要点著作権法37条の2は、政令で定める聴覚障害者福祉事業者が、公表された聴覚著作物を字幕化して複製・自動公衆送信できると定める。著作権者等が既に必要な方式で提供している場合は適用されない。
Q · 聴覚障害のある人のために、動画に字幕をつけて配るのは著作権侵害になりませんか?
政令指定の福祉事業者なら合法、公式字幕があれば不可
著作権法37条の2により、政令で定められた聴覚障害者福祉の事業者は、公表された聴覚著作物の音声を文字にする等の方式で複製し、自動公衆送信(送信可能化を含む)を行うことができます。専ら聴覚障害者等向けの貸出し用複製も、音声の文字化と一体で行う限り認められます。ただし、著作権者やその許諾を得た者、出版権者等が、すでに聴覚障害者等が利用できる方式で提供している場合は、ただし書によりこの特例は適用されません。個人やボランティアが指定を受けずに行う字幕付与・配布は、目的が福祉的であっても21条・23条の侵害となり得ます。
テレビ番組やネット動画には音声で伝わる情報があふれているが、聴覚に障害のある人にとって、その多くは音もなく閉ざされた壁だ。著作権法37条の2は、この壁に一つだけ正規の通用口を開ける条文である。政令で指定された聴覚障害者福祉の事業者は、公表された聴覚著作物の音声を文字に起こし、複製や自動公衆送信(送信可能化を含むネット配信)を、著作権者の許諾なしに行える。さらに、専ら聴覚障害者向けの貸出し用に、音声の文字化と一体で複製することもできる。だが、ここに見落としやすい罠がある。著作権者やその許諾を得た者、出版権者などが、すでに聴覚障害者が使える方式で提供している場合、この特例は丸ごと使えなくなる。公式の字幕版があるなら、まずそれを使え、という設計だ。そしてもう一つ、この扉を開けられるのは個人やボランティアではなく、政令で定められた事業者に限られる。あなたが善意で勝手に字幕をつけて広く配る行為は、この条文の射程の外にある。
著作権法37条の2は、聴覚障害者等のための著作権の制限を定める規定であり、政令で指定された聴覚障害者福祉事業者が、公表された聴覚著作物の音声を文字にする等の必要な方式で複製・自動公衆送信し、また専ら貸出し用に複製することを、著作権者の許諾なく認める。著作権者等により必要な方式での提供が既に行われている場合には適用されない。
聴覚障害者等のための権利制限規定です。政令で指定された福祉事業者が、公表された聴覚著作物を字幕化して複製・自動公衆送信し、貸出し用に複製することを許諾なく認めます。
政令指定の聴覚障害者福祉事業者が要件内で行う場合は不要です。それ以外の主体が行う場合は、複製権(21条)・公衆送信権(23条)の許諾が必要になります。
聴覚により表現が認識される方式で公衆に提供・提示されている公表著作物です。映像作品の音声、講演動画、音声教材などが典型で、一体提供される他の著作物も含みます。
37条の2ただし書が働き、特例は全面的に適用されません。著作権者やその許諾を得た者、出版権者等が既に提供していれば、別途字幕をつけて配る行為は通常の侵害になります。
政令指定を受けていない個人・団体は本条の主体に当たりません。福祉目的であっても特例は及ばず、原則として複製権・公衆送信権の侵害となり得ます。
専ら聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するための複製は認められますが、音声の文字化等の必要な方式による複製と併せて行うものに限られます。単独の貸出し用複製は対象外です。
37条は視覚障害者等のための複製等、37条の2は聴覚障害者等のための複製等を定める姉妹規定です。対象となる障害の種類と、認められる利用方式が異なります。
含まれます。本条は送信可能化を含む自動公衆送信を明示しており、サーバへのアップロードによる会員向けネット配信も、要件を満たす限り本条の射程に入ります。
鍵は、その団体が政令(著作権法施行令)で指定された聴覚障害者福祉の事業者かどうかです。指定を受けていれば、公式のバリアフリー版がない公表済み著作物について、37条の2で許諾なしに字幕化・配信ができます。指定外だと福祉目的でも特例は及びません。業界裏話ヒント:実務では「目的が立派かどうか」ではなく「政令指定の名簿に入っているか」で機械的に判断されます。活動を始める前に、自団体が指定対象に当たるかを所管に確認しておくと、後で全成果物が侵害物に転落する事故を防げます
原則ダメです。著作権者やその許諾先が、すでに聴覚障害者が利用できる方式で提供している場合、37条の2のただし書が働き、特例そのものが使えなくなります。品質に不満があっても、別途作れば通常の侵害です。業界裏話ヒント:この特例は「市場の穴を埋める」発想で設計されています。権利者が自らアクセシブル版を出した瞬間に穴がふさがり、第三者の出番は消えます。だから交渉では、まず公式版の有無を確認するのが最初の一手になります
貸出しについては別の枠があり、専ら聴覚障害者等向けの貸出しの用に供するための複製は、音声の文字化など必要な方式の複製と一体で行う場合に認められます。単独の貸出し目的複製ではなく、文字化と併せて行う点が条件です。業界裏話ヒント:条文は複製・自動公衆送信と、貸出し用複製を別の号で書き分けています。どちらの枠で行うかで満たすべき要件が変わるので、活動を「配信型」か「貸出し型」かで切り分けて設計すると、要件の取りこぼしが減ります
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 保護対象となる障害 | 37条の2:聴覚障害者等(聴覚による表現の認識に障害のある者) | — |
| 行為主体 | 政令で定める聴覚障害者福祉事業者に限定 | — |
| 認められる利用 | 音声の文字化等による複製・自動公衆送信、貸出し用複製 | — |
| 適用が消える場面 | 著作権者等が既に聴覚障害者等向けの方式で提供している場合(ただし書) | — |
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