厚生年金保険法 第79条の11(秘密保持義務)
クイックジャンプ
運用職員は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
この条文の基本情報
秘密保持義務とは何ですか?
定義秘密保持義務とは、厚生年金保険法第79条の11に定められた規定で、「運用職員は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 厚生年金保険法第79条の11(秘密保持義務)は、日本の厚生年金保険法に含まれる条文です。
- 厚生年金保険法第79条の11の条文原文は「運用職員は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。」で始まります。
- 厚生年金保険法第79条の11は第四章の二に置かれています。
- 厚生年金保険法の公布日は昭和29年5月19日です。
- 厚生年金保険法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 厚生年金保険法第79条の11の前の条は厚生年金保険法第79条の10です。
- 厚生年金保険法第79条の11の次の条は厚生年金保険法第79条の12です。
- 厚生年金保険法第79条の11には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第79条の11 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115 - 本サイト収録
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第79条の11(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/329AC0000000115/79_11
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点厚生年金保険法79条の11は、運用職員が職務上知り得た秘密を漏らすことに加え、自ら利用する「盗用」も禁止する。相手方に伝えなくても違反が成立する。
Q · 年金の積立金を運用している職員って、どこまで話しちゃいけないんですか?
漏らさなくても、自分で使えば「盗用」として違反です
厚生年金保険法79条の11は、運用職員に対し、職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならないと定めています。禁止されるのは外部への漏洩だけではなく、誰にも伝えずに自分でその情報を利用する行為も独立した違反類型です。守るべき対象は自分の担当分野に限られず、職務を通じて知った秘密全般に及びます。また本条の文言に退職後の定めはありませんが、運用職員は国家公務員であり、国家公務員法100条1項により退職後も守秘義務が継続します。
解説
二百兆円規模の厚生年金の積立金が、どの資産にどれだけ振り向けられるか。その決定過程を公表前に見ている職員が、厚生労働省には実在する。本条はその職員(運用職員、積立金の運用に係る事務に従事する者)に対し、職務に関して知り得た秘密を「漏らしてはならない」だけでなく「盗用してはならない」と重ねて命じる。効いてくるのは二語目だ。誰にも話さず、自分の口座で使うだけでも違反になる。多くの守秘義務規定は漏洩しか禁じておらず、自己利用の規制は金融商品取引法のインサイダー規制など別の枠に委ねられている。本条はその隙間を、公務員の職務規律そのもので塞いだ。あなたが給与明細で天引きされている保険料の行き先を、市場より先に知る者がいる。その者の口と手を同時に縛る一文が、ここにある。
法的な位置づけ
厚生年金保険法79条の11は、積立金の運用に係る事務に従事する運用職員に対し、職務に関して知り得た秘密の漏洩および盗用を禁止する規定である。国家公務員法100条1項が定める一般的な守秘義務に対し、相手方に伝えない自己利用型の情報利用を明文で違反類型に加えた点に特色がある。
手順
- 1.その情報が「秘密」に当たるかを先に判定する 公知かどうか(非公知性)と、実質的に保護に値するかどうか(実質秘)の二段階で切り分ける。文書に「秘」の表示があることだけを根拠に判断しない。逆に表示がなくても非公知の運用情報は秘密に当たり得る
- 2.想定される行為が「漏洩」か「盗用」かを分けて考える 外部に伝える行為は漏洩、誰にも伝えず自ら利用する行為は盗用として、本条ではいずれも独立して禁止される。自己利用は国家公務員法100条1項の文言では明示されておらず、本条固有の射程であることを理解しておく
- 3.外部からの照会・取材は窓口を一本化し記録を残す 個人で回答せず広報・所管窓口へ回す運用を徹底する。沈黙や否定の仕方そのものが情報になるため、接触の日時・相手・質問内容を記録し、対応履歴を組織で共有する
- 4.公表前情報のアクセス範囲と管理体制を書面化する 資産配分の見直しなど公表前情報について、アクセス権者の限定、持ち出し制限、公表日までの取扱い手順を文書化する。個人の判断に委ねない設計にすることが違反の予防になる
- 5.退職・転職の前に持ち出せない情報の線引きを紙にする 方法論や判断の枠組みまでは語れても、個別の銘柄や配分の数字は退職後も外に出せない。国家公務員法100条1項は退職後も守秘義務が続くと明記しているため、転職前に線引きを書面化しておく
よくある質問 AI による整理
Q1運用職員とは誰のことですか?
厚生年金保険法上、積立金の運用に係る事務に従事する者を指します。国家公務員であるため、本条に加えて国家公務員法100条1項の守秘義務も重ねて適用されます。
Q2厚生年金の積立金は誰が運用しているの?
積立金は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に寄託して運用される仕組みです。厚生年金保険法79条の2以下が運用の目的と枠組みを定めています。
Q3秘密を漏らしたら罰則はありますか?
運用職員は国家公務員であり、守秘義務違反には国家公務員法109条の刑事罰が定められています。加えて懲戒処分の対象にもなります。
Q4記者から取材されたらどう答えればいいですか?
肯定も否定も情報になり得るため、個別回答を避け、広報窓口へ一本化するのが原則です。接触の日時と内容を記録に残すことで、後日の疑義に対応できます。
Q5情報公開請求が「秘密」で不開示になったら?
「秘」の指定があるだけでは足りず、非公知かつ実質的に保護に値するか(実質秘)が問われます。この一点に絞って審査請求を行うのが有効です。
Q6内部の不正を通報したら守秘義務違反になりますか?
外部に出す前に、行政機関内部の通報窓口へ記録の残る形で申し出ておくことで、後から守秘義務違反と構成される筋を細くできます。順序が結論を左右します。
Q7年金運用の情報漏洩で損害賠償はできますか?
公務員の職務上の行為による損害は国家賠償法1条のルートとなり、請求先は国であって職員個人ではありません。この点を最初に押さえる必要があります。
Q8懲戒処分を受けたらいつまでに争えますか?
国家公務員法90条の2により、人事院への審査請求は処分説明書を受け取った日の翌日から起算して三月以内です。期間を過ぎると争えなくなります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1秘密ってどこまでが秘密なんですか?「秘」ってハンコが押してあれば全部ダメ?
違う。判例は、公務員の守秘義務にいう秘密とは非公知の事実であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値するものを指すとしている(実質秘、徴税トラの巻事件)。79条の11の「秘密」も同様に解される。実務のポイント:不開示決定の理由が「秘」の指定だけを根拠にしている場合、審査請求では実質秘に当たるかを正面から突く。役所側が具体的な保護の必要性を再構成できず、結果的に開示に転じる例がある
Q2漏らしてはいません。自分で株を買っただけです。これも引っかかりますか?
引っかかる。79条の11は「漏らし、又は盗用してはならない」と二つを並べており、自己利用そのものが独立した違反類型になっている。国家公務員法100条1項が禁じるのは漏らす行為であり、そこには自己利用が明示されていない。実務のポイント:金融商品取引法のインサイダー規制は上場会社の関係者を主な対象としており、運用側の職員の自己利用は必ずしもそこで捕まらない。この条文はその隙間を職務規律の側から塞いでいる
Q3役所を辞めたら、もう自由に話していいんですよね?
自由にはならない。79条の11の文言に退職後の定めは書かれていないが、運用職員は国家公務員であり、国家公務員法100条1項は「その職を退いた後といえども同様とする」と明記し、違反には同法109条の刑事罰がある。実務のポイント:転職の面接や社内の初回ミーティングで前職の非公開情報を語ってしまう事故が最も多い。守れる話は方法論と判断の枠組みまで、個別の銘柄や配分の数字は退職後も一生外に出せない、この線引きを転職前に紙に書いておく
間違えやすい点 AI による整理
- 「誰に漏らしたのか」を最初に問う人が多いが、その問いの立て方自体がずれている。本条は相手方を一切限定していないうえ、そもそも誰にも渡さず自分で使う「盗用」を漏洩と同列に禁じている。相手を特定できなくても違反は成立しうる
- 守秘義務があること自体は誰でも知っている。だが射程の広さまでは意識されていない。守るべき対象は自分の担当分野の秘密(いわゆる職務上の秘密)に限られず、職務を通じて知った秘密全般に及ぶ。隣の係の話を廊下で聞いた、その情報も同じ線の内側にある
- あなたから見れば「業界の一般的な見方を同業者に話しただけ」でも、法律から見れば「非公知の情報を外部に出した」になりうる。判断の分かれ目は話し手の主観ではなく、その情報が公知かどうか、実質的に保護に値するかどうか。この落差を甘く見た人から順に、懲戒の場に立たされる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 禁止される行為 | 厚年法79条の11:漏洩に加え、自ら利用する「盗用」も禁止 | 国家公務員法100条1項:秘密を漏らす行為を禁止 金融商品取引法のインサイダー取引規制:未公表の重要事実に基づく売買等を規制 |
| 名宛人 | 積立金の運用に係る事務に従事する運用職員 | 国家公務員一般(退職者も含む) 上場会社の関係者・情報受領者等 |
| 相手方の特定 | 相手方を限定せず、相手方が存在しない自己利用でも成立し得る | 漏らす相手方の存在が前提 取引行為そのものが規制対象で相手方の特定は不要 |
| 退職後の効力 | 本条の文言に退職後の定めはない | 「その職を退いた後といえども同様とする」と明記 在職・離職を問わず情報受領者として規制対象になり得る |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も公務員の守秘義務を一般法で定めるが、労働基金の運用職員に対して漏洩と自己利用を並列して明文禁止する条文構成は採っていない
韓国も国家公務員法で守秘義務を定め、国民年金基金の運用関係者には別途の秘密保持規律が及ぶ。自己利用型の規制は主として資本市場法制側で処理される
ドイツは連邦公務員法で守秘義務を包括的に定め、職務上の知見の私的利用は職務専念義務・利益相反規制の枠で扱われる
米国は連邦職員による秘密情報の開示を刑事罰付きで禁止し、自己利用型の行為は別途 STOCK Act 等のインサイダー規制で捕捉する二本立ての構造をとる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 運用職員として、積立金の資産配分見直しに関する内部資料に日常的に触れている。同期との飲み会で「今のうちに株、買っといた方がいい?」と半分冗談で聞かれる。公表まであと三週間。言葉で答えなくても、否定の仕方ひとつが情報になる場面が、この条文の射程である
- もし、退職した運用職員が民間の運用会社の面接で「前職ではこの資産をこう見ていた」と実績として語り始めたら、どうなるか。本条の文言に退職後の定めは書かれていないが、運用職員は国家公務員であり、国家公務員法100条1項は退職後も守秘義務が続くと明記している。語った瞬間に、経歴の武器が刑事責任の入口に変わる
- 記者から夜に電話が入る。「基本ポートフォリオ、動きますよね」。沈黙も肯定として記事になる
- 年金の運用損が大きく報じられた日、被保険者として情報公開請求をかけた。返ってきたのは不開示決定で、理由欄には「秘密」の二文字だけ。ここで引き下がるか、実質的に保護に値する秘密なのかを審査請求で問い直すかで、手に入る資料の量が変わる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 疑いを持ったら、公表日と市場の値動き、報道の初出時刻を時系列で突き合わせて記録する2. 厚生労働省に情報公開請求をかけ、不開示なら理由の実質を審査請求で問う3. 運用職員は国家公務員なので、国家公務員法100条1項違反として通報の筋が立つ4. 損害賠償は国家賠償法1条のルートになり、請求先は国であって職員個人ではない点を最初に押さえる
訴えられた側:1. まず情報の性質を切り分ける。すでに公知だった、または実質的に保護に値しない情報であれば、そもそも本条の「秘密」に当たらない2. 処分理由が「漏洩」なのか「盗用」なのかを文書で特定させる。両者は要件も反証の仕方も違う3. 懲戒処分を受けた場合、人事院への審査請求は処分説明書の受領から三月以内(国家公務員法90条の2) 4. 刑事の可能性がある段階では、聴取に応じる前に弁護士へ
時効(請求できる期限):本条自体に期間の定めはない。刑事責任が問われる場合の公訴時効は法定刑に応じて決まる(刑事訴訟法250条)。漏洩による損害の賠償を国に求める場合は国家賠償法1条により、損害および加害者を知った時から3年、行為の時から20年(民法724条)。懲戒処分を争う場合は処分説明書の受領から三月以内(国家公務員法90条の2)。厚生年金保険法の罰則章における本条違反の処罰規定の有無と法定刑は、最新の改正状況をご確認ください
学説
通説:本条の「秘密」は、国家公務員法100条1項の解釈と同様に、非公知かつ実質的に保護に値するもの(実質秘)と解される。形式的な秘密指定のみでは足りず、保護の必要性が実質的に審査される
本条固有性の理解:「盗用」を並列に禁じたことにより、相手方への伝達を要件としない自己利用型の情報利用が職務規律の側から規制される。金融商品取引法のインサイダー規制が主として上場会社の関係者を対象とすることで生じる規制の隙間を、公務員法制の側から補う位置づけと理解される
改正沿革 AI による整理
- 積立金の運用に関する章の整備に伴う新設と解されるが、制定年次は要検証 運用職員の行為制限と秘密保持義務は、厚生年金保険法における積立金の運用に関する規定群の整備に伴って置かれたものと考えられる。ただし新設年次および改正の有無について確証がないため、人的検証を要する
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める