。あなたの意思と無関係に、帰国ルートが法的に閉ざされる
- 帰国便が天候で欠航し、指定された帰国期限まであと2日。正当な理由があれば取消も没取も免れるが、その「正当な理由」を裏づける書類を今から集めきれるか。航空会社の欠航証明、現地当局の通知、その一枚一枚が保証金を守る証拠になる。あと48時間
- 渡航先を「シンガポールのみ」と限定されたのに、商談で隣国マレーシアへ足を伸ばした。条件違反だ。それだけで保証金没取の対象になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 帰国等保証金を立て替えた家族や第三者なら、被告人の帰国期限と渡航条件を常に把握しておく2. 期限直前にトラブルの兆候が出たら、被告人と連携して欠航証明・診断書など「正当な理由」の証拠を即座に確保3. 没取決定が出る前に、弁護人を通じて「一部没取」への減額や違反の不可抗力性を主張4. 決定後でも即時抗告の余地を検討するが、決定前の主張が決定的であることを忘れない
訴えられた側:1. 渡航前に許可の条件(帰国期限、渡航先制限)を文書で正確に確認2. 海外滞在中に帰国困難な事態(欠航、病気、現地拘束)が生じたら、ただちに弁護人と裁判所へ連絡し証拠を残す3. 母国の在留資格・退去強制手続の動向を監視、収容令書や退去強制令書が出れば許可は義務的に取り消される4. 帰国期限さえ守れば取消も没取も原則回避できる、期限管理を最優先に置く
時効(請求できる期限):義務的取消(1項)は入管法上の収容令書・退去強制令書の発付または監理措置決定があった時点で発動する。任意的取消・没取(2項から4項)は、帰国期限の徒過や条件違反を契機とする。帰国等保証金の没取は裁判所の決定によるため、決定前の主張が勝負どころ。不服申立ては即時抗告の期間制限に注意(最新の改正・施行状況をご確認ください)
改正沿革 AI による整理
- 令和5年(2023年)法律第28号 保釈中等の被告人の国外逃亡を防止する一連の改正の一環として新設。海外渡航許可制度(342条の2以下)に伴い、許可の取消事由と帰国等保証金の没取を定めた。カルロス・ゴーン氏の国外逃亡事件を契機とする立法。施行時期は最新の状況をご確認ください
改正の年表
- 1.令和5年(2023年) 新設:法律第28号により新設。保釈中等の被告人の国外逃亡を防止する一連の改正の一環として、海外渡航許可制度(342条の2以下)に伴う許可の取消事由と帰国等保証金の没取を定めた。カルロス・ゴーン氏の国外逃亡事件を契機とする立法。施行時期は最新の状況を要確認
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める