厚生年金保険法 第40条(損害賠償請求権)
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- 政府等は、事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
- 2.前項の場合において、受給権者が、当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府等は、その価額の限度で、保険給付をしないことができる。
この条文の基本情報
損害賠償請求権とは何ですか?
定義損害賠償請求権とは、厚生年金保険法第40条に定められた規定で、「政府等は、事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 厚生年金保険法第40条(損害賠償請求権)は、日本の厚生年金保険法に含まれる条文です。
- 厚生年金保険法第40条の条文原文は「政府等は、事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。」で始まります。
- 厚生年金保険法第40条は第一節に置かれています。
- 厚生年金保険法の公布日は昭和29年5月19日です。
- 厚生年金保険法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 厚生年金保険法第40条の前の条は厚生年金保険法第39条の2です。
- 厚生年金保険法第40条の次の条は厚生年金保険法第40条の2です。
- 厚生年金保険法第40条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第40条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115 - 本サイト収録
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第40条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/329AC0000000115/40
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点厚生年金保険法40条は、保険給付をした政府等が、その価額の限度で受給権者の第三者に対する損害賠償請求権を取得し、先に賠償を受けたときは同額まで支給しないことができると定める。
Q · 遺族厚生年金と加害者からの示談金、両方まるごともらえるんですか?
同じ損害に対応する部分は重複して受け取れません
厚生年金保険法40条により、政府等が保険給付をすると、その給付額の限度で受給権者の損害賠償請求権が政府等に移ります(1項)。逆に先に加害者から賠償を受けていれば、その価額の限度で保険給付をしないことができます(2項)。ただし調整されるのは「同一の事由」による部分で、実務上は逸失利益に対応する部分が中心です。慰謝料や葬祭料は原則としてこの調整の枠外に置かれるため、示談書に費目の内訳を明記させることが結論を左右します。
解説
交通事故で配偶者を亡くした人の手元には、遺族厚生年金の決定通知と、加害者側保険会社の示談提案が、だいたい同じ時期に届く。両方まるごと自分のものになると考えているなら、そこが落とし穴である。厚生年金保険法40条1項は、政府等が保険給付をした瞬間、その給付額の限度で、あなたが加害者に対して持っていた損害賠償請求権を法律上当然に取得すると定める。あなたの債権が、あなたの承諾なしに国へ移る。2項は逆向きで、先に加害者から賠償を受け取っていれば、その価額の限度で年金の支給を止められる。同じ損害について二重取りはできない、という単純な原理だ。ただし止められるのは「同一の事由」の部分、実務上は逸失利益に対応する部分に限られる。慰謝料や見舞金は本来この調整の外にある。示談書に「どの費目でいくら」と書いてあるかが、あなたの年金が何か月止まるかを直接動かす。
法的な位置づけ
厚生年金保険法40条は、第三者行為による事故に関する保険給付と損害賠償の調整を定める規定である。1項は、政府等が保険給付をしたときに、その給付の価額の限度で受給権者の損害賠償請求権を法律上当然に取得する法定代位を定め、2項は、受給権者が同一の事由について先に損害賠償を受けたときに、その価額の限度で保険給付をしないことができる支給調整を定める。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.第三者行為事故届をすみやかに提出する 事故を知った時点で、年金事務所または実施機関に第三者行為事故届を提出する。事故発生状況報告書、交通事故証明書、加害者の任意保険情報をそろえる。隠しても後で判明し、支給停止と過払分の返還という重い形で跳ね返る
- 2.自分が受ける年金の種類と額を確定させる 示談交渉に入る前に、遺族厚生年金・障害厚生年金の裁定請求状況、決定額、支給開始月を書面で把握する。労災保険給付や健康保険の給付を併せて受けている場合は、それぞれの調整規定が同時に作動していることを確認する
- 3.示談書を費目別に書き分けさせる 治療費・逸失利益・慰謝料・葬祭料を費目ごとに金額を明記させる。総額一本の示談書は、本来調整外である慰謝料部分まで議論に巻き込む。この交渉は署名前の一点でしかできず、署名後に費目を分け直すことは実務上まず通らない
- 4.包括的な権利放棄条項の文言を精査する 「本件に関し一切の請求をしない」という包括条項は、政府等が40条1項ですでに代位取得した部分には及ばない。被害者側は放棄できない部分があることを、加害者側は求償が残ることを、それぞれ前提に文言を調整する
- 5.支給停止通知を受けたら対象額と再開時期を書面で確認する 40条2項による支給停止は「その価額の限度で」であり、対象額を消化すれば支給は再開する。停止通知を受け取ったら、どの費目のいくらを対象としたのか、いつ再開見込みかを実施機関に書面で確認し、算定根拠に疑義があれば審査請求を検討する
よくある質問 AI による整理
Q1第三者行為事故届とは何ですか?
交通事故など第三者の行為で年金の受給事由が生じたときに、実施機関へ届け出る書類です。厚生年金保険法40条の調整を行う前提となる仕組みで、提出しないと後から支給停止と過払分の返還を求められます。
Q2厚生年金保険法40条の代位取得はいつ発生しますか?
政府等が保険給付をした時点で、その給付の価額の限度で法律上当然に発生します。受給権者の承諾や譲渡手続は不要で、政府等が第三者へ求償できる立場に自動的に立ちます。
Q3慰謝料も年金の支給停止の対象になりますか?
調整されるのは「同一の事由」による部分で、実務上は逸失利益に対応する部分が中心です。慰謝料・見舞金・葬祭料は原則として枠外ですが、総額一本の示談書だと切り分けの議論に巻き込まれます。
Q4自賠責保険と厚生年金は、どちらが先に支払われますか?
自賠責の限度額の範囲では、被害者本人の直接請求が社会保険側の求償より優先される取扱いが実務上とられています。請求の順序設計で手元に入る時期が変わります(最新の取扱いをご確認ください)。
Q5家族が加害者の場合も求償されますか?
40条1項の代位取得は相手方が誰かを問わず発生します。同居の家族や同僚が加害者でも、政府等はその人に対して求償できる立場に立ちます。当事者間で穏便に済ませても消えません。
Q6障害厚生年金でも第三者行為の調整はありますか?
あります。40条は「保険給付」一般を対象とするため、遺族厚生年金だけでなく障害厚生年金も調整の対象です。事故後に受給権を得た場合は必ず第三者行為事故届を提出してください。
Q7年金の支給停止期間はどう計算しますか?
受け取った賠償のうち同一の事由に対応する額を、年金額で消化する形で算定されるのが基本です。実務上の上限期間の取扱いもあるとされ、無期限に止まる制度ではありません。通知で対象額と再開時期を確認してください。
Q8政府等の求償権に時効はありますか?
政府等が取得するのは受給権者が持っていた損害賠償請求権そのものなので、時効も元の請求権を引き継ぎます。不法行為なら知った時から3年、人の生命身体の侵害は5年、行為時から20年です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1年金と示談金、結局どっちかしかもらえないってことですか?
どちらか一方ではなく、同じ損害について重複する部分だけが調整される。40条1項で政府等が給付額の限度であなたの請求権を取得し、2項で先に賠償を受けていれば年金を止められる。実務のポイント:調整対象は「同一の事由」に限られ、実務上は逸失利益に対応する部分が中心である。慰謝料は本来この枠外にあり、示談書の費目内訳が調整範囲を左右する
Q2先に示談してしまいました。年金はもう一生もらえないんですか?
一生止まるわけではない。40条2項は「その価額の限度で」支給しないことができると定めるだけで、受け取った賠償額に対応する分を消化すれば支給は再開する。実務のポイント:この支給停止には実務上の上限期間の取扱いがあるとされ、無期限に止まり続ける制度ではない。停止通知を受け取ったら、対象額と再開時期を必ず書面で確認する(最新の取扱いをご確認ください)
Q3加害者と話がついて「もう請求しません」と一筆書きました。これで終わりですよね?
被害者側の一筆で終わらせられるのは、被害者が自分で持っている部分だけである。40条1項で政府等がすでに代位取得した部分は、当事者間の合意では消滅しない。実務のポイント:加害者側からすると、社会保険給付の有無を確認せずに示談を締結することが最大のリスクである。示談前の既給付額照会は、保険会社の担当者なら必ず行う手順だ
Q4事故のことを年金事務所に言わなかったら、どうなりますか?
調整対象の給付が支給され続けた場合、後日それが判明した時点で支給停止と過払分の返還を求められる。第三者行為による事故は届出が前提の仕組みで、隠し通せる設計にはなっていない。実務のポイント:届出は自分の首を絞める行為に見えるが、逆である。届出をしたうえで費目内訳を整えた方が、調整される範囲を最小限に画定できる
間違えやすい点 AI による整理
- 「年金は保険料を払ってきた自分の権利、賠償金は加害者の責任、だから両方満額もらえる」と考える人は多い。だが40条は、社会保険給付と損害賠償が同じ損害の填補である限り重複させない設計になっている。政府等はあなたの請求権を代位取得し(1項)、あるいは年金を止める(2項)。総額はあなたが期待した合計にはならない
- 調整があること自体は知っている人でも、調整の「範囲」まで踏み込めている人はほとんどいない。差し引かれるのは同一の事由による部分、実務上は逸失利益に対応する部分であって、慰謝料や見舞金、葬祭料はこの調整の枠外に置かれるのが原則である。総額一本の示談書に署名すると、本来守れたはずの慰謝料部分まで調整の議論に巻き込まれる
- あなたから見れば、加害者から受け取った金銭は「気持ちの入ったお見舞い」かもしれない。法律から見れば、それが損害の填補としての性質を持つ限り40条2項の「損害賠償を受けたとき」に該当しうる。この認識の落差のまま第三者行為事故届に事実を書き漏らすと、後から支給停止と返還請求という形で跳ね返ってくる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 調整のしくみ | 40条:第三者行為による損害賠償との調整(代位取得+支給停止) | 38条:他の年金給付との併給調整(社会保険内部の重複回避) 41条:受給権の保護(譲渡・差押えの原則禁止) |
| 相手方 | 事故を起こした第三者(加害者・その保険会社) | 他の公的年金給付(同一人が複数の受給権を持つ場合) 受給権者の債権者・譲受人 |
| 受給権者の意思 | 承諾不要。給付をした瞬間に法律上当然に請求権が移転する | 原則自動調整。選択の余地がある場合は受給権者の選択による 受給権者が譲渡しようとしても法律上できない |
| 実務上の争点 | 「同一の事由」の範囲(逸失利益か慰謝料か)と示談の順序 | どの年金を選択すると総受給額が有利か 40条の法定代位が41条の受給権保護と矛盾しない理由 |
他国ではどう定めているか 6 か国
台湾も保険者が第三者に対して代位求償する構造を持つ。ただし年金給付一般を対象とする包括的な調整規定ではなく、健康保険・職災保険といった制度ごとに個別に規定されている点が日本の40条と異なる
韓国も保険者の求償権と、被害者が先に賠償を受けた場合の給付調整を組み合わせる。日本の1項・2項の二段構えとほぼ同じ発想で、日本法を経由したドイツ型社会保険の系譜に属する
第三者の責任による工傷について、第三者が支払わない場合や特定できない場合に基金が先行支払をし、その後に第三者へ追償する。被害者の生活保障を先行させ回収を後回しにする設計が明文化されている
ドイツは社会保険者への請求権移転を社会法典総則で一元的に定め、給付と損害の『時間的・事項的一致(sachliche und zeitliche Kongruenz)』を要件とする。日本の『同一の事由』要件はこの発想と同型である
フランスは社会保険金庫が第三者に対して求償する制度を持ち、費目別(poste par poste)の対応関係で控除範囲を画するルールが確立している。示談書の費目内訳が調整範囲を決める構造は日本の実務と共通する
米国は連邦単一の年金求償規定を持たず、Medicare の二次負担者ルールや州ごとの労災 subrogation で個別に処理する。示談の際に連邦・州の回収権を清算しないと後日の請求リスクが残る点は日本と同様
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、遺族厚生年金の裁定請求より先に、加害者側と示談書を交わしてしまったとしたら? 受け取った賠償金のうち逸失利益に対応する部分は「同一の事由による損害賠償」とみなされ、その価額の限度で年金の支給が止まる。示談の順番を変えるだけで、当面の家計に入る現金の流れが数十万円単位で変わる
- あなたが加害者側になった場合。被害者と示談し、示談書に「本件に関し一切の請求をしない」と書いて署名させた。数か月後、日本年金機構から求償の通知が届く。政府等が40条1項で取得した部分は被害者の一存で放棄できないため、あなたは二重に支払う立場に立たされる。示談前に、相手が障害厚生年金や遺族厚生年金を受けているかを確認したかどうかで結末が割れる
- 通勤中のバイク事故で障害厚生年金3級。半年後、加害者から示談金が振り込まれた。年金事務所から支給停止と過払分の返還を求める通知が届く。
- 示談交渉の期日まであと10日。相手の保険会社は総額だけを提示し、内訳を書かない示談書を送ってきた。慰謝料と逸失利益の内訳を書き分けるよう求めるのはこのタイミングしかなく、署名後に費目を分け直すことは実務上まず通らない
- 同居の息子が運転する車に同乗して事故に遭い、あなたは障害厚生年金の受給権者になった。政府等が代位取得した請求権の相手は、その息子である。家族間の事故だからと当事者同士で穏便に済ませたつもりでも、法律上の求償のパイプは家の中を通っている
取るべき行動
被害を受けた側:1. 事故を知った時点で年金事務所または実施機関に第三者行為事故届を提出、隠すと後の返還請求が重くなる2. 示談前に、自分が受けている(または受ける見込みの)年金の種類と額を確認3. 示談書は総額一本にせず、治療費・逸失利益・慰謝料・葬祭料を費目別に明記させる4. 「一切の請求権を放棄する」旨の包括条項は、政府等の代位取得部分に及ばないことを前提に文言を精査5. 自賠責への被害者請求と年金裁定請求の順序を設計してから交渉に入る
訴えられた側:1. 示談交渉の前に、相手方が障害厚生年金・遺族厚生年金・労災・健康保険給付を受けているかを必ず確認2. 受けている場合、示談金を払っても政府等の代位取得分は消えず二重払いのリスクが残るため、既給付額を照会し、その分を控除した設計にする3. 示談書には費目内訳と、社会保険給付との調整に関する取り決めを明記4. 免責文言だけで安心せず、任意保険会社の担当者に求償対応の有無を書面で確認する
時効(請求できる期限):政府等が代位取得するのは受給権者が持っていた損害賠償請求権そのものなので、時効も元の請求権を引き継ぐ。不法行為であれば損害および加害者を知った時から3年、人の生命または身体を害する場合は5年、行為時から20年(民法724条、724条の2)。第三者行為事故届は事故を知った後すみやかに提出する必要があり、遅れると過払分の返還請求という形で時間圧が現実化する
学説
通説:40条1項の代位取得は保険給付と同時に法律上当然に生じ、受給権者の意思や譲渡手続を要しない。したがって受給権者が加害者と締結した権利放棄条項は、すでに政府等へ移転した部分については効力を及ぼさないと解される。
通説:40条2項の調整対象は「同一の事由」による損害に限られる。年金給付は稼得能力の喪失を填補する性質を持つため、逸失利益に対応する部分が調整の中心となり、精神的損害を填補する慰謝料は原則として対象外と整理される。
実務上の理解:2項は「しないことができる」と裁量的に規定されており、被害者の生活資金が全面的に断たれることを避ける趣旨を含む。停止は対象額を消化する範囲にとどまり、無期限の失権ではないと理解されている。
改正沿革 AI による整理
- 平成24年(2012年)被用者年金一元化法、平成27年(2015年)10月1日施行 共済年金の厚生年金への統合に伴い、代位取得および支給停止の主体が「政府」から「政府等」に改められ、実施機関としての各共済組合等も同じ規律の下に置かれた
改正の年表
- 1.昭和16年(1941年) 新設:労働者年金保険法の制定により、被用者を対象とする公的年金制度が発足。ドイツ型社会保険を範とする制度設計で、保険者と第三者責任の関係を扱う枠組みが置かれた
- 2.昭和29年(1954年) 改正:厚生年金保険法の全部改正(昭和29年法律第115号)。現行法の条文構成が整えられ、第三者行為による事故についての求償および支給調整の規律が現在の形に整理された
- 3.平成24年(2012年)成立・平成27年(2015年)10月1日施行 改正:被用者年金一元化法により共済年金が厚生年金に統合され、代位取得および支給停止の主体が「政府」から「政府等」に改められた。各共済組合等の実施機関も同一の規律の下に置かれた
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