国民健康保険法 第56条(他の法令による医療に関する給付との調整)
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- 療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、訪問看護療養費、特別療養費若しくは移送費の支給は、被保険者の当該疾病又は負傷につき、健康保険法、船員保険法、国家公務員共済組合法(他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)、地方公務員等共済組合法若しくは高齢者の医療の確保に関する法律の規定によつて、医療に関する給付を受けることができる場合又は介護保険法の規定によつて、それぞれの給付に相当する給付を受けることができる場合には、行わない。労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の規定による療養補償、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)の規定による療養補償給付、複数事業労働者療養給付若しくは療養給付、国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号。他の法律において準用する場合を含む。)の規定による療養補償、地方公務員災害補償法(昭和四十二年法律第百二十一号)若しくは同法に基づく条例の規定による療養補償その他政令で定める法令による医療に関する給付を受けることができるとき、又はこれらの法令以外の法令により国若しくは地方公共団体の負担において医療に関する給付が行われたときも、同様とする。
- 2.市町村及び組合は、前項に規定する法令による給付が医療に関する現物給付である場合において、その給付に関し一部負担金の支払若しくは実費徴収が行われ、かつ、その一部負担金若しくは実費徴収の額が、その給付がこの法律による療養の給付として行われたものとした場合におけるこの法律による一部負担金の額(第四十三条第一項の規定により第四十二条第一項の一部負担金の割合が減ぜられているときは、その減ぜられた割合による一部負担金の額)を超えるとき、又は前項に規定する法令(介護保険法を除く。)による給付が医療費の支給である場合において、その支給額が、当該療養につきこの法律による入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、特別療養費又は移送費の支給をすべきものとした場合における入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、特別療養費又は移送費の額に満たないときは、それぞれその差額を当該被保険者に支給しなければならない。
- 3.前項の場合において、被保険者が保険医療機関等について当該療養を受けたときは、市町村及び組合は、同項の規定により被保険者に支給すべき額の限度において、当該被保険者が保険医療機関等に支払うべき当該療養に要した費用を、当該被保険者に代わつて保険医療機関等に支払うことができる。ただし、当該市町村又は組合が第四十三条第一項の規定により一部負担金の割合を減じているときは、被保険者が同条第二項に規定する保険医療機関等について当該療養を受けた場合に限る。
- 4.前項の規定により保険医療機関等に対して費用が支払われたときは、その限度において、被保険者に対し第二項の規定による支給が行われたものとみなす。
この条文の基本情報
他の法令による医療に関する給付との調整とは何ですか?
定義他の法令による医療に関する給付との調整とは、国民健康保険法第56条に定められた規定で、「療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、訪問看護療養費、特別療養費若しくは移送費の支給は、被保険者の当該疾病又は負傷につき、健康保険…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 国民健康保険法第56条(他の法令による医療に関する給付との調整)は、日本の国民健康保険法に含まれる条文です。
- 国民健康保険法第56条の条文原文は「療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、訪問看護療養費、特別療養費若しくは移送費の支給は、被保険者の当該疾病又は負傷につき、健康保険…」で始まります。
- 国民健康保険法第56条は第一節 療養の給付等に置かれています。
- 国民健康保険法の公布日は昭和33年12月27日です。
- 国民健康保険法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 国民健康保険法第56条の前の条は国民健康保険法第55条です。
- 国民健康保険法第56条の次の条は国民健康保険法第57条です。
- 国民健康保険法第56条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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- 正式書式
国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第56条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192 - 本サイト収録
国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第56条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/333AC0000000192/56
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点国民健康保険法56条は、健康保険・労災・介護保険など他制度から医療給付を受けることができる場合、国保は給付を行わないと定める。他制度の給付が薄いときは差額を支給する。
Q · 仕事中の怪我で健康保険証を使ったら、あとで国保から返還請求が来るって本当?
労災に当たる怪我なら、国保の給付はそもそも成立しません。
国民健康保険法56条1項は、労災保険法による療養補償給付など他制度から医療に関する給付を「受けることができる」場合、国保の療養の給付を行わないと定めます。実際に労災申請していなくても、要件に当たれば国保給付は法律上発生していないため、後日レセプト点検で発覚すると市町村から7割分の返還を求められます。一方2項は逆方向の救済で、他制度の一部負担金や支給額が国保の水準より不利なときは、市町村及び組合が差額を支給しなければならないと定めています。
解説
交通事故に遭い、健康保険証を出して病院にかかった。その瞬間、あなたは請求できたはずの給付を一つ失いかけている。国民健康保険法56条は、同じ病気や怪我について他の制度(健康保険、船員保険、各共済組合、後期高齢者医療、介護保険、そして労災)から医療給付を受けられる場合、国保は給付を「行わない」と定める。ここで決定的なのは、「受けた」ではなく「受けることができる」と書かれている点だ。労災に該当する怪我なら、あなたが労災申請していなくても、国保の給付は法律上そもそも発生していない。だから後日レセプトの点検で発覚すると、市町村から国保が払った7割分の返還を求められる。しかも2項には逆向きの救済も埋め込まれている。他制度の給付の方が薄い場合、その差額を国保が埋める。使い切れていない人が圧倒的に多い条文だ。
法的な位置づけ
国民健康保険法56条は、他の医療保障制度との給付調整を定める規定である。1項は、同一の疾病又は負傷につき健康保険法、共済組合法、高齢者医療確保法、介護保険法又は労働者災害補償保険法等による給付を受けることができる場合に、国保の療養の給付等を行わない旨を定める。2項は、他制度の給付水準が国保を下回るときの差額支給義務を定める。
よくある質問 AI による整理
Q1国民健康保険法56条とはどんな規定ですか?
他の医療保障制度との給付調整規定です。健康保険・共済・後期高齢者医療・介護保険・労災等から給付を受けられる場合は国保が給付せず、他制度が国保より不利なら差額を支給します。
Q2健康保険証で受診したあと国保から返還請求が来るのはなぜ?
労災等に該当する傷病では56条1項により国保の給付が最初から成立しないためです。レセプト点検で判明すると、市町村が支払った7割相当額の返還を求められます。
Q3後期高齢者医療に移ったあと国保の給付はどうなりますか?
高齢者の医療の確保に関する法律による給付を受けられる場合、56条1項で国保の給付は行われません。資格の切替日を境に、同じ傷病でも支払う保険者が入れ替わります。
Q4公務災害の治療費に国保は使えますか?
使えません。国家公務員災害補償法・地方公務員災害補償法による療養補償を受けられるときは56条1項後段で国保給付が停止します。ただし2項の差額請求の余地は残ります。
Q5国保の差額支給はいつまで請求できますか?
国民健康保険法110条により2年で時効消滅します。起算点は原則として支給事由が生じた日、療養費類型では費用を支払った日の翌日とされます。
Q6交通事故の治療で国保は使えますか?
業務・通勤災害でなければ使えますが、その場合は56条ではなく64条の第三者行為求償の問題になり、市町村へ第三者行為による傷病届の提出が必要です。
Q7国保への返還金を分割払いにできますか?
自治体の債権管理上、分割納付の相談に応じる運用が一般的です。放置すると滞納処分の対象になりうるため、金額提示を受けた時点で窓口に申し出るのが安全です。
Q8海外で受けた治療も56条の調整対象になりますか?
海外療養費も国保の給付である以上、同じ傷病で労災や共済の療養補償を受けられるなら56条1項の調整対象です。勤務先の海外出張中の事故は特に重複が生じやすい領域です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1仕事中の怪我なのに保険証で治療してしまいました。今からでも労災に変えられますか?
変更できる。医療機関がまだレセプトを提出していなければ窓口で切り替えられることがあり、提出済みなら市町村国保に申し出て返還手続を経て労災請求に切り替える。56条1項により労災該当なら国保給付は元々成立していないためである。実務のポイント:医療機関に連絡するタイミングが月初の数日か月末かで手間が桁違いに変わる。レセプト提出は原則として翌月10日頃までなので、その前に電話が入れば事務処理だけで済むことがある。
Q2介護保険で訪問看護を受けていますが、医療保険の訪問看護は絶対に使えないんですか?
原則として介護保険が優先し、国保の訪問看護療養費は56条1項により支給されない。ただし厚生労働大臣が定める疾病等(末期の悪性腫瘍、特定の難病など)、特別訪問看護指示書が出た急性増悪時、精神科訪問看護の一部は医療保険が優先する。実務のポイント:この例外は主治医が特別訪問看護指示書を出すかどうかで切り替わる。同じ状態でも医師が書類を出さなければ介護保険の枠内に留まり、区分支給限度基準額を圧迫し続ける。ケアマネに「医療優先に切り替えられる状態ではないか」と一言確認できる家族は少ない。
Q3労災からもらった金額が少ない気がするのですが、国保に足りない分を請求できるって本当ですか?
本当である。56条2項は、他法令の給付における一部負担金や実費徴収の額が国保の一部負担金を上回るとき、または医療費の支給額が国保の各種療養費の額に満たないときは、その差額を被保険者に支給しなければならないと定めている。実務のポイント:この差額は申請しない限り自動では出ない。市町村の担当者も日常的に扱う処理ではないため、窓口で「56条2項の差額支給」と条文番号を出して求めた方が話が早い。
間違えやすい点 AI による整理
- 「労災が使えるのは知っているが、とりあえず健康保険で受診して後から切り替えればいい」と考える人は多い。切り替え自体は可能だが、深刻なのはその間の資金繰りである。国保が返還を求める段階では、いったん医療費全額を自己負担に戻したうえで労災に請求し直す流れになることがあり、数十万円を一時的に立て替える羽目になる。制度の順番を守らなかったコストは、手続の手間ではなく現金で来る
- そもそも「どの保険を使うかは自分が選べる」という前提が誤っている。56条は当事者の選択権を認めておらず、要件に当たれば国保の給付は法律上発生しない。窓口で保険証が通ってしまうのは、医療機関がその場で労災該当性を判定できないからにすぎず、通ったことは適法性の証明ではない
- 国保の側から見れば「重複給付の防止規定」だが、被保険者から見れば「差額請求権の根拠規定」でもある。2項は、他制度の給付や自己負担が国保より不利なとき、その差額を市町村・組合が支給しなければならないと命じている。防御条文だと思って読み飛ばす人と、権利条文だと読む人で、手元に残る金額が変わる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 問題となる場面 | 56条:他の公的制度(労災・共済・介護保険等)から給付を受けられるとき | 64条:加害者など第三者の行為による傷病のとき 36条:他制度も加害者も存在しない通常の傷病のとき |
| 国保給付の成否 | そもそも給付が発生しない(行わない) | いったん給付したうえで加害者へ求償する 原則どおり療養の給付が行われる |
| 被保険者の負担 | 誤って受給すると返還請求を受ける。2項の差額請求権は別途残る | 第三者行為による傷病届の提出義務。示談内容が求償に影響する 42条・43条による一部負担金のみ |
| 見落としやすい点 | 「受けた」ではなく「受けることができる」で判定される | 示談を先行させると保険者の求償権を害するおそれがある 一部負担金の減額措置(43条)の申請漏れ |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も他法令により政府が医療費を負担する場合を不給付事由とし、職災保険の医療給付を健保に優先させる。差額補填に相当する明文は薄く、この点で日本56条2項は手厚い
業務上の災害等について他の法令により補償・給付を受ける場合を給付制限事由とする。構造は日本と極めて近く、韓国の医療保険法制が日本法を参照して形成された経緯を反映している
労災・職業病に起因する給付は疾病保険(SGB V)の対象外とされ、労災保険(SGB VII)が全面的に責任を負う。ドイツは労災側の給付水準が高く、日本の差額支給のような補填規定を必要としない設計
労災保険・自動車保険・団体健康保険を第一次支払者とし、Medicare を二次支払者に位置づける。条件付支払(conditional payment)後に回収する構造で、日本の「給付を行わない」構成とは逆に、先に払って後から取り戻す
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 通勤途中に転倒して骨折。会社に迷惑をかけたくなくて、保険証を出して自費三割で治療を済ませた。半年後、市町村国保から「労災に該当する可能性があるため調査します」という通知が届く。通勤災害なら労災の療養給付が優先し、国保の給付は最初から成立していない。国保が立て替えた7割の返還請求の相手は、まず医療機関ではなくあなたになりうる
- もし、退職して国保に切り替えた直後、在職中に発症した病気で入院したらどうなる? 健康保険には「資格喪失後の継続療養」や傷病手当金の継続給付の仕組みがあり、どちらの制度で受けるかが56条の調整対象になる。二つの保険証を持っている状態は存在しない、どちらか一方しか法律上効かない
- 介護保険の訪問看護を受けている高齢の親について、主治医が医療保険の訪問看護指示書を出した。介護保険の給付が受けられる場合、国保の訪問看護療養費は出ない。ただし末期がん、難病、急性増悪時などは医療保険が優先する例外があり、ここは実務上ケアマネと訪問看護ステーションの判断が分かれやすい領域である
- あなたが小さな会社の総務担当で、従業員が「労災にすると会社に迷惑がかかるから健康保険で」と言ってきた。これを了承すると、労災隠しの問題とは別に、保険者からの返還請求という金銭リスクが従業員個人に降りかかる。あなたが止められる最後の人間になる
- 公務災害で治療を受けたが、地方公務員災害補償法に基づく療養補償には一部自己負担がなく全額補償。一方、別の法令による給付が国保より薄かったケースでは、2項により差額を市町村に請求できる。請求しなければ支給されない、役所から親切に教えに来ることはまずない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 他制度の給付決定通知書(労災の支給決定、共済の給付通知など)を必ず保管する。差額請求の計算根拠になる。 2. その給付に自己負担や実費徴収があった場合、国保の一部負担金(原則三割、年齢や43条の減額措置で変動)と比較する。 3. 国保より不利であれば、市町村・組合の国保窓口に2項に基づく差額支給を申し出る。申請書式は自治体ごとに異なるため、条文番号を出して求めるのが早い。 4. 3項により、保険医療機関へ直接支払う取扱いが可能な場合もあるので併せて確認する。
訴えられた側:1. 返還請求を受けたら、まず市町村の認定理由(どの法令のどの給付に該当すると判断したか)を書面で求める。通勤災害の該当性は争える余地がある。 2. 労災が認められる見込みなら、労働基準監督署への請求を急ぎ、労災からの給付で返還原資を確保する流れを作る。 3. 一括返還が困難なら分割納付の相談をする。放置すると滞納処分の対象になりうる。 4. 医療機関・事業主・保険者の三者で事実関係の認識がずれていることが多いので、時系列メモを最初に作る。
時効(請求できる期限):2項の差額支給を求める権利は、国民健康保険法110条により2年で時効消滅する(起算点は原則として支給事由が生じた日、療養費類型では費用を支払った日の翌日)。保険者からの返還請求(不当利得)は民法166条の一般消滅時効(知った時から5年)が問題となるが、自治体の債権管理条例や地方自治法236条の5年と解釈が分かれる論点であり、実務上、扱いが統一されていない。労災の療養補償給付の請求権は労働者災害補償保険法42条により2年(最新の改正状況をご確認ください)。
学説
通説:56条1項は当事者に制度選択権を与えるものではなく、要件該当により国保の給付が法律上当然に発生しない旨を定めた規定と解される。窓口で保険証が受理されたことは適法性を意味せず、事後の清算を妨げない。
実務上の論点:保険者が誤給付分を返還請求する場合の法的性質(不当利得返還か公法上の債権か)、およびその消滅時効を民法166条によるか地方自治法236条によるかについては、自治体の運用と学説に分岐があり統一的な扱いが確立していない。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和33年(1958年) 新設:現行国民健康保険法(昭和33年法律第192号)の制定に伴い、他の社会保険制度・労災補償制度との給付調整規定として置かれた
- 2.平成18年(2006年) 改正:老人保健法が高齢者の医療の確保に関する法律に改組されたことに伴い、1項の引用法律名が改められた
- 3.令和2年(2020年) 改正:労働者災害補償保険法の改正により複数事業労働者に対する給付が創設されたことに伴い、1項後段に「複数事業労働者療養給付」が追加された
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