要点労働施策総合推進法第 1 条は、国が労働政策全般の施策を総合的に講じ完全雇用の達成に資することを目的とし、第 2 項でその運用に際し事業主の雇用管理の自主性を尊重すべきことを定める。
Q · パワハラ防止法に罰則がないのは、どの条文が理由なんですか?
第 1 条 2 項が事業主の自主性の尊重を国に求めているためです
労働施策総合推進法第 1 条第 1 項は、国が労働政策全般にわたる施策を総合的に講じ、雇用の安定と完全雇用の達成に資することを目的と定めます。他方で第 2 項は、本法の運用に当たって労働者の職業選択の自由および事業主の雇用管理についての自主性を尊重しなければならないと規定します。この運用原則があるため、第 30 条の 2 のパワーハラスメント防止措置義務についても行政の手段は助言・指導・勧告と企業名の公表にとどまり、刑事罰は用意されていません。金銭賠償を求める場合は民法や労働契約法を根拠とする民事手続が別途必要になります。
パワハラで社内の相談窓口に申し出たのに「それは業務指導の範囲だ」と流された。なぜ会社はそこまで強気でいられるのか。答えの一端は、この法律の一番最初の条文の、しかも第2項に埋まっている。第1項は、国が人口構造の変化に対応して労働政策を総合的に講じ、雇用の安定と完全雇用の達成に資することを目的だと高らかに宣言する。ところが第2項は、その運用に当たって「事業主の雇用の管理についての自主性を尊重しなければならない」と、国自身に釘を刺している。つまり国は、あなたの職場に踏み込む根拠を同じ法律で与えられながら、同じ法律で「踏み込みすぎるな」と縛られている。パワハラ防止措置義務(第30条の2)に刑事罰が用意されず、行政の手札が助言・指導・勧告、そして最後に企業名の公表までで止まっているのは偶然ではない。労働局の担当官が慎重な言い回しをする理由は、この条文の第2項にある。
労働施策総合推進法第 1 条は本法の目的規定である。第 1 項は、国が少子高齢化等の経済社会情勢の変化に対応して労働政策全般にわたる施策を総合的に講じ、雇用の安定、職業生活の充実および労働生産性の向上を促進して、完全雇用の達成に資することを目的とすると定める。第 2 項は本法の運用原則として、労働者の職業選択の自由と事業主の雇用管理についての自主性の尊重を国に課す。
国の労働政策の基本方針を定める法律です。旧「雇用対策法」が 2018 年の働き方改革関連法で改称されたもので、年齢制限の原則禁止やパワハラ防止措置義務もこの法律に含まれます。
同じ法律を指します。「パワハラ防止法」は通称で、正式には労働施策総合推進法の第 30 条の 2 以下に置かれた措置義務規定を意味します。単独の法律は存在しません。
廃止ではなく改称です。1966 年制定の雇用対策法が 2018 年の働き方改革関連法で現在の長い名称に改められ、目的規定である第 1 条も同時に書き換えられました。
刑事罰はありません。行政の手段は報告徴収、助言・指導・勧告と、勧告に従わない場合の企業名公表までです。この設計の根拠が第 1 条 2 項の自主性尊重にあります。
本法第 9 条が募集・採用における年齢制限を原則禁止しているためです。第 1 条の目的規定を受けた具体化規定で、例外事由は厚生労働省令に限定列挙されています。
都道府県労働局の雇用環境・均等部門が、第 30 条の 2 の措置義務の履行状況を会社に確認し、必要に応じて助言・指導を行います。慰謝料の取立てはしてくれません。
措置義務違反に対する厚生労働大臣の勧告に従わなかった場合に公表されうる仕組みです。制裁は金銭ではなく、採用市場や取引先からの評価低下という形で及びます。
本法は行政法規であり、個人に直接の金銭請求権を与えていません。請求の根拠は民法 709 条・715 条や労働契約法 5 条で、本法違反は事実の裏付け材料として機能します。
実務では解釈の物差しとして機能します。第30条の2の措置義務の範囲や、行政指針の読み方が争われたとき、第1条の目的と第2項の自主性尊重が判断の基準線になります。業界裏話ヒント:労働局の担当官が「指導は可能ですが強制はできません」と繰り返す根拠がまさに第2項です。ここを知っていると、行政に強制を求めて消耗する代わりに、民事の準備へ早く舵を切れます
義務です。第30条の2の雇用管理上の措置義務は、中小企業についても 2022 年 4 月 1 日から全面適用されています(最新の改正状況をご確認ください)。業界裏話ヒント:行政が最初に確認するのは立派な規程の有無ではなく、相談窓口が実在して機能しているかです。担当者名も周知もない形だけの窓口は、措置を講じていないと評価されうる。規程を作る前に、窓口の周知メール 1 通を残す方が効きます
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 規範の性質 | 労働施策総合推進法 1 条:国の政策目的と運用原則を定める行政法規の目的規定 | — |
| 実効手段 | 助言・指導・勧告と企業名の公表(刑事罰なし) | — |
| 個人の請求権 | 直接の請求権なし。措置義務違反は民事の立証材料 | — |
| 国と企業の距離感 | 事業主の雇用管理の自主性を尊重(1 条 2 項) | — |
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