刑事訴訟法 第329条
クイックジャンプ
被告事件が裁判所の管轄に属しないときは、判決で管轄違の言渡をしなければならない。但し、第二百六十六条第二号の規定により地方裁判所の審判に付された事件については、管轄違の言渡をすることはできない。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第329条は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第329条の条文原文は「被告事件が裁判所の管轄に属しないときは、判決で管轄違の言渡をしなければならない。但し、第二百六十六条第二号の規定により地方裁判所の審判に付された事件については、…」で始まります。
- 刑事訴訟法第329条は第五節 公判の裁判に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第329条の前の条は刑事訴訟法第328条です。
- 刑事訴訟法第329条の次の条は刑事訴訟法第330条です。
- 刑事訴訟法第329条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第329条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第329条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/329
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法329条は、被告事件が裁判所の管轄に属しないとき判決で管轄違を言い渡すと定める。無罪とは異なる形式裁判で、付審判事件には適用されない。
Q · 管轄違いの判決が出たら、その事件は終わりですか?
終わりません。無罪ではなく正しい裁判所でやり直しです
刑事訴訟法329条の管轄違は、事件の中身を一切判断しない形式裁判です。無罪でも免訴でもなく、検察官は管轄を持つ正しい裁判所に起訴し直せます。特に注意すべきは土地管轄違いで、証拠調べが始まる前に申し立てないと治癒され、二度と争えなくなります(331条)。一方、事物管轄違い(簡裁で重罪を審理等)は職権調査の対象で、控訴審でも主張できます(378条1号)。
解説
あなたが東京で起きた事件で、なぜか縁もゆかりもない遠隔地の裁判所に起訴されたとする。違和感を覚えるはずだ。刑訴法329条は、被告事件がその裁判所の管轄に属さないとき、裁判所は判決で「管轄違」を言い渡さなければならないと定める。ここで多くの人が誤解する。管轄違は無罪ではない。事件の中身を一切判断せず、「この裁判所では扱えない」とだけ告げる形式裁判だ。検察官は管轄を持つ正しい裁判所に起訴し直せる。さらに落とし穴がある。管轄には二種類あり、事物管轄(地裁か簡裁か)は裁判所が職権でいつでも調べるが、土地管轄(どの地域の裁判所か)は、あなたが証拠調べの始まる前に申し立てないと、その後は治癒されて二度と争えなくなる(331条)。但書はもう一つの世界を語る。公務員の職権濫用などを検察が不起訴にし、付審判(266条2号)で強制的に審理に付された事件では、管轄違を言い渡せない。権力者を必ず裁判の土俵に乗せるための、例外の扉が開いている。
法的な位置づけ
刑事訴訟法329条は管轄違の判決を定める規定であり、被告事件が当該裁判所の管轄に属しない場合に、裁判所が判決で管轄違を言い渡す義務を課す。これは事件の実体を判断しない形式裁判であって、無罪判決とは性質を異にする。ただし付審判決定により地方裁判所の審判に付された事件は、この例外とされる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.起訴状で管轄裁判所を真っ先に確認 起訴状を受け取ったら、罪名と同時にどの裁判所に起訴されたかを確認する。事件と無関係な遠隔地、または罪の重さに不釣り合いな裁判所であれば管轄違いを疑う
- 2.土地管轄違いか事物管轄違いかを見極める どの地域の裁判所かが問題なら土地管轄違い、地裁か簡裁かという裁判所の種類が問題なら事物管轄違い。時期制限の有無が異なるため、まず種類を弁護人と特定する
- 3.土地管轄違いは証拠調べ開始前に申し立てる 土地管轄違いは第一回公判で証拠調べが始まる前に申し立てる(331条)。冒頭手続の段階で出せば有効、書証の取調べや証人尋問が一度でも始まれば失効する
- 4.事物管轄違いは控訴審でも主張する 事物管轄の誤りには時期制限がなく職権調査の対象。第一審で見落としても、絶対的控訴理由として原判決の破棄を求める(378条1号)
よくある質問 AI による整理
Q1管轄違の判決とは何ですか?
被告事件がその裁判所の管轄に属しないとき、判決で「この裁判所では扱えない」と告げる形式裁判です。事件の中身は判断されず、検察官は正しい裁判所に起訴し直せます(刑訴329条)。
Q2管轄違いは無罪と何が違うのですか?
無罪は事件の中身を判断した実体裁判で一事不再理効が働きますが、管轄違は中身を一切判断しない形式裁判で、正しい裁判所での再起訴が可能です。
Q3土地管轄違いはいつまでに主張できますか?
被告事件について証拠調べを開始する前までです(331条)。第一回公判で何も言わず証拠調べに入ると治癒され、その後は争えなくなります。
Q4事物管轄と土地管轄の違いは何ですか?
事物管轄は地裁か簡裁かという裁判所の種類の問題で職権調査の対象、土地管轄はどの地域の裁判所かという問題で当事者の申立てが必要です。
Q5付審判事件で管轄違いを主張できますか?
できません。266条2号で地裁の審判に付された事件には、329条但書により管轄違の言渡ができません。権力犯罪の不処罰を防ぐ仕組みです。
Q6簡易裁判所で重い罪を裁かれたらどうなりますか?
事物管轄の誤りであり、時期制限なく管轄違を求められます。控訴審で初めて気づいても、絶対的控訴理由として原判決を破棄できます(378条1号)。
Q7管轄違いの判決に二重処罰の禁止は働きますか?
働きません。一事不再理効は実体裁判に生じるもので、形式裁判である管轄違には及びません。正しい裁判所で最初からやり直しになります。
Q8控訴審で管轄違いを主張できますか?
事物管轄の誤りは絶対的控訴理由として控訴審でも主張できます(378条1号)。土地管轄違いは証拠調べ開始前に主張しないと治癒され控訴審では争えません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1「管轄違い」って、結局は無罪放免ってことですよね?
違います。管轄違いの判決(329条)は事件の中身を一切判断しない形式裁判で、無罪とも免訴とも別物です。検察官は管轄を持つ正しい裁判所に起訴し直せます。実務のポイント:管轄違の判決には一事不再理効(二重処罰の禁止)が働きません。無罪判決なら同じ事件で再び裁かれませんが、管轄違いは『場所が違うだけ』なので、正しい裁判所で最初からやり直しになる。喜ぶのは早い
Q2起訴された裁判所が遠くて不便なんですが、変えてもらえますか?
土地管轄違いなら329条で管轄違いを求められますが、犯罪地・被告人住所地などの管轄ルール(2条)に合致していれば、単に『遠い・不便』では変わりません。別途、管轄移転の請求(17条以下)という制度はあります。実務のポイント:土地管轄違いの申立てには証拠調べ開始前という締切があり(331条)、これを逃すと自動的に治癒されます。弁護人が第一回公判で何も言わず証拠調べに入った瞬間、この権利は静かに消える。最初の公判前に必ず確認を
間違えやすい点 AI による整理
- 「管轄違いの判決が出れば、その事件から解放される」と思われているが、管轄違は無罪でも免訴でもない。事件の中身は何も判断されておらず、検察官は管轄を持つ正しい裁判所に起訴し直せる。あなたが勝ったのは『場所』であって『勝負』ではない
- 土地管轄の誤りを主張できることは知られているが、その『期限の短さ』を知る人は少ない。証拠調べが始まる前という一点を過ぎれば、たとえ明白な管轄違いでも治癒され、二度と争えなくなる(331条)。知っているだけでは足りず、タイミングを逃せば知識の価値はゼロになる
- 「管轄が違えば裁判所が勝手に正してくれる」という前提が、土地管轄では崩れる。事物管轄は職権調査だが、土地管轄はあなたが申し立てて初めて動く。裁判所はあなたの不利益を進んで救ってくれるわけではない、という構造を知らないと、問いの立て方そのものを間違える
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象 | 土地管轄違い(329条・331条):どの地域の裁判所か | 事物管轄違い(329条・378条):地裁か簡裁か 付審判事件の例外(329条但書・266条) |
| 調査の契機 | 当事者の申立てが必要 | 裁判所の職権調査 管轄違の言渡そのものが不可 |
| 時期制限 | 証拠調べ開始前まで、その後は治癒(331条) | 時期制限なし、控訴審でも主張可(378条1号) —(適用なし) |
| 効果 | 管轄違の判決、正しい裁判所へ移して再起訴 | 絶対的控訴理由として原判決破棄 管轄違を言い渡せず審理を継続 |
他国ではどう定めているか 4 か国
案件が当該裁判所の管轄に属さないとき管轄錯誤の判決を言い渡す点で日本と同趣旨。形式裁判である点も共通する。
管轄に属しない場合に管轄違反の判決を言い渡す。実体判断をしない形式裁判である点で日本329条と平行する。
土地管轄(§ 16)は被告人の抗弁により審理開始前に判断され、事物管轄(§ 6)は職権で随時調査される。日本の土地管轄・事物管轄の扱いの差と構造が近い。
管轄や裁判地(venue)の抗弁は公判前の申立てで処理され、欠缺があれば却下される。形式的瑕疵と実体判断を区別する発想は共通する。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、あなたが起訴された裁判所が、事件とまったく関係のない遠隔地だったら? 土地管轄違いを主張できる。ただし証拠調べが始まる前に申し立てる必要がある。最初の公判で黙ったまま証拠調べに入ると、その後は治癒されて争えなくなる(331条)。
- 第一回公判まであと5日。弁護人が管轄を見落としているなら、土地管轄違いの申立てを今すぐ準備させること。証拠調べに入った瞬間、この武器は静かに消える。
- 簡易裁判所で審理されている事件が、実は地方裁判所でしか扱えない重い罪だった。事物管轄の誤りは職権調査の対象で、時期制限なく管轄違の判決を求められる。控訴審で初めて気づいても、管轄を誤認した原判決を破棄できる(378条1号)。
- あなたが公務員の暴行を告発し、検察が不起訴にした。付審判請求が認められ、事件は地裁の審理に付される。ここでは被告となった公務員側が「管轄違いだ」と主張しても通らない。但書がその逃げ道を塞いでいる。
取るべき行動
被害を受けた側:1. 公務員犯罪などを告訴・告発し検察が不起訴にしたら、検察審査会への申立てと並行して、職権濫用罪等は付審判請求(266条以下)を検討2. 付審判が認められれば事件は地裁の審理に付され、被告側は管轄違いで逃げられない(329条但書) 3. 通常事件で被告が土地管轄違いを主張しても、それは中身の無罪ではない。正しい裁判所で審理が続くだけで、あなたの被害回復の道は閉じないと理解しておく(最新の手続をご確認ください)
訴えられた側:1. 起訴状を受け取ったら、罪名と同時に管轄裁判所を確認。事件と無関係な遠隔地、または罪の重さに不釣り合いな裁判所なら管轄違いを疑う2. 土地管轄違いは、第一回公判で証拠調べが始まる前に申し立てる(331条)。この期限を逃すと治癒される3. 事物管轄違い(簡裁で重罪を審理等)は時期制限なく、控訴審でも主張可(378条1号) 4. 弁護人選任後、最初の打合せで真っ先に管轄の点検を依頼する
時効(請求できる期限):土地管轄違いの申立ては、被告事件につき証拠調べを開始した後はできない(刑訴法331条)。起算点は第一回公判の冒頭手続を終え、証拠調べ手続に入る瞬間。事物管轄違いには時期制限がなく、職権調査の対象で控訴審でも主張できる(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:管轄違の判決は事件の実体に立ち入らない形式裁判であり、無罪・免訴のような実体裁判と異なり一事不再理効を生じない。事物管轄は職権調査事項、土地管轄は当事者の申立てを要し証拠調べ開始により治癒されると解される。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和23年(1948年) 新設:現行刑事訴訟法(法律第131号)制定。旧刑事訴訟法(大正11年)からの全面改正で当事者主義を導入し、管轄違の判決を329条に規定。付審判事件を例外とする但書を併せて置いた。
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める