厚生年金保険法 第73条の2
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被保険者又は被保険者であつた者が、自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となつた事故を生ぜしめ、若しくはその障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げたときは、保険給付の全部又は一部を行なわないことができる。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 厚生年金保険法第73条の2は、日本の厚生年金保険法に含まれる条文です。
- 厚生年金保険法第73条の2の条文原文は「被保険者又は被保険者であつた者が、自己の故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、障害若しくは死亡若し…」で始まります。
- 厚生年金保険法第73条の2は第五節に置かれています。
- 厚生年金保険法の公布日は昭和29年5月19日です。
- 厚生年金保険法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 厚生年金保険法第73条の2の前の条は厚生年金保険法第73条です。
- 厚生年金保険法第73条の2の次の条は厚生年金保険法第74条です。
- 厚生年金保険法第73条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第73条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115 - 本サイト収録
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第73条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/329AC0000000115/73_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点厚生年金保険法73条の2は、故意の犯罪行為、重大な過失、正当な理由のない療養指示不服従により障害や死亡を招いた場合に、保険給付の全部又は一部を行わないことができる裁量規定である。
Q · 自分の過失で事故に遭った場合、障害厚生年金は本当にもらえなくなるのですか?
重大な過失等なら制限されうるが、裁量処分なので争える
厚生年金保険法73条の2は、故意の犯罪行為、重大な過失、正当な理由のない療養指示不服従によって障害・死亡やその原因事故を生じさせ、あるいは障害を増進させ回復を妨げた場合に、保険給付の全部又は一部を行わないことができると定めます。語尾は「行わない」ではなく「行わないことができる」であり、不支給は自動的に確定せず実施機関の裁量です。したがって、制限の要否(前提事実の認定)と制限の程度(全部か一部か)の双方を、同法90条の審査請求で争う余地が残ります。
解説
年金は保険料さえ納めていれば何があっても出る。そう信じている人ほど、この一条で足をすくわれる。厚生年金保険法73条の2は、被保険者が(1)自己の故意の犯罪行為、(2)重大な過失、(3)正当な理由のない療養指示への不服従、このいずれかによって障害や死亡を招いた場合、あるいは障害を悪化させ回復を妨げた場合に、保険給付の全部または一部を行わないことができると定める。注目すべきは語尾だ。「行わない」ではなく「行わないことができる」。不支給は自動的に確定するのではなく、実施機関(日本年金機構・厚生労働大臣)の裁量である。裁量ということは、全部止めるか一部にとどめるか、そもそも制限を課すかどうかに判断の幅がある。そして裁量処分である以上、その判断は審査請求で争える。あなたが握るべきは、これが禁止規定ではなく裁量規定だという一点だ。
法的な位置づけ
厚生年金保険法73条の2は、保険事故の自己招致等に対する給付制限を定める。被保険者又は被保険者であった者の故意の犯罪行為、重大な過失、正当な理由のない療養指示不服従により障害若しくは死亡又はその原因事故が生じ、あるいは障害が増進し回復が妨げられた場合に、実施機関は保険給付の全部又は一部を行わないことができる。同法73条の絶対的不支給と対をなす裁量規定である。
よくある質問 AI による整理
Q1厚生年金の給付制限とは?
厚生年金保険法73条の2に基づき、故意の犯罪行為・重大な過失・正当な理由のない療養指示不服従で障害や死亡を招いた場合に、保険給付の全部又は一部を行わないことができる仕組みです。
Q2無免許運転の事故で障害厚生年金はもらえますか?
無免許運転は故意の犯罪行為に当たり、73条の2の射程に入ります。ただし全額不支給が当然に決まるわけではなく、犯罪行為と障害との因果関係の強さ、制限の程度が争点になります。
Q3給付制限は必ず全額不支給になりますか?
なりません。条文は「全部又は一部を行わないことができる」と定めるだけで、減額幅の基準は書かれていません。全部不支給か一部制限かは実施機関の裁量判断です。
Q4給付制限に納得できないときはどうすればいいですか?
処分があったことを知った日の翌日から3か月以内に社会保険審査官へ審査請求します(厚生年金保険法90条)。通知書の理由欄で、三つの制限事由のどれが使われたかを先に特定してください。
Q5療養の指示に従わないと年金は減りますか?
正当な理由なく療養指示に従わず障害を増進させた、又は回復を妨げた場合は給付制限の対象になりえます。副作用や経済的困難など、従えなかった正当な理由があれば主張できます。
Q6給付制限の理由は通知書のどこを見ればわかりますか?
決定通知書の理由欄と不服申立ての教示欄を確認します。制限が障害全体に及ぶのか、増悪部分に限定されているのかで、争う範囲と組み立てが変わります。
Q7障害厚生年金を請求できる期限はいつまで?
本条自体に期限はありません。年金給付を受ける権利の消滅時効は5年(厚生年金保険法92条)です。制限が心配でも請求を諦めず、時効内に手続することが前提になります。
Q8うつ病の治療を中断した場合も給付制限の対象になりますか?
自己判断での治療中断は「療養に関する指示に従わないこと」と評価されうるため、悪化した部分について制限が検討される余地があります。症状による判断力低下等は正当な理由になりえます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1バイクで自損事故を起こして障害が残りました。自分の不注意なので年金はもらえませんか?
単なる不注意では制限されない。73条の2が要求するのは「重大な過失」であり、著しい注意欠如が必要になる。速度超過や信号無視、飲酒が絡むと評価は変わる。実務のポイント:実務では全部不支給よりも一部制限にとどまる例が少なくない。「全額出るか、ゼロか」の二択で考えて請求自体を諦める人が、結果的に最も損をしている
Q2家族がうつ病で自殺しました。故意なんだから遺族厚生年金は出ないですよね?
自殺は日本の刑法上の犯罪ではない。73条の2が制限事由とするのは「故意の犯罪行為」であり、自殺はこれに当たらないため、自殺を理由に遺族厚生年金が不支給になることは原則ない(同法58条、73条の2)。実務のポイント:この思い込みで請求せずに終わる遺族が実際にいる。条文が制限しているのは犯罪行為と重大な過失であって、死を選んだ意思そのものではない
Q3制限された分は、これからきちんと治療を受ければ戻りますか?
事案ごとの裁量判断なので、事情が変われば見直しの余地はある。特に「療養指示不服従による増悪」を理由とする制限は、指示に従った後の状態を反映させるため、額改定請求(厚生年金保険法52条)や診断書の再提出が手掛かりになる。実務のポイント:制限が「増悪部分」に限定されているのか障害全体に及んでいるのかを通知書で必ず確認する。前者なら、その部分だけを切り離して争える
間違えやすい点 AI による整理
- 故意の犯罪行為が制限事由になることは知っていても、三つ目の柱「正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないこと」の重さを見落としている人が多い。治療を自己判断で中断する、指示された安静を守らない、通院をやめる。どれも犯罪でも何でもない日常の選択だが、悪化した部分について給付を削る根拠になりうる。深刻度の見積もりが一段甘い
- 「どのくらい減らされるのか」と問う人は多いが、問いの立て方が一段ずれている。条文は減額幅を一切定めていない。定めているのは「行わないことができる」という裁量の授権だけだ。したがって本当の争点は減額幅ではなく、制限を課す前提事実(重大な過失、指示不服従、因果関係)がそもそも認定できるかにある
- 過失で事故を起こしたら年金は出ないと思われがちだが、条文が要求するのは「重大な過失」。通常の不注意では足りず、わずかな注意を払えば結果を避けられたのに漫然と見過ごした、という著しい注意欠如が必要になる。単純な前方不注意の追突と、飲酒のうえ信号無視で交差点に突っ込む行為は、同じ「過失」の語で括られても法的な扱いが違う
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 制限の性質 | 同法73条の2:全部又は一部を行わないことが「できる」裁量規定 | 同法73条:故意による障害・死亡について給付を行わない絶対的不支給 同法74条:命令・診断等への不服従に関する制限(現行効力は要確認) |
| 主観的要件 | 故意の犯罪行為、重大な過失、正当な理由のない療養指示不服従 | 障害又は死亡そのものについての故意 実施機関の求めへの不服従(要確認) |
| 制限の幅 | 全部不支給から一部制限まで幅があり、条文に減額基準の定めなし | 給付を行わない(幅の余地が乏しい) 一部制限が想定される(要確認) |
| 争い方 | 制限の要否と程度を分けて審査請求(同法90条)、裁量権の逸脱・濫用を主張 | 故意の認定自体を否認する構成が中心 不服従の事実と正当理由の有無を争う |
他国ではどう定めているか 4 か国
被保険者等の故意犯罪行為により保険事故が生じた場合を不給付とする。日本の73条の2のような「重大な過失」「療養指示不服従」まで広げた裁量的制限とは射程が異なる
加入者が故意により障害の原因となる事故を生じさせた場合等について給付を制限する。日本と同じく制限事由を限定列挙する構造をとる
犯罪行為等により保険事故を招いた場合、給付の全部又は一部を拒否できると定める。「ganz oder teilweise(全部又は一部)」という裁量の幅の置き方が日本の本条と極めて近い
重罪の遂行に関連して生じた障害等を障害認定の判断で考慮しないと定める。日本のような『重大な過失』一般を制限事由とはしない点で射程が狭い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 無免許で原付を運転して電柱に激突し、下肢に後遺障害が残ったとしたら、障害厚生年金はどうなるのか。無免許運転は故意の犯罪行為なので73条の2の射程に入る。ただし条文は「行わないことができる」であり、全額不支給が当然に確定するわけではない。争点は、犯罪行為と障害との因果関係の強さ、そして制限の程度が過大でないかに移る。ここを分けて主張できるかどうかで、手元に残る額が変わる
- 医師から禁酒を厳命されたのに飲み続け、肝機能が悪化した。増悪した部分について給付制限が検討される。カルテに残る指導の記録が、そのまま認定資料になる
- 障害厚生年金の裁定通知に「支給停止」と書かれていた。理由は数行だけ。処分があったことを知った日の翌日から3か月を過ぎると、社会保険審査官への審査請求ができなくなる。残された時間でカルテ、実況見分調書、主治医の意見書を取り寄せ、重大な過失の認定根拠を崩せるかを判断しなければならない
- うつ病で通院していた家族が自ら命を絶った。遺族が「自殺だから年金は出ない」と思い込んで請求そのものを諦めることがある。だが自殺は日本の刑法上の犯罪ではなく、73条の2が制限事由とする「故意の犯罪行為」には当たらない。恐れて申請しないことが、最も高くつく選択になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 通知書の理由欄を撮影し、三つの事由(故意の犯罪行為・重大な過失・療養指示不服従)のどれが使われたかを特定する2. 事故記録、実況見分調書、診断書、カルテ、通院履歴を取り寄せ、認定の前提事実を洗い直す3. 処分があったことを知った日の翌日から3か月以内に社会保険審査官へ審査請求する(厚生年金保険法90条) 4. 主張は「制限すべきでない」と「制限しても一部にとどめるべき」の二段構えで組む。前者が通らなくても後者で額が戻る
訴えられた側:制限事由に該当しうる行為をしてしまった側の動き方。1. 請求を諦めない。制限は裁量であり、全部不支給は例外的な処理だ2. 犯罪行為や過失と障害との因果関係が間接的なら、その距離を経緯書で具体的に示す3. 療養指示不服従を疑われる場合は、従えなかった正当な理由(副作用、経済的困難、症状による判断力低下)を主治医の意見書で裏づける4. 提出前に社会保険労務士または弁護士に構成を点検してもらう
時効(請求できる期限):本条自体に期限の定めはない。効いてくるのは争う側の期限で、社会保険審査官への審査請求は処分があったことを知った日の翌日から3か月以内、社会保険審査会への再審査請求は決定書謄本が送付された日の翌日から2か月以内。取消訴訟は審査請求の決定を経た後に提起する(審査請求前置)。年金給付を受ける権利自体の消滅時効は5年(厚生年金保険法92条)(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:本条は「行わないことができる」という文言から、要件該当後の効果を実施機関の裁量に委ねた規定と解される。したがって制限の要否と程度の双方が裁量統制の対象となり、裁量権の逸脱・濫用があれば処分は違法となる。
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