要点労働保険徴収法 11 条は、一般保険料の額を賃金総額に保険料率を乗じた額と定める。賃金総額は全労働者に支払う賃金の総額で、通勤手当や賞与も算入される。
Q · 労働保険料ってどうやって計算するんですか?
賃金総額 × 保険料率です。通勤手当も賞与も算入します
労働保険徴収法 11 条 1 項により、一般保険料の額は賃金総額に保険料率を乗じて得た額です。2 項の賃金総額とは、事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額をいい、パートも日雇いも含みます。賃金には賞与・通勤手当・住宅手当・現物給与が算入され、所得税で非課税かどうかは基準になりません。3 項は、厚生労働省令で定める事業について省令の方法で算定した額を賃金総額とみなす特例を置き、建設の請負事業では請負金額に労務費率を乗じた額が使われます。
保険料率の話だと思って読み飛ばした事業主が、毎年 6 月に痛い目を見る。労働保険料の計算式は「賃金総額 × 保険料率」であり、右側の率は業種ごとに国が決めるので誰も動かせない。動くのは左側だけだ。その左側の定義が 2 項に置かれている。「事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額」。ここに二つの罠がある。第一に「すべての労働者」はパートもアルバイトも日雇いも含む。労災保険分の賃金総額は、雇用保険の被保険者かどうかと無関係だ(実務上、労災分は全労働者、雇用分は被保険者を基礎に算定する)。第二に「賃金」には通勤手当も賞与も現物給与も入る。所得税で非課税だから外していい、という理屈はここでは通用しない。そして 3 項が別の世界を開く。建設の請負事業のように誰にいくら払ったか正確に追えない事業では、厚生労働省令により請負金額に労務費率を掛けた額を賃金総額とみなす。掛け算の左側が、実際に払った賃金ではなくなる瞬間である。
労働保険徴収法 11 条は一般保険料の算定方式を定める規定であり、保険料の額を賃金総額と保険料率の積とする。賃金総額とは、事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額を指し、雇用形態を問わない。厚生労働省令で定める事業については、省令の定めるところにより算定した額を当該事業の賃金総額とみなす特例が適用される。
事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払う賃金の総額です(徴収法 11 条 2 項)。正社員だけでなくパート・アルバイト・日雇労働者への支払いも含みます。
原則として保険年度の翌年度 6 月 1 日から 40 日以内、つまり 7 月 10 日までに確定保険料の申告と納付を行います(徴収法 19 条)。
対象になります。労働保険の賃金は労働の対償性で判断し、所得税の非課税枠とは無関係です。定期券の現物支給も価額に換算して算入します。
違う場合があります。実務上、労災分は全労働者、雇用分は被保険者を基礎に算定するため、対象労働者の範囲が異なれば別々の賃金総額で計算します。
概算保険料は年度当初に見込みの賃金総額で前払いし、確定保険料は年度終了後に実際の賃金総額で精算するものです。差額は追加納付または充当・還付されます。
政府が認定決定を行い、納付すべき保険料の 10 パーセントの追徴金が課され(徴収法 21 条)、さらに延滞金が加算されます。未手続き期間の事故は給付額の一部徴収もあり得ます。
労働契約を結んでいる派遣元の賃金総額に算入します。派遣先は指揮命令をしても賃金を支払う事業主ではないため、原則として派遣先の賃金総額には入りません。
賃金台帳・出勤簿・総勘定元帳が中心です。特に「雑給」「外注費」に労働者への支払いが紛れていないかを確認され、遡及範囲は 2 年です(徴収法 41 条)。
入りません。賃金総額は労働者に支払う賃金の総額(11 条 2 項)で、取締役は原則として労働者に当たらないためです。ただし工場長や部長を兼ねる兼務役員は、労働者としての賃金部分だけが算入されます。業界裏話ヒント:兼務役員への支払いを役員報酬と給与に分けず一本で処理していると、調査で全額を賃金と見られる余地が生まれます。勘定科目を分け、株主総会や取締役会の議事録で役員報酬額を明示しておくと、線引きの根拠が手元に残る
入ります。名称のいかんを問わず労働の対償として支払われるものが賃金です(徴収法 2 条 2 項)。賞与、精皆勤手当、住宅手当、通勤手当はいずれも算入され、逆に退職金、結婚祝金、出張旅費の実費は賃金に当たりません。業界裏話ヒント:判断が割れやすいのは現物給与です。社宅を無償または著しく低額で貸している場合、都道府県労働局長が定める価額で評価して算入することになる。見落とし率が高く、調査で早い段階に突かれる項目です
11 条 3 項の特例です。建設の請負事業のように賃金総額を正確に算定することが困難な事業については、厚生労働省令の定めにより、請負金額に業種別の労務費率を掛けた額を賃金総額とみなします。実際に支払った賃金ではなく、工事規模から擬制する仕組みです。業界裏話ヒント:労務費率は工事の種類ごとに告示で定められ、数年おきに改定されます。前の現場と同じ率で見積もると差額が出るので、着工年度の率を毎回確認する(最新の改正状況をご確認ください)
率は業種ごとに国が定めるので動きません。動かせるのは、賃金に当たらないものを正しく除くことだけです。出張旅費の実費弁償、慶弔見舞金、退職金は賃金ではありません。業界裏話ヒント:ただし労災保険にはメリット制(徴収法 12 条 3 項)があり、一定規模以上の事業では災害の発生状況に応じて労災保険率が最大 40 パーセント増減します。率が固定というのは単年度の話で、労災を減らした実績は数年遅れで率に反映される。安全衛生への投資は、保険料の話と地続きです
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|---|---|---|
| 条文の役割 | 徴収法 11 条:保険料額 = 賃金総額 × 保険料率の算式と賃金総額の定義 | — |
| 動かせる余地 | 賃金該当性の判定により左側の因子が変動する | — |
| 誤ったときの帰結 | 賃金総額の過少申告 → 認定決定・差額徴収 | — |
| 関連する手続・制裁 | 徴収法 19 条の年度更新で申告、21 条の追徴金 10 パーセント | — |
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