不動産登記法 第32条(表題部所有者の変更等に関する登記手続)
クイックジャンプ
表題部所有者又はその持分についての変更は、当該不動産について所有権の保存の登記をした後において、その所有権の移転の登記の手続をするのでなければ、登記することができない。
この条文の基本情報
表題部所有者の変更等に関する登記手続とは何ですか?
定義表題部所有者の変更等に関する登記手続とは、不動産登記法第32条に定められた規定で、「表題部所有者又はその持分についての変更は、当該不動産について所有権の保存の登記をした後において、その所有権の移転の登記の手続をするのでなければ、登記することがで…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 不動産登記法第32条(表題部所有者の変更等に関する登記手続)は、日本の不動産登記法に含まれる条文です。
- 不動産登記法第32条の条文原文は「表題部所有者又はその持分についての変更は、当該不動産について所有権の保存の登記をした後において、その所有権の移転の登記の手続をするのでなければ、登記することがで…」で始まります。
- 不動産登記法第32条は第一款 通則に置かれています。
- 不動産登記法の公布日は平成16年6月18日です。
- 不動産登記法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 不動産登記法第32条の前の条は不動産登記法第31条です。
- 不動産登記法第32条の次の条は不動産登記法第33条です。
- 不動産登記法第32条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第32条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 - 本サイト収録
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第32条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/416AC0000000123/32
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点不動産登記法32条は、表題部所有者の変更は所有権保存登記をした後に所有権移転登記の手続によらなければ登記できないと定める。保存登記前に売却しても、買主名義への直接変更はできない。
Q · 保存登記をしていない新築の家を売ったら、表題部所有者を買主の名前に変えられますか?
変えられません。保存登記と移転登記の二本立てが必要です
不動産登記法32条により、表題部所有者の変更は、所有権の保存の登記をした後に所有権の移転の登記の手続によらなければ登記できません。したがって、保存登記前に建物を売却した場合は、まず表題部所有者(原始取得者)名義で所有権保存登記を入れ、その上で買主への所有権移転登記を行います。登記が二本必要になり、登録免許税も保存分と移転分の二回分が発生します。ただし区分建物には74条2項の特則があり、買主が直接保存登記できます。相続で取得した場合も74条1項1号で相続人名義の直接保存登記が可能です。
解説
新築した建物の登記簿を開くと、最上段の表題部に所有者の氏名が載っている。ところがこの氏名、後から別人に書き換えることができない。A が建てた家を、保存登記をしないまま B に売ったとする。B が「表題部所有者を B に変えてください」と法務局に頼んでも、32条が正面から拒む。やるべき順序はこうだ。まず A 名義で所有権保存登記を入れ、その上で A から B への所有権移転登記をする。つまり登記が二本必要になり、登録免許税も二回分かかる。なぜこんな面倒を強いるのか。答えは、権利がどう動いたかの履歴を登記簿に残すためだ。A から B へ渡った事実を消して B だけを載せてしまうと、後から A の債権者や相続人が現れたとき、誰がいつ権利を得たのか外部から追跡できなくなる。あなたが払う二回分の税金は、その履歴の連続性の代金である。
法的な位置づけ
不動産登記法32条は、表題部所有者またはその持分の変更について、所有権の保存の登記を経た上で所有権の移転の登記の手続によらなければ登記することができない旨を定める規定である。表題部の所有者欄を直接他人名義へ書き換える手続を制度上排除し、権利変動の過程を権利部に連続して公示することを担保する機能を有する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.登記事項証明書で表題部所有者を確認する 法務局またはオンライン(登記情報提供サービス)で登記事項証明書を取得し、表題登記の有無と表題部所有者が誰の名義かを確認する。権利部(甲区)が存在するかどうかで、保存登記済みか未了かが判別できる
- 2.取得原因が売買か相続かで進む道を分ける 売買で取得したなら32条により直接の名義変更はできず、表題部所有者名義の保存登記が先行する。相続で取得したなら74条1項1号により相続人名義で直接保存登記でき、二段構えにならない。区分建物なら74条2項で買主が直接保存登記できる
- 3.売主名義の所有権保存登記を申請する 表題部所有者(売主・原始取得者)を申請人として所有権保存登記を申請する。売主の協力が必須のため、売買契約書に保存登記への協力義務と費用負担を明記しておく。住宅用家屋証明書があれば軽減税率の適用余地がある
- 4.買主への所有権移転登記を同日中に連件申請する 保存登記と移転登記を同一日に連件で申請し、決済・融資実行と同時に権利関係を確定させる。抵当権設定登記は所有権の登記がなければ入れられないため、保存・移転・抵当権設定の順序を司法書士と事前に確定しておく
- 5.登録免許税を二回分見積もり、負担者を決済前に合意する 保存登記分と移転登記分の登録免許税を課税標準額から試算し、どちらが負担するかを契約書に明記する。決済当日に持ち出すと負担の押し付け合いで引渡しが遅れるため、契約締結時点で数字を出しておく
よくある質問 AI による整理
Q1表題部所有者とは何ですか?
建物や土地の登記記録の表題部に、所有者として記録されている者のことです(不動産登記法2条10号)。まだ所有権の登記がない不動産について、新築時の表題登記で原始取得者が記録されます。
Q2表題部所有者の氏名や住所が変わったときはどうしますか?
氏名や住所の変更・更正は31条により表題部所有者自身が申請できます。32条が塞いでいるのは所有者そのものが別人に入れ替わる場合であり、同一人の表示の変更はまったく別の手続です。
Q3未登記の建物を売るにはどうすればいいですか?
まず表題登記の有無を確認し、表題部所有者の名義で所有権保存登記を入れ、その上で買主へ所有権移転登記をします。買主名義へ一足飛びに登記する方法はなく、登録免許税も二回分が必要です。
Q4相続した未登記建物は誰の名義で登記できますか?
相続人は表題部所有者の一般承継人として、自分の名義で直接所有権保存登記ができます(74条1項1号)。売買で取得した場合と違い、保存と移転で二重の登録免許税を払う必要はありません。
Q5表題部所有者が間違って記録されていたら直せますか?
当初から真の所有者と異なる者が記録されていた場合は、33条の更正登記で修正できます。32条が禁じるのは登記後に所有者が入れ替わる「変更」であり、当初からの誤りは別枠の手続です。
Q6マンションはなぜ直接保存登記できるのですか?
区分建物には74条2項の特則があり、表題部所有者から所有権を取得した買主が直接保存登記できます。分譲事業者が住戸ごとに保存登記を入れる負担を避けるための例外で、一戸建てには使えません。
Q7建物の表題登記はいつまでにする必要がありますか?
新築建物の表題登記は所有権取得の日から1か月以内が義務で(47条)、怠ると10万円以下の過料の対象になります(164条)。一方、所有権保存登記そのものには申請義務がありません。
Q8所有権保存登記をしないとどうなりますか?
登記がなければ第三者に所有権を対抗できず(民法177条)、抵当権も設定できないため住宅ローンの実行が止まります。売買の決済そのものが組めなくなる点が実務上の急所です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1保存登記を飛ばして、いきなり買主の名前で登記できないんですか?
一戸建てや事務所などの通常の建物ではできない。所有権保存登記を申請できるのは表題部所有者本人かその相続人など一般承継人に限られ(不動産登記法74条1項1号)、売買で買った人は含まれないからだ。実務のポイント:分譲マンションなどの区分建物だけは74条2項の特則があり、表題部所有者から買った人が直接保存登記できる。マンションでの経験談をそのまま一戸建てに当てはめると、決済当日に止まる
Q2登録免許税が二回分かかるのは、どうやっても避けられませんか?
保存登記と移転登記の二本を打つ以上、原則として避けられない。住宅用家屋であれば軽減税率の適用余地があり(租税特別措置法72条の2、73条、最新の改正状況をご確認ください)、負担そのものは下がる。実務のポイント:本当の分岐点は登記の場面ではなく、建物を建てる請負契約の段階にある。材料の提供者や代金支払の内容によって誰が原始取得者になるかが決まり、そこで最終取得者を表題部所有者にできれば、移転登記が丸ごと不要になる
間違えやすい点 AI による整理
- 「表題部所有者を変更するには、どんな書類が必要か」という問いの立て方そのものが誤っている。32条の答えは書類の種類ではなく、その登記は制度上存在しない、というものだ。探すべきは変更登記の必要書類ではなく、保存登記と移転登記を二段構えで組む段取りである
- 名義を直せないなら誤記も直せないと思われがちだが、そうではない。当初から所有者が違って記録されていた場合は「更正」(不動産登記法33条)として真の所有者が申請できる。塞がれているのは、登記後に所有者が入れ替わった「変更」の道だけだ。変更か更正か、この一語の違いで使える手続が入れ替わる
- マンションを買った知人が「自分は売主から直接保存登記できた」と語ることがある。これは区分建物にだけ認められた特則(不動産登記法74条2項)であって、あなたの一戸建てには使えない。同じ不動産という言葉でも、区分建物とそれ以外では登記の通り道が別物である
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 使う場面 | 32条:登記後に所有者が別人へ入れ替わった(売買等) | 33条:当初から表題部所有者の記録が真の所有者と違う 74条2項:区分建物(分譲マンション)を取得した |
| 申請できる人 | 保存登記は表題部所有者、移転登記は売主と買主の共同申請 | 真の所有者(更正登記の申請適格者) 表題部所有者から所有権を取得した買主が単独で保存登記 |
| 必要な登記の本数 | 2本(所有権保存登記+所有権移転登記) | 1本(表題部所有者の更正登記) 1本(買主名義の所有権保存登記) |
| 登録免許税の負担 | 保存分と移転分の二回分が発生する | 更正登記の定額課税にとどまる 保存登記の一回分のみ |
他国ではどう定めているか 5 か国
台湾も建物について「所有權第一次登記」を経てから移転登記を行う構造で、日本の保存登記+移転登記と実質的に同じ二段構えとなる
韓国も所有権保存登記の申請適格者を表題部の記録名義人やその相続人等に限定しており、買主が直接保存登記をする道は原則として開かれていない
ドイツは処分をする者が先に登記簿に登記されていることを要求する。処分者の先行登記なしに次の権利者を登記できない点で、日本の32条と発想が一致する
フランスの公示制度も、譲渡人の権原が先に公示されていなければ譲受人の公示ができないという相対的効力の原則を採り、権利変動の鎖を切らせない
米国は登記官による審査ではなく、記録の連鎖(chain of title)を title search で遡って検証する方式。連続性を重視する目的は同じだが、実現手段が公的審査ではなく私的調査と権原保険である点が異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、注文住宅が完成した直後に転勤が決まり、一度も住まないまま買主に売ることになったら? 表題部所有者はあなたのまま残っている。買主の名義に直接飛ばす近道はなく、あなた名義の保存登記を先に入れなければならない。引渡し期日まであと3週間、司法書士への依頼の順序を間違えると決済そのものが流れる
- あなたは建売を手掛ける側。買主から「保存登記は要らないので、はじめからうちの名義で入れてほしい」と頼まれた。断るのが正解で、応じれば申請は却下され、決済日に関係者全員が固まる
- 亡くなった父が建てた未登記の作業場。表題部所有者は父の名義のままだ。ここは32条の出番ではなく、相続人であるあなたは自分名義で直接所有権保存登記を入れられる(不動産登記法74条1項1号)。売買で取得した人と相続で取得した人とで、通れる道がまるごと違う
取るべき行動
被害を受けた側:1. 登記事項証明書を取り、表題部所有者が誰になっているかを確認する2. 自分が売買で取得したのなら、直接名義にする道はないと理解し、売主に保存登記へ協力する義務を契約書へ明記させる3. 保存登記と移転登記の登録免許税を試算し、どちらが負担するかを決済前に合意しておく4. 相続で取得したのなら不動産登記法74条1項1号で自分名義に直接保存登記でき、二重の税負担は生じない
訴えられた側:1. 買主から表題部の名義だけ書き換えてくれと頼まれても応じられない。32条を示し、二段構えの手続を説明する2. 自分名義の保存登記を入れることに抵抗があっても、拒めば移転登記自体が組めず、代金を受け取れない3. 保存登記に伴う登録免許税と、その後の譲渡所得の申告時期を税理士に確認しておく4. 当初から誤って自分が表題部所有者になっているのなら、不動産登記法33条の更正登記という別の道が開いている
時効(請求できる期限):32条の手続自体に期限はない。ただし建物を新築したときの表題登記は所有権取得の日から1か月以内が義務で(不動産登記法47条)、怠れば10万円以下の過料の対象となる(同164条)。所有権保存登記そのものに申請義務はないが、登記がなければ第三者に所有権を対抗できない(民法177条)。売買代金請求権など関連する債権には一般の消滅時効(民法166条、5年または10年)が及ぶ
学説
通説:32条の趣旨は、登記簿に権利変動の過程を連続して公示させることにあり、当事者の手続的・費用的便宜よりも第三者に対する公示の信頼性を優先したものと解される。表題部の所有者欄は原始取得者を示す記録であり、以後の権利移転は権利部での保存・移転登記によって表示すべきものとされる。
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年)全部改正 現行不動産登記法は平成16年法律第123号による全部改正で成立し、旧法(明治32年法律第24号)から条文構成が全面的に再編された。本条の個別の改正沿革(新設か旧法規定の承継かを含む)は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 改正:平成16年法律第123号による不動産登記法の全部改正。旧法(明治32年法律第24号)から条文構成が全面的に再編され、オンライン申請制度の導入と併せて条番号が整理された。本条が旧法規定の承継か新設かを含む個別の沿革は人的検証が必要
- 不動産登記法 第2条表題部所有者の定義規定
- 不動産登記法 第31条表題部所有者の氏名住所の変更更正の申請人制限
- 不動産登記法 第33条所有者が当初から異なる場合の更正の登記
- 不動産登記法 第47条新築建物の表題登記義務と起算点
- 不動産登記法 第74条所有権保存登記の申請適格者と区分建物の特則
- 民法 第177条不動産物権変動の対抗要件としての登記
- 登録免許税法 第9条保存登記と移転登記それぞれの課税根拠
- 租税特別措置法 第72条の2住宅用家屋の保存登記の税率軽減
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める