偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者があるときは、実施機関は、受給額に相当する金額の全部又は一部をその者から徴収することができる。
要点厚生年金保険法40条の2は、偽りその他不正の手段で保険給付を受けた者から、実施機関が受給額に相当する金額の全部又は一部を徴収できると定める。返還しても詐欺罪の責任は消えない。
Q · 年金の不正受給分を返したら、それで話は終わるの?
返した後も詐欺罪の責任は残ります。別の手続です。
厚生年金保険法40条の2により、実施機関は不正の手段で受け取られた保険給付について、受給額に相当する金額の全部又は一部を徴収できます。これは原状回復であって制裁ではないため、返還を済ませても刑法246条の詐欺罪(10年以下の拘禁刑)の責任が自動的に消えるわけではなく、返還は情状として考慮されるにとどまります。他方で条文は「全部又は一部」と定めており、生活状況を疎明すれば徴収額そのものについて交渉する余地が残されています。
一文しかない条文だが、これが動き出すとき、向き合う相手が年金事務所から警察に変わっていることがある。厚生年金保険法40条の2は、偽りその他不正の手段で年金を受け取った者から、実施機関(厚生労働大臣・日本年金機構・各共済組合)が受給額に相当する金額を徴収できると定める。注目すべきは「全部又は一部」という文言だ。全額を取り立てないという裁量が、条文そのものに埋め込まれている。もう一つ決定的なのは、この徴収が制裁ではなく原状回復にすぎないという点である。返したから終わり、ではない。刑法246条の詐欺罪は、この条文とはまったく別の線路を走っている。年金機構への返還が完了しても刑事責任は消えず、逆に刑事事件にならなくても徴収決定の通知は届く。二本の線路が同時に走っていることを知らないまま、片方だけを見て安心した人が、最も大きな代償を払う。
厚生年金保険法40条の2は、不正利得の徴収を定める規定である。偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者に対し、実施機関(厚生労働大臣・日本年金機構・各共済組合等)が受給額に相当する金額の全部又は一部を徴収する権限を認める。徴収は公法上の不当利得の返還に相当する原状回復であり、刑事責任とは性質を異にする。
厚生年金保険法92条は徴収金の時効を原則2年としますが、不正受給分には民法704条の不当利得返還や国の債権としての時効が併用される場面があり実務上解釈が分かれます。詐欺罪の公訴時効は7年です。
失権します。厚生年金保険法3条2項は事実上の婚姻関係も「婚姻」に含むため、婚姻届を出していなくても同法63条により受給権は消滅します。届出をせず受け取った分は40条の2の徴収対象です。
条文が「全部又は一部」と定めているため、収入・医療費・扶養家族の状況を疎明して分納や調整を相談する余地があります。ただし納入告知書を放置すると滞納処分に進むため、期限前の連絡が前提です。
納付期限を過ぎると延滞金が加算され、最終的に国税徴収の例により財産の差押えなど滞納処分に進みます。同時に不服申立ての期限も進行するため、放置は争う手段と交渉余地の両方を失う選択です。
違います。雇用保険法10条の4は返還に加えて最大2倍の納付命令を課せる加重型ですが、厚生年金保険法40条の2は受給額相当額の徴収にとどまります。ただし年金側も刑法246条の詐欺罪は別途成立します。
被用者年金一元化後の用語で、厚生労働大臣(日本年金機構が事務を実施)と、国家公務員共済組合連合会・地方公務員共済組合・日本私立学校振興共済事業団などを指します。加入区分により徴収主体が変わります。
40条の2は「保険給付を受けた者」から徴収する構造のため、現に受領した者が対象になります。名義人が受領していないことを通帳・施設入所記録などで疎明できれば、徴収の矛先が変わる余地があります。
診断書は医師が書きますが、日常生活状況欄を記載するのは本人です。実態より重い記載は「偽りその他不正の手段」を裏づける物証となり、40条の2の徴収に加えて詐欺罪の検討対象になり得ます。
ならない、とは言えない。厚生年金保険法40条の2の徴収は民事的な原状回復であり、刑法246条の詐欺罪とは別の手続として動く。返還は情状として考慮されるが、成立した罪を消す効果はない。業界裏話ヒント:立件の実質的な分岐点は「返したかどうか」ではなく「発覚前か後か」である。機構の照会文書が届く前に自ら申し出た事案は、そもそも告発まで行かないことが多い
受給権は死亡により消滅するため、死亡日の翌月分以降に受け取った額が返還の対象になる(厚生年金保険法40条の2)。数年放置していれば数百万円規模になる。業界裏話ヒント:金額より重要なのは、条文が「全部又は一部」と書いている点だ。一括納付が生活を破綻させることを疎明できれば、調整や分納の相談余地がある。納入告知書を放置するのが最悪の選択で、滞納処分に直結する
「偽りその他不正の手段」は、要件を失ったと知りながら受け取り続けた場合を指す。純粋な失念は過誤払いの返還として処理される余地がある。ただし現況届や照会に虚偽の記載をした瞬間、性質は失念から不正へ移る。業界裏話ヒント:この分かれ目を作るのは記憶ではなく書類である。現況届の控え、医師とのやり取り、届出の郵便記録を残している人だけが、後で「知らなかった」を主張できる
年金事務所の窓口で押し問答をしても処分は動かない。厚生年金保険法90条が不服申立ての道筋を定めており、保険給付に関する処分は社会保険審査官への審査請求を経て社会保険審査会へ、徴収金の賦課・徴収に関する処分は社会保険審査会に対して審査請求する仕組みになっている。業界裏話ヒント:通知書末尾の教示欄に、争える相手と期限のすべてが書いてある。真っ先に読むべきはそこだ
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 徴収の相手方 | 厚年法40条の2:不正の手段で給付を受けた本人 | — |
| 徴収できる額 | 受給額に相当する金額の全部又は一部(裁量あり) | — |
| 法的性質 | 原状回復(公法上の不当利得の返還に相当) | — |
| 刑事責任との関係 | 刑法246条の詐欺罪と別線で並行、返還は情状にとどまる | — |
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