要点厚生年金保険法43条の5は、調整期間中、基準年度(実務上68歳到達年度)以後の年金改定率を物価変動率で算定しつつ、賃金がそれを下回る年は賃金に合わせ、調整率と繰越分を乗じて抑制する規定である。
Q · 68歳を過ぎたら、年金は物価が上がった分だけ増えるんですか?
増えません。賃金の伸びと調整率で削られます
厚生年金保険法43条の5により、基準年度(実務上68歳到達年度)以後の年金額は物価変動率を基礎に改定されますが、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る年は低い方の賃金に合わせられます。さらに調整率と前年度の基準年度以後特別調整率(過去に実施できなかったマクロ経済スライドの繰越分)を乗じるため、物価上昇分がそのまま反映されることはありません。ただし第4項により、物価または賃金がマイナスの年は名目額を下回らせない扱いが維持されます。
毎年1月、厚生労働省が翌年度の年金額改定を発表する。ニュースは「年金〇%引上げ」とだけ報じるが、その裏で二本の別々の計算式が走っていることまでは報じない。68歳を境に、あなたの年金は賃金連動から物価連動へ切り替わる。それを定めるのが本条だ。ただし切替後も無条件に物価へ乗るわけではない。物価の伸びが賃金の伸びを上回った年は、低い方の賃金へ引きずり下ろされる(第1項第1号の括弧書き)。さらに「調整率」と「基準年度以後特別調整率」が掛けられる。後者こそ2018年度に入ったキャリーオーバー装置で、デフレで見送ったマクロ経済スライドの未調整分が消えずに積み立てられ、物価と賃金が伸びた年にまとめて回収される。令和5年度、物価は2.5%上がったのに既裁定者の年金は1.9%だった。差の0.6%のうち半分は、過去に見送った調整の後払いである。
厚生年金保険法43条の5は、調整期間中における基準年度以後再評価率の改定方法を定める規定である。基準年度以後の受給者については、物価変動率を基礎としつつ、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合は低い方の賃金変動率を用い、これに調整率と前年度の基準年度以後特別調整率を乗じて得た率を改定の基準とする。
AI 輔助整理,以條文原文為準
基準年度(65歳到達年度から3年を経過した年度、実務上68歳到達年度)以後の受給者について、標準報酬を現在価値に換算する際に用いる率です。厚生年金保険法43条の5が改定方法を定めています。
公的年金の被保険者総数の変動率と、平均余命の伸びを勘案した一定率を基礎に算出されます。被保険者が増えれば抑制は緩み、減れば強まる仕組みで、毎年度の具体的な数値は政令で定められます。
終期は財政検証で見通しが示され、その結果により変動します。報酬比例部分と基礎年金部分で終了時期が異なると試算されており、最新の財政検証の公表資料で確認する必要があります。
現役世代の手取り賃金の変動を示す率で、物価変動率に実質賃金変動率と可処分所得割合変化率を反映して算出されます。新規裁定者の改定の基礎となり、既裁定者にも上限として作用します。
第4項により、物価変動率または名目手取り賃金変動率が1を下回る年は本条の調整式を適用せず、43条の2第3項および43条の3の規定によります。名目額を下回らせない歯止めが働きます。
現役世代の賃金に占める手取り(可処分所得)の割合の変化を示す率です。第3項により、当該年度に属する月の標準報酬に係る再評価率を設定する際の基礎として用いられます。
毎年1月に厚生労働省が翌年度の年金額改定を公表し、4月分(実際の支給は6月)から適用されます。物価変動率・名目手取り賃金変動率・調整率の内訳も同時に公表されます。
第6項により、基準年度以後再評価率の改定・設定の措置は政令で定められます。法律が計算の枠組みを定め、毎年度の具体的な率は政令で確定する二層構造です。
本当である。厚生年金保険法43条の3・43条の5により、基準年度(65歳到達年度から3年を経過した年度、実務上は68歳になる年度)以降は物価変動率を基礎に改定され、それ以前は名目手取り賃金変動率が使われる。業界裏話ヒント:物価が賃金を上回った年は既裁定者も賃金に合わせられるため、実際には両者の改定率が同じ数字になる年の方が多い。「68歳で有利になる」と期待して繰下げを設計すると外れる
ならない。43条の5第5項の基準年度以後特別調整率が未調整分を保持し、翌年度以降へ繰り越す(2018年度施行のキャリーオーバー)。令和5年度は当年度分0.3%に令和3・4年度の繰越0.3%が加わり、合計0.6%が差し引かれた。業界裏話ヒント:繰越残高は毎年1月の年金額改定の公表資料に載る。来年度どれだけ引かれるかは、その時点でほぼ読める
本条の計算式は全受給者共通なので、そこを争っても動かない。疑うべきは自分の標準報酬記録と被保険者期間である。ねんきんネットで照合し、誤りがあれば年金事務所へ。処分に不服なら社会保険審査官へ審査請求(厚生年金保険法90条、原則3か月以内)。業界裏話ヒント:記録訂正で過去分が増えた場合、通常5年の時効(同法92条)を超えた分も年金時効特例法で支給されうる。「5年より前だから諦める」は誤り
増額率は1か月0.7%、70歳で42%、75歳で84%(厚生年金保険法44条の3)。ただし増えた額もその後は本条の調整対象で、目減りの速度は変わらない。取り返すのではなく、削られる元本を大きくしているだけである。業界裏話ヒント:繰下げ待機中は加給年金が受け取れず増額もされない。在職老齢年金で支給停止された部分も増額の対象外。窓口では聞かなければ説明されない
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 対象となる受給者 | 43条の5:調整期間中で基準年度(実務上68歳到達年度)以後の既裁定者 | — |
| 改定の基礎となる指標 | 物価変動率(賃金を上回る年は名目手取り賃金変動率) | — |
| マクロ経済スライドの有無 | 調整率+前年度の基準年度以後特別調整率(繰越分)を乗じる | — |
| マイナス局面の扱い | 第4項により本条を適用せず、43条の2第3項・43条の3へ戻す | — |
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