航空法 第76条の2
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機長は、航行中他の航空機との衝突又は接触のおそれがあつたと認めたときその他前条第一項各号に掲げる事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態が発生したと認めたときは、国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣にその旨を報告しなければならない。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 航空法第76条の2は、日本の航空法に含まれる条文です。
- 航空法第76条の2の条文原文は「機長は、航行中他の航空機との衝突又は接触のおそれがあつたと認めたときその他前条第一項各号に掲げる事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態が…」で始まります。
- 航空法第76条の2は第一節 航空機の運航に置かれています。
- 航空法の公布日は昭和27年7月15日です。
- 航空法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年4月5日時点では廃止情報はありません。
- 航空法第76条の2の前の条は航空法第76条です。
- 航空法第76条の2の次の条は航空法第77条です。
- 航空法第76条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第76条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC0000000231 - 本サイト収録
航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第76条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年4月5日)https://lawplayer.com/jp/article/327AC0000000231/76_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点航空法76条の2は、航行中に他機との衝突・接触のおそれ等を機長が認めたとき、国土交通省令に従い国土交通大臣へ報告する義務を定める。距離の数値基準はなく、機長の認識が基準となる。
Q · ニアミスや事故一歩手前の出来事があったら、機長は国に報告しないといけないの?
はい。機長が危険を認めたら国土交通大臣への報告義務がある
航空法76条の2により、機長は航行中に他機との衝突・接触のおそれがあったと認めたとき、または閉鎖中の滑走路での離着陸、オーバーラン、非常脱出など国土交通省令が定める事態が起きたと認めたときは、国土交通大臣に報告しなければなりません。これらは一般に「重大インシデント」と呼ばれ、運輸安全委員会の調査対象となり、調査報告書は公表されます。事故(76条)に至らなくても報告が必要な点が特徴です。
解説
「ぶつからなかった」ことは、航空の世界では無事の証明にならない。航行中に他の航空機との衝突や接触のおそれがあったと機長が認めたとき、または国土交通省令が列挙する「事故一歩手前」の事態が起きたと機長が認めたとき、本条は機長本人に国土交通大臣への報告を義務付けている。省令が列挙する事態には、閉鎖中の滑走路や他機が使用中の滑走路での離着陸、オーバーラン、非常脱出、燃料の欠乏による緊急措置などがある。業界ではこれを「重大インシデント」と呼ぶ。報告を受けると運輸安全委員会(事故原因を調べる国の独立機関)が調査に入り、その報告書は一般に公開される。あなたの便が何事もなく着陸したように見えても、後日、公的な調査報告書の一件として記録されていることがある。注目すべきは、報告の引き金が距離や速度といった数値ではなく、「おそれがあつたと認めた」という機長の認識に置かれている点である。結果ではなく危険がどこまで近づいたかを見る。そこに本条の設計思想がある。
法的な位置づけ
航空法76条の2は、航空事故に至らないが事故発生のおそれがある事態について、機長に国土交通大臣への報告義務を課す規定である。対象は、航行中の他機との衝突・接触のおそれ、および国土交通省令で定める事態であり、報告の要否は機長の認識を基準とする。本条の事態は運輸安全委員会の調査対象とされる。
手順
- 1.衝突・接触のおそれ等の事態を認識 航行中に他機との異常接近、TCAS の回避指示、閉鎖中滑走路への進入などが起きた場合、機長は本条の事態に該当するかを判断する。迷った場合は報告する側に倒すのが実務の原則
- 2.記録装置のデータ保全 FDR(飛行データ記録装置)と CVR(操縦室音声記録装置)は上書きされうるため、着陸後速やかに会社へ保全を要請する
- 3.国土交通大臣へ報告 国土交通省令の定めるところにより、事態の発生日時・場所・状況等を国土交通大臣に報告する。実務上は認知後ただちに第一報を入れる
- 4.自分の認識を時系列で文書化 記憶が鮮明なうちに、管制とのやり取り、自機の操作、判断理由を時系列で書き残す。運輸安全委員会の調査で判断の合理性を示す資料になる
よくある質問 AI による整理
Q1重大インシデントとは何ですか?
航空事故には至らなかったものの、事故が発生するおそれがあった事態のことです。航空法76条の2と国土交通省令で対象が定められ、機長に報告義務があります。
Q2航空法76条の2の報告は誰がするのですか?
本条の報告義務を負うのは機長です。ただし航空運送事業者にも、安全上の支障を及ぼす事態について別途の報告義務(航空法111条の4)があります。
Q3着陸のやり直し(ゴーアラウンド)は報告対象ですか?
ゴーアラウンド自体は通常の手順で、それだけで報告対象にはなりません。他機との衝突・接触のおそれを機長が認めた場合などに報告対象となります。
Q4重大インシデントの報告を怠るとどうなりますか?
報告義務違反は航空法上の違反となり、行政処分や罰則の対象となりえます。具体的な罰則は航空法の罰則規定の現行条文をご確認ください。
Q5重大インシデントは誰が調査しますか?
国土交通省の外局である運輸安全委員会が調査します。運輸安全委員会設置法2条が、本条の事態を「航空事故の兆候」として調査対象に位置付けています。
Q6重大インシデントの調査報告書はいつ公表されますか?
事案により異なりますが、最終報告書の公表まで1年前後かかることが多いとされます。運輸安全委員会のウェブサイトで公表されます。
Q7ドローンのニアミスも報告対象になりますか?
本条は航空機の機長の義務です。ただし有人機の機長がドローンとの衝突のおそれを認めれば報告の対象となりえ、無人航空機側にも別途の規制があります。
Q8非常脱出は事故と重大インシデントのどちらですか?
非常脱出は重大インシデントの代表例ですが、乗客が重傷を負った場合などは航空事故(航空法76条)として扱われることがあります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1ニアミスって、何メートルまで近づいたらニアミスになるんですか?
本条は距離の数値基準を置いていない。機長が「衝突又は接触のおそれがあつた」と認めたかどうかで報告義務が発生する(航空法76条の2)。速度や進路によって危険度が変わるため、プロの判断に委ねた設計である。実務のポイント:公開される調査報告書には、両機の最接近時の水平距離と高度差が具体的な数字で書かれていることが多い。報道の「異常接近」という見出しより、報告書の数字のほうがはるかに多くを語る
Q2重大インシデントになったら、機長はクビになったり処分されたりするんですか?
報告は再発防止のための調査の入口であり、報告したこと自体を処分理由とする制度ではない。ただし調査の過程で法令違反が明らかになれば、技能証明の取消しや業務停止などの行政処分(航空法30条)がありうる。実務のポイント:現場で最も重く扱われるのは、ミスそのものより「報告しなかった」ことが後から発覚するケースである。記録装置のデータは残るので、隠しても見つかる前提で動くのがプロの常識
Q3自分が乗った便が重大インシデントだったか、どこで調べられますか?
運輸安全委員会のウェブサイトで、調査対象の一覧と調査報告書が公開されている。本条に基づく報告が調査の起点になる(航空法76条の2、運輸安全委員会設置法2条)。実務のポイント:最終報告書が出るまで1年前後かかることが多い。発生直後に「調査開始」として日付・運航者・空港だけが先に載る段階がある。そこで自分の便を特定しておけば、最終報告を見逃さない
間違えやすい点 AI による整理
- 乗客の目から見れば「無事に着陸した=何もなかった」である。法律の目から見れば、問題は結果ではなく、危険がどこまで近づいたかにある。この落差を知らないと、同じ便に乗った経験を「ただの揺れ」と片付け、後日公開される調査報告書の存在に気付かないまま終わる
- 「報告したら機長が処分されるのでは」という問い方自体がずれている。本条の構造では、報告すること自体は処分理由として設計されていない。重いのは、おそれを認識しながら報告しなかったことが後で発覚した場合である。報告しないという選択こそが、リスクの大きい側にある
- ニアミスという言葉は誰でも知っている。しかし、その調査が刑事裁判と交差した歴史まで知る人は少ない。2001年の日航機ニアミス事件では、乗客が負傷して航空事故となり、管制官の有罪が最高裁で確定した(最決平成22.10.26)。事故調査の報告書と刑事責任追及の関係は、現在も「実務上、議論が分かれている」領域である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる事態 | 航空法76条の2:衝突・接触のおそれ等、事故に至らない事態(重大インシデント) | 航空法76条:墜落・衝突・火災・人の死傷等の航空事故 航空法111条の4:安全上の支障を及ぼす事態 |
| 報告義務者 | 機長 | 機長(機長が報告できないときは航空機の使用者) 航空運送事業者 |
| 報告の引き金 | 機長が「おそれがあった」と認めたこと | 航空事故の発生 国土交通省令所定の事態の発生 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾では国家運輸安全調査委員会が航空の重大意外事件を調査する。調査を責任追及から切り離す点で日本と同じ発想に立つ
韓国も航空安全の義務報告制度を法定し、別途自発的報告制度を設けて報告者保護を図っている
EU 規則が民間航空の事象報告と報告者保護(Just Culture)を加盟国共通で定める
NTSB への事故・重大インシデントの即時通報を義務付ける。自発的報告制度 ASRS による免責的取扱いも併存する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 羽田への最終進入中、機体が突然エンジン音を上げて再上昇した。アナウンスは「先行機が滑走路上に残っていたため」。着陸のやり直し(ゴーアラウンド)は通常の手順であり、それだけで報告対象になるわけではない。しかし、他機との間隔が異常に詰まり衝突のおそれがあったと機長が認めれば、同じ一回の再上昇が国への報告案件に変わる
- もし副操縦士のあなたが、衝突防止装置(TCAS)の回避指示に従って急降下した直後、機長に「報告するほどじゃない」と言われたら、どうなる? 本条の報告義務を負うのは機長であって、判断も機長の認識に委ねられている。ただし航空運送事業者には別途、安全上の支障を及ぼす事態の報告義務(航空法111条の4)がある。社内の安全報告ルートで事実を残すことは、あなた自身を守る記録にもなる
- 機長であるあなたは、着陸後のタキシング中、離陸滑走を始めた他機がいる滑走路に自機が誤って入りかけていたと管制から指摘された。疲労の残る頭で「おそれ」を認めるかどうか決めなければならない。FDR と CVR(飛行データと操縦室音声の記録装置)のデータが保全されているかどうかも、今この数時間で決まる
- 非常脱出スライドで機外へ滑り降り、足首をひねった。非常脱出は重大インシデントの代表例だが、乗客が重傷を負えば航空事故(76条)として扱われることがある。同じ脱出でも、あなたの怪我の程度によって適用される条文が変わる
- 空港の近くで趣味のドローンを飛ばしていた。数日後、着陸機の乗員が至近距離で目撃したという情報をもとに、関係機関があなたの許可の有無と飛行記録を確認しに来る
取るべき行動
被害を受けた側:1. 異常を感じたら、便名・日時・座席位置・状況をその場でメモする。撮影が許される場面なら写真も残す2. 負傷や体調不良があれば早めに受診し、診断書を取る3. 航空会社の窓口に事実関係を問い合わせ、回答を記録する4. 運輸安全委員会の公表情報を定期的に確認する5. 損害賠償は、国内線では運送約款と民法、国際線では国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(モントリオール条約)の枠組みで検討する
訴えられた側:1. 機長として衝突や接触のおそれを認めたら、社内手順に沿ってただちに報告する。迷ったら報告する側に倒す2. FDR と CVR の保全を会社に要請する3. 自分の認識・管制とのやり取り・操作を時系列で書き残す4. 報告内容を事実と食い違わせない。虚偽の報告は別の違反になる5. 刑事手続や行政処分(技能証明の取消し等、航空法30条)への波及が心配なら、早い段階で弁護士や乗員組合に相談する
時効(請求できる期限):条文自体に期限の日数は書かれていない。国土交通省令の定めに従って報告するが、実務上は事態を認知した後ただちに第一報を入れることが求められる(最新の省令の文言をご確認ください)。民事上の請求には、特定の時効はないが、一般消滅時効(民法166条、債権5年または10年)が適用される。人の生命・身体の侵害は別に扱われ、不法行為なら知った時から5年(民法724条の2)
学説
安全報告と責任追及の分離論:ICAO 第13附属書の趣旨に沿い、事故・インシデント調査は再発防止を目的とし、責任追及から切り離すべきとする立場。報告者が不利益を恐れず報告できる環境が安全向上の前提とされる。
- 航空法 第76条航空事故発生時の報告義務
- 航空法 第73条機長の指揮監督権限
- 航空法 第111条の4事業者の安全上支障事態の報告
- 航空法 第30条技能証明の取消し等の行政処分
- 運輸安全委員会設置法 第2条航空事故の兆候を本条事態で定義
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