厚生年金保険法 第43条の3
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- 受給権者が六十五歳に達した日の属する年度の初日の属する年の三年後の年の四月一日の属する年度(第四十三条の五において「基準年度」という。)以後において適用される再評価率(以下「基準年度以後再評価率」という。)の改定については、前条の規定にかかわらず、物価変動率(物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは、名目手取り賃金変動率)を基準とする。
- 2.前年度の標準報酬及び前々年度等の標準報酬に係る基準年度以後再評価率の改定については、前項の規定にかかわらず、前条第二項各号の規定を適用する。
- 3.前二項の規定による基準年度以後再評価率の改定の措置は、政令で定める。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 厚生年金保険法第43条の3は、日本の厚生年金保険法に含まれる条文です。
- 厚生年金保険法第43条の3の条文原文は「受給権者が六十五歳に達した日の属する年度の初日の属する年の三年後の年の四月一日の属する年度(第四十三条の五において「基準年度」という。」で始まります。
- 厚生年金保険法第43条の3は第二節に置かれています。
- 厚生年金保険法の公布日は昭和29年5月19日です。
- 厚生年金保険法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 厚生年金保険法第43条の3の前の条は厚生年金保険法第43条の2です。
- 厚生年金保険法第43条の3の次の条は厚生年金保険法第43条の4です。
- 厚生年金保険法第43条の3には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第43条の3 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115 - 本サイト収録
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第43条の3(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/329AC0000000115/43_3
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点厚生年金保険法43条の3は、基準年度以後の再評価率を物価変動率で改定すると定める。ただし物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは、低いほうの賃金変動率が基準となる。
Q · 65歳から何年か経つと、年金の増え方のルールが変わるって本当ですか?
本当です。物価と賃金の低いほうが基準になります
厚生年金保険法43条の3により、65歳に達した年度の3年後の年度(基準年度)以後は、再評価率の改定基準が名目手取り賃金変動率から物価変動率に切り替わります。ただし物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは、低いほうの賃金変動率が基準になります。物価が3% 上がっても賃金が1% しか伸びない年は、伸びは1% 側に抑えられます。改定の具体的な措置は同条3項により政令で定められます。
解説
年金額は物価が上がれば同じだけ上がる、と多くの人が信じている。厚生年金保険法43条の3は、その常識に静かに線を引く条文である。あなたが65歳に達した年度から数えて3年後の4月、あなたの年金計算に使われる「再評価率」の改定ルールが切り替わる。それまでは現役世代の賃金の動き(名目手取り賃金変動率)を基準にしていたものが、この「基準年度」以後は物価変動率が基準になる。ただし条文の括弧書きが本体より重い。物価変動率が賃金変動率を上回るときは、低いほうの賃金変動率を使う、と書いてある。つまり物価が3% 上がっても賃金が1% しか上がらない年は、あなたの年金の伸びは1% で止まる。あなたが受け取る側になった瞬間、あなたの生活水準は物価ではなく、現役世代の手取りに縛りつけられる。この一行が、老後30年分の実質購買力を決めている。
法的な位置づけ
厚生年金保険法43条の3は、基準年度以後再評価率の改定基準を定める規定である。基準年度とは、受給権者が65歳に達した年度の3年後の4月1日が属する年度をいう。同条は当該年度以後の再評価率について、前条の賃金基準に代えて物価変動率を基準とし、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合は後者を基準とする非対称の改定ルールを定める。
手順
- 1.自分が基準年度以後に入っているか判定する 65歳に達した日の属する年度を特定し、その初日の属する年の3年後の4月1日が属する年度を計算する。当年度がそれ以後であれば、再評価率の改定基準は物価変動率(賃金変動率が下回る場合は賃金変動率)に切り替わっている
- 2.その年度の物価変動率と名目手取り賃金変動率を照合する 厚生労働省が毎年1月下旬に公表する年金額改定の資料で、当年度の物価変動率と名目手取り賃金変動率を確認する。低いほうが改定の基準となっているか、通知書の改定率と突き合わせる
- 3.マクロ経済スライド調整率の控除分を切り分ける 改定率が公表された基準より低い場合、43条の4・43条の5による調整率の控除が原因のことが多い。本条の基準判定と調整率の控除を分けて計算し、どの段階で差が生じているかを特定する
- 4.疑義があれば年金事務所で計算根拠の説明を求める 年金事務所に対し、当該年度の改定率の適用根拠と自分の被保険者記録(標準報酬)を照会し、回答日時・担当者名・回答内容を記録に残す。記録誤りが見つかった場合は被保険者記録の訂正手続に進む
- 5.納得できなければ3か月以内に審査請求する 処分を知った日の翌日から3か月以内に、社会保険審査官へ審査請求を行う。法定の改定ルール自体は覆らないため、争点は標準報酬記録や適用期間の誤りに絞って構成する
よくある質問 AI による整理
Q1基準年度とは何ですか?
受給権者が65歳に達した年度の3年後の4月1日が属する年度を指します(厚年法43条の3第1項)。この年度以後、再評価率の改定基準が物価変動率に切り替わります。
Q2名目手取り賃金変動率とは?
現役世代の賃金の動きに可処分所得割合の変化と物価変動を織り込んだ指標です。基準年度前の改定基準(43条の2)であり、本条では物価変動率の上限として機能します。
Q3マクロ経済スライドとは別の話ですか?
別の層の話です。本条は再評価率の改定基準を定め、調整率の控除は43条の4・43条の5が規律します。両方が重なって最終的な改定率が決まります。
Q4年金額改定通知書はいつ届きますか?
改定は毎年度4月分から適用され、通知書は例年6月の支給に合わせて届きます。改定率の根拠は厚生労働省が1月下旬に公表する資料で確認できます。
Q5改定率に不服がある場合はどうすればいいですか?
社会保険審査官へ審査請求できます。期限は処分を知った日の翌日から3か月以内です。実務では法定の改定率そのものではなく、記録の誤りが争点になります。
Q6繰上げ受給すると基準年度も早まりますか?
早まりません。基準年度は65歳に達した日の属する年度を起点に決まるため、繰上げ・繰下げの選択によって起点そのものはずれません。
Q7国民年金にも同じ仕組みはありますか?
あります。国民年金法27条の3が基礎年金の改定率について同旨のルールを定めており、厚生年金と基礎年金は同じ考え方で改定されます。
Q8基準年度以後再評価率の数値はどこで確認できますか?
同条3項の委任を受けた厚生年金保険法施行令に定められます。毎年度の改定率と端数処理は政令および厚生労働省の公表資料で確認します。
この条文についての質問 AI による整理
Q1そもそも再評価率って何ですか、年金額とは別物なんですか?
再評価率は、過去に納めた保険料の基礎となった標準報酬を現在の価値に換算するための係数である。昭和の時代の月給20万円と今の20万円では価値が違うため、この係数で調整する(43条)。年金額はこの再評価後の平均標準報酬額に給付乗率と期間を掛けて算出される。実務のポイント:年金相談で「年金が上がらない」という相談の多くは、再評価率の改定ルールと年金額のスライド調整を混同している。どちらの層の話かを最初に切り分けると、聞くべき窓口も変わる
Q265歳から3年後に基準が変わるって、なぜそんな中途半端な区切りなんですか?
再評価率は前々年度以前の標準報酬に遡って適用されるため、直近の賃金データが確定するまでタイムラグがある。65歳到達年度から3年後という設定は、賃金基準で計算すべき期間が出尽くしてから物価基準に切り替える技術的な区切りである(43条の3第1項、第2項)。実務のポイント:2項が前年度・前々年度等の標準報酬を除外しているのは、まだ賃金基準で処理すべき部分が残っているため。受給開始直後の数年は、賃金基準と物価基準が混在した状態で計算されている
Q3物価が上がっているのに年金が減ることってあるんですか?
ありうる。本条は低いほうを基準とするため、名目手取り賃金変動率がマイナスであれば、物価が上昇していても改定率はマイナス側に引かれる。加えてマクロ経済スライドによる調整率が別途差し引かれる仕組みもある(43条の4、43条の5)。実務のポイント:実際に平成25年から27年にかけて特例水準の解消で年金額が引き下げられた局面があり、そのときも審査請求が多数出たが、法定の改定ルールに基づく処分であるため覆っていない。争えるのは記録の誤りであって、改定率そのものではない(最新の改定状況をご確認ください)
間違えやすい点 AI による整理
- 「年金は物価に合わせて上がる」と理解している人は多い。だが本条は物価変動率と名目手取り賃金変動率を比べて低いほうを基準にする。物価スライドは上限ではなく、二つの指標の低いほうという条件付きの仕組みである
- この仕組みを知っている人でも、影響の大きさを見誤りがちである。年1% の差は単年では小さいが、受給期間25年で複利的に積み上がると、生涯受給総額で数百万円規模の開きになる。単年の通知書の数字だけを見ていると、この累積効果は視界に入らない
- 「基準年度以後は自分の年金額そのものが物価で改定される」と読む人がいるが、本条が定めているのは再評価率、つまり過去の標準報酬を現在価値に換算する係数の改定ルールである。年金額の改定は43条以下の計算構造全体の結果として決まる。どの数値がどの段階で動くかを取り違えると、通知書のどこを見て検算すべきかも分からなくなる
- 「政令で定める」(3項)を単なる技術的委任と読み飛ばす人が多いが、実際の改定率の刻み方や端数処理は政令で決まる。条文だけを読んでも、あなたの手取りに直結する最終数値には届かない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 適用される時期 | 43条の3:基準年度(65歳到達年度の3年後)以後 | 43条の2:基準年度前 43条の4・43条の5:調整期間中(両時期に重畳適用) |
| 改定の基準指標 | 物価変動率(名目手取り賃金変動率を上回るときは賃金変動率) | 名目手取り賃金変動率 基準指標から調整率(公的年金被保険者数の変動率+平均余命の伸び)を控除 |
| 受給者への効果 | インフレ局面で伸びが賃金側に抑えられる上限が働く | 現役世代の手取りに連動して増減する 基準指標がプラスでも調整率分だけ実質価値が目減りする |
| 具体的数値の決まり方 | 3項の委任により政令(厚生年金保険法施行令)で措置 | 同じく政令で措置 調整期間の設定・終了は財政検証を踏まえ政令等で決定 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は消費者物価指数の累計成長率が正負5% に達したときに年金給付額を調整する方式。毎年度の自動改定ではなく閾値到達型で、賃金変動率を上限とする非対称設計は持たない
韓国は基本年金額を前年の全国消費者物価変動率で調整する物価連動型。日本のように賃金変動率で上限を切る仕組みは採らず、財政調整は所得代替率の段階的引下げで行っている
ドイツは賃金連動を原則としつつ、2004年導入の持続可能性係数(Nachhaltigkeitsfaktor)で被保険者と受給者の比率変動を改定率に反映する。日本のマクロ経済スライドと発想を共有する
米国は CPI-W に基づく COLA による純粋な物価連動で、賃金による上限は設けない。財政調整は支給開始年齢の引上げと課税上限の調整で行うため、改定率自体には抑制装置がない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 65歳で受給を始めて4年目の春、年金額改定通知書が届く。物価は前年3% 上がったのに、増額は1% 台。役所の計算ミスを疑って問い合わせる人は多いが、答えは43条の3の低いほう基準ルール。ミスではなく設計である
- 68歳の親から「年金が生活費に追いつかない、役所に文句を言いたい」と相談された。あなたが説明すべきは、これが個別の処理誤りではなく法律上の仕組みだという点。審査請求で覆るものと覆らないものの区別を最初に伝えられるかで、親が無駄に消耗する時間が変わる
- もし、あなたが62歳で繰上げ受給を検討しているとしたら? 繰上げても繰下げても、65歳到達年度を起点とする基準年度の計算そのものは変わらない。老後設計の試算で「物価スライド前提」の表計算を使っていたら、その数字は上振れしている可能性がある
- 年金額改定通知書を受け取ってから、内容に不服があるなら審査請求は3か月以内。通知書を封も切らずに引き出しに入れたまま夏を越すと、その年の改定については争う扉が閉じる。争えるかどうかの判断そのものを、期限内に済ませる必要がある
取るべき行動
被害を受けた側:1. 年金額改定通知書の改定率を確認し、厚生労働省が毎年1月下旬に公表する年金額改定の資料で、その年の物価変動率と名目手取り賃金変動率を照合する2. 自分が基準年度以後に入っているか(65歳到達年度の初日の属する年の3年後の4月以降か)を確認3. 計算に疑義があれば年金事務所で計算根拠の説明を求め、記録を残す4. それでも納得できなければ、社会保険審査官への審査請求を検討する
訴えられた側:1. 事業主や社会保険労務士として説明を求められた場合、本条が定めるのは再評価率の改定基準であり、個別の裁定処分の当否とは層が違うことをまず切り分ける2. 改定率そのものは法定の指標に基づき政令で定まるため、事業所側の裁量や誤りが入る余地はない旨を根拠条文(43条の3第3項)とともに示す3. 標準報酬の記録誤りが疑われるなら、そちらは別問題として被保険者記録の訂正手続で対応する
時効(請求できる期限):年金額の改定は毎年度4月分(実際の支給は6月)から適用される。改定処分に不服がある場合、社会保険審査官への審査請求は処分を知った日の翌日から3か月以内(厚生年金保険法90条、社会保険審査官及び社会保険審査会法)。年金給付を受ける権利自体の消滅時効は5年(厚生年金保険法92条)
学説
通説:本条の非対称スライドは、給付の実質価値保障と制度の財政的持続可能性を調整する技術的規定であり、給付水準の設定は憲法25条の下で立法府の広い裁量に属すると解されている。したがって改定率そのものの当否を争う余地は狭く、争点は被保険者記録の正確性に集約されるとするのが実務上の理解である。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和29年(1954年) 改正:厚生年金保険法全部改正(昭和29年法律第115号)。現行法の基本構造が成立し、以後の給付設計・スライド規定の土台となった
- 2.平成16年(2004年) 新設:年金制度改革により、マクロ経済スライドの導入と併せて再評価率の改定ルールが再編され、基準年度前(43条の2)と基準年度以後(本条)を分ける二層構造が置かれた
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