刑事訴訟法 第350条の9
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検察官、被告人若しくは弁護人が証人尋問を請求し、又は裁判所が職権で証人尋問を行うこととした場合において、その証人となるべき者との間で当該証人尋問についてした第三百五十条の二第一項の合意があるときは、検察官は、遅滞なく、合意内容書面の取調べを請求しなければならない。この場合においては、第三百五十条の七第三項の規定を準用する。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第350条の9は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第350条の9の条文原文は「検察官、被告人若しくは弁護人が証人尋問を請求し、又は裁判所が職権で証人尋問を行うこととした場合において、その証人となるべき者との間で当該証人尋問についてした第三…」で始まります。
- 刑事訴訟法第350条の9は第二節 公判手続の特例に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第350条の9の前の条は刑事訴訟法第350条の8です。
- 刑事訴訟法第350条の9の次の条は刑事訴訟法第350条の10です。
- 刑事訴訟法第350条の9には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第350条の9 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第350条の9(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/350_9
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法350条の9は、協議・合意制度で協力した者が証人として尋問される際、検察官に合意内容書面の取調べ請求を義務づけ、見返りの内容を法廷へ必ず開示させる規定である。
Q · 共犯者が司法取引して自分に不利な証言をしたら、その取引の中身は法廷で分かるんですか?
検察官に合意内容書面の取調べ請求義務があり開示されます
刑事訴訟法350条の9により、協議・合意(同法350条の2)の当事者である協力者が証人として尋問される場合、検察官は遅滞なく合意内容書面の取調べを請求しなければなりません。これにより、その証人が不起訴や求刑軽減など何を見返りに供述しているかが、裁判官と弁護人に必ず開示されます。弁護側はその見返りの大きさを手がかりに、供述を盛る動機を反対尋問で追及できます。協力者が無関係な人まで巻き込む「引っ張り込みの危険」に対する制度的な歯止めです。
解説
あなたの会社が談合や贈収賄で捜査を受けている。ある日、部下や取引先が検察官と「取引」をした。自分の罪を軽くしてもらう代わりに、あなたを主犯だと証言する側に回る。日本にも2018年から、こうした協議・合意制度(いわゆる日本版司法取引、刑事訴訟法350条の2)が存在する。問題は、その証言の裏にある「取引」の中身だ。証人は見返りに不起訴や求刑の軽減を約束されている。だから、あなたに不利な方向へ話を盛る強い動機を抱えたまま証言台に立つ。刑事訴訟法350条の9は、この危険にブレーキをかける条文だ。協力した者が証人として尋問されるとき、検察官は遅滞なく、その合意の中身を記した書面(合意内容書面、つまり証人が何と引き換えに話すかを書いた契約書のようなもの)の取調べを請求しなければならない。裁判官もあなたの弁護人も、「この証人は何を見返りに口を開いているのか」を必ず知ることになる。証言の信用性を崩す最大の材料が、法律の側からあなたの手元に届く仕組みである。
法的な位置づけ
刑事訴訟法350条の9は、協議・合意(同法350条の2)の当事者である協力者が証人尋問を受ける場合に、検察官へ合意内容書面の取調べ請求を義務づける手続規定である。協力供述に内在する引っ張り込みの危険に対し、見返りの内容を法廷で必ず開示させることで、供述の信用性を吟味する前提を制度的に担保する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.証人が合意当事者かを早期に把握する 自分に不利な証言をする予定の人物が、検察官と協議・合意(350条の2)をしている可能性を弁護人と早期に検討する。合意当事者なら350条の9で合意内容書面が必ず取り調べられる
- 2.合意内容書面の見返りを精読する 合意内容書面に記された見返り(不起訴か、訴因の取り下げか、求刑軽減か、その範囲)を確認する。見返りが大きいほど供述を盛る動機が強いと評価できる
- 3.見返りを軸に反対尋問を設計する 証人が受ける利益の大きさを軸に、供述を盛る動機を反対尋問で具体的に追及する設計図を作る。書面を握って臨むのと手ぶらで臨むのとでは、信用性を削る効果が桁違いになる
- 4.合意の離脱・虚偽供述の兆候を弾劾材料に備える 合意した協力者が離脱したり虚偽供述をした疑いが出た場合、その事実も手続上明らかにされる場面がある(350条の7第3項準用)。信用性を一気に突き崩す決定打として準備しておく
よくある質問 AI による整理
Q1合意内容書面とは何ですか?
協議・合意制度で、協力者が何を提供し検察官が何を見返りに約束するかを記した書面です。証人が何と引き換えに供述するかを示す「契約書」にあたり、350条の9で必ず法廷に開示されます。
Q2協議・合意制度の対象犯罪は何ですか?
贈収賄や脱税などの財政経済犯罪と、薬物銃器犯罪などに限られます。殺人や性犯罪のような重大事件は対象外で、自己負罪型ではなく他人の事件への協力が中心です。
Q3司法取引で証言した協力者の罪はどうなりますか?
合意の内容に応じて、不起訴、特定の訴因の取り下げ、軽い求刑などの恩恵を受けます。だからこそ供述を盛る動機が生じ、その見返りが350条の9で開示されます。
Q4合意内容書面はいつ取り調べられますか?
協力者が証人尋問される段階で、検察官が遅滞なく取調べを請求します。証人尋問の証拠調べ手続のなかで行われるため、弁護側は期日前の準備が実質的な勝負どころになります。
Q5弁護人の同意なしに司法取引はできますか?
できません。協議・合意は弁護人の同意が要件です(350条の3)。協力者本人だけで署名しても合意は成立せず、弁護人の関与が制度上必須とされています。
Q6協力者が嘘の証言をしたらどうなりますか?
協議・合意制度上の虚偽供述等の罪(350条の15)に問われ、合意も失効しうるリスクがあります。虚偽供述は協力者自身に重い不利益を生じさせる仕組みです。
Q7司法取引の合意から離脱できますか?
一定の事由があれば合意は失効・離脱しうります。合意が揺らいだ事実が手続上明らかになる場面があり(350条の7第3項準用)、供述の信用性弾劾の好機になります。
Q8日本版司法取引はいつから始まりましたか?
2016年改正で導入され、2018年6月1日から運用が始まりました。比較的新しい制度で、実際の合意件数は年間ごく少数にとどまっています。
この条文についての質問 AI による整理
Q1日本に司法取引なんてないと思ってたんですが、本当にあるんですか?
あります。2016年改正で導入された協議・合意制度(刑事訴訟法350条の2以下)が2018年6月から運用されており、いわゆる日本版司法取引です。ただし対象は財政経済犯罪や薬物銃器犯罪などに限られ、自分の罪を認める「自己負罪型」ではなく、他人の事件への協力が中心です。実務のポイント:制度導入後の実際の合意件数は年間ごく少数にとどまっており、検察も慎重に運用しています。だからこそ、もし相手が合意当事者なら、その一件は事件全体の構図を映す決定的な手がかりになる
Q2共犯者が取引して証言したら、その人の話は裁判で信用されてしまうんですか?
そのまま放置すれば信用性の高い供述として扱われかねません。だからこそ350条の9が、検察官にその証人の合意内容書面の取調べ請求を義務づけ、見返りの存在を裁判官に必ず知らせる仕組みにしています。あとは弁護側がその見返りを手がかりに反対尋問で動機を暴けるかどうかです。実務のポイント:協力者が無関係な人まで引きずり込む「引っ張り込みの危険」は、この制度の最大の弱点として立法時から指摘されてきました。合意内容書面に書かれた見返りが大きいほど、その危険を裁判官に印象づける材料になる。書面を読み込まずに反対尋問へ行くのは、最強の弾を置いて戦場に出るに等しい
間違えやすい点 AI による整理
- 「日本に司法取引なんて存在しない、あれはアメリカの映画の話だ」と思い込んでいる人が多い。実際には2016年改正で協議・合意制度が導入され、2018年6月から運用されている。対象は財政経済犯罪と薬物銃器犯罪などに限られるが、現実に共犯者があなたに不利な証言をする仕組みは、もう日本の法廷で動いている
- 「取引した証人の話は、どうせ裁判官が割り引いて聞いてくれる」と考えがちだが、これは深刻さを取り違えている。証言を割り引かせるのは裁判官の親切ではなく、あなたの側が合意内容書面を手がかりに反対尋問でその動機を暴いて初めて起きることだ。書面の存在を知らず、追及しなければ、取引証言はそのまま「信用できる供述」として有罪認定の柱になる
- そもそも「証人は嘘をついているのか」という問いの立て方が誤っている。本当に効く問いは「この証人は何と引き換えに話しているのか、その見返りはどれほど大きいのか」だ。350条の9が開示させるのはまさにこの一点であり、見返りの大きさこそが供述を盛る動機の物差しになる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 350条の9:協力証人尋問時の合意内容書面取調べ請求義務 | 350条の2:協議・合意制度そのものの根拠規定 350条の7:合意内容書面取調べ請求の基本手続 |
| 誰に向けた規律か | 検察官の開示義務(証人尋問の局面) | 検察官と被疑者・被告人の合意の成立要件 検察官の合意内容書面取調べ請求の一般手続 |
| 発動の前提 | 協力者が証人として尋問され、当該尋問に係る合意があること | 対象犯罪 + 弁護人の同意 + 書面合意 合意に基づく訴追・立証の局面全般 |
| 防御権との関係 | 見返りを開示させ反対尋問の前提を保障 | 弁護人同意要件で協力者本人を保護 350条の9が第3項を準用し弾劾を担保 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は刑事訴訟法に全面的な司法取引はなく、組織犯罪等で協力した共犯者の刑を減免する「污點證人(窩裡反)」制度が機能上の対応物。協力供述の信用性吟味は判例・運用に委ねられる。
中国は2018年改正で「認罪認罰従寛制度」を導入。被告人が罪を認め協力すれば寛大に処理されるが、日本の協議・合意のように合意内容書面を法廷で必ず開示させる明文の義務構造とは設計が異なる。
ドイツは実体法上の刑減免(王冠証人規定)として協力者を扱う。手続上の合意書面開示というより、量刑段階で協力の事実を評価する構造で、日本の手続開示義務とはアプローチが分かれる。
米国は連邦最高裁判例 Giglio により、証人に与えた約束・取引を検察官が開示しないことを適正手続違反とした。350条の9はこの開示法理を、合意内容書面の取調べ義務という明文規定で受容したものと位置づけられる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたは贈収賄事件の主犯として起訴された。実際に現金を運んだ部下が検察官と合意し、不起訴と引き換えに「指示したのは社長です」と証言する。350条の9により、検察官はその合意内容書面を必ず法廷に出す。弁護人はそこに書かれた「不起訴」という見返りを突きつけ、証言が保身のための責任転嫁だと反対尋問で崩しにかかる。書面が出るか出ないかで、反対尋問の威力は二倍違う
- もし、明日の公判であなたの元同僚が証人として召喚されたら、あなたはまず何を確認すべきか。その同僚が検察官と合意しているなら、合意内容書面が証拠調べされるはずだ。証人が受け取る利益の大きさを知らないまま反対尋問に臨めば、最大の武器を置いたまま戦うことになる。期日までの数日が勝負を分ける
- 麻薬密売組織の下っ端が「仕入れの元締めはあいつだ」と証言する。だが彼は自分の起訴を見送ってもらうために口を開いた。その取引の事実が、書面で法廷に明かされる。
- あなたが協力する側として合意を持ちかけられた立場でも、この条文は他人事ではない。あなたが法廷で証言すれば、あなたが受けた利益の中身が相手の弁護人と裁判官に全部知られる。「軽い処分のために嘘の証言をした人物」という烙印を、反対尋問で押されるリスクを最初から抱えることになる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 自分に不利な証言をする予定の人物が、検察官と協議・合意(350条の2)をしている可能性を弁護人と早期に検討する2. その者が証人尋問される場合、検察官には合意内容書面の取調べ請求義務がある(350条の9)ので、書面の内容、特に証人が得る見返り(不起訴・求刑軽減の範囲)を確認する3. 見返りの大きさを軸に、供述を盛る動機を反対尋問で具体的に追及する4. 合意の離脱や虚偽供述の兆候があれば、信用性弾劾の決定打として準備しておく
訴えられた側:1. あなた自身が協力・合意を持ちかけられた側なら、署名前に弁護人を必ず関与させる(弁護人の同意は合意の要件、350条の3) 2. 法廷で証言すれば、あなたが受ける利益の中身は合意内容書面として相手の弁護人と裁判官に全部開示されると理解しておく3. 虚偽の供述をすれば協議・合意制度上の虚偽供述等の罪(350条の15)に問われ、合意も失効しうる点を踏まえ、事実に沿った供述に徹する4. 合意の範囲(どの事件まで、どの程度の利益か)を書面で明確に詰める
時効(請求できる期限):本条に特定の時効はない。検察官の合意内容書面取調べ請求は、証人尋問を請求しまたは職権で行うこととした後「遅滞なく」行う義務がある。弁護側の対応は当該証人尋問の証拠調べ手続のなかで完結するため、期日前の準備が実質的な期限になる。なお協議・合意制度は2018年6月運用開始の比較的新しい制度であり、最新の運用状況をご確認ください
学説
立法時の主要論点(通説的整理):協議・合意制度の最大の弱点は、協力者が自らの利益のため無関係な者を巻き込む「引っ張り込みの危険」にある。350条の9はこの危険に対し、合意内容書面の開示を通じて見返りを法廷に晒し、反対尋問による信用性吟味を制度的に担保する点に意義があるとされる。
改正沿革 AI による整理
- 平成28年(2016年)改正・平成30年(2018年)6月1日施行 刑事訴訟法等の一部を改正する法律により協議・合意制度を新設する一環として本条を新設。協力者が証人として尋問される場合に、検察官へ合意内容書面の取調べ請求を義務づけ、合意の存在と内容を法廷に必ず開示させることで供述の信用性吟味を担保した
改正の年表
- 1.平成28年(2016年) 新設:刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律第54号)により協議・合意制度を新設する一環として本条を新設。協力者が証人として尋問される場合に、検察官へ合意内容書面の取調べ請求を義務づけた。
- 2.平成30年(2018年) 改正:協議・合意制度が2018年6月1日に施行され、本条が運用開始。財政経済犯罪・薬物銃器犯罪などを対象に、合意の存在と内容を法廷へ必ず開示させる手続が現実に機能し始めた。
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