要点厚生年金保険法 43 条の 3 は、基準年度以後の再評価率を物価変動率で改定すると定める。ただし物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは、低いほうの賃金変動率が基準となる。
Q · 65 歳から何年か経つと、年金の増え方のルールが変わるって本当ですか?
本当です。物価と賃金の低いほうが基準になります
厚生年金保険法 43 条の 3 により、65 歳に達した年度の 3 年後の年度(基準年度)以後は、再評価率の改定基準が名目手取り賃金変動率から物価変動率に切り替わります。ただし物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは、低いほうの賃金変動率が基準になります。物価が 3% 上がっても賃金が 1% しか伸びない年は、伸びは 1% 側に抑えられます。改定の具体的な措置は同条 3 項により政令で定められます。
年金額は物価が上がれば同じだけ上がる、と多くの人が信じている。厚生年金保険法 43 条の 3 は、その常識に静かに線を引く条文である。あなたが 65 歳に達した年度から数えて 3 年後の 4 月、あなたの年金計算に使われる「再評価率」の改定ルールが切り替わる。それまでは現役世代の賃金の動き(名目手取り賃金変動率)を基準にしていたものが、この「基準年度」以後は物価変動率が基準になる。ただし条文の括弧書きが本体より重い。物価変動率が賃金変動率を上回るときは、低いほうの賃金変動率を使う、と書いてある。つまり物価が 3% 上がっても賃金が 1% しか上がらない年は、あなたの年金の伸びは 1% で止まる。あなたが受け取る側になった瞬間、あなたの生活水準は物価ではなく、現役世代の手取りに縛りつけられる。この一行が、老後 30 年分の実質購買力を決めている。
厚生年金保険法 43 条の 3 は、基準年度以後再評価率の改定基準を定める規定である。基準年度とは、受給権者が 65 歳に達した年度の 3 年後の 4 月 1 日が属する年度をいう。同条は当該年度以後の再評価率について、前条の賃金基準に代えて物価変動率を基準とし、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合は後者を基準とする非対称の改定ルールを定める。
受給権者が 65 歳に達した年度の 3 年後の 4 月 1 日が属する年度を指します(厚年法 43 条の 3 第 1 項)。この年度以後、再評価率の改定基準が物価変動率に切り替わります。
現役世代の賃金の動きに可処分所得割合の変化と物価変動を織り込んだ指標です。基準年度前の改定基準(43 条の 2)であり、本条では物価変動率の上限として機能します。
別の層の話です。本条は再評価率の改定基準を定め、調整率の控除は 43 条の 4・43 条の 5 が規律します。両方が重なって最終的な改定率が決まります。
改定は毎年度 4 月分から適用され、通知書は例年 6 月の支給に合わせて届きます。改定率の根拠は厚生労働省が 1 月下旬に公表する資料で確認できます。
社会保険審査官へ審査請求できます。期限は処分を知った日の翌日から 3 か月以内です。実務では法定の改定率そのものではなく、記録の誤りが争点になります。
早まりません。基準年度は 65 歳に達した日の属する年度を起点に決まるため、繰上げ・繰下げの選択によって起点そのものはずれません。
あります。国民年金法 27 条の 3 が基礎年金の改定率について同旨のルールを定めており、厚生年金と基礎年金は同じ考え方で改定されます。
同条 3 項の委任を受けた厚生年金保険法施行令に定められます。毎年度の改定率と端数処理は政令および厚生労働省の公表資料で確認します。
再評価率は、過去に納めた保険料の基礎となった標準報酬を現在の価値に換算するための係数である。昭和の時代の月給 20 万円と今の 20 万円では価値が違うため、この係数で調整する(43 条)。年金額はこの再評価後の平均標準報酬額に給付乗率と期間を掛けて算出される。業界裏話ヒント:年金相談で「年金が上がらない」という相談の多くは、再評価率の改定ルールと年金額のスライド調整を混同している。どちらの層の話かを最初に切り分けると、聞くべき窓口も変わる
再評価率は前々年度以前の標準報酬に遡って適用されるため、直近の賃金データが確定するまでタイムラグがある。65 歳到達年度から 3 年後という設定は、賃金基準で計算すべき期間が出尽くしてから物価基準に切り替える技術的な区切りである(43 条の 3 第 1 項、第 2 項)。業界裏話ヒント:2 項が前年度・前々年度等の標準報酬を除外しているのは、まだ賃金基準で処理すべき部分が残っているため。受給開始直後の数年は、賃金基準と物価基準が混在した状態で計算されている
ありうる。本条は低いほうを基準とするため、名目手取り賃金変動率がマイナスであれば、物価が上昇していても改定率はマイナス側に引かれる。加えてマクロ経済スライドによる調整率が別途差し引かれる仕組みもある(43 条の 4、43 条の 5)。業界裏話ヒント:実際に平成 25 年から 27 年にかけて特例水準の解消で年金額が引き下げられた局面があり、そのときも審査請求が多数出たが、法定の改定ルールに基づく処分であるため覆っていない。争えるのは記録の誤りであって、改定率そのものではない(最新の改定状況をご確認ください)
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 適用される時期 | 43 条の 3:基準年度(65 歳到達年度の 3 年後)以後 | — |
| 改定の基準指標 | 物価変動率(名目手取り賃金変動率を上回るときは賃金変動率) | — |
| 受給者への効果 | インフレ局面で伸びが賃金側に抑えられる上限が働く | — |
| 具体的数値の決まり方 | 3 項の委任により政令(厚生年金保険法施行令)で措置 | — |
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