要点著作権法 80 条は、出版権者が設定行為で定める範囲で、紙による複製(1 号)と電磁的記録の複製物を用いた公衆送信(2 号)を専有すると定める。著作者の死亡又は三年経過で全集収録の自由が生じる。
Q · 出版社と契約したら、自分の小説を自分で電子書籍にして売れなくなるんですか?
渡した号の範囲次第。紙だけなら電子は手元に残ります
著作権法 80 条 1 項は、出版権を紙の複製(1 号)と電磁的記録の複製物を用いた公衆送信(2 号)の二本立てにしています。設定行為で 2 号まで渡していれば、著作者本人でも勝手な電子配信はできません。逆に 1 号だけの設定なら電子は手元に残ります。また 2 項により、著作者の死亡時、又は別段の定めがなく最初の出版行為等から三年経過時は、自分の作品だけの全集に収録して複製・公衆送信できます。
あなたが小説を書き上げ、出版社と契約を結んだとする。その瞬間、あなたの作品にかかる複製の権利は、設定行為で定めた範囲で出版社へ独占的に移る。これが出版権だ。著作者であるあなた自身でさえ、その範囲では原則として勝手に同じ作品を複製・公衆送信できなくなる。だが本条は二つの逃げ道を仕込んでいる。第一に、出版権には紙(1号、印刷その他の機械的方法による複製)と電子的な公衆送信(2号)の二種類があり、設定行為でどちらをどこまで渡すか選べる。2014 年の改正前は紙だけだった。だから古い契約書のまま電子書籍を出そうとすると、権利の所在が宙に浮く。第二に、あなたが死亡したとき、または最初の出版から三年が経ったとき(設定行為に別段の定めがある場合を除く)、あなた側は自分の作品だけを集めた全集を、出版権の縛りを超えて出せる。契約書にこの三年条項をどう書かせるかで、作品が一つの出版社に縛られ続けるか、自由を取り戻せるかが分かれる。
著作権法 80 条は出版権の内容を定める規定であり、出版権者が設定行為で定める範囲において、原作のまま文書又は図画として複製する権利(1 号)及び電磁的記録として記録された複製物を用いて公衆送信を行う権利(2 号)の全部又は一部を専有する旨を規定する。2 項は複製権等保有者による全集収録の自由を、3 項は他人への再許諾に複製権等保有者の承諾を要する旨を定める。
著作物の複製・公衆送信を出版権者が独占できる物権的な権利です。著作権法 79 条の設定行為で発生し、80 条がその内容(紙の複製と電子公衆送信)を定めます。
2014 年(平成 26 年)の著作権法改正で 80 条 1 項 2 号が追加され、2015 年 1 月 1 日から電磁的記録の複製物を用いた公衆送信が出版権の対象になりました。
できます。80 条 1 項は「次に掲げる権利の全部又は一部を専有する」と定めており、設定行為で 1 号(紙)のみを設定し、2 号(電子公衆送信)を留保する合意が可能です。
80 条 2 項は「設定行為に別段の定めがある場合を除き」最初の出版行為等から三年としています。契約書に別段の定めがあれば三年経っても全集の自由は来ません。
できません。80 条 3 項により、出版権者が他人に複製又は公衆送信を許諾するには、複製権等保有者(多くは著作者)の承諾が必要です。
設定した号の範囲では、著作者本人による複製・公衆送信も出版権を侵害しうる状態になります。自分の作品でも、契約で自分の手を縛ることになります。
設定後「最初の出版行為又は公衆送信行為があつた日」からです(80 条 2 項)。契約締結日でも脱稿日でもない点に注意してください。
出せます。80 条 2 項は、出版権の存続期間中に著作者が死亡したときは、三年の経過を待たずに複製権等保有者が全集収録して複製・公衆送信できると定めます。
設定した出版権の範囲によります。本条1項により、電子的な公衆送信権(2号)まで専属で出版社に設定していれば、著作者本人でも勝手な Kindle 配信はできません。逆に紙(1号)だけの設定なら電子は手元に残ります。業界裏話ヒント:出版社のテンプレ契約書は1号2号を一括で取る形が多い。電子は留保したいと最初に言わないと自動的に両方持っていかれる。言えば通ることも多く、言わない人が損をする
三年が一つの目安です。設定行為に別段の定めがなければ、最初の出版行為等から三年経過で、あなたは自分の作品を全集に収録して複製・公衆送信できます(本条2項)。さらに出版義務違反なら出版権消滅の請求も可能(84条)。業界裏話ヒント:契約段階で「一定期間内に電子化しなければ電子出版権は著作者に復帰する」という復帰条項を入れておくと、三年を待たずに取り戻せる。交渉カードとして実務でよく使われる
出版権者が他人に複製・公衆送信を再許諾するには、複製権等保有者(多くは著作者)の承諾が必要です(本条3項)。あなたの承諾なしの又許諾は効力を欠きます。業界裏話ヒント:実務では「再許諾を承諾する」と包括的に一行入れられていることが多く、これにサインすると個別の承諾権を事前に手放したことになる。再許諾を個別承諾制にしておくと、展開先をその都度コントロールできる
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 著作権法 80 条:出版権の内容(何を専有できるか) | — |
| 紙と電子の扱い | 1 号=紙の複製、2 号=電磁的記録の複製物を用いた公衆送信、全部又は一部を専有 | — |
| 著作者側に残る手 | 2 項:死亡又は三年経過で全集収録の自由/3 項:再許諾への承諾権 | — |
| 紛争になる場面 | 電子展開の可否、著作者本人の自己配信、又許諾の効力 | — |
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