刑事訴訟法 第350条の12
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- 前条の場合には、当該議決に係る事件について公訴が提起されたときにおいても、被告人が第三百五十条の四の協議においてした供述及び当該合意に基づいてした被告人の行為により得られた証拠並びにこれらに基づいて得られた証拠は、当該被告人の刑事事件において、これらを証拠とすることができない。
- 2.前項の規定は、次に掲げる場合には、これを適用しない。
- 一前条に規定する議決の前に被告人がした行為が、当該合意に違反するものであつたことが明らかになり、又は第三百五十条の十第一項第三号イ若しくはロに掲げる事由に該当することとなつたとき。
- 二被告人が当該合意に基づくものとしてした行為又は当該協議においてした行為が第三百五十条の十五第一項の罪、刑法第百三条、第百四条、第百六十九条若しくは第百七十二条の罪又は組織的犯罪処罰法第七条第一項第一号若しくは第二号に掲げる者に係る同条の罪に当たる場合において、これらの罪に係る事件において用いるとき。
- 三証拠とすることについて被告人に異議がないとき。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第350条の12は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第350条の12の条文原文は「前条の場合には、当該議決に係る事件について公訴が提起されたときにおいても、被告人が第三百五十条の四の協議においてした供述及び当該合意に基づいてした被告人の行為に…」で始まります。
- 刑事訴訟法第350条の12は第三節 合意の終了に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第350条の12の前の条は刑事訴訟法第350条の11です。
- 刑事訴訟法第350条の12の次の条は刑事訴訟法第350条の13です。
- 刑事訴訟法第350条の12には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第350条の12 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第350条の12(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/350_12
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法350条の12は、検察審査会の議決で合意に反して起訴されても、協議でした供述・合意に基づき得た証拠・その派生証拠を、被告人自身の事件では証拠にできないと定める。
Q · 司法取引で全部しゃべった後に起訴されたら、その供述は証拠に使われちゃうの?
原則は使えません。協議での供述も派生証拠も排除されます
刑事訴訟法350条の12第1項により、検察審査会の議決で合意に反して起訴された場合でも、協議でした供述、合意に基づく行為で得られた証拠、そしてそれらから派生した証拠は、被告人自身の刑事事件で証拠とすることができません。ただし第2項に三つの例外があります。合意違反が明らかになったとき、協議や合意に基づく行為が偽証罪・虚偽告訴罪などの罪に当たるとき、そして証拠とすることに被告人が異議を述べないときです。守られるのは「あなた自身の事件」だけで、あなたが名指しした他人の事件では証拠になります。
解説
日本にも司法取引がある。2018年6月から動いている協議・合意制度がそれだ。あなたが自分の罪を軽くしてもらう代わりに、検察官へ他人の犯罪の証拠や供述を差し出す。検察官は見返りに「あなたは起訴しない」と約束する。ここまでは取引だ。問題はその先にある。検察官の不起訴判断は、市民6人で構成する検察審査会がひっくり返せる。審査会が「起訴すべきだ」と議決すれば約束は崩れ、あなたは起訴される。その瞬間、あなたが協議の場でしゃべった全て、差し出した証拠、そこから芋づる式に集まった証拠が、今度はあなた自身を有罪にする刃に変わりかねない。350条の12は、その刃を封じる。協議でした供述も、合意に基づく行為で得た証拠も、それらから派生した証拠も、あなたの刑事事件では証拠にできない。ただし、この盾には三つの穴が開いている。
法的な位置づけ
刑事訴訟法第350条の12は、協議・合意制度における証拠使用の制限を定める規定である。検察審査会の議決により合意に反して公訴が提起された場合、協議でなされた供述、合意に基づく行為により得られた証拠、及びこれらに由来する派生証拠は、当該被告人自身の刑事事件において証拠能力を否定される。第2項が合意違反・偽証類の罪・本人同意の三例外を規定する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.排除対象となる供述・証拠をリスト化する 合意に基づき起訴された場合、まず弁護人と、協議でした供述、合意に基づき提出した証拠、そこから派生した証拠を漏れなく洗い出して一覧化する。何が350条の12第1項の保護対象かを確定させる
- 2.証拠調べ段階で証拠排除を明確に主張する 証拠調べの段階で、リスト化した供述・証拠が350条の12第1項により証拠能力を欠くことを明確に主張する。曖昧な対応で「異議なし」と扱われないよう、証拠意見は弁護人に一本化する
- 3.三つの例外に該当しないか自己点検する 350条の12第2項の三例外(合意違反、偽証類の罪、本人の異議なし)に自分が当たらないかを点検する。とりわけ協議で話を盛っていなかったかを確認し、保護が外れるリスクを潰す
- 4.異議を述べる時機を逃さない 第2項3号は「被告人に異議がないとき」を例外とするため、証拠調べで異議を述べる時機を逃すと保護が実質的に失われる。期日のスケジュールを管理し、適時に異議を述べる
よくある質問 AI による整理
Q1協議・合意制度とは何ですか?
被疑者・被告人が他人の犯罪の証拠を提供する見返りに、検察官が不起訴や軽い求刑を約束する日本版の捜査・公判協力型司法取引です。2018年6月から施行されています。
Q2日本の司法取引はいつから始まりましたか?
平成28年(2016年)改正で導入され、平成30年(2018年)6月1日から施行されました。対象は財政経済犯罪と薬物銃器犯罪などに限定されています。
Q3検察審査会とは何ですか?
選挙人名簿から選ばれた市民11人で構成され、検察官の不起訴処分の当否を審査する機関です。起訴相当の議決が一定要件を満たすと強制起訴に至ります。
Q4司法取引の不起訴は覆ることがありますか?
あります。検察官の不起訴判断は検察審査会の議決で覆る場合があり、合意に反して起訴され得ます。その場面に備えた安全網が350条の12です。
Q5司法取引で集めた派生証拠も排除されますか?
原則として排除されます。350条の12第1項は供述や合意に基づく証拠だけでなく、それらから芋づる式に得られた派生証拠も被告人の事件で証拠にできないとします。
Q6協力者の供述は他人の裁判で使えますか?
使えます。350条の12が排除するのは協力者「自身」の事件だけです。協力者が名指しした他人の事件では、その供述は証拠として使用されます。
Q7司法取引で嘘をつくとどうなりますか?
350条の12第2項2号で証拠排除の保護が外れ、虚偽供述が350条の15や偽証罪・虚偽告訴罪の証拠になります。罪が軽くなるどころか上乗せされます。
Q8350条の12の証拠排除に例外はありますか?
三つあります。合意違反が明らかになったとき、協議や合意に基づく行為が偽証類の罪に当たるとき、証拠とすることに被告人が異議を述べないときです。
この条文についての質問 AI による整理
Q1司法取引で約束をもらったのに起訴されたら、しゃべったことは全部使われちゃうんですか?
原則は逆です。350条の12第1項で、協議でした供述も合意に基づく行為で得た証拠も、それらから派生した証拠も、あなた自身の刑事事件では証拠にできません。検察審査会の議決で起訴された場合の安全網です。実務のポイント:ただし守られるのは「あなたの事件」だけ。あなたが名指しした他人の事件では、あなたの供述は普通に証拠になります。協力すれば自分は守られ他人を売る、というこの非対称こそが制度の本質です
Q2協力するときに、ちょっとくらい話を盛っても大丈夫ですよね?
致命傷になります。協議でした行為が350条の15の虚偽供述等の罪や、刑法の偽証罪・虚偽告訴罪に当たると、350条の12第2項2号で証拠排除の保護が外れ、その嘘自体が新たな犯罪の証拠になります。実務のポイント:司法取引で一番怖いのは相手ではなく「半分だけ正直」な自分です。盛った一言で、軽くしてもらうはずの罪に偽証罪が上乗せされる。弁護人が協力の前に口を酸っぱくして念を押すのは、まさにこの一点です
間違えやすい点 AI による整理
- 「司法取引で不起訴の約束をもらえば、もう絶対に起訴されない」という前提そのものが誤っている。検察官の不起訴判断は検察審査会が覆せる。350条の12が存在する理由がまさにこれで、「約束が崩れる場面」を法律自身があらかじめ想定している
- 盾があること自体は知っていても、その盾に三つの穴が開いていることまで知る人は少ない。とりわけ、協議でした行為が偽証罪や虚偽告訴罪に当たる場合は保護されない。嘘をついた瞬間、保護が外れるどころか、その嘘自体が新たな罪の証拠として完成する
- この排除はしゃべった供述を全部消してくれると思われがちだが、守られるのは「あなた自身の刑事事件」での使用だけだ。あなたが名指しした他人の事件では、あなたの供述は堂々と証拠に使われる。あなたから見れば取引、他人から見れば密告の証拠、この落差を見落とすと協力の意味を読み違える
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 350条の12:協議での供述・合意に基づく証拠・派生証拠の排除 | 350条の15:協議・合意過程の虚偽供述等を罰する罪 319条:自白の証拠能力(一般原則) |
| 保護か制裁か | 協力者を保護する証拠排除規定 | 虚偽供述者を処罰する制裁規定 任意性のない自白を排除する保護規定 |
| 適用の前提 | 検察審査会の議決による合意違反の起訴(350条の11) | 協議・合意過程での虚偽供述・証拠偽造 強制・拷問・脅迫等による自白 |
| 保護が外れる場面 | 合意違反・偽証類の罪・本人の異議なし(2項) | —(処罰規定のため該当なし) 任意性が認められる場合は証拠能力あり |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾の認罪協商制度では、協商が不成立に終わった場合の被告の陳述を被告に不利な証拠とできない旨を定め、日本の協力者保護と同趣旨の証拠排除を採る
中国の認罪認罰従寛制度は、被疑者・被告人の認罪を量刑上有利に扱う制度で、他人の犯罪への協力を軸とする日本の制度とは射程が異なる
ドイツは公判での訴訟上の合意(Verständigung)を認めるが、米日型の捜査協力型司法取引とは構造が異なり、証拠排除の枠組みも別個
米国は plea bargaining が刑事手続の中核で、FRE 410が plea discussions での陳述を後の手続で証拠にできないとする。日本の350条の12のモデル的存在
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたは詐欺グループの末端だった。主犯の証拠を差し出す代わりに不起訴の合意を取り付け、協議で洗いざらい話した。ところが半年後、検察審査会が「起訴相当」と議決。残された時間はわずか、あなたの弁護人がまず動くのは、あの協議でした供述を証拠から外す主張を組むことだ。ここで一手遅れると、有利な取引のはずが最悪のカードに化ける
- もし、合意した後に「やっぱり都合が悪い」と嘘の供述を混ぜていたら? その瞬間、350条の12の盾は外れる。合意違反や350条の10の離脱事由に当たれば、あなたが話した内容はそのまま証拠になりうる。司法取引で一番危ういのは、半分だけ正直になることだ
- あなたは協力者の供述で名指しされた「他人」の側だ。その供述があなたの公判で武器として使われる。相手が何を見返りに話したのか、合意内容の開示を求めることが反撃の起点になる
取るべき行動
被害を受けた側:あなたが合意した協力者で、検察審査会の議決により起訴された場合。1. まず弁護人と、協議でした供述・合意に基づき提出した証拠・そこから派生した証拠をリスト化する2. それらが350条の12第1項で証拠排除されることを、証拠調べの段階で明確に主張する3. 同時に、2項の三例外(合意違反・偽証類の罪・本人の同意)に自分が当たらないかを点検する4. うっかり「異議なし」と取られる対応をしないよう、証拠意見は弁護人に一本化する
訴えられた側:あなたが協力者の供述で名指しされた他人側なら。1. 公判前整理手続で、相手の合意内容と協議経過の開示を請求し、何の見返りで供述したかを把握する2. 見返りのある供述は信用性が下がるという一般論を軸に、供述の変遷・客観証拠との不整合を突く3. 350条の15(虚偽供述等の罪)の存在を相手に意識させ、安易な迎合供述を牽制する4. 協力者の供述だけが頼りの立証なら、補強証拠の有無を徹底的に争う
時効(請求できる期限):証拠排除は当然に働くが、2項3号の「被告人に異議がないとき」は例外となるため、証拠調べで異議を述べる時機を逃さないことが実質的な期限になる。協議・合意制度自体に固有の消滅時効はなく、対象事件の公訴時効に従う
学説
通説:350条の12第1項は、協力者が安心して供述できる環境を確保し協議・合意制度の実効性を担保する保護規定と解される。第2項の三例外は、制度を虚偽供述の温床としないため、保護対象を正直に協力した者に限定する均衡装置と理解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成28年(2016年)新設、平成30年(2018年6月1日)施行 協議・合意制度(日本版の捜査・公判協力型司法取引)の導入に伴い新設。検察審査会の議決により合意に反して公訴が提起された場合に、協議でした供述及び合意に基づき得られた証拠等の証拠能力を制限する保護規定として設けられた。あわせて2項で合意違反・偽証類の罪・本人同意の例外を規定した
改正の年表
- 1.平成28年(2016年) 新設:刑事訴訟法等の一部改正により協議・合意制度(捜査・公判協力型)が導入され、本条が新設された。検察審査会の議決で合意に反して起訴された場合の証拠能力制限と、合意違反・偽証類の罪・本人同意の三例外を規定。
- 2.平成30年(2018年) 改正:平成30年6月1日に協議・合意制度が施行され、本条の運用が開始された。対象犯罪は財政経済関係犯罪・薬物銃器犯罪等に限定されている。
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