不動産登記法 第137条(立入調査)
クイックジャンプ
- 法務局又は地方法務局の長は、筆界調査委員が対象土地又は関係土地その他の土地の測量又は実地調査を行う場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、筆界調査委員又は第百三十四条第四項の職員(以下この条において「筆界調査委員等」という。)に、他人の土地に立ち入らせることができる。
- 2.法務局又は地方法務局の長は、前項の規定により筆界調査委員等を他人の土地に立ち入らせようとするときは、あらかじめ、その旨並びにその日時及び場所を当該土地の占有者に通知しなければならない。
- 3.第一項の規定により宅地又は垣、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする場合には、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
- 4.日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。
- 5.土地の占有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入りを拒み、又は妨げてはならない。
- 6.第一項の規定による立入りをする場合には、筆界調査委員等は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
- 7.国は、第一項の規定による立入りによって損失を受けた者があるときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。
この条文の基本情報
立入調査とは何ですか?
定義立入調査とは、不動産登記法第137条に定められた規定で、「法務局又は地方法務局の長は、筆界調査委員が対象土地又は関係土地その他の土地の測量又は実地調査を行う場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 不動産登記法第137条(立入調査)は、日本の不動産登記法に含まれる条文です。
- 不動産登記法第137条の条文原文は「法務局又は地方法務局の長は、筆界調査委員が対象土地又は関係土地その他の土地の測量又は実地調査を行う場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において…」で始まります。
- 不動産登記法第137条は第二款 筆界の調査等に置かれています。
- 不動産登記法の公布日は平成16年6月18日です。
- 不動産登記法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 不動産登記法第137条の前の条は不動産登記法第136条です。
- 不動産登記法第137条の次の条は不動産登記法第138条です。
- 不動産登記法第137条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第137条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 - 本サイト収録
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第137条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/416AC0000000123/137
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点不動産登記法137条は、筆界特定のため筆界調査委員等が他人の土地に立ち入る権限を定める。占有者への事前通知が必要で、日出前・日没後は承諾がない限り立入りできない。
Q · 隣の家の境界争いなのに、うちの土地に法務局の調査が入ると通知が来ました。断れますか?
原則として拒めないが、日没後は承諾しない限り立入りできない
不動産登記法137条1項は、筆界調査委員等が「対象土地又は関係土地その他の土地」に立ち入ることを認めており、紛争当事者でない土地も対象になり得ます。5項は、正当な理由がない限り拒み、妨げてはならないと定めます。ただし4項により、日出前および日没後の立入りは占有者の承諾がなければできません。加えて2項の事前通知、3項の立入り時の告知、6項の身分証明書提示、7項の損失補償が占有者側の防御手段として用意されています。
解説
隣の家が土地の境界でもめている。あなたはその当事者ではない。それでもある日、法務局から「いつ、何時に、あなたの土地へ立ち入る」という通知が届く。不動産登記法137条1項が定めるのは、筆界調査委員(法務局長が任命する土地家屋調査士や弁護士などの専門家)が「対象土地又は関係土地その他の土地」に立ち入る権限であり、この「その他の土地」に、紛争と無関係なあなたの敷地が含まれうるからだ。だがこの条文は、あなたに四つの盾も同時に渡している。事前通知(2項)と、宅地や塀で囲われた土地なら立入り時の口頭告知(3項)。日出前・日没後の立入りは、あなたが承諾しない限り認められない(4項)。身分証明書の提示を求める権利(6項)。そして損失が出たなら、国が「通常生ずべき損失」を補償する義務(7項)。他方5項は、正当な理由がない限り拒めないと定める。財産権を削る条文であると同時に、削り方の作法を国に課す条文である。
法的な位置づけ
不動産登記法137条は、筆界特定手続における立入調査の権限と統制を定める規定である。法務局又は地方法務局の長は、必要の限度において筆界調査委員等を他人の土地に立ち入らせることができる。占有者への事前通知、宅地等への立入り時の告知、日出前・日没後の立入り制限、身分証明書の携帯提示が義務づけられ、立入りによって生じた損失は国が補償する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.通知を受け取った日に現況を記録する 137条2項の通知で日時・場所・立入り範囲を確認し、当日を待たずにその日のうちに敷地の現況を撮影する。境界標、塀・垣・さく、植栽、舗装、駐車車両の位置を、後で同一アングルで撮り直せる目印とともに残す
- 2.日時が不都合なら「拒否」ではなく日時変更を申し入れる 5項の「正当な理由」は狭く解されるため、全面拒否は避ける。療養中、営業秘密、危険物、動物の飼育など具体的事情がある場合は、理由と代替日を書面で示し、協力姿勢を記録として残す
- 3.当日は立ち会い、身分証明書の提示を求める 6項に基づき身分を示す証明書の提示を請求し、氏名・所属・立入り開始時刻と終了時刻を控える。宅地や垣・さく等で囲まれた土地であれば、3項の立入り時の告知があったかも併せて記録する
- 4.日没後の立入りを求められたら即答しない 4項の承諾は占有者の裁量である。夕刻に追加の測量を求められた場合、その場で応じる義務はない。翌日以降の日中に改めて実施するよう求め、やり取りを記録に残す
- 5.損失が出たら国へ7項の補償を求める 立入り直後に同一アングルの写真を撮り、通知受領時の写真と対比できる形にする。原状回復の見積書を添えて、手続を所管する法務局又は地方法務局へ通常生ずべき損失の補償を申し出る
よくある質問 AI による整理
Q1筆界特定とは何ですか?
土地の境界(筆界)について、訴訟によらず法務局の手続で公的な線を明らかにする制度です。平成17年改正で創設され、その現地調査を支えるのが137条の立入権限です。
Q2筆界調査委員とは誰ですか?
法務局又は地方法務局の長が任命する外部の専門家で、土地家屋調査士、弁護士、司法書士などが選ばれます。137条1項の立入りは、この委員と134条4項の職員が行います。
Q3立入調査の事前通知はいつ届きますか?
137条2項は「あらかじめ」その旨と日時・場所を占有者へ通知するとのみ定め、日数の明文はありません。実務上は数日から二週間程度前が多く、届いた日から準備を始めるのが安全です。
Q4日出前や日没後でも立ち入られますか?
宅地や垣・さく等で囲まれた土地については、137条4項により占有者の承諾がない限り日出前・日没後の立入りはできません。承諾するかどうかはその場の占有者の判断に委ねられます。
Q5立入調査に立ち会わないとどうなりますか?
立会いは義務ではなく、不在でも調査は実施され得ます。ただし6項の身分証明書提示を求める機会も、立入り範囲を現認する機会も失われるため、損失が出た場合の立証が難しくなります。
Q6立入りの範囲はどこまで認められますか?
137条1項は「必要があると認めるとき」に「その必要の限度において」と二重の絞りをかけています。測量・実地調査に不要な範囲への立入りや長時間の滞留は、この限度を超える疑いがあります。
Q7賃借人は立入りを拒めますか?
137条2項の通知の相手方も5項の名宛人も「占有者」なので、賃借人が判断の当事者です。正当な理由がない限り拒めませんが、日没後の承諾(4項)を与えるかは賃借人が決めます。
Q8筆界特定と境界確定訴訟はどう違いますか?
筆界特定は法務局の行政手続で、比較的短期間・低コストで筆界を明らかにします。境界確定訴訟は裁判所の判決で確定させる手続で、筆界特定の結果に不服がある場合も提訴できます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1うちは境界争いと関係ないのに、断ったらどうなるんですか?
5項は、正当な理由がない限り拒み、妨げてはならないと定めます。ただし違反に対して直接立入りを実行する強制手段や罰則が用意されているわけではありません。実際に効くのは、現地を確認できなかったという事実が筆界特定の判断材料の欠落として残る点です。実務のポイント:拒むなら「拒否」ではなく「日時変更の申入れ」の形にする。正当な理由があるかという争いを避けられ、記録上も協力的な当事者として残ります
Q2調査で庭の植木を折られました。誰に、いくら請求できますか?
請求先は筆界調査委員個人ではなく国で、根拠は7項の損失補償です。範囲は「通常生ずべき損失」に限られ、原状回復に必要な費用が中心になります。実務のポイント:適法な立入りに伴う損失補償(7項)と、要件を欠く違法な立入りによる国家賠償(国家賠償法1条)は別ルートです。慰謝料を求めるなら後者を検討する必要があり、どちらの筋で構成するかを最初に決めるのが実務です
Q3所有者は自分なのに、通知が一切来ませんでした。手続は無効になりますか?
2項が通知の相手方としているのは占有者であり、所有者への通知は要件になっていません。土地を貸していれば借主に通知が届き、それで手続としては適法です。実務のポイント:だから土地の賃貸借契約書に「行政庁からの通知を受領したときは速やかに賃貸人へ転送する」という一行を入れておく。境界に関わる現地確認を所有者不在で終わらせないための、費用ゼロの防衛策です
間違えやすい点 AI による整理
- 「自分の土地に他人が勝手に入れば住居侵入だ」というのは、あなたの側から見た風景である。法律の側から見れば、137条1項の要件(法務局長の判断、必要の限度、事前通知)を満たした立入りは適法な行政調査であり、刑事責任も民事上の不法行為も成立しない。この落差を知らずに実力で追い返すと、逆にあなたの側が5項違反として手続上の記録に残る
- 「拒否できるのか、できないのか」という問いの立て方そのものが的を外している。5項に違反しても、直接に立入りを強制する手段や刑罰が用意されているわけではない。本当に効いてくるのは、現地を確認できなかったという事実が、筆界特定の結論を導く判断材料の欠落として、拒んだ側に不利に働きうるという点である。問うべきは「拒めるか」ではなく「拒んだ結果、境界線がどちらへ動くか」だ
- 事前通知の存在(2項)を知っている人は多い。だが通知の相手方が「占有者」であって所有者ではないという点の重さは、ほとんど意識されていない。土地を賃貸・駐車場・資材置場として貸していれば、通知は借主に届き、所有者のあなたは調査が終わるまで何も知らない。境界に関する最も重要な現地確認が、所有者不在のまま完了しうる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律している場面 | 137条:他人の土地への物理的な立入りそのもの | 134条:筆界調査委員による事実の調査と職員の関与 123条:筆界および筆界特定の定義(立入りの目的の起点) |
| 権限の主体 | 法務局又は地方法務局の長(実行するのは筆界調査委員等) | 筆界調査委員および134条4項の職員 定義規定のため権限主体なし |
| 占有者に与えられる防御手段 | 事前通知・立入り時の告知・日没後の承諾権・証明書提示請求・損失補償 | 調査手続における意見陳述・資料提出 なし(概念の外延を争う手がかりにとどまる) |
| 違反したときの効果 | 要件を欠く立入りは違法となり、国家賠償法1条の対象となり得る | 調査手続の瑕疵として筆界特定の判断過程が争われ得る 定義の解釈として筆界特定の結論に反映される |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も測量目的での公私有地への立入りを認め、囲障のある土地については事前通知を要求し、生じた損害の補償を定める。事前通知と補償をセットにする設計思想は日本の137条と共通する
韓国も測量のための他人の土地への出入りを認め、事前通知、身分証明書の提示、日出前・日没後の制限、損失補償を規定する。日本法と条文構造が非常に近い
ドイツは測量・地籍が州の所管であり、立入権限(Betretungsrecht)は州法で定まる。私法側では BGB § 919が隣地所有者に対する境界標設置の協力請求権を与え、公法上の測量権限と二層構造をなす
米国は州ごとに測量士の立入権限を法定し、多くの州が事前通知と損害賠償を条件とする。行政的な立入り一般については、修正4条の下で行政令状(administrative warrant)が要求され得る点が日本と大きく異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 法務局の封筒を開けると、5日後の午前9時にあなたの敷地へ立ち入るという通知が入っていた。当事者は隣家同士で、あなたは巻き込まれただけ。だが記録を残す猶予は5日しかない。現況写真、境界標の位置、塀や植栽の状態、この5日で撮っておかなければ、後から損失を主張する足場が消える
- もし調査当日、あなたが留守で、庭のバラ園を踏み荒らされていたら? 請求先は筆界調査委員個人ではなく国であり、根拠は7項の損失補償である。ただし「通常生ずべき損失」という限定がかかるため、何がその範囲に入るかは立入り前後の記録で決まる
- 夕方6時、日はもう落ちている。玄関のチャイムが鳴り、これから測量したいと告げられた。4項により、日没後の立入りはあなたの承諾がなければできない。承諾するかどうかは、その場のあなたの一言で決まる
- あなたが筆界特定を申請した側だとする。隣地の占有者が立入りを拒み、現地の測量ができない。5項違反を主張しても、警察が動くわけでも強制的に押し入れるわけでもない。ここで打つべき手は、拒否の事実そのものを手続の記録に残させることである
- 駐車場として人に貸している自分の土地に、いつの間にか調査が入って終わっていた。通知先は2項により「占有者」であり、所有者であるあなたではない。契約書に転送義務の一行を入れていなかったことが、後から効いてくる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 通知(2項)が届いたら、日時・場所・立ち入る範囲を確認し、当日までに敷地の現況を写真と動画で記録する。境界標、塀、植栽、舗装の状態を重点的に。2. 当日は可能な限り立ち会い、6項に基づき身分証明書の提示を求め、氏名・所属・立入り時刻を控える。3. 宅地や塀で囲われた土地なら、3項の事前告知があったかを確認する。4. 日没後の立入りを求められても即答しない(4項の承諾はあなたの裁量)。5. 損傷が出たら、直後の写真と修復見積書を揃えて国へ7項の補償を求める
訴えられた側:1. 5項の「正当な理由」は狭く解される。全面拒否ではなく、日時変更の申入れに切り替えるのが実務上最も損が少ない。2. 拒否に直接の強制手段はないが、現地を確認できなかった事実が筆界特定の判断であなたに不利へ傾きうる点を計算に入れる。3. 立ち入られたくない具体的事情(病気療養、営業秘密、危険物、犬)があるなら、書面で理由と代替日を提示し、協力姿勢を記録に残す。4. 立入りの範囲が1項の「必要の限度」を超えると考えるなら、その場で争わず、範囲についての異議を書面化する
時効(請求できる期限):立入りの実施自体に期限の定めはないが、時刻による絶対的な制限がある。日出前および日没後は、占有者の承諾がない限り立入り禁止(4項)。7項の損失補償請求は、国に対する金銭債権として会計法30条により権利を行使できる時から5年で時効消滅する。要件を欠く違法な立入りによる損害賠償であれば、国家賠償法1条を根拠に民法724条の期間(損害および加害者を知った時から3年、不法行為時から20年)が問題となる(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:137条の立入権限は、罰則も直接強制も伴わない任意調査に近い行政調査と位置づけられる。5項の受忍義務は実効性を持つ制裁を欠くため、実質的な担保は筆界特定の判断過程における不利益推認と、7項の補償による事後的清算にあると解される
通説:7項の「通常生ずべき損失」は、立入りと相当因果関係のある財産的損失を指し、原状回復に必要な費用が中心となる。精神的損害の填補を求める場合は、違法性を前提とする国家賠償法1条による構成が必要になると理解されている
改正沿革 AI による整理
- 平成17年(2005年)不動産登記法一部改正、平成18年(2006年)1月20日施行 筆界特定制度の創設に伴い新設。土地の境界をめぐる紛争について、訴訟によらず法務局の手続で筆界を明らかにする制度を設け、その現地調査を実効化するための立入権限と、通知・告知・時間帯制限・証明書提示・損失補償という手続的統制を同時に規定した
改正の年表
- 1.平成17年(2005年) 新設:不動産登記法の一部改正により筆界特定制度が創設され、その現地調査を実効化する規定として新設された。平成18年(2006年)1月20日施行。立入権限を認めると同時に、事前通知・立入り時の告知・時間帯制限・身分証明書の携帯提示・損失補償という五つの手続的統制を同一条文に置いた点に特徴がある
- 不動産登記法 第123条筆界及び筆界特定の定義、立入りの目的の起点
- 不動産登記法 第134条立入主体となる職員の根拠規定(4項)
- 不動産登記法 第135条測量及び実地調査の権限、立入りの前提(条番号の現行効力を要確認)
- 不動産登記法 第143条調査結果が反映される筆界特定の判断(条番号の現行効力を要確認)
- 土地家屋調査士法 第3条筆界特定手続の代理権限を定める特則
- 国家賠償法 第1条違法な立入りによる損害賠償、適法行為の損失補償との対比
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める