要点破産法 72 条は、危機時期に相手方の窮状を知って取得した破産債権による相殺を禁止する。ただし法定の原因や一年以上前の原因による取得は例外として相殺できる。
Q · 倒産しそうな取引先への借金は、他人の債権を買って相殺で消せますか?
危機時期に知って取得した債権では相殺できません
破産法 72 条により、破産手続開始後に取得した破産債権、および支払不能・支払の停止・破産手続開始の申立てを知った後に取得した破産債権は、相殺に供することができません。危機を察知した後に安く債権を買い集めて相殺しても、その効力は否定されます。ただし第 2 項の例外(法定の原因、事情を知る前に生じた原因、一年以上前に生じた原因、破産者との契約に基づく取得)に当たれば、なお相殺が認められます。相殺できるか否かは、いつ・何を根拠に債権を取得したかで決まります。
取引先 A 社に 1,000 万円の買掛金がある。ところが A 社の資金繰りが怪しくなってきた。このまま A 社が破産すれば、あなたは 1,000 万円をきっちり破産財団に払い込み、逆に A 社へ持っている売掛金 500 万円は配当率数パーセントしか戻ってこない。ここで一つの裏ワザが浮かぶ。A 社に対する他人の債権を額面より安く買い集め、自分の 1,000 万円の借金と相殺してしまえば、わずかな出費で借金が消える。破産法 72 条は、まさにこの動きを先回りして封じる条文だ。破産手続開始後に取得した債権、支払不能や支払の停止や破産申立てを知った後に取得した債権、これらは相殺に使えない。ただし第 2 項に四つの抜け道がある。法定の原因、事情を知る前から生じていた原因、一年以上前の原因、破産者との契約に基づく取得。あなたが相殺で回収できるかどうかは、いつ、何を根拠にその債権を手に入れたかで決まる。
破産法 72 条は、破産者に対して債務を負担する者による相殺を制限する規定である。破産手続開始後に取得した破産債権、および支払不能・支払の停止・破産手続開始の申立てを知った後に取得した破産債権は、原則として相殺に供することができない。第 2 項は法定の原因等に基づく取得を適用除外とする。
AI 輔助整理,以條文原文為準
破産者に対して債務を負う者が、危機時期に取得した破産債権で相殺することを禁じる規定です。破産手続開始後の取得や、支払不能等を知った後の取得が対象になります。
一番早い基準は「支払不能を知った時点」です。以後、支払の停止、破産手続開始の申立て、破産手続開始と段階が進み、各時点で事情を知って取得した債権が相殺不可となります。
支払不能は客観的に弁済能力を欠く状態、支払の停止は「もう払えない」と外部に表示する行為です。72 条は両方を危機時期の起点とし、それぞれ認識の有無で相殺の可否が分かれます。
管財人は相手に相殺するか催告でき、一定期間内に相殺の意思表示をしないと相殺権を失う場合があります(破産法 73 条)。早めに意思表示することが重要です。
否認(破産法 160 条以下)は成立済みの弁済等を管財人が覆す制度、72 条は危機時期取得債権による相殺そのものを封じる制度です。実務では両者を併用して財団の回復を図ります。
危機時期より前から生じている預金・貸付なら相殺できる余地があります。ただし支払停止を知った後に追加取得した債権による上乗せ相殺は 72 条 1 項 3 号で否定されます。
法定の原因、事情を知る前に生じた原因、破産手続開始の申立てより一年以上前に生じた原因、破産者との間の契約に基づく取得の四つです。これらは相殺禁止から外れます。
あります。民事再生法 93 条が破産法 72 条と並行する相殺禁止を定めています。危機時期取得債権による相殺が制限される点は共通します。
もともと相手に対して持っていた債権となら相殺できます(破産法 67 条)。問題は、危機時期に入ってから新たに買い集めた債権です。これは 72 条で相殺に使えません。業界裏話ヒント:実務に強い経営者や財務担当は、相手が傾く『前』に相殺できる関係を作り込んでおきます。倒産の噂が出てから動くのでは、ほとんどの手が 72 条で封じられる
刑事的に違法というわけではありません。ただし支払不能を知った後に取得した債権での相殺は、72 条 1 項 2 号で効力を否定されます。買っても相殺に使えず、出した金が無駄になるだけです。業界裏話ヒント:ディストレスト債権を相殺目的で買う手法は昔から狙われており、危機時期の認識が立証されれば管財人にあっさり否定される。買う前に『いつ相手の窮状を知ったか』が全てを決める
できる可能性が高いです。事情を知るより前に生じた原因による取得(72 条 2 項 2 号)や、相手との契約に基づく取得(同項 4 号)、一年以上前の原因(同項 3 号)は、危機時期の禁止から外れます。業界裏話ヒント:継続的な取引基本契約の中に相殺の根拠を仕込んでおくと、この抜け道に乗りやすい。平時に結んだ一通の契約が、相手倒産時の回収力を大きく左右する
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 規律の方向 | 72 条:破産者に債務を負う者による相殺を制限 | — |
| 禁止・許容される場面 | 危機時期に事情を知って取得した破産債権での相殺は不可 | — |
| 主な例外・要件 | 法定の原因・知る前の原因・一年以上前の原因・破産者との契約(2 項) | — |
| 制度目的 | 危機を知った者の駆け込み相殺を封じ債権者平等を守る | — |
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