要点著作権法 86 条は、出版権のある著作物の複製・公衆送信に、引用や私的使用など著作権の制限規定を準用する。ただし目的外に頒布・公衆提示すれば侵害とみなされる。
Q · 本をコピーしたり引用したりしたとき、止めてくるのは著者だけですか?
著作権の例外は出版権にも準用されるが、目的外利用は侵害になる
著作権法 86 条は、出版権の目的となっている著作物の複製・公衆送信について、私的使用(30 条)・引用(32 条)・図書館等での複製(31 条)・教育利用(35 条)・報道など著作権の制限規定を準用します。したがって適法な引用や私的複製を止められないのは著者だけでなく出版者も同じです。ただし 2 項は、私的使用等で作った複製物を目的外に頒布・公衆提示すると出版権侵害とみなす罠を置いています。
本を一冊買う。その背後には、著者が握る著作権とは別に、出版社が握るもう一つの排他的権利、出版権が存在する。第86条が決めているのは、この出版権にも著作権と同じ「穴」が空いているという事実だ。引用、私的使用のための複製、図書館での複写、学校教育での利用、報道目的の利用、視覚障害者向けの複製。著作権を制限するこれらの例外規定が、ほぼそっくりそのまま出版権にも準用される。つまり、あなたが本から一節を正当に引用するとき、止められないのは著者だけでなく出版社も同じだ。だが裏面もある。第2項は罠を仕掛けている。私的使用のつもりでコピーした本を、後で配ったり公衆に見せたりした瞬間、それは出版権を侵害する複製とみなされる。合法だったコピーが、目的を外れた瞬間に違法へ反転する仕組みだ。
著作権法 86 条は、出版権の制限を定める規定である。出版権の目的となっている著作物の複製および公衆送信について、私的使用・引用・図書館等での複製・教育利用・報道など著作権法上の各制限規定を準用する。あわせて、これらの制限の適用を受けて作成された複製物を目的外に頒布・公衆提示する行為を出版権侵害とみなす旨を規定する。
出版権は、著作権者から設定を受けた出版者が、その著作物を独占的に複製・頒布・公衆送信できる排他的権利です(著作権法 79 条・80 条)。著作権とは別個の権利で、出版者が自分の名で権利行使できます。
自分だけで使う私的使用の複製(30 条)は準用により出版権も制限され原則適法です。ただし部数配布や公衆提示に転じると 86 条 2 項でみなし侵害となります。
侵害しません。31 条の図書館等における複製が準用されるため、著作物の一部分を一人につき一部の条件で複写する限り、出版者の許諾なく適法にできます。
私的使用の範囲を超えるため違法です。著者の著作権に加え出版者の出版権侵害にもなり、請求相手が二者に増えます。人数分の購入や許諾取得が必要です。
私的使用や図書館複製など制限規定で適法に作った複製物を、目的外に頒布したり公衆へ提示すると、その時点で出版権侵害の複製をしたとみなす制度です(86 条 2 項)。
できます。32 条の引用が準用されるため、公正な慣行に合致し目的上正当な範囲なら、出版者の許諾なく引用できます。出所明示など要件は通常の引用と同じです。
出版者は債権的な出版許諾を得るにとどまり、第三者の無断複製に自分の名で差止めできません。無断利用対策には 79 条の出版権設定が有効です。
損害賠償請求権は損害と加害者を知った時から 3 年、不法行為時から 20 年で消滅します(民法 724 条)。差止請求には特定の時効がなく侵害継続中は行使できます。
自分だけで読むための「自炊」は第30条の私的使用にあたり、準用により出版権も制限されるので原則適法です。ただし自分でスキャンすることが条件で、業者に丸投げするスキャン代行は私的使用の主体がずれて違法とされた裁判例があります。業界裏話ヒント:スキャン後の元の本を売っても私的複製の適法性は揺らぎませんが、スキャンデータを家族以外に渡した瞬間、第86条第2項の目的外使用で侵害が事後的に成立します。
あります。第79条で設定された出版権は、著者の著作権とは別個の排他的権利で、出版権者は自分の名で差止め・損害賠償を請求できます(第80条)。第86条は、その出版権にも著作権と同じ制限がかかることを定めたものです。業界裏話ヒント:商業出版物では、著者は印税を受け取る立場で、実際の権利行使は出版社が担うことが多い。だから無断利用で最初に内容証明を送ってくるのは、たいてい著者本人ではなく出版社の法務です。
関係あります。2014年(平成26年)改正で出版権に公衆送信(ネット配信)の側面が加わり、電子出版権が制度化されました。第86条第3項は、その公衆送信についても引用や教育目的などの制限規定を準用しています。業界裏話ヒント:紙の出版権と電子出版権は別々に設定できるため、契約書で「出版権」とだけ書くと電子配信権が誰にあるか曖昧になります。電子化トラブルの多くは、この設定範囲の書き漏らしから起きる。(最新の改正状況をご確認ください)
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 86 条:著作権の制限規定を出版権に準用+目的外使用のみなし侵害 | — |
| 権利者にとっての効果 | 例外の範囲では出版権を行使できない(引用・私的使用等は止められない) | — |
| 利用者が争う手段 | 準用される 30 条・31 条・32 条・35 条等の要件充足を主張 | — |
ログインすると、他の読者と一緒にこの条文へメモを残せます。
ログインして共同ノートを始める以下は各文が単独で意味の通る客観的事実です。引用は e-Gov法令検索を基準としてください。