建築基準法 第9条の4(保安上危険な建築物等の所有者等に対する指導及び助言)
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特定行政庁は、建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第三条第二項の規定により次章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)について、損傷、腐食その他の劣化が生じ、そのまま放置すれば保安上危険となり、又は衛生上有害となるおそれがあると認める場合においては、当該建築物又はその敷地の所有者、管理者又は占有者に対して、修繕、防腐措置その他当該建築物又はその敷地の維持保全に関し必要な指導及び助言をすることができる。
この条文の基本情報
保安上危険な建築物等の所有者等に対する指導及び助言とは何ですか?
定義保安上危険な建築物等の所有者等に対する指導及び助言とは、建築基準法第9条の4に定められた規定で、「特定行政庁は、建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第三条第二項の規定により次章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 建築基準法第9条の4(保安上危険な建築物等の所有者等に対する指導及び助言)は、日本の建築基準法に含まれる条文です。
- 建築基準法第9条の4の条文原文は「特定行政庁は、建築物の敷地、構造又は建築設備(いずれも第三条第二項の規定により次章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。」で始まります。
- 建築基準法第9条の4は第一章 総則に置かれています。
- 建築基準法の公布日は昭和25年5月24日です。
- 建築基準法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 建築基準法第9条の4の前の条は建築基準法第9条の3です。
- 建築基準法第9条の4の次の条は建築基準法第10条です。
- 建築基準法第9条の4には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第9条の4 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201 - 本サイト収録
建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第9条の4(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/325AC0000000201/9_4
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点建築基準法9条の4は、既存不適格建築物に劣化が生じ放置すれば危険となるおそれがある場合、特定行政庁が所有者等へ修繕等の指導助言をできると定める。罰則はなく、次段階は同法10条である。
Q · 役所から届いた「指導及び助言」の文書、罰則がないなら放っておいていいんですか?
罰則はないが、事故時の民事責任では不利な証拠になる
建築基準法9条の4に基づく指導及び助言は行政指導であり、従わなくても罰則も命令もありません。行政手続法32条2項は、指導に従わないことを理由とする不利益な取扱いを禁じています。ただし劣化が進めば同法10条の勧告・命令へ移り、そこからは強制力と罰則が生じ、最終的には行政代執行と費用請求に至ります。さらに民事では、この文書が「危険を認識していた所有者」を示す証拠として残り、民法717条1項の工作物責任において所有者には免責規定がないため、賠償の場で決定的に働きます。
解説
役所から届いた封書に「指導及び助言」と書かれていたら、多くの所有者はファイルに挟んで忘れる。罰則がないからだ。実際そのとおりで、本条の指導助言は行政指導(役所からのお願いで、法的な強制力はない)であり、従わなくても過料も命令も来ない。行政処分ではないので、原則として審査請求や取消訴訟で争う対象にもならない。だが、誰が対象かを見てほしい。第三条第二項により現行基準の適用を免れている建物、つまり「建てた当時は適法、その後に法律が変わって今の基準に合わなくなった」既存不適格建築物である。法は遡及適用しないと約束した。その約束に守られた建物が腐り始めたとき、特定行政庁が最初に打てる唯一の手が、この一通なのだ。そして、この紙はあなたの手元で性質を変える。外壁が落ちて通行人が怪我をした日、「危険を役所から知らされていた所有者」という事実が、民法717条の工作物責任の場で決定的に効いてくる。
法的な位置づけ
建築基準法9条の4は、既存不適格建築物への指導助言を定める規定である。同法3条2項により現行規定の適用を除外された建築物の敷地、構造または建築設備に損傷、腐食その他の劣化が生じ、放置すれば保安上危険または衛生上有害となるおそれがある場合に、特定行政庁が所有者、管理者または占有者に対し維持保全上必要な指導助言を行う権限を与える。強制力を伴わない行政指導である。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.文書の根拠条文を最初に特定する 届いた文書の根拠が9条の4(指導及び助言)か、10条(勧告・命令)か、9条(違反建築物への是正命令)かを確認する。三つは法的効果が全く異なり、対応の緊急度も変わる
- 2.口頭指導なら書面の交付を求める 電話や窓口で口頭の指導を受けた場合は、行政手続法35条3項に基づき書面の交付を請求する。趣旨・内容・責任者と是正項目が特定され、曖昧な要求が具体的な工事項目に絞り込まれる
- 3.建築士に現況調査を依頼する 劣化の範囲、保安上の危険度、概算工事費を建築士に調査させる。日付入りの写真を同一アングルで継続撮影し、劣化の進行または改善を客観的に記録する
- 4.改善計画を書面で特定行政庁に回答する 「いつまでに何をするか」を期日入りで特定行政庁へ書面回答する。改善意思が記録に残ると、10条の勧告・命令へ上げる優先順位が実質的に下がり、資金準備の時間を確保できる
- 5.解体を選ぶ場合は契約前に補助金を確認する 多くの自治体に老朽危険家屋の除却補助がある。申請は解体工事契約の前であることが条件の場合が多く、先に業者と契約すると補助を受けられない。制度の有無と上限額は自治体ごとに異なるため要確認
よくある質問 AI による整理
Q1建築基準法9条の4とは何ですか?
既存不適格建築物が劣化し、放置すれば保安上危険または衛生上有害となるおそれがある場合に、特定行政庁が所有者・管理者・占有者へ修繕等の指導助言をできると定める規定です。罰則はありません。
Q2特定行政庁とは誰のことですか?
建築主事を置く市町村の区域ではその市町村長、それ以外の区域では都道府県知事を指します。実務上の窓口は市区町村または都道府県の建築指導課です。
Q3既存不適格建築物はいつ発生するのですか?
建築時は適法だった建物が、その後の法改正で現行基準に適合しなくなった時点で発生します。建築基準法3条2項により、現行規定の遡及適用が外れている状態です。
Q4指導と勧告と命令はどう違いますか?
9条の4の指導助言は強制力なし、10条1項の勧告は行政指導に近い促し、10条2項・3項の命令は法的義務を生じさせ、違反すれば罰則と行政代執行の対象になります。
Q5借りている建物にも指導は来ますか?
来ます。条文は所有者だけでなく管理者・占有者も名宛人としています。文書が届いたらまず賃貸借契約書の修繕負担条項を確認してください。大規模修繕は原則として賃貸人の義務です(民法606条1項)。
Q6危険な空きビルはどこに通報すればいいですか?
特定行政庁(市区町村または都道府県の建築指導課)へ書面で情報提供します。空き家であれば、自治体の空家対策担当窓口にも同時に申し出ると動きが早くなります。
Q7既存不適格の建物はリフォームできますか?
小規模な修繕は可能ですが、増築や大規模の修繕・模様替えに着手すると原則として現行基準への適合が求められ、適用除外の傘が外れます。工事費が想定を大きく超える原因になります。
Q8指導文書には何日以内に返事すべきですか?
法定の回答期限はありません。ただし改善意思の有無が10条へ進むかどうかを左右するため、実務上は2週間以内に「いつまでに何をするか」を書面で返すのが有効です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1役所から来た「指導」の紙、無視したらどうなるんですか?
直接の罰則はありません。行政手続法32条2項は、指導に従わないことを理由に不利益な取扱いをしてはならないと定めています。ただし劣化が進めば建築基準法10条へ移り、そこからは強制力が生じます。実務のポイント:10条1項の勧告の対象は特殊建築物等に限られ、一般の住宅は同条3項で「著しく保安上危険」と判断されると勧告を飛ばして直接命令が来ます。戸建てだから段階を踏むだろう、という読みは外れます
Q2そもそも既存不適格って、違反建築物とどう違うんですか?
既存不適格は建てた当時は適法で、その後の法改正により現行基準に合わなくなった建物で、建築基準法3条2項が現行規定の適用を外しています。違反建築物は当初から違法で、9条の是正命令の対象です。実務のポイント:この区別は価格と融資に直結します。金融機関は既存不適格でも融資を絞ることがあり、違反建築物ならほぼ通りません。物件資料の「既存不適格」の四文字は、そのまま価格交渉の材料になります
Q3指導の内容に納得できません。取消しを求めて訴えられますか?
原則としてできません。行政指導は行政処分ではなく処分性がないため、取消訴訟や審査請求の対象外です。行政手続法36条の2の中止等の求めも「法令に違反する行為の是正を求める行政指導」が対象で、法令違反ではない既存不適格への指導には使いにくい。実務のポイント:残る実効的な手は35条3項の書面交付請求です。根拠と是正項目を書面で出させると、範囲の曖昧な指導はその段階で絞り込まれます。口頭のまま進めるのが最も不利
Q4相続した実家がこれに当たりそうです。解体と放置、どっちが得ですか?
税だけ見ると放置が得に見えますが、空家法上の勧告を受けた時点で住宅用地特例が外れ、土地の固定資産税は最大でおよそ六倍になりうる。倒壊で他人に損害が出れば民法717条の所有者責任には免責規定がなく、逃げ道がありません。実務のポイント:多くの自治体に老朽危険家屋の除却補助があります。申請は解体契約の前が条件のことが多く、先に業者と契約してしまうと補助が受けられません。順番を間違えるだけで数十万円が消えます
間違えやすい点 AI による整理
- 「この指導、争えますか」という問いの立て方自体がずれている。行政指導には処分性がなく、原則として取消訴訟も審査請求も対象にならない(行政事件訴訟法3条2項の処分に当たらない。実務上、例外的に処分性を認めた事例もあり解釈は分かれる)。争うべき相手がそもそも存在しないのだ。本当の問いは「建築基準法10条の勧告・命令へ上げられないために、今どの記録を残すか」である
- 強制力がないことは、多くの所有者が知っている。知られていないのは、その「何もされない」期間が民事でどう働くかだ。指導文書は、劣化の存在と危険性を所有者が認識した証拠として残る。民法717条1項の工作物責任は、占有者には必要な注意をしたときの免責規定があるのに対し、所有者にはそれがなく無過失責任と解されている。損害賠償の場で「知らなかった」という抗弁は、最初から手札にない
- あなたから見れば「古いけれど違反はしていない建物」だが、法から見れば「遡及適用を免除された例外的な状態」である。既存不適格は権利ではない。増築や大規模の修繕・模様替えに着手した瞬間、原則として現行基準への適合が求められ、例外の傘は外れる(建築基準法86条の7と施行令に一定の緩和はある)。この落差を知らずにリフォーム計画を立てると、見積もりが倍に膨らむ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象となる建築物 | 9条の4:3条2項により適用除外された既存不適格建築物 | 9条:建築基準法令に違反する違反建築物 10条:保安上危険または衛生上有害な建築物(1項は特殊建築物等) |
| 法的性質 | 行政指導(指導及び助言)、強制力なし | 行政処分(是正命令)、法的義務を生じる 1項は勧告、2項・3項は行政処分としての命令 |
| 従わなかった場合 | 制裁なし。行政手続法32条2項が不利益取扱いを禁止 | 罰則の対象。行政代執行による除却もありうる 命令違反は罰則の対象、最終的に行政代執行と費用請求 |
| 不服申立ての可否 | 処分性がなく、原則として審査請求・取消訴訟の対象外 | 処分性あり。審査請求・取消訴訟が可能 命令は処分性あり。勧告段階は原則として対象外 |
他国ではどう定めているか 6 か国
台湾も所有権者・使用人に建築物の構造と設備の安全維護義務を課し、危険建築物には限期修繕または拆除を命じる。日本のように「指導助言」という非権力的中間段階を独立の条文として置く構成は採らず、義務と命令が直結する点が異なる
韓国は違反建築物への是正命令を건축법で、既存建築物の安全点検と管理を건축물관리법で分担させる。老朽建築物の安全点検を定期義務として制度化している点が、日本の12条定期報告と比較対象になる
中国は危険家屋を鑑定等級で分類し、等級に応じて観察使用・処理使用・停止使用・整体拆除の処理方式を決める。日本の段階的行政指導と異なり、技術鑑定を起点とする行政決定型の構造
ドイツは既存の適法建築に Bestandsschutz を認めつつ、保安上の危険(Gefahr)が生じれば建築監督官庁が bauaufsichtliche Anordnung を発する。危険の存在が認定されれば Bestandsschutz が後退する構造で、日本の3条2項と10条の関係に近い
フランスは危険・不衛生建築物に対する police de la sécurité et de la salubrité を市長権限として一本化し、arrêté による是正命令と代執行まで一つの手続で進む。非拘束的な指導段階を独立させない点が日本と対照的
米国は州法ではなく自治体が採択するモデルコードで既存建築物の維持管理を規律する。legal nonconforming structure(grandfather clause)が日本の既存不適格に対応し、notice of violation から hearing、demolition order へ進む
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 親が亡くなって実家を相続した。誰も住まないまま三年、外壁のモルタルが剥がれて隣家の車に落ちた。市役所から届いたのが本条の指導文書である。ここで動かないと、空家等対策の推進に関する特別措置法の助言・指導、そして勧告へ進む。空家法上の勧告が出た時点で住宅用地の課税標準特例が外れ、土地の固定資産税は翌年度から最大でおよそ六倍になりうる(負担調整措置があるため実際の増加幅は異なる)
- 指導に従わなかったら、何が起きる? 直接には何も起きない。だが劣化が進めば建築基準法10条へ移る。同条1項の勧告の対象は特殊建築物等に限られており、一般の住宅は同条3項で「著しく保安上危険」と認められれば勧告を飛ばして直接命令が来る。命令に従わなければ罰則の対象となり、最後は行政代執行法による代執行で解体され、その費用が所有者に請求される
- 築45年の木造アパートを貸している。外階段の鉄骨に腐食が出て、市から指導文書が来た。放置したまま階段が落ちれば、争点は「知っていたか」ではなく「知らされていて何をしたか」に変わる
- 指導の宛先は所有者だけではない。条文は管理者、占有者も並べている。倉庫を借りて使っているだけのあなたに文書が届くことがある。まず賃貸借契約書の修繕負担条項を開くこと。大規模な修繕は原則として賃貸人の義務(民法606条1項)だが、特約で借主負担にされている契約は珍しくない
- 近所の空きビルの袖看板が風でぐらつき、下は通学路。どこに言えばいいか分からず一か月が過ぎた。窓口は特定行政庁(建築主事を置く市町村の長、または都道府県知事)の建築指導課であり、本条はその一報を受けて役所が動くための根拠条文そのものである
取るべき行動
被害を受けた側:1. 落下物、ひび、傾きを日付入りの写真と動画で記録し、同じ角度で月一回撮り続けて劣化の進行を可視化する2. 特定行政庁(市区町村または都道府県の建築指導課)へ書面で情報提供し、本条の指導を求める。空き家なら空家法の窓口にも同時に出す3. 行政手続法36条の3の処分等の求めは「法令に違反する事実」が前提なので、違反ではない既存不適格には直接使いにくい。10条の措置を促す申出という形で書面化する4. 実害が出たら民法717条で所有者へ請求する
訴えられた側:1. 文書の根拠条文が9条の4(指導助言)か、10条(勧告・命令)か、9条(違反建築物への是正命令)かを最初に確認する。三つは法的効果が全く違う2. 口頭指導なら行政手続法35条3項で書面交付を求め、是正項目を特定させる3. 建築士に現況調査を依頼し、危険度と概算費用を出したうえで「いつまでに何を」を書面で回答する4. 解体費が出せない場合は自治体の老朽危険家屋の除却補助を確認する(制度の有無と上限額は自治体ごとに異なるため要確認)
時効(請求できる期限):本条の指導助言に法定の期限はなく、従わないこと自体への制裁もない。時間の圧力は別経路から来る。劣化が進めば建築基準法10条1項の勧告、同条2項・3項の命令、最終的に行政代執行法に基づく代執行と費用請求へ進む。民事側では、倒壊等で損害が発生した場合の不法行為責任の消滅時効は、人の生命または身体を害する場合は損害と加害者を知った時から5年、それ以外は3年(民法724条、724条の2)
学説
通説:本条の指導助言は非権力的な行政指導であり、名宛人に法的義務を課さない。既存不適格建築物は3条2項により現行規定の適用を外れているため是正命令の根拠を欠くが、危険が現実化した段階では10条の勧告・命令へ接続する。指導助言はその接続を準備する事実上の前置手段と位置づけられる。
実務的理解:既存不適格は権利ではなく、遡及適用を免除された例外的状態にすぎないと解される。増築や大規模の修繕・模様替えに着手すれば原則として現行基準適合が求められ、適用除外は失われる(86条の7と施行令に一定の緩和あり)。
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