不動産登記法 第80条(地役権の登記の登記事項等)
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- 承役地(民法第二百八十五条第一項に規定する承役地をいう。以下この条において同じ。)についてする地役権の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
- 一要役地(民法第二百八十一条第一項に規定する要役地をいう。以下この条において同じ。)
- 二地役権設定の目的及び範囲
- 三民法第二百八十一条第一項ただし書若しくは第二百八十五条第一項ただし書の別段の定め又は同法第二百八十六条の定めがあるときは、その定め
- 2.前項の登記においては、第五十九条第四号の規定にかかわらず、地役権者の氏名又は名称及び住所を登記することを要しない。
- 3.要役地に所有権の登記がないときは、承役地に地役権の設定の登記をすることができない。
- 4.登記官は、承役地に地役権の設定の登記をしたときは、要役地について、職権で、法務省令で定める事項を登記しなければならない。
この条文の基本情報
地役権の登記の登記事項等とは何ですか?
定義地役権の登記の登記事項等とは、不動産登記法第80条に定められた規定で、「承役地(民法第二百八十五条第一項に規定する承役地をいう。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 不動産登記法第80条(地役権の登記の登記事項等)は、日本の不動産登記法に含まれる条文です。
- 不動産登記法第80条の条文原文は「承役地(民法第二百八十五条第一項に規定する承役地をいう。」で始まります。
- 不動産登記法第80条は第三節 権利に関する登記に置かれています。
- 不動産登記法の公布日は平成16年6月18日です。
- 不動産登記法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 不動産登記法第80条の前の条は不動産登記法第79条です。
- 不動産登記法第80条の次の条は不動産登記法第81条です。
- 不動産登記法第80条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第80条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 - 本サイト収録
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第80条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/416AC0000000123/80
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点不動産登記法80条は、承役地の地役権登記の登記事項として要役地・目的・範囲を定め、地役権者の氏名住所は登記不要とする。要役地に所有権の登記がなければ設定登記はできない。
Q · 地役権を登記するとき、なぜ権利者の名前が登記簿に載らないのですか?
地役権者の名前は登記されない。権利は土地に付くからだ
不動産登記法80条2項は、同法59条4号にかかわらず、地役権者の氏名又は名称及び住所を登記することを要しないと定めます。地役権は要役地に付従して移転する権利(民法281条1項)であり、要役地の所有者が誰であるかは要役地の所有権登記で公示されるためです。したがって要役地を売却しても地役権の移転登記は不要です。代わりに80条1項は要役地、地役権設定の目的及び範囲、別段の定めを登記事項とし、「どの土地のための、どういう内容の権利か」を特定させています。
解説
隣の土地を通らないと自分の家の車庫に入れない、水道管を隣地の地下に通している、隣地に建物を建てられると自分の家の日照が消える。こうした「他人の土地を自分の土地のために使う権利」が地役権であり、不動産登記法80条はその登記の設計図を定めている。ここであなたが握るべき事実は二つある。第一に、地役権の登記には「誰が権利者か」を書かない(2項)。地役権は人ではなく土地(要役地)にくっついた権利だからで、要役地を売れば地役権も自動的に買主へ移り、名義変更の登記も要らない。第二に、承役地(使われる側)に地役権の登記が入ると、登記官が職権で要役地の登記記録にもその旨を書き込む(4項)。つまり、あなたが土地を買うとき承役地側の登記簿だけ見ても足りないし、逆に要役地側を見れば「この土地には他人の土地を使う権利が付いてくる」ことが読み取れる。目に見えない通行権や眺望確保の約束が、登記簿の中で土地に縫い付けられている。
法的な位置づけ
不動産登記法80条は、承役地についてする地役権の登記の登記事項を定める規定である。同法59条各号の一般的登記事項に加え、要役地、地役権設定の目的及び範囲、民法281条1項ただし書等の別段の定めを登記事項とし、地役権者の氏名又は名称及び住所の登記は要しない。あわせて要役地への職権登記および設定登記の前提要件も規律する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.要役地・承役地の登記事項証明書を取得して前提を確認 法務局またはオンライン(登記情報提供サービス)で両方の登記事項証明書を取得し、要役地に所有権の登記があるか、承役地に既存の担保権や他の地役権がないかを確認する。要役地に所有権の登記がなければ80条3項により設定登記は却下される
- 2.要役地の所有権保存登記・相続登記を先行させる 表題登記だけで所有権保存登記が未了、または相続で名義が古いままの場合、先に所有権に関する登記を完了させる。相続が数世代放置されていると戸籍収集だけで数か月かかるため、地役権交渉と並行して着手する
- 3.地役権設定契約で「目的及び範囲」を数値まで特定する 80条1項2号の登記事項になるため、「通行のため」で止めず「幅3メートル、自動車の通行を含む、承役地のうち別紙図面の斜線部分」まで書き込む。民法281条1項ただし書・285条1項ただし書・286条の別段の定めを置くならこの段階で合意する
- 4.承役地の所有者と共同で地役権設定登記を申請 承役地所有者を登記義務者、要役地所有者を登記権利者として法務局に共同申請する(不動産登記法60条)。登録免許税は承役地の不動産1個につき1,500円が基本。承役地に抵当権があるときは抵当権者の承諾の要否も検討する
- 5.完了後、要役地側の職権記載(4項)を目視で確認 登記完了後に要役地の登記事項証明書を一通取得し、80条4項の職権登記が実際に記録されているか、承役地の地番や目的の記載に誤りがないかを確認する。記載漏れ・誤記があれば登記官に更正を申し出る。ここを省くと将来の売買で買主から地役権の存在を否認される
よくある質問 AI による整理
Q1地役権とは何ですか?
自分の土地(要役地)の便益のために他人の土地(承役地)を利用する物権です。民法280条が内容を定め、通行・引水・眺望確保・建築制限などを目的にできます。
Q2地役権の登記事項には何が含まれますか?
不動産登記法59条各号の一般事項に加え、要役地、地役権設定の目的及び範囲、民法281条1項ただし書などの別段の定めです(80条1項)。地役権者の氏名住所は含みません。
Q3地役権の設定登記はどうやって申請しますか?
承役地の所有者を登記義務者、要役地の所有者を登記権利者として共同申請します(不動産登記法60条)。要役地に所有権の登記があることが前提です(80条3項)。
Q4地役権の登記費用はいくらかかりますか?
登録免許税は承役地の不動産1個につき1,500円が基本で、別途、司法書士報酬と登記事項証明書の取得費用がかかります。承役地が複数筆なら筆数分が積み上がります。
Q5地役権を抹消するにはどうすればいいですか?
地役権の消滅(放棄・合意解除・目的の消滅・時効)を原因として、承役地の所有者と要役地の所有者が共同で抹消登記を申請します。争いがあれば訴訟で確認してから単独申請します。
Q6地役権は時効で取得できますか?
継続的に行使され、かつ外形上認識できる地役権に限り時効取得できます(民法283条)。通行地役権では要役地所有者自身による通路の開設が要求されるのが実務の理解です。
Q7要役地を売ったら地役権はどうなりますか?
地役権は要役地に付従して当然に買主へ移転します(民法281条1項)。地役権者の氏名が登記されていないため(80条2項)、移転登記の申請も費用も発生しません。
Q8地役権の登記があるか調べる方法は?
承役地の登記事項証明書の乙区で地役権設定登記を確認し、あわせて要役地の登記事項証明書で80条4項の職権記載を確認します。片側だけでは全体像を把握できません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1地役権って、隣の人と仲がいいうちは口約束でもいいんじゃないですか?
口約束でも当事者間では有効だが、隣地が売られた瞬間に新所有者へは主張できない。登記して初めて第三者に対抗できる(民法177条)。80条1項が要役地・目的・範囲を登記事項とするのはそのためだ。実務のポイント:不動産業者は承役地側の登記簿だけを重要事項説明に添えることが多い。要役地側の職権記載(4項)まで確認する買主はごく少数で、そこに未開示の負担が眠っていることがある。
Q2地役権の登記に自分の名前が載らないと、権利を持っている証明ができないのでは?
証明は要役地の所有権登記が担う。要役地の所有者であることを示せば、その時点で地役権者だと示せる仕組みで、だからこそ80条2項は地役権者の氏名・住所の登記を不要とした。要役地を売っても地役権の移転登記は要らない。実務のポイント:この随伴性ゆえに、要役地を分筆・売却する場面で地役権の帰属が争点になりやすい。分筆時に地役権をどの筆に残すか、民法282条2項の扱いも含めて司法書士と事前に詰めるかどうかで、後の紛争率が変わる。
Q3要役地に所有権の登記がないと地役権を設定できないって、どういう状況ですか?
建物を建てたばかりの土地や相続で放置された土地は、表題登記だけで所有権保存登記が未了のことがある。この状態では80条3項により承役地への地役権設定登記ができない。まず要役地の所有権保存登記が先だ。実務のポイント:相続で数世代放置された土地は、所有権保存の前提として相続登記が必要になり、着手から完了まで数か月かかる。地役権の設定交渉がまとまっているのに登記できず、その間に隣地が売られて話が振り出しに戻る、という事故が実際に起きる。
Q4承役地に地役権を登記したら、自分(要役地側)でも何か登記の申請をしないといけませんか?
不要である。80条4項により、登記官が職権で要役地の登記記録に法務省令で定める事項を記録する。申請人が別途申請する必要はなく、費用も発生しない。実務のポイント:この職権記載は自動だが、要役地側の登記記録を後から取得して記載を実際に確認する人は少ない。記録漏れや地番の誤記が残っていると、将来の売買で買主側から「地役権の存在が確認できない」と指摘される。設定完了後に要役地の登記事項証明書を一通取って目視確認するだけで防げる。
間違えやすい点 AI による整理
- 「地役権も他の権利と同じで、誰の権利かを登記するはずだ」と思い込んでいる人が多いが、80条2項はそれを明確に不要としている。ここで問うべきは「誰の権利か」ではなく「どの土地のための権利か」であり、質問の立て方そのものがずれている。地役権者は要役地の所有者が誰であれ、その時点の所有者が自動的に権利者になる。
- 地役権が登記されていることは知っていても、その効果の射程を過小評価している人が多い。登記された地役権は承役地が売却されても、競売にかけられても、新しい所有者に対抗できる。あなたが承役地を買う側なら、その負担は代金を払った瞬間から自分のものだ。土地の価格査定に反映させなかった分は、丸ごと損として自分に降りかかる。
- 「登記簿に何も書いていなければ、その土地は自由に使える」と考えるのは危うい。承役地の登記簿を見ても、要役地側の職権記載(4項)を見落とせば地役権の全体像は掴めない。あなたから見れば「きれいな土地」でも、法律から見れば「他人の通行に開かれた土地」であることがある。この落差が、購入後の紛争の温床になる。
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律する内容 | 不登法80条:承役地の地役権登記に固有の登記事項(要役地・目的・範囲・別段の定め) | 不登法59条:権利に関する登記に共通の一般的登記事項 不登法3条:地役権を含む「登記できる権利」の列挙 |
| 権利者の氏名住所 | 登記不要(80条2項、59条4号の特則) | 登記事項として原則必要(59条4号) 規定なし(登記可能な権利の種類のみを定める) |
| 登記の前提要件 | 要役地に所有権の登記があること(80条3項) | 特段の前提要件なし 特段の前提要件なし |
| 職権登記の有無 | 登記官が要役地に職権登記する義務あり(80条4項) | 職権登記の一般規定ではない 職権登記の規定なし |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は2010年改正で「地役権」を「不動産役権」に改め、対象を土地に限らず建物等にも広げた。登記実務では需役不動産の表示と役権の目的・範囲を登記事項とし、需役不動産側にも註記する点で日本80条4項と同型。
韓国も承役地の登記記録に要役地・目的・範囲を記録し、地役権者の氏名は要求しない構造を採る。要役地側への記載も制度化されており、日本法の強い影響が残る。
ドイツは登記に創設的効力(構成要件的効力)を認めるため、登記なくして地役権は成立しない。要役地の登記簿への Herrschvermerk(支配の付記)が予定されており、日本80条4項の職権登記と機能的に対応する。
米国は easement appurtenant が土地に随伴する点で日本の地役権と同じだが、公示は州ごとの Recording Act に依拠し、登記官が要役地側に職権で記載する制度は一般に存在しない。実務では title search と title insurance が機能を代替する。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 中古住宅を内見して気に入った。前の持ち主が「お隣さんとは仲がいいので、この私道は自由に通っていい約束です」と言う。だが登記簿の甲区・乙区に地役権の記載がなければ、その約束は隣地が売られた瞬間に消えかねない。80条が定めるとおり地役権を承役地に登記してあるか、そして要役地側に職権記載(4項)があるか、この二点を売買契約の前に確認するかどうかで、あなたの家は数年後に袋地になる。
- あなたが土地を売る側で、買主から「隣地を通行する権利も一緒に付けてほしい」と言われた。ここで慌てて地役権者としてあなたの名前を登記しようとしても、2項がそれを不要としている。名前を書かないのは手抜きではなく、権利が土地に付くという地役権の本質そのものだ。
- 駐車場用地を法人名義で購入し、隣地に地役権を設定しようとしたら司法書士から「要役地に所有権の登記がないので、このままでは地役権設定登記はできません」と言われた。3項の壁である。表題登記だけで所有権保存登記をしていない土地は、地役権の受け皿になれない。まず所有権保存登記から。
- もし、あなたが買った土地の登記簿に「要役地 ○○番」とだけ書かれた記載を見つけたら、それは何を意味するか。4項の職権登記であり、あなたの土地は誰かの土地を使う権利を持っている側だという印だ。使える権利があるのに気付かず、わざわざ遠回りの通路を作る所有者は珍しくない。
- 隣地の所有者から「地役権は消滅したので抹消してほしい」と内容証明が届いた。あと14日で回答期限。地役権設定の目的と範囲(1項2号)が登記簿にどう書かれているかで、消滅したか否かの判断が変わる。範囲が「通行のため幅2メートル」と特定されているか、曖昧なままかで、あなたの防御線の高さが決まる。
取るべき行動
被害を受けた側:1. 通行や導管設置を隣地所有者から拒まれたら、まず登記事項証明書で地役権の登記があるか確認、あれば1項2号の「目的及び範囲」の文言を精読する2. 登記がなければ設定契約書・覚書・過去の使用実績(写真、公共料金の請求書、Google ストリートビューの過去画像)を証拠として保全3. 登記がある場合は妨害排除請求(民法285条以下の地役権に基づく請求)を検討、内容証明で登記の存在と範囲を明示4. 未登記なら時効取得(民法283条、継続的かつ表現の地役権のみ)の要件を満たすか確認
訴えられた側:1. あなたの土地が承役地だと主張されたら、登記簿の乙区に地役権の登記が現に存在するか確認、なければ第三者としての対抗力の問題を検討2. 登記があっても「目的及び範囲」を超える使用は拒否できる、範囲外であることを具体的に指摘3. 地役権の消滅(承役地の時効取得、放棄、目的の消滅)を主張できるか検討4. 争いが長期化する見込みなら、地役権の内容を明確化する合意を結び直し、変更登記で範囲を確定させる方が将来コストは低い
時効(請求できる期限):地役権の登記自体に申請期限はないが、登記しないうちに承役地が第三者に売られると対抗できなくなる(民法177条)。地役権に基づく妨害排除請求権について特定の時効はないが、地役権自体は20年間行使しないと消滅時効にかかる(民法291条、166条2項。起算点は継続的でない地役権は最後の行使時、継続的地役権はその行使を妨げる事実が生じた時、民法291条)
学説
通説:80条2項が地役権者の氏名住所を登記事項から外したのは、民法281条1項の随伴性の当然の帰結であり、要役地の所有権登記が地役権者の公示を代替すると解する。登記記録の肥大化と、要役地移転のたびの変更登記を回避する立法技術と位置づけられる。
通説:80条1項2号の「目的及び範囲」は地役権の内容を第三者に対して特定する中核的登記事項であり、記載が抽象的にとどまる場合、承役地の譲受人に対して主張できる範囲も登記の文言に制約されると解されている。
実務上の理解:80条4項の職権登記は要役地側の公示の穴を塞ぐ制度だが、記録の誤記・脱漏が皆無ではなく、設定登記完了後に要役地の登記事項証明書で内容を確認すべきとされる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.明治32年(1899年) 新設:旧不動産登記法(明治32年法律第24号)の制定により、民法280条以下の地役権を公示するための登記手続が整備された。地役権者の氏名を登記しない扱いはこの段階から採られている。
- 2.平成16年(2004年) 改正:不動産登記法の全部改正(平成16年法律第123号)。オンライン申請と登記識別情報の導入を含む全面的な再編に伴い、地役権の登記事項に関する規律が現行80条として整理された。
- 不動産登記法 第59条権利に関する登記の一般的登記事項、本条はその特則
- 不動産登記法 第3条地役権を登記できる権利として列挙
- 不動産登記法 第60条共同申請主義、地役権設定登記の申請構造
- 不動産登記法 第63条判決による登記、地役権確認訴訟後の単独申請
- 民法 第280条地役権の内容と設定目的の限界を定める実体法
- 民法 第281条地役権の随伴性、2項で氏名登記を不要とする根拠
- 民法 第177条登記なくして第三者に対抗できない原則
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