居住者が前条第一項に規定する公的年金等の支払を受ける場合において、その年中に支払を受けるべき当該公的年金等の額がその年最初に当該公的年金等の支払を受けるべき日の前日の現況において政令で定める金額に満たないときは、当該公的年金等については、第二百三条の二(源泉徴収義務)の規定による所得税の徴収及び納付は、要しないものとする。
要点所得税法203条の8は、公的年金等が政令の基準額(108万円、65歳以上は158万円)未満なら支払者の源泉徴収を要しないと定める。ただし課税自体は免除されず、申告責任は受給者に残る。
Q · 年金の振込通知書で所得税が0円だったら、もう税金の心配はいらないの?
いいえ、税金が消えたのではなく計算責任があなたに移っただけです
所得税法203条の8は、公的年金等の額がその年最初の支払日の前日の現況で政令の基準額(108万円、その年12月31日に65歳以上なら158万円)未満のとき、支払者の源泉徴収義務(同法203条の2)を免除します。免除されるのは徴収事務だけで、課税権や申告義務は残ります。パート給与・家賃・iDeCoの年金受取などが別にあれば、確定申告で合算精算する責任は受給者側にあります。天引きゼロは免税通知ではなく、計算責任の移管通知です。
年金振込通知書を開いて、所得税の欄が「0円」だった。多くの人はそこで安心して封筒を閉じる。その安心こそが、この条文の一番危険な副作用である。所得税法203条の8が定めているのは「税金がかからない」ではなく「日本年金機構が代わりに天引きする手間を省く」だけだ。基準は政令(所得税法施行令319条)にあり、その年の受取見込額が108万円未満(その年12月31日に65歳以上なら158万円未満)なら、支払者は源泉徴収しなくてよい。つまり税額計算そのものは、あなたの手元に丸ごと残される。パートの給与や不動産の家賃、iDeCoの年金受取が別にあれば、確定申告で一括して精算する義務はあなた側にある。天引きゼロは免税の通知ではなく、計算責任があなたに移った通知である。
所得税法203条の8は、公的年金等の源泉徴収の免除を定める規定である。居住者が受ける公的年金等の額が、その年最初の支払日の前日の現況において政令所定の金額に満たないとき、支払者は同法203条の2の源泉徴収及び納付を要しない。課税義務そのものを免除するのではなく、徴収事務を省略する特則として機能する。
国民年金・厚生年金だけでなく、確定給付企業年金、企業型DC、iDeCoの年金形式での受取も所得税法35条3項の公的年金等に含まれます。各支払者は自分の支払分しか見ないため、合計が基準を超えても気づきにくい点が要注意です。
住民税の年金特別徴収は地方税法の別枠制度(65歳以上・年額18万円以上が目安)で、所得税法203条の8の免除は住民税には一切及びません。所得税ゼロと住民税天引きは別のルールで動いています。
翌年1月1日から5年間できます(国税通則法74条)。基準を少し超えて源泉徴収され、医療費控除や生命保険料控除を使っていなかった人は、過去5年分をまとめて取り戻せます。古い年分から順に権利が消えます。
公的年金等の収入が400万円以下かつ他の所得が20万円以下なら確定申告義務はありません(所得税法121条3項)。ただし還付を受けたい場合は申告できます。パート収入や家賃があると20万円ラインを超えることがあります。
iDeCoを年金形式で受け取ると公的年金等に合算され、公的年金と足して基準額を超えた瞬間に源泉徴収が始まります。一時金受取なら退職所得扱いとなり、判定が変わります。受取方法の選択が手取りを左右します。
その年最初の公的年金等の支払日の前日の現況で判定します。年の途中で増額改定があっても遡って徴収し直す必要はありません。ただし65歳以上かどうかはその年12月31日時点で見ます。
本来徴収すべきだったのに不徴収だった場合、その分は支払者側の納付義務として追及されます(所得税法221条)。支払者は受給者への求償を並行して検討することになります。判定は基準日の記録を残すことが重要です。
支払者ごとに別々に判定・徴収されます。企業年金基金と日本年金機構はお互いの支払額を見ていないため、どちらからも源泉徴収されないまま合計が基準を大きく超えることが起こり得ます。合算は自分で管理する必要があります。
別の話である。203条の8は支払者の源泉徴収義務を外すだけで、申告義務は所得税法121条3項で決まる。公的年金等の収入が400万円以下かつ他の所得が20万円以下なら申告不要だが、パート収入や家賃収入があれば超える。業界裏話ヒント:源泉徴収されていない人ほど、翌年に一括で納付書が届く。天引きされている人は前払いしているので追徴が小さい。ゼロ徴収は現金繰りの前借りだと考えて、毎月少しずつ別口座に取り分ける人が実務では一番安全である。
支払額の判定は「その年最初の支払日の前日の現況」だが、65歳以上かどうかは所得税法施行令319条によりその年12月31日時点で見る。だから年の途中で65歳になる人も、その年から158万円ラインである。業界裏話ヒント:年齢計算ニ関スル法律で誕生日の前日に年齢が加わるため、1月1日生まれの人だけは前年の12月31日に65歳へ到達する。同学年でも一日違いで、158万円ラインに乗る年が一年ずれる。窓口では説明されない。
その0円は203条の8の効果ではない。遺族年金・障害年金は所得税法9条や厚生年金保険法41条2項などで非課税とされ、そもそも公的年金等の課税対象に入らない。108万円の判定にも算入しない。業界裏話ヒント:非課税年金は税務上の所得ではないため、扶養に入れるかどうかの判定でも収入としてカウントされない。一方で公営住宅の家賃算定や介護保険料では収入として見る制度がある。税とそれ以外で「収入」の定義がずれることを知らずに、扶養の申告を諦めている家庭が多い。
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| 条文の役割 | 203条の8:一定額未満の公的年金等について源泉徴収義務を免除する特則 | — |
| 適用の前提 | 支払額が政令の基準額(108万円/65歳以上158万円)未満であること | — |
| 課税との関係 | 徴収事務のみ免除、課税権と申告義務は存続 | — |
| 受給者への影響 | 天引きゼロ=計算・精算責任が本人に移る | — |
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