破産者がした第百六十二条第一項に規定する行為が転得者に対する否認権の行使によって否認された場合において、転得者がその受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、転得者は、当該行為がその相手方に対する否認権の行使によって否認されたとすれば第百六十九条の規定により原状に復すべき相手方の債権を行使することができる。この場合には、前条第四項の規定を準用する。
要点破産法170条の3は、偏頗行為の否認を受けた転得者が給付を返還したとき、相手方が169条で回復し得た債権を転得者が代わりに行使できると定める。
Q · 倒産会社から買った資産を否認で返したら、もう何も回収できないの?
資産を返しても相手方の復活債権を行使して配当を受けられる
いいえ。破産法170条の3により、偏頗行為の否認を受けた転得者が給付を返還し又は価額を償還した場合、相手方に対して否認されていれば169条により回復したはずの相手方の債権を、転得者が代位的に行使できます。つまり資産は失っても、破産債権者として配当を受け取る地位が残ります。ただし復活債権は破産手続の債権届出期間内に届け出る必要があり、返還対応と債権届出を同時並行で進めるのが実務の鉄則です。
倒産しかけた取引先から、不動産や在庫を相場より安く買い取ったことはないか。その資産が、もとは破産者が特定の債権者だけに優先的に渡したもの(偏頗行為、162条1項)だったとしたら、あなたは転得者として破産管財人の否認権の標的になりうる。否認されれば、せっかく買った資産を返すか、その価額を支払う羽目になる。だが、ここで終わりではない。この条文は、給付を吐き出した転得者に逃げ道を一本用意している。もし破産者の相手方(あなたに売った債権者)に対して否認されていれば、169条によってその相手方の元の債権が復活していたはずだ。その復活するはずだった債権を、あなたが代わりに行使できる。資産は失っても、破産債権者の列に並んで配当を受け取る地位は手に入る。何も知らずに泣き寝入りする転得者と、この一条を握る転得者では、最終的に回収できる金額がまるで違う。
破産法170条の3は、転得者に対する否認が成立した後の転得者の救済を定める規定である。転得者が偏頗行為により受けた給付を返還し又は価額を償還した場合に、相手方に対する否認がされていれば169条により回復したはずの相手方の債権を、転得者が代位的に行使できるものとし、前条第4項の規定を準用する。
転得者(相手方から更に資産を取得した者)に対して破産管財人が否認権を行使し、受けた給付の返還を求める制度です。破産法170条が主観要件を定めます。
破産手続開始前に破産者が財産を不当に流出させた行為を破産管財人が巻き戻し、破産財団に取り戻す権利です。詐害行為の否認と偏頗行為の否認があります。
破産者が一部の債権者だけに弁済や担保提供をして優遇する行為です。破産法162条1項の要件を満たすと否認され、債権者平等を回復するために巻き戻されます。
受けられます。破産法170条の3により、給付を返還した転得者は相手方が169条で回復し得た債権を行使でき、破産債権者として配当に加わることができます。
令和2年(2020年)4月1日施行の民法改正整備に伴い新設されました。民法の詐害行為取消権改正(425条の4)と整合させるための倒産手続版の規定です。
破産法176条により、破産手続開始の日から2年、または行為の日から20年を経過すると否認権は行使できなくなります(最新の改正状況をご確認ください)。
その資産の取得経緯が偏頗行為だと、買い手は転得者として否認の標的になり、資産の返還や価額償還を求められる可能性があります。来歴の確認が重要です。
否認によって原状回復した結果、いったん消えていた相手方の元の債権が復活するものです。170条の3では、この復活債権を転得者が代位行使できます。
いいえ。否認が成立して設備を返しても、破産法170条の3により、あなたに設備を売った相手方が169条で取り戻せたはずの債権を、あなたが代わりに行使できます。破産債権者として配当を受け取る地位が残るのです。業界裏話ヒント:実務では、否認に応じる際に復活債権の代位行使をセットで主張しないと、管財人は積極的に教えてくれない。返還と債権届出は必ず同時に動かすのが鉄則
162条1項の偏頗行為の否認では、170条が定める転得者の主観要件(前の当事者に対する否認原因を知っていたか等)を満たせば、あなた自身が破産者の窮状を直接知らなくても否認されうるからです。業界裏話ヒント:善意を立証して否認を覆すのは想像以上に難しく、争うより170条の3の復活債権で配当を確保したほうが回収額が大きいケースは少なくない。どちらが得かを最初に試算するのが玄人の動き
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 規律する対象 | 170条の3:否認された転得者が返還後に行使できる復活債権 | — |
| 発動する場面 | 転得者への否認が成立し、給付を返還・償還した後 | — |
| 効果 | 相手方が169条で回復し得た債権を転得者が代位行使できる | — |
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