民事訴訟法 第303条(控訴権の濫用に対する制裁)
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- 控訴裁判所は、前条第一項の規定により控訴を棄却する場合において、控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴を提起したものと認めるときは、控訴人に対し、控訴の提起の手数料として納付すべき金額の十倍以下の金銭の納付を命ずることができる。
- 2.前項の規定による裁判は、判決の主文に掲げなければならない。
- 3.第一項の規定による裁判は、本案判決を変更する判決の言渡しにより、その効力を失う。
- 4.上告裁判所は、上告を棄却する場合においても、第一項の規定による裁判を変更することができる。
- 5.第百八十九条の規定は、第一項の規定による裁判について準用する。
この条文の基本情報
控訴権の濫用に対する制裁とは何ですか?
定義控訴権の濫用に対する制裁とは、民事訴訟法第303条に定められた規定で、「控訴裁判所は、前条第一項の規定により控訴を棄却する場合において、控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴を提起したものと認めるときは、控訴人に対し…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事訴訟法第303条(控訴権の濫用に対する制裁)は、日本の民事訴訟法に含まれる条文です。
- 民事訴訟法第303条の条文原文は「控訴裁判所は、前条第一項の規定により控訴を棄却する場合において、控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴を提起したものと認めるときは、控訴人に対し…」で始まります。
- 民事訴訟法第303条は第一章 控訴に置かれています。
- 民事訴訟法の公布日は平成8年6月26日です。
- 民事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 民事訴訟法第303条の前の条は民事訴訟法第302条です。
- 民事訴訟法第303条の次の条は民事訴訟法第304条です。
- 民事訴訟法第303条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第303条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109 - 本サイト収録
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第303条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/408AC0000000109/303
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事訴訟法303条は、控訴人が訴訟の遅延のみを目的に控訴したと認められる場合、控訴手数料の十倍以下の金銭制裁を命じられると定める。制裁は判決主文に掲げられ、本案判決の変更で失効する。
Q · 勝ったのに相手が見え透いた控訴で時間稼ぎ。何か仕返しできる?
遅延だけが目的の控訴には手数料の十倍以下の制裁があります
民事訴訟法303条により、控訴裁判所は控訴を棄却する場合に、控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴したと認めれば、控訴提起の手数料の十倍以下の金銭納付を命じられます。この裁判は判決主文に掲げられ(2項)、過料の執行手続(189条準用、5項)で国庫に強制執行されます。ただし本案判決が変更されれば制裁は失効し(3項)、上告審でも変更されえます(4項)。納付先は国庫であり、相手方への賠償ではない点に注意が必要です。
解説
一審で負けた相手が、明らかに勝ち目のない控訴をしてきた。理由は単純で、あなたへの支払いを一日でも先延ばしにしたいだけだ。多くの人は「控訴は自由だし、どうせまた負けるだけ」と高をくくる。だがこの条文を知っていると景色が変わる。控訴裁判所は、控訴人が訴訟の完結を遅らせることだけを目的に控訴したと認めたとき、控訴の手数料として納付すべき金額の十倍以下の金銭の納付を命じることができる。しかもこの制裁は判決主文に書かれ(2項)、過料と同じ執行手続(189条準用、5項)で国庫に取り立てられる。引き延ばし目的の控訴は、ただ負けるのではなく、上乗せでカネを払わされる。あなたが被控訴人なら、相手の遅延戦術そのものを、裁判所への制裁の働きかけという一手に変えられる。
法的な位置づけ
民事訴訟法303条は、控訴権の濫用に対する金銭制裁を定める規定である。控訴裁判所は、控訴を棄却する場合において、控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴したと認めるとき、控訴提起の手数料の十倍以下の金銭納付を命じることができる。当該裁判は判決主文に掲げられ、本案判決の変更によりその効力を失う。
よくある質問 AI による整理
Q1控訴権の濫用とは何ですか?
本来は正当な不服申立ての権利である控訴を、勝ち目がないのに支払いの引き延ばしなど不当な目的だけで使うことです。民事訴訟法303条は、その典型である遅延目的のみの控訴に金銭制裁を定めます。
Q2遅延目的の控訴と認められるとどうなりますか?
控訴裁判所は控訴を棄却するとともに、控訴提起の手数料の十倍以下の金銭納付を命じることができます(303条1項)。命令は判決主文に書かれ、過料と同じ手続で強制執行されます。
Q3控訴の制裁金は誰が受け取るのですか?
制裁金の納付先は国庫であり、勝訴した相手方が受け取るわけではありません。したがって金銭回収の手段にはならず、実益は相手の遅延戦術を抑止する点にあります。
Q4控訴手数料はどう計算しますか?
控訴の手数料は訴額に応じて民事訴訟費用等に関する法律で定まり、第一審の手数料の1.5倍が基準です。303条の制裁はその十倍が上限のため、訴額が大きいほど制裁額も上がります。
Q5民事訴訟法303条の制裁はいつ言い渡されますか?
制裁は控訴棄却の判決と同時に、その主文で言い渡されます(303条2項)。被控訴人として制裁を求めるなら、口頭弁論終結前までに遅延目的である事情を主張し尽くす必要があります。
Q6仮執行宣言があれば控訴中でも回収できますか?
仮執行宣言付きの判決であれば、相手が控訴していても確定を待たずに強制執行を進められます。遅延目的の控訴に対しては、303条の制裁と並行して回収の手を止めないことが有効です。
Q7上告審で控訴の制裁は取り消せますか?
上告裁判所は、上告を棄却する場合でも303条1項の制裁の裁判を変更できます(4項)。制裁に不服があれば上告審で争う余地があります。
Q8控訴の取下げで制裁は回避できますか?
判決前に控訴を取り下げれば棄却判決自体がなくなるため、303条の制裁が言い渡される前提を欠きます。実務では制裁を恐れた控訴人が取り下げる抑止効果も期待されます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1控訴された側ですが、相手の引き延ばしに何か仕返しできますか?
民事訴訟法303条があります。控訴審が「相手は訴訟の完結を遅らせるためだけに控訴した」と認めれば、控訴手数料の十倍以下の金銭納付を命じられます。あなたから正式に申し立てる制度ではありませんが、答弁書で主張の蒸し返しを具体的に指摘すれば、裁判所が動く材料になります。実務のポイント:実務でこの制裁が実際に発動される件数は多くない。だが被控訴人が早い段階で遅延目的を整理して突きつけると、相手が制裁を恐れて控訴を取り下げる、という心理的な抑止効果のほうが現実にはよく効く
Q2控訴手数料の十倍って、具体的にいくらですか?
控訴の手数料は訴額に応じて民事訴訟費用等に関する法律で決まり、一審の手数料の1.5倍が基準です。その十倍が上限なので、訴額が大きいほど制裁額も跳ね上がります(最新の手数料額は民事訴訟費用等に関する法律をご確認ください)。実務のポイント:この制裁金は被控訴人ではなく国庫に入る。だから金銭回収の手段としては意味がない。本当の価値は、相手に「遅延目的とみなされる」プレッシャーをかけ、無駄な控訴を取り下げさせる抑止力にある
Q3本案で結局こちらが勝ったら、制裁の命令はどうなりますか?
控訴審が本案判決を変更する判決を言い渡すと、303条1項の制裁はその言渡しにより効力を失います(3項)。さらに上告審は、上告を棄却する場合でも制裁の裁判を変更できます(4項)。つまり制裁は本案の結論と連動しており、独り歩きしません。実務のポイント:だからこそ被控訴人は「相手の控訴に実体的な勝ち目がゼロである」ことを早く示すほど制裁が生き残る。逆に控訴人側は、わずかでも筋のある主張を立てて本案変更の可能性を残せば、制裁リスクを大きく下げられる
間違えやすい点 AI による整理
- 「控訴は自由で、負けても費用以上の不利益はない」と思われているが、訴訟を遅らせることだけが目的と認定されれば、控訴手数料の十倍まで制裁される。負けることそのものより重い金銭リスクが乗ってくる
- あなたから見れば「相手から制裁金を取れる」だが、法律から見れば納付先は国庫であり、あなたが受け取る賠償ではない。この落差を知らずに「制裁で回収できる」と期待すると当てが外れる。実益はあくまで遅延戦術の抑止と、濫用の公的な認定にある
- 制裁の存在は知っていても、それが判決主文に掲げられ(2項)、過料の執行手続(189条準用、5項)で強制執行される点まで理解している人は少ない。単なる訓示規定ではなく、執行力を持つ裁判である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律対象 | 303条:遅延目的のみの控訴(控訴権の濫用) | 2条:訴訟一般の信義誠実 302条:理由のない控訴の棄却 |
| 効果 | 控訴手数料の十倍以下の金銭制裁 | 一般原則(個別の制裁規定なし) 控訴棄却(制裁そのものはなし) |
| 執行 | 過料の執行手続を準用し国庫に強制執行(189条準用) | — — |
| 失効・変更 | 本案判決の変更で失効(3項)、上告審で変更可(4項) | — — |
他国ではどう定めているか 3 か国
台湾は濫用的な訴訟・上訴に対し裁判所が処罰(罰鍰)を科しうる規定を2021年に整備した。遅延・濫用を抑止する発想が共通する。
フランスは控訴が専ら引き延ばし又は濫用目的の場合、控訴人に民事罰金(amende civile)を科しうる。遅延目的控訴への制裁という点で日本と類似する。
米国連邦の上訴規則38は、根拠のない上訴(frivolous appeal)に損害賠償と費用負担を命じうる。相手方が受領する点で、国庫納付の日本とは性質が異なる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたが貸金返還訴訟で勝訴した。相手は支払いを渋り、一審と同じ主張を蒸し返すだけの控訴で時間稼ぎに入る。控訴審の答弁書で「これは専ら遅延目的の濫用控訴だ」と整理して示せば、裁判所は手数料の十倍以下の制裁を相手に命じる材料を得る。納付先は相手ではなく国庫だが、相手の引き延ばしコストは跳ね上がる
- 控訴を考えているあなたへ。そこに本当に争うべき争点があるのか、それとも単に支払いの時間が欲しいだけなのか。後者なら303条のリスクを正面から負う
- もし相手が控訴期間ぎりぎりに、新しい主張も証拠もないまま控訴状だけ出してきたら? あなたの対抗手段は控訴審の早い段階で主張の同一性を可視化すること。本案判決が変更されれば制裁は失効する(3項)ので、相手に実体的な勝ち目が皆無であるほど制裁は生き残る
- あなたが被控訴人として制裁を勝ち取っても、控訴審が一審判決を変更すればその制裁は効力を失う(3項)。つまり相手に少しでも本当の勝ち目があれば、この一手は通らない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 控訴状と一審の主張を並べ、新たな争点や新証拠があるかを点検。皆無なら遅延目的の有力な徴表になる。2. 控訴審の答弁書で、主張の同一性と控訴理由の薄さを具体的に指摘し、303条1項の制裁を裁判所に促す。3. 仮執行宣言付き判決なら控訴中でも強制執行を進められるので、回収の手を止めない。4. 制裁は本案変更で失効する(3項)点を踏まえ、本案でも完勝を狙う
訴えられた側:1. 控訴に実体的な争点が本当にあるか、新たな主張や証拠を用意できるかを冷静に検証。単なる時間稼ぎなら制裁リスクを直視する。2. 争点があるなら控訴理由書で具体的に主張し、「遅延目的のみ」との認定を避ける。3. 仮執行を止めたいだけなら、濫用控訴とは切り分けて執行停止の申立て(民事訴訟法403条)を検討する。4. 制裁の裁判は上告審でも変更されうる(4項)ので、不服があれば上告審で争う余地がある
時効(請求できる期限):この制裁は控訴棄却の判決と同時に主文で言い渡される(2項)ため、独立した申立期限はない。被控訴人として制裁を求めるなら、控訴審の口頭弁論終結前に遅延目的の主張を尽くすこと。制裁の裁判は、本案判決を変更する判決の言渡しによりその効力を失う(3項)
学説
通説:303条の制裁は控訴権の濫用に対する例外的規律であり、『訴訟の完結を遅延させることのみを目的とする』という要件は厳格に解される。実務での発動例は多くなく、被控訴人による濫用の指摘が抑止的に機能する場面が中心とされる。
改正沿革 AI による整理
- 平成8年(1996年)民事訴訟法全部改正 現行民事訴訟法の全部改正に伴い新設。旧民事訴訟法には控訴権の濫用に対する金銭制裁の一般規定がなく、訴訟の完結を遅延させることのみを目的とする控訴への制裁として導入された
改正の年表
- 1.平成8年(1996年) 新設:民事訴訟法の全部改正に伴い新設。旧法には控訴権濫用への一般的な金銭制裁規定がなく、遅延目的のみの控訴を抑止する制度として導入された。
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