厚生年金保険法 第38条(併給の調整)
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- 障害厚生年金は、その受給権者が他の年金たる保険給付又は国民年金法による年金たる給付(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される障害基礎年金を除く。)を受けることができるときは、その間、その支給を停止する。老齢厚生年金の受給権者が他の年金たる保険給付(遺族厚生年金を除く。)又は同法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金並びに障害基礎年金を除く。)を受けることができる場合における当該老齢厚生年金及び遺族厚生年金の受給権者が他の年金たる保険給付(老齢厚生年金を除く。)又は同法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金、障害基礎年金並びに当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される遺族基礎年金を除く。)を受けることができる場合における当該遺族厚生年金についても、同様とする。
- 2.前項の規定によりその支給を停止するものとされた年金たる保険給付の受給権者は、同項の規定にかかわらず、その支給の停止の解除を申請することができる。ただし、その者に係る同項に規定する他の年金たる保険給付又は国民年金法による年金たる給付について、この項の本文若しくは次項又は他の法令の規定でこれらに相当するものとして政令で定めるものによりその支給の停止が解除されているときは、この限りでない。
- 3.第一項の規定によりその支給を停止するものとされた年金たる保険給付について、その支給を停止すべき事由が生じた日の属する月分の支給が行われる場合は、その事由が生じたときにおいて、当該年金たる保険給付に係る前項の申請があつたものとみなす。
- 4.第二項の申請(前項の規定により第二項の申請があつたものとみなされた場合における当該申請を含む。)は、いつでも、将来に向かつて撤回することができる。
この条文の基本情報
併給の調整とは何ですか?
定義併給の調整とは、厚生年金保険法第38条に定められた規定で、「障害厚生年金は、その受給権者が他の年金たる保険給付又は国民年金法による年金たる給付(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される障害基礎年金を除く。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 厚生年金保険法第38条(併給の調整)は、日本の厚生年金保険法に含まれる条文です。
- 厚生年金保険法第38条の条文原文は「障害厚生年金は、その受給権者が他の年金たる保険給付又は国民年金法による年金たる給付(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される障害基礎年金を除く。」で始まります。
- 厚生年金保険法第38条は第一節に置かれています。
- 厚生年金保険法の公布日は昭和29年5月19日です。
- 厚生年金保険法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 厚生年金保険法第38条の前の条は厚生年金保険法第37条です。
- 厚生年金保険法第38条の次の条は厚生年金保険法第38条の2です。
- 厚生年金保険法第38条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第38条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115 - 本サイト収録
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第38条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/329AC0000000115/38
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点厚生年金保険法38条は、他の年金を受けられるときに厚生年金の支給を停止する併給調整の規定。同一事由の基礎年金や65歳以降の障害基礎年金は例外として併給できる。
Q · 年金の受給権が二つあると、どちらか一方は必ず止まってしまうの?
原則は一方が停止。ただし併給できる組み合わせもあります
厚生年金保険法38条1項は、他の年金たる保険給付や国民年金法の年金給付を受けられるときは厚生年金の支給を停止すると定めます。ただし括弧書きで例外があり、同一の支給事由に基づく障害基礎年金・遺族基礎年金のほか、65歳以降は障害基礎年金と老齢厚生年金、障害基礎年金と遺族厚生年金も併給できます。停止された側は2項で解除を申請でき、4項によりその申請はいつでも撤回できますが、効力は将来に向かってのみ生じます。
解説
年金は一人一つ、それが原則である。だが38条を最後まで読むと、その原則には最初から穴が空けてある。老齢厚生年金を止める場面の括弧書きから、わざわざ「障害基礎年金」が除かれている。つまり65歳以降、障害基礎年金を受けながら老齢厚生年金も受け取れる。遺族厚生年金の側にも同じ除外がある。そしてもう一つ、2項から4項は「選択」の装置だ。止められた側の年金は、申請すれば停止を解除できる。4項でその申請はいつでも撤回できる。ただし条文は「将来に向かつて」と書いている。ここが致命傷になる。有利な方に気付いて選び直しても、過去にさかのぼって差額を取り戻すことは原則できない。気付くのが一年遅れれば、一年分は静かに消える。
法的な位置づけ
厚生年金保険法38条は、併給の調整を定める規定である。受給権者が他の年金たる保険給付または国民年金法による年金給付を受けることができるときは、原則として厚生年金側の支給を停止する。同一の支給事由に基づく基礎年金等は停止の対象から除外され、停止された給付の受給権者は支給停止の解除を申請することができ、その申請は将来に向かって撤回することができる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.受給権のある年金を三系統すべて洗い出す ねんきんネットまたは年金事務所で、自分に受給権がある年金を老齢・障害・遺族の三系統すべて確認する。片方しか把握していないと、そもそも併給の判断ができない
- 2.併給できる組み合わせに該当しないか先に確認する 38条1項の括弧書きに該当するかを確認する。同一の支給事由に基づく障害厚生年金と障害基礎年金、遺族厚生年金と遺族基礎年金、65歳以降の障害基礎年金と老齢厚生年金、障害基礎年金と遺族厚生年金は、選ばずに両方受けられる
- 3.併給できない場合は年額を並べて比較する 併給できない組み合わせなら、それぞれの年金の年額を加給年金額・中高齢寡婦加算・経過的加算まで含めて算出し、生涯の受取見込みで比較する。窓口でその場で決めず、書面で試算を受け取る
- 4.支給停止の解除を月内に申請する 有利な側が停止されている場合、2項に基づき年金受給選択申出書を年金事務所へ提出する。年金は月単位で動くため、月をまたぐと一か月分の差が生じる。3項のみなし申請に該当するかも同時に確認する
- 5.状況が変わったら4項で撤回する 受給状況や家族構成が変わり別の組み合わせが有利になった場合、4項により申請をいつでも撤回できる。ただし効力は将来に向かってのみで、気付くまでの過去分は原則取り戻せない点を前提に判断する
よくある質問 AI による整理
Q1併給調整とは何ですか?
一人に複数の年金の受給権が生じたとき、原則として一方の支給を停止する仕組みです。厚生年金は38条、国民年金は20条が根拠で、一人一年金の原則と呼ばれます。
Q2年金受給選択申出書はいつまでに提出すればいいですか?
提出期限そのものはありませんが、年金は月単位で動くため(36条)、月をまたぐと一か月分の差が出ます。解除申請の効力は将来分のみで、遡って差額は請求できません。
Q3障害厚生年金が支給停止になるのはどんなときですか?
他の年金たる保険給付や国民年金法の年金給付を受けられるときです。ただし同一の支給事由に基づく障害基礎年金は除かれ、二階建てで併給できます。
Q4遺族厚生年金と障害基礎年金は同時にもらえますか?
65歳以降は併給できます。38条1項の遺族厚生年金に関する括弧書きから障害基礎年金が除外されているためです。65歳前は原則としてどちらかの選択になります。
Q5老齢厚生年金の繰下げは他の年金があるとできませんか?
受給権を得た時点で遺族厚生年金などの他の年金の受給権を持っていると、44条の3但書により繰下げ申出ができません。併給調整とは別枠の制約です。
Q6年金の支給停止は何月分から始まりますか?
年金は月を単位として支給され、停止事由が生じた月の翌月分から停止するのが原則です(36条)。起算月がずれると一か月分の額がそのまま動きます。
Q7年金を受ける権利は何年で時効になりますか?
保険給付を受ける権利は、支給すべき事由が生じた日から5年で時効消滅します(92条)。記録訂正による増額分は年金時効特例法で救済される場合があります。
Q8国民年金の併給調整も厚生年金と同じルールですか?
国民年金法20条が鏡像規定として同じ構造を持ちます。基礎年金側で停止するか厚生年金側で停止するかが異なるだけで、一人一年金という原則は共通です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1年金って、結局どれか一つしかもらえないんですよね?
原則はそうだが、1項の括弧書きに例外が並んでいる。同一事由の障害厚生年金+障害基礎年金、遺族厚生年金+遺族基礎年金に加え、65歳以降は障害基礎年金+老齢厚生年金、障害基礎年金+遺族厚生年金も成り立つ。実務のポイント:この組み合わせは請求書に自動反映されない。障害基礎年金を受けている人が65歳を迎えるとき、自分から申し出るかどうかで受取額が変わる
Q2選び直しはいつでもできるって聞いたんですが、損はしませんか?
4項でいつでも撤回でき、選び直し自体は自由。ただし条文は「将来に向かつて」と限定しており、過去分の差額は原則戻らない。年金は月単位で動く(36条)ため、気付いた月の差がそのまま一か月分の差になる。実務のポイント:記録訂正で増えた分は年金時効特例法により5年の時効にかからないが、選択の判断ミスは救済対象外。記録の誤りと選択の誤りは扱いがまるで違う
Q3労災の年金と厚生年金は、両方もらえますか?
受けられるが、38条の話ではない。38条は公的年金どうしの調整で、労災保険の年金と厚生年金・国民年金が同一事由で重なるときは労災側が一定割合減額される。減らされる側が逆になる。実務のポイント:障害厚生年金には54条という固有の停止事由があり、同じ傷病で労働基準法上の障害補償を受ける権利を得た場合は6年間停止する。労災保険給付と労基法の補償では扱いが違う
Q4止まっている年金は、放っておいても再開しますか?
原則は申請主義で、2項の解除申請が要る。ただし3項に救済があり、支給停止事由が生じた日の属する月分の支給が行われる場合は、その時点で解除申請があったものとみなされる。実務のポイント:みなしが働くのは限られた場面だけ。実務では「みなされているはず」と放置して数か月分を落とす例がある。停止の通知が届いたら、みなしの対象かを必ず確認する
間違えやすい点 AI による整理
- 一人一年金の原則は多くの人が知っている。知られていないのは4項の「将来に向かつて」という五文字の重さだ。選び直しは自由でも、救われるのは気付いた時点から先だけ。気付くのが遅れた分は、制度上の誤りではなく本人の選択として処理され、誰も返してくれない
- 「どっちの年金が得ですか」と窓口で聞く。その問いの立て方自体が古い。65歳以降は障害基礎年金+老齢厚生年金のように、そもそも選ばなくてよい組み合わせがある。選ぶ前に、選ばずに済むケースに該当しないかを確認するのが正しい順序である
- 労災の年金と厚生年金の調整を38条だと思っている人が多いが、38条は公的年金どうしの調整であって労災は射程外。労災保険の年金と厚生年金が同一事由で重なる場合は、労災側が一定割合減額される別建ての仕組みが働く。同じ「併給調整」でも、根拠も、減らされる側も違う
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 停止の理由 | 38条:他の年金の受給権が重なることによる併給調整 | 54条:障害厚生年金に固有の停止事由(労基法上の障害補償等) 64条の2:遺族厚生年金と老齢厚生年金が重なる場合の額の調整 |
| 対象となる給付 | 障害厚生年金・老齢厚生年金・遺族厚生年金の三種すべて | 障害厚生年金のみ 遺族厚生年金のみ |
| 本人の選択余地 | 2項の解除申請と4項の撤回により本人が選び直せる | 法定の停止であり本人の申請では動かせない 額の調整であり選択の対象ではない |
| 実務上の落とし穴 | 効力が将来に向かってのみで、気付くのが遅れた分は戻らない | 停止期間が長期にわたるため他制度との重複を見落としやすい 自分の老齢厚生年金が優先される仕組みを知らず総額を誤解しやすい |
他国ではどう定めているか 5 か国
台湾も同一事故による給付の重複請求を禁じ、複数の受給資格がある場合は選択制を採る。日本のような同一事由の二階建て併給という発想は薄く、制度間の選択がより前面に出る
韓国も一人一年金を原則とし、重複する場合は一方を選択させたうえで他方の一部を加算する方式を採る。加算により切り捨てを緩和する点が日本と設計思想を異にする
基本年金保険の重複受給の調整は全国統一の条文よりも地方の実施弁法に委ねられる部分が大きく、制度間の移行・接続の規律が中心となる
ドイツは複数の年金請求権が競合する場合に順位を定めて高い方のみを支給する構造を採る。選択申請ではなく法定の順位で処理する点が、本人の選択権を残す日本と対照的である
米国は自身の老齢給付と配偶者・遺族給付が競合する場合、高い方の額まで一本化する。併給を認めるのではなく額で吸収する方式である
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、あなたが20代で障害基礎年金の受給権を得て、それでも働いて厚生年金の保険料を納め続けてきたとしたら? 65歳から障害基礎年金と老齢厚生年金の両方を受けられる組み合わせに入る。それを知らないまま片方だけを受け取り続けている人が、現実に存在する
- 配偶者が亡くなり、遺族厚生年金の請求書を書いている。自分の老齢厚生年金はまだ請求していない。この時点で他の年金の受給権を持っていると、老齢厚生年金の繰下げという選択肢が44条の3但書で消える。
- あなたが高齢の親の年金手続きを代行し、窓口で言われるまま「有利な方」を選んだ。数年後、別の組み合わせの方が高かったと分かる。だが4項の撤回は将来に向かってのみ。親の口座に入らなかった差額は、あなたが判断した日に消えたことになる
- 解除申請の書類が机の上に載ったまま、月が変わろうとしている。年金は月単位で動く(36条)。今月中に出すか来月にずれ込むかで、まるまる一か月分の差が出る。残りは数日
- 障害厚生年金を受けている最中に配偶者が亡くなり、遺族厚生年金の受給権が発生した。障害厚生年金は同一事由の障害基礎年金以外との併給を認めていない。どちらを生かすかで、生涯の受取総額は数百万円の単位で変わる
取るべき行動
被害を受けた側:1. ねんきんネットか年金事務所で、自分が受給権を持つ年金を老齢・障害・遺族の三系統すべて洗い出す2. 65歳以上なら障害基礎年金+老齢厚生年金、障害基礎年金+遺族厚生年金に該当しないか確認3. 併給できない組み合わせなら両方の年額を出し、加給年金額や中高齢寡婦加算も含めて比較4. 2項の解除申請(年金受給選択申出書)は月内に提出。効力は翌月からで、月をまたぐと一か月分が動く
訴えられた側:1. 過払いの返納を求められたら、支給停止事由が実際にいつ発生したかを通知書で確認し、3項のみなし申請に当たらないかを見る2. 返納額の計算根拠を書面で求める。停止月の起算(36条)がずれていれば額は減る3. 一括が困難なら分割納付の相談が可能4. 処分に納得できなければ社会保険審査官への審査請求を、処分を知った日の翌日から3か月以内に。この期限を逃すと争う入口が閉じる
時効(請求できる期限):保険給付を受ける権利は、支給すべき事由が生じた日から5年で時効消滅する(厚生年金保険法92条)。2項の解除申請と4項の撤回はいつでも可能だが、効力は将来に向かってのみで、遡って差額を請求することは原則できない。処分への審査請求は処分を知った日の翌日から3か月以内(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:38条の併給調整は、限られた財源の配分の公平と拠出対価性との衝突を、原則停止・括弧書きによる例外・本人の選択権という三段構えで処理した規定と理解されている。例外の範囲は立法政策の問題であり、拡大は改正によるほかない
実務上の有力な指摘:2項の解除申請と4項の撤回が将来効に限られる点について、制度の複雑さゆえに受給者が併給可能性を認識できない場合が多く、周知義務の在り方や記録訂正の救済との均衡を問う議論がある
改正沿革 AI による整理
- 昭和60年(1985年)改正、昭和61年4月施行 基礎年金制度の導入に伴う改正。国民年金の基礎年金を一階、厚生年金を二階とする体系に組み替えられ、同一の支給事由に基づく基礎年金との二階建て併給を認めつつ、それ以外は支給停止とする現在の一人一年金の枠組みが整えられた
- 平成16年(2004年)改正、平成18年4月施行 老齢厚生年金および遺族厚生年金の支給停止対象から障害基礎年金を除外する改正。65歳以降について、障害基礎年金と老齢厚生年金、障害基礎年金と遺族厚生年金の併給が可能となり、障害を抱えながら就労して保険料を納めた期間が給付に反映される道が開かれた
改正の年表
- 1.昭和29年(1954年) 新設:厚生年金保険法の全部改正により現行法が制定され、複数の年金の受給権が競合する場合の調整規定が置かれた
- 2.昭和60年(1985年)改正、昭和61年4月施行 改正:基礎年金制度の導入に伴い、国民年金の基礎年金を一階、厚生年金を二階とする体系に組み替えられ、同一の支給事由に基づく基礎年金との二階建て併給を認めつつ、それ以外は支給停止とする一人一年金の枠組みが整えられた
- 3.平成16年(2004年)改正、平成18年4月施行 改正:老齢厚生年金および遺族厚生年金の支給停止対象から障害基礎年金が除外され、65歳以降について障害基礎年金と老齢厚生年金、障害基礎年金と遺族厚生年金の併給が可能となった
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