要点破産法 71 条は、破産債権者による相殺が禁止される場合を定める。支払不能や破産申立てを知った後に負担した債務を用いた相殺は認められない。
Q · 取引先が倒産しそうなとき、慌てて相殺すれば売掛金を満額回収できるの?
危ないと知った後に作った債務での相殺は無効です
破産法 71 条により、支払不能・支払停止・破産手続開始の申立てを知った後に破産者へ債務を負担した場合、その債務を用いた相殺は禁止されます。健全なうちに正常な取引から生じた債権債務なら相殺で実質満額回収できますが、窮状を知ってからの駆け込みは債権者平等を害する抜け駆けとして封じられます。ただし法定の原因や、破産申立ての 1 年以上前に生じた原因に基づく債務は例外として保護されます(同条 2 項)。
取引先が倒産した。あなたはその会社に売掛金 500 万円がある。一方で、あなたもその会社から仕入れた商品の代金 300 万円をまだ払っていない。普通なら売掛金はほぼ戻らない、破産配当は数パーセントが相場だ。ところが「相殺」を使えば、あなたの 300 万円の債務と売掛金 500 万円をぶつけて消し、差額 200 万円だけを破産債権として届け出る。つまり 300 万円分は満額回収したのと同じになる。これが破産法 67 条が認める相殺権、倒産時の隠れた最強の回収手段だ。だが本条 71 条は、この武器に時間の枷をはめる。相手が支払不能、支払停止、破産申立てに陥った後、それを知りながら駆け込みで相手への債務を作り出し、相殺の材料にした場合、その相殺は認められない。早い者勝ちで債権者平等を壊す抜け駆けを封じるためだ。いつ債務を負ったか、そのとき相手の窮状を知っていたか、この二つが満額回収と数パーセントの分水嶺になる。
破産法 71 条は破産手続における相殺の禁止を定める規定であり、破産債権者が破産手続開始後に破産財団へ債務を負担した場合、または支払不能・支払停止・破産手続開始の申立てを知った後に破産者へ債務を負担した場合の相殺を制限する。破産法 67 条が認める相殺権に対する時期的制約として機能する規範である。
AI 輔助整理,以條文原文為準
固有の出訴期限はありませんが、破産管財人は相当の期間を定めて相殺の可否を催告でき、期間内に確答しないと相殺権を失います(破産法 73 条)。配当手続が進む前に意思表示するのが安全です。
支払不能とは、債務者が支払能力を欠き、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない客観的状態をいいます(破産法 2 条 11 項)。相殺禁止の起点となる重要概念です。
あります。法定の原因、窮状を知る前に生じた原因、破産申立ての 1 年以上前に生じた原因に基づく債務は、相殺禁止の対象から除外されます(破産法 71 条 2 項)。
配当以外に、自分が相手に負う既存の債務があれば相殺で実質満額回収できる余地があります。買掛金・前受金・預け金などが材料になり、破産管財人へ書面で意思表示します。
偏頗行為否認(破産法 162 条)は既にした弁済等を管財人が覆す制度、相殺の禁止(71 条)は債権者が相殺を主張できなくする制度です。ともに抜け駆けを規制する姉妹規定です。
管財人は相当の期間を定め、相殺権を行使するか否かの確答を破産債権者に求めることができます。期間内に確答しないと相殺権を失います(破産法 73 条)。
枠組みは類似しますが、民事再生法 93 条・93 条の 2 は債権届出期間の満了までに相殺する必要があるなど、期間制限が破産手続より厳格です。
破産管財人に対する意思表示で足り、裁判所の許可は不要です。後日「いつ相殺したか」が争点になるため、内容証明郵便など日付の残る書面で行うのが実務の鉄則です。
いりません。破産法 67 条の相殺権は破産手続によらずに行使でき、破産管財人に対して相殺の意思表示をすれば足ります。ただし本条 71 条の禁止事由に当たらないことが前提です。業界裏話ヒント:相殺の意思表示は必ず書面(内容証明など)で日付を残して行うこと。後で「いつ相殺したか」「その時点で禁止事由を知っていたか」が争点になったとき、口頭では立証できず、せっかくの相殺権を否定されることがある
原則できます。銀行取引で最も一般的な回収手段で、判例も相殺の担保的機能を広く認めています(最大判昭和 45.6.24)。ただし預金が支払停止後に入金されたもので、銀行がそれを知っていた場合は本条 1 項 3 号で制限されます。業界裏話ヒント:だから経営が苦しくなった会社が借入のある銀行の口座に大きな入金をするのは危険。その預金は融資と相殺されて引き出せなくなる。資金繰りが厳しいときほど、借入のない銀行に資金を移す経営者がいるのはこのためだ
本条 2 項 3 号により、破産手続開始の申立てがあった時より 1 年以上前に生じた原因に基づく債務は、相殺の禁止から除外されます。長年の継続的取引から自然に生じた債権債務は守られやすい。業界裏話ヒント:この 1 年の起算は取引の『原因』が生じた時点で、実際に債務額が確定した時点ではない。継続的供給の基本契約が 1 年以上前に結ばれていれば、個別の債務がその後に発生しても保護される余地がある。基本契約書の締結日を残しておくことが効いてくる
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 制度の機能 | 破産法 71 条:相殺の禁止(債権者が相殺を主張できなくする) | — |
| 時期の基準 | 債務を負担した時点で窮状を知っていたか | — |
| 効果 | 相殺が認められず、破産財団への債務履行義務が残る | — |
| 主張する立場 | 管財人・他の債権者が濫用的相殺に対抗 | — |
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