民事執行法 第38条(第三者異議の訴え)
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- 強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不許を求めるために、第三者異議の訴えを提起することができる。
- 2.前項に規定する第三者は、同項の訴えに併合して、債務者に対する強制執行の目的物についての訴えを提起することができる。
- 3.第一項の訴えは、執行裁判所が管轄する。
- 4.前二条の規定は、第一項の訴えに係る執行停止の裁判について準用する。
この条文の基本情報
第三者異議の訴えとは何ですか?
定義第三者異議の訴えとは、民事執行法第38条に定められた規定で、「強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不許を求めるために、第三者異議の訴えを提起す…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事執行法第38条(第三者異議の訴え)は、日本の民事執行法に含まれる条文です。
- 民事執行法第38条の条文原文は「強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不許を求めるために、第三者異議の訴えを提起す…」で始まります。
- 民事執行法第38条は第一節 総則に置かれています。
- 民事執行法の公布日は昭和54年3月30日です。
- 民事執行法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月9日時点では廃止情報はありません。
- 民事執行法第38条の前の条は民事執行法第37条です。
- 民事執行法第38条の次の条は民事執行法第39条です。
- 民事執行法第38条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第38条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/354AC0000000004 - 本サイト収録
民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第38条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月9日)https://lawplayer.com/jp/article/354AC0000000004/38
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事執行法38条は、目的物に所有権など引渡しを妨げる権利を持つ第三者が、債権者を被告として強制執行の不許を求める第三者異議の訴えを提起できると定める。訴えだけでは執行は止まらない。
Q · 差し押さえられた物が自分の所有なら、訴えを起こせば競売は止まりますか?
止まりません。訴えとは別に執行停止の裁判が必要です。
民事執行法38条により、目的物に所有権など引渡しを妨げる権利を持つ第三者は、債権者を被告として第三者異議の訴えを提起できます。しかし訴えの提起自体に執行停止効はなく、同条4項が準用する36条の執行停止の裁判を別途申し立て、多くの場合は保証金を供託して初めて売却が止まります。訴えだけで安心していると、審理中に競売が進み、勝訴しても現物は戻らず価額をめぐる争いに切り替わります。訴えと執行停止はセットで動かす必要があります。
解説
友人に貸していたブランド家具、別居中の配偶者名義の家電、リース会社から借りている業務用機械。ある日、執行官がやってきて、あなたの物なのに債務者の物として札を貼り、運び出していく。動産執行は「そこにある物は占有者の物」と推定して進むため、真の所有者かどうかを現場で丁寧に確認してはくれない。民事執行法38条は、この理不尽を覆すための正面玄関だ。所有権その他、譲渡や引渡しを妨げる権利を持つ第三者は、債権者を被告として「第三者異議の訴え」を起こし、その差押えの不許を求められる。ただし落とし穴がある。訴えを起こしただけでは競売は止まらない。別途、執行停止の裁判(4項が36条・37条を準用)を取らなければ、審理の途中で物は売られ、他人の手に渡ってしまう。訴えと停止、この二つを同時に動かせるかどうかが分水嶺だ。
法的な位置づけ
民事執行法38条は第三者異議の訴えを定める規定であり、強制執行の目的物について所有権その他その譲渡または引渡しを妨げる権利を有する第三者が、債権者を被告として当該強制執行の不許を求める訴えを提起できる旨を規定する。訴えは執行裁判所が管轄し、同条4項は執行停止の裁判に前二条を準用する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.差押えの現場で所有権を示す書類を提示する 執行官が来たその場で、購入時の領収書・保証書・リース契約書・所有権留保付き売買契約書など所有を裏付ける書類を提示する。動産執行では現場対応が最もコストが低く、執行官の判断で差押えを見送らせられる可能性がある
- 2.被告を『債権者』に特定して第三者異議の訴えを提起する 見送られなければ、執行裁判所(38条3項)に第三者異議の訴えを提起する。被告は執行官や国ではなく債権者(38条1項)。当事者を間違えると不適法却下となり時間を失う
- 3.同時に執行停止の裁判を申し立て保証金を供託する 訴えと必ずセットで、38条4項が準用する36条の執行停止の裁判を申し立てる。多くの場合は保証金を供託して初めて売却が止まる。訴状より先に停止の準備を進めるのが実務の鉄則
- 4.占有推定を覆す所有権立証資料を最優先で固める 動産では占有者=債務者の物と推定される(民法188条)ため不利な位置から始まる。名義より取得の経緯が決め手になる。クレジット明細、購入履歴、贈与記録など客観資料を積極的に集めて推定を覆す
よくある質問 AI による整理
Q1第三者異議の訴えとは何ですか?
他人の借金の強制執行で自分の物が差し押さえられたとき、債権者を被告としてその執行の不許を求める訴えです。民事執行法38条が根拠で、所有権など引渡しを妨げる権利が前提となります。
Q2第三者異議の訴えの被告は誰ですか?
被告は「債権者」です(民事執行法38条1項)。執行官や国を相手取ると不適法として却下されます。誰を被告にするかを間違えると限られた時間を空費します。
Q3第三者異議の訴えの管轄裁判所はどこですか?
執行裁判所が管轄します(民事執行法38条3項)。差押えの手続を行っている裁判所に提起するのが原則で、他の裁判所に出すと移送されます。
Q4第三者異議の訴えと請求異議の訴えの違いは何ですか?
第三者異議(38条)は第三者が自分の財産を守る訴え、請求異議(35条)は債務者本人が債務の消滅などを主張する訴えです。誰が原告かで使い分けます。
Q5第三者異議の訴えはいつまでに起こせますか?
対象の強制執行手続が終了するまで、動産なら売却・配当前までに提起する必要があります。特定の時効ではなく、執行の進行そのものが実質的な期限です。
Q6第三者異議の訴えを起こしたら競売は自動で止まりますか?
止まりません。訴えの提起に執行停止効はなく、38条4項が準用する36条の執行停止の裁判を別途申し立て、保証金を供託して初めて売却が止まります。
Q7第三者異議の訴えで勝訴したら物は戻りますか?
執行前に勝てば強制執行が不許となり物を守れますが、執行停止を取らず既に売却されていると現物は戻らず、価額をめぐる別の争いになります。だから停止が要です。
Q8リース物件が借主の借金で差し押さえられたら誰が訴えますか?
所有権を持つリース会社が第三者異議の訴えの原告になります。使用しているだけの借主は所有権がないため、当事者の整理を誤ると訴えが却下されます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1自分の物だってその場で言えば、執行官は差押えをやめてくれますか?
口頭だけでは難しいが、購入時の領収書やリース契約書など所有を裏付ける書類をその場で示せば、執行官が差押えを見送ることはある(動産執行は民事執行法122条以下)。ただし判断は執行官次第。実務のポイント:現場で押さえられてしまうと、その後は第三者異議の訴え(38条)しか道がなく、費用も時間も跳ね上がる。だから差押えの可能性がある場面では、自分の所有物の証明書類を家の中の取り出しやすい場所に常備しておく人がいる。訴訟になる前に現場で止めるのが圧倒的に安い
Q2訴えを起こせば、とりあえず競売は止まりますよね?
止まりません。ここが最大の誤解です。第三者異議の訴え(38条)を提起しても、それだけでは執行手続は進行します。別に執行停止の裁判(38条4項が準用する36条)を申し立て、多くの場合は保証金を供託して初めて売却が止まる。実務のポイント:弁護士は訴状と執行停止の申立てを必ずセットで準備する。依頼者が『訴えたから安心』と思っている隙に売却期日が来て物が競落されると、勝訴しても現物は戻らず、価額をめぐる争いに切り替わる。停止の申立てを忘れる素人が本当に多い
Q3夫の借金なのに、妻の私の物まで差し押さえられました。おかしくないですか?
動産執行では、債務者が占有している物は債務者の所有と推定される(民法188条)ため、同居する家の中の物は夫婦どちらの物か外から区別できず、まとめて差し押さえられがちです。妻の物なら第三者異議の訴え(38条)で取り戻せる。実務のポイント:立証の決め手は『名義』より『取得の経緯』。妻自身のクレジット明細、妻名義の購入履歴、贈与の記録があれば所有を立証しやすい。逆に現金で買って記録のない高額品は、真実は妻の物でも取り返しにくい。日頃の購入記録が、そのまま防御力になる
Q4分割払いで売った商品を、買主の借金で差し押さえられました。まだ完済されていません。
所有権留保の特約があれば、売主のあなたに所有権が残っているので、第三者異議の訴え(38条)で取り戻せます。留保特約が契約書に明記されていることが前提。実務のポイント:所有権留保は口約束では立証が難しく、『代金完済まで所有権は売主に留保する』という一文が契約書にあるかどうかで結論が割れる。さらに買主がすでに第三者に転売し、その第三者が即時取得(民法192条)していると取り戻せない。だから留保付き販売では、転売禁止と占有態様を契約で縛るのが実務の定石
間違えやすい点 AI による整理
- 所有者なら取り返せる、それは知っている。だが「訴えを起こせば差押えは止まる」と思い込んでいる点が命取りだ。第三者異議の訴えの提起そのものには執行停止効がなく、38条4項が準用する36条は別途の停止裁判を要求する。訴状を出して安心している間に競売は淡々と進み、物は売られる。取り返すべき対象が消えれば、勝訴しても手元には現物が戻らない
- 「自分の物だと証明すればいい」と問いを立てるが、動産執行ではその問いの立て方自体がずれている。民法188条により、占有している債務者の物と推定されるため、あなたは最初から不利な位置に立たされている。積極的に所有権を立証しない限り推定は覆らない。証明責任がどちらにあるかを見誤ると、真実がどうであれ負ける
- 被告は執行官や国だと思われがちだが、第三者異議の訴えの被告は「債権者」だ(38条1項)。執行官を相手取っても訴えは不適法として退けられる。誰を被告にするかを一つ間違えるだけで、限られた時間を空費する
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 原告(誰が使う) | 民執38条:第三者(真の所有者など) | 民執35条:債務者本人 民執11条:執行手続違反を受けた当事者 |
| 争う中身 | 目的物は自分の物だという実体権の主張 | 債務の不存在・消滅など請求権の実体異議 執行機関の軽微な手続違反 |
| 被告・相手方 | 債権者 | 債権者 執行機関(申立て手続) |
| 執行停止効 | 提起だけでは停止せず、36条準用の停止裁判が必要 | 同じく停止裁判が別途必要 執行異議・執行抗告の手続内で処理 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も第三人異議之訴として同型の制度を持ち、就執行標的物有足以排除強制執行之権利の第三者が債権者を相手に異議の訴えを起こす点で日本38条と機能的に一致する
韓国も제3자이의의 소として規定し、소유권 등 목적물의 양도・인도를 막을 권리를 가진 제3자が채권자を相手に執行不許を求める構造で日本と近い
母法にあたるドイツの第三者異議訴訟。譲渡を妨げる権利(das die Veräußerung hinderndes Recht)を持つ第三者が債権者に対し執行不許を求める。日本38条の直接の起源
米国は連邦統一の制度ではなく、各州の民事執行法や replevin により、差押財産の所有権を主張する第三者が third-party claim で救済を求める。手続は州ごとに大きく異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたの会社がリース会社から借りている業務用機械が、事務所を間借りしている別会社の借金で差し押さえられた。所有者はリース会社、使用者はあなた。第三者異議の訴えでリース会社が動くのか、占有を根拠にあなたが動くのか、当事者の整理を最初に間違えると訴えそのものが却下される
- もし、実家に置いたままの自分名義の車が、同居する親の借金で差し押さえられたら? 名義があなたでも、競売期日まであと三週間。訴えを起こすだけでは間に合わない。執行停止の申立てと保証金の供託を今週中に動かさないと、車は他人の手に競落される
- 共働き夫婦の家。夫の事業の借金で、妻名義のバッグや家電までまとめて差し押さえられた。婚姻中の動産は夫婦どちらの物か外から判別できず、一括で持っていかれる
- あなたが債権者として差押えをかけたところ、第三者から異議の訴えを起こされた。相手の所有権主張が本物か、それとも執行逃れの名義偽装か。ここで相手の主張を崩せなければ、苦労して押さえた財産を手放すことになる
- 分割払いで売った商品。買主が代金を払い終える前に、買主の別の債権者がその商品を差し押さえた。あなたには所有権が留保されている。第三者異議の訴えで取り戻せるが、留保特約を書面で残していないと、所有権の立証で詰む
取るべき行動
被害を受けた側:1. 差押えの現場で、所有権を示す書類(領収書、契約書、保証書、リース契約書)を執行官に提示し、その場で差押えを見送らせる可能性を試す2. 見送られなければ、直ちに執行裁判所に第三者異議の訴え(被告は債権者)を提起3. 同時に必ず執行停止の申立てをし、保証金を供託して売却を止める。訴えだけでは止まらない4. 動産では占有者イコール債務者の所有と推定されるため、所有権の立証資料を最優先で固める
訴えられた側:1. 第三者の所有権主張が本物か、執行逃れの名義偽装かを見極める。親族間・関連会社間の主張は特に精査2. 名義移転が差押え直前なら、詐害行為(民法424条)や仮装譲渡を疑い反証を集める3. 動産の占有推定(民法188条)は債権者に有利に働く。第三者の占有立証を崩せるか検討4. 争いが長引くより、担保価値と訴訟コストを比較し、和解や一部差押え解除も選択肢に入れる
時効(請求できる期限):第三者異議の訴えは、対象となる強制執行の手続が終了するまで(動産なら売却・配当前まで)に提起しなければ訴えの利益を失う。特定の消滅時効ではなく、執行手続の進行そのものが実質的な期限。競売期日がカウントダウンであり、執行停止を取らなければ訴訟係属中でも売却は進む
学説
通説:第三者異議の訴えの異議事由は、目的物の譲渡または引渡しを妨げる実体権であり、所有権が典型だが、譲渡担保権者・所有権留保売主・対抗要件を備えた用益権者なども原告適格を持ちうる。占有推定(民法188条)が働く動産では、原告が所有権を立証する責任を負うのが通説である。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和54年(1979年) 新設:民事執行法の制定に伴い、旧民事訴訟法に置かれていた強制執行規定を独立法典として再編。第三者異議の訴えを38条として整備し、管轄を執行裁判所とし、4項で執行停止の裁判に前二条を準用する構造を明文化した。
- 民事執行法 第35条請求異議の訴え、債務者側の実体異議の対概念
- 民事執行法 第36条訴え提起に伴う執行停止の裁判(38条4項が準用)
- 民事執行法 第10条執行抗告、重大な処分に対する不服申立てとの役割分担
- 民事執行法 第11条執行異議、簡易な手続違反に対する不服申立て
- 民事執行法 第122条動産執行、占有を基準に差押えを進める根拠規定
- 破産法 第62条取戻権、破産手続における第三者財産の引揚げの機能的等価物
- 民事保全法 第46条保全執行への民事執行法規定の準用による第三者異議の拡張
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