警察法 第72条(内閣総理大臣の統制)
クイックジャンプ
内閣総理大臣は、前条に規定する緊急事態の布告が発せられたときは、本章の定めるところに従い、一時的に警察を統制する。この場合においては、内閣総理大臣は、その緊急事態を収拾するため必要な限度において、長官を直接に指揮監督するものとする。
この条文の基本情報
内閣総理大臣の統制とは何ですか?
定義内閣総理大臣の統制とは、警察法第72条に定められた規定で、「内閣総理大臣は、前条に規定する緊急事態の布告が発せられたときは、本章の定めるところに従い、一時的に警察を統制する。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 警察法第72条(内閣総理大臣の統制)は、日本の警察法に含まれる条文です。
- 警察法第72条の条文原文は「内閣総理大臣は、前条に規定する緊急事態の布告が発せられたときは、本章の定めるところに従い、一時的に警察を統制する。」で始まります。
- 警察法第72条は第六章 緊急事態の特別措置に置かれています。
- 警察法の公布日は昭和29年6月8日です。
- 警察法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年4月5日時点では廃止情報はありません。
- 警察法第72条の前の条は警察法第71条です。
- 警察法第72条の次の条は警察法第73条です。
- 警察法第72条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)第72条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000162 - 本サイト収録
警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)第72条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年4月5日)https://lawplayer.com/jp/article/329AC0000000162/72
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点警察法72条は、緊急事態の布告が出たときに限り、首相が一時的に警察を統制し、収拾に必要な限度で警察庁長官を直接指揮監督できると定める。平時は国家公安委員会が管理する。
Q · 首相はいつでも警察に直接命令できるの?
いいえ。緊急事態の布告が出たときだけ直接指揮できます
平時の警察庁長官は国家公安委員会の管理下にあり(警察法第16条)、首相は委員会を所轄するにとどまります(第4条)。首相が長官を直接に指揮監督できるのは、国家公安委員会の勧告に基づく緊急事態の布告(第71条)が発せられたときだけです(第72条)。その場合も「一時的に」「必要な限度において」という限定がかかり、布告は発した日から20日以内に国会の承認を求めなければなりません(第74条)。
解説
日本の警察には、首相が直接命令できる回線が普段は引かれていない。警察庁長官を管理するのは国家公安委員会であり、実際の現場を動かすのは47の都道府県警察である。政治家が捜査や警備を思い通りに動かせないよう、わざと遠回りの配線にしてあるのだ。その回線がつながる場面は一つしかない。大規模な災害や騒乱を受けて、首相が国家公安委員会の勧告に基づき「緊急事態の布告」(第71条)を発したときである。そのとき首相は、事態を収めるのに必要な限度で、警察庁長官を直接に指揮監督する。ただし条文には「一時的に」「必要な限度において」という二つの枷がはめられている。さらに布告は20日以内に国会の承認を求めなければならない(第74条)。1954年の現行警察法制定以来、この布告は一度も発せられていない。それでも、この回線がどこにあり、どう閉じられているかを知る人だけが、非常時に「首相が警察を動かしている」という報道の意味を正しく判断できる。
法的な位置づけ
警察法第72条は、緊急事態の布告(同法第71条)が発せられた場合に、内閣総理大臣が同法第6章の定めに従い一時的に警察を統制し、緊急事態の収拾に必要な限度において警察庁長官を直接に指揮監督する旨を定める規定である。平時における国家公安委員会の管理(同法第5条・第16条)に対する例外として機能する。
よくある質問 AI による整理
Q1緊急事態の布告とは何ですか?
大規模な災害や騒乱などの際、治安維持のため特に必要があるとき、首相が国家公安委員会の勧告に基づき発する布告です(警察法第71条)。全国または一部区域を対象とします。
Q2警察法の緊急事態の布告は過去に出たことがありますか?
1954年に現行警察法が制定されて以来、一度も発せられていません。そのため、布告中の実際の運用手順は法律上の規定と想定訓練の中にしかありません。
Q3首相は都道府県警察に直接命令できますか?
首相が直接命令できるわけではありません。布告時に首相が指揮監督するのは警察庁長官であり、長官が布告区域の警視総監や警察本部長に命令します(第72条・第73条)。
Q4緊急事態の布告を出せるのは誰ですか?
内閣総理大臣です。ただし国家公安委員会の勧告に基づくことが必要で(第71条)、首相が単独の判断で発することはできない仕組みになっています。
Q5布告が国会で承認されなかったらどうなりますか?
不承認の議決があったとき、国会が廃止を議決したとき、または必要がなくなったときは、首相は速やかに布告を廃止しなければなりません(第74条)。
Q6布告が出ると警察官の権限は強くなりますか?
強くなりません。本条が変えるのは指揮系統だけで、職務質問や武器使用などの要件は警察官職務執行法のまま、布告の前後で同じです。
Q7警察法72条の「必要な限度」とはどういう意味ですか?
首相の直接指揮は、その緊急事態を収拾するために必要な範囲に限られるという意味です。事態と無関係な捜査や人事に口を出す根拠にはなりません。
Q8コロナの緊急事態宣言で首相は警察を指揮しましたか?
していません。あの宣言は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくもので、警察法の布告とは別物です。警察の指揮系統は変わっていません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1首相って警察のトップじゃないんですか?
違う。平時の警察庁は国家公安委員会の管理下にあり(警察法第5条、第16条)、首相は委員会を所轄するにとどまる。首相が警察庁長官を直接に指揮監督できるのは、第71条の緊急事態の布告が出たとき(第72条)だけである。実務のポイント:公安委員会という緩衝材は、戦前の特高警察の反省から置かれた。警察官僚の間でも、首相が捜査に口を出せないこの距離は、警察の中立性を守る生命線と考えられている
Q2布告が出たら、国家公安委員会はどうなるんですか?
条文上、首相は長官を「直接に」指揮監督すると定めるが、国家公安委員会が廃止されるわけではない。布告そのものには委員会の勧告が必要であり(第71条)、布告中に委員会の管理権がどこまで残るかについては、一度も運用例がないため解釈が分かれている。実務のポイント:運用例がゼロなので、実際の手順は想定訓練や内部マニュアルの中にしかない。専門家でも「やってみないと分からない」と認める数少ない条文の一つである
間違えやすい点 AI による整理
- 首相は行政のトップなのだから、いつでも警察に命令できると思われがちである。実際には、平時の首相は国家公安委員会を「所轄」するにとどまり(第4条)、警察庁長官を管理するのは国家公安委員会である(第16条)。首相が長官を直接に指揮監督できるのは、緊急事態の布告が出たときに限られる
- 「緊急事態」と聞くと、コロナ禍の緊急事態宣言を思い浮かべる人が多い。しかし、あの宣言は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくもので、警察の指揮系統には一切触れていない。同じ「緊急事態」という言葉でも、根拠法が違えば動く権力もまったく違う。言葉が同じだから中身も同じだろう、という問いの立て方自体が間違っている
- 布告が出れば警察が無制限に動けるようになる、という恐れは深化させて考える必要がある。本条が首相に与えるのは指揮系統の付け替えであり、警察官が使える権限そのもの(警察官職務執行法の要件など)が広がるわけではない。職務質問や武器使用の要件は布告の前後で同じである
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律する内容 | 警察法72条:布告時の首相による警察統制と長官への直接指揮監督 | 警察法71条:緊急事態の布告の要件と手続 警察法16条:平時の長官は国家公安委員会の管理に服する |
| 主体 | 内閣総理大臣 → 警察庁長官 | 内閣総理大臣(国家公安委員会の勧告が必要) 国家公安委員会 → 警察庁長官 |
| 適用される場面 | 布告が発せられたときのみ | 大規模な災害・騒乱その他の緊急事態で治安維持に特に必要なとき 平時(常時) |
| 歯止め | 「一時的に」「必要な限度において」の文言 | 国家公安委員会の勧告、20日以内の国会承認(第74条) 合議制の公安委員会による政治的中立の確保 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾では内政部が全国の警察行政を統理し、平時から行政系統の下にある。日本のような合議制の公安委員会による緩衝は置かれていない
韓国では非常時に大統領の緊急命令や戒厳により指揮系統が変わる。日本の布告より軍の関与が大きい制度設計である
ドイツでは州が危険に対処できない場合、連邦政府が州警察を自己の指示下に置ける。連邦参議院の要求で解除される点が、日本の国会承認に相当する歯止めとなる
米国では警察は州・地方の権限が原則で、大統領が直接使用できるのは緊急時のコロンビア特別区警察などに限られ、議会への通知と期間制限がある
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 首都直下地震の直後、略奪や暴動の情報がSNSで拡散し、ニュースで「政府が緊急事態の布告を検討」と報じられたとしたら、誰が警察を動かすことになる? 答えは首相から警察庁長官へ直接つながる指揮系統であり、全国の警察の応援派遣も長官の命令で一気に動く(第73条)。ただし布告から20日以内に国会に承認を求める必要があり、それが最初の歯止めとなる
- あなたは地方議員で、住民から「首相がうちの県警に直接命令できるのか」と聞かれた。平時の答えはノーであり、警察は都道府県公安委員会が管理する自治体の組織である。例外は布告が出たときだけである
- 大規模デモが続く中、与党幹部が「首相の判断で警察を投入すべき」と発言した。本条の要件を知っていれば、布告なしに首相が警察を直接指揮する法的根拠はないと指摘できる。政治の言葉と法の回線は別物である
学説
通説:本条は、平時に国家公安委員会を介して首相と警察を切り離す体制の例外であり、「一時的」「必要な限度」の文言は厳格に解釈すべきとされる。布告中に国家公安委員会の管理権がどこまで残るかは運用例がなく、見解が分かれている
改正沿革 AI による整理
- 昭和29年(1954年) 現行警察法(昭和29年法律第162号)の制定により第6章「緊急事態の特別措置」の一条として新設。旧警察法の国家地方警察・自治体警察の二本立てを廃し、警察庁と都道府県警察の体制に再編したことに伴う規定である。その後の文言改正の有無は人的検証が必要
改正の年表
- 1.昭和29年(1954年) 新設:現行警察法(昭和29年法律第162号)の制定に伴い、第6章「緊急事態の特別措置」の一条として新設。国家地方警察と自治体警察の二本立てを廃し、警察庁と都道府県警察の体制へ再編した際の規定
- 警察法 第71条緊急事態の布告の要件と手続
- 警察法 第73条布告時の長官の命令権と応援派遣
- 警察法 第74条布告の国会承認と廃止
- 警察法 第16条平時の長官は公安委員会の管理に服する
- 警察法 第4条首相所轄下の国家公安委員会の設置
- 自衛隊法 第78条命令による治安出動、警察力の補完
- 災害対策基本法 第105条災害緊急事態の布告という別系統
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める