厚生年金保険法 第79条の2(運用の目的)
クイックジャンプ
積立金(年金特別会計の厚生年金勘定の積立金(以下この章において「特別会計積立金」という。)及び実施機関(厚生労働大臣を除く。次条第三項において同じ。)の積立金のうち厚生年金保険事業(基礎年金拠出金の納付を含む。)に係る部分に相当する部分として政令で定める部分(以下「実施機関積立金」という。)をいう。以下この章において同じ。)の運用は、積立金が厚生年金保険の被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の保険給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたつて、厚生年金保険事業の運営の安定に資することを目的として行うものとする。
この条文の基本情報
運用の目的とは何ですか?
定義運用の目的とは、厚生年金保険法第79条の2に定められた規定で、「積立金(年金特別会計の厚生年金勘定の積立金(以下この章において「特別会計積立金」という。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 厚生年金保険法第79条の2(運用の目的)は、日本の厚生年金保険法に含まれる条文です。
- 厚生年金保険法第79条の2の条文原文は「積立金(年金特別会計の厚生年金勘定の積立金(以下この章において「特別会計積立金」という。」で始まります。
- 厚生年金保険法第79条の2は第四章の二に置かれています。
- 厚生年金保険法の公布日は昭和29年5月19日です。
- 厚生年金保険法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 厚生年金保険法第79条の2の前の条は厚生年金保険法第79条です。
- 厚生年金保険法第79条の2の次の条は厚生年金保険法第79条の3です。
- 厚生年金保険法第79条の2には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第79条の2 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115 - 本サイト収録
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第79条の2(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/329AC0000000115/79_2
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点厚生年金保険法79条の2は、年金積立金の運用を専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から安全かつ効率的に行うと定める。株価対策など他の目的での運用は認められない。
Q · 年金のお金を政府が株価対策に使うのって、法律的にアリなんですか?
株価対策そのものを目的とする運用は本条に反します
厚生年金保険法79条の2は、積立金の運用を「専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために」行うと定めます。したがって株価の下支えや特定産業への資金誘導そのものを目的とする運用は、他事考慮として排除されます。ただし基本ポートフォリオにおける株式比率の見直しは「長期的な観点から、安全かつ効率的に」という手法基準の判断として説明されうるため、実務上の評価は分かれています。
解説
毎月の給与から天引きされる厚生年金保険料。その全額がその月の年金給付に消えるわけではなく、一部は積立金として市場で運用されている。総額200兆円超、世界最大級の年金基金だ。押さえるべきは、この巨額の資金に法律が一本の鎖をかけている点である。本条は運用の目的を「専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために」と定める。専ら、である。景気対策として株価を買い支える、政策的に特定産業へ資金を誘導する、政権の都合で短期の成績を演出する。いずれも条文が排除する他事考慮(本来考えてはいけない事情を判断材料に混ぜること)にあたる。さらに「長期的な観点から、安全かつ効率的に」と続く。単年度で兆単位の評価損が出ても、それ自体が違法になるわけではない。むしろ短期の損益に反応して基本ポートフォリオを崩す方が、本条の趣旨から遠い。年金運用の報道をあなたが評価する物差しは、儲かったか損したかではなく、誰のために動いたかである。
法的な位置づけ
厚生年金保険法第79条の2は、年金積立金の運用目的を定める規定である。対象は年金特別会計の厚生年金勘定の積立金(特別会計積立金)と、政令で定める実施機関積立金を含む。運用は専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から安全かつ効率的に行われ、厚生年金保険事業の運営の安定に資することを目的とする。
よくある質問 AI による整理
Q1年金積立金とは何ですか?
被保険者から徴収された保険料の一部が給付に充てられず残ったもので、将来の保険給付の財源として保有される資金です。個人の口座ではなく制度全体の共有財源で、厚生年金保険法79条の2が運用目的を定めています。
Q2GPIFとは何ですか?誰が運用しているのですか?
年金積立金管理運用独立行政法人の略称で、特別会計積立金の運用を担う法人です。実施機関積立金は各共済の実施機関が運用しますが、いずれも厚生年金保険法79条の2の目的規定の下に置かれます。
Q3「専ら被保険者の利益のために」とはどういう意味ですか?
運用判断の材料を被保険者の利益に一元化するという意味です。景気対策、地域振興、特定産業支援といった目的を混ぜることは他事考慮として排除されます。「主として」ではなく「専ら」である点が要です。
Q4年金積立金の運用方針は誰が決めるのですか?
厚生労働大臣等が定める積立金基本指針とモデルポートフォリオを踏まえ、厚生労働大臣の中期目標と運用主体の中期計画を経て基本ポートフォリオが決まります。決定過程は社会保障審議会年金部会の資料で追えます。
Q5年金積立金の運用状況はどこで確認できますか?
運用主体が公表する業務概況書や運用状況の公表資料で、基本ポートフォリオと実際の資産構成、累積収益額、運用手数料率を確認できます。四半期の損益額だけを見ると評価を誤ります。
Q6年金積立金の運用は誰が監視しているのですか?
中期目標・中期計画による統制、財政検証、国会審議、情報公開、審議会での議論が監視の回路です。厚生年金保険法79条の2は、その監視が何を基準に行われるかを示す物差しにあたります。
Q7年金積立金の運用損で損害賠償を請求できますか?
個別の運用損を理由とする賠償請求は認められにくいのが実情です。本条が求めるのは結果としての黒字ではなく目的と手法の適正さであり、争点は目的外考慮の有無や基本ポートフォリオからの逸脱に置かれます。
Q8年金積立金は元本保証で運用すべきではないのですか?
本条は「安全かつ効率的に」と定め、安全性一辺倒で必要な収益を放棄する保守化も封じています。財政検証が前提とする実質的な運用利回りを満たせるかが判断軸で、元本保全のみを求める運用は目的に適合しません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1年金運用で何兆円も損したってニュース、私がもらう年金は減るんですか?
単年度の評価損が給付額に直結する仕組みにはなっていない。給付水準は少なくとも5年ごとの財政検証(厚生年金保険法 第2条の4)と給付調整の仕組みを通じて決まる。実務のポイント:報道は下落局面だけを大きく扱う。見るべきは四半期の損益ではなく、自主運用開始以降の累積収益額と年率の実質利回りである。この二つを押さえている人は、赤字報道の場で議論の主導権を取れる
Q2政府が株価対策で年金のお金を使ってるって、本当ですか?
株価対策それ自体を目的とする運用は、本条の「専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために」に反する。もっとも、基本ポートフォリオにおける株式比率の引き上げは長期的な効率性の判断として説明されており、実務上、評価は分かれている。実務のポイント:資産構成は厚生労働大臣の中期目標と法人の中期計画を経て決まる。監視したいなら社会保障審議会年金部会の配付資料を追う。決定は市場ではなく審議会で先に見える
Q3公務員や私学の共済も、同じルールで運用されてるんですか?
被用者年金の一元化により、実施機関の積立金のうち厚生年金保険事業に係る部分(実施機関積立金)も本条の目的規定の下に置かれた。ただし対象範囲は政令で定まり、運用主体は各共済のままである。実務のポイント:積立金基本指針とモデルポートフォリオにより、各実施機関の資産構成は事実上そろえられている。共済独自色を期待して勤務先を選ぶ意味はほぼない
間違えやすい点 AI による整理
- 積立金が保険料の一部であることは多くの人が知っている。だが深刻なのはその先だ。積立金はあなた個人の持分ではなく、制度全体の共有財源である。「自分が払った分は自分の口座にある」という感覚で運用損失を語ると、議論の土俵を間違える。日本の公的年金は現役世代の保険料が現在の受給者へ回る仕組みが主軸で、積立金が担うのは給付財源の一部にとどまる
- 「年金運用で損したら誰が責任を取るのか」という問いの立て方自体がずれている。本条が求めるのは結果としての黒字ではなく、目的と手法の適正さだ。追及の回路は個別の損害賠償ではなく、中期目標と中期計画、財政検証、国会審議、情報公開である。責任者を探す発想のままでは、動かせるレバーに一生たどり着けない
- あなたから見れば積立金は「老後のために積み立てたお金」だが、法律から見れば「将来の保険給付の貴重な財源」であり、運用主体はその受託者にすぎない。この落差を理解しないまま「自分の金をどう使ったんだ」と迫っても議論はかみ合わない。逆に受託者責任という言葉を軸に据えた瞬間、行政側の説明義務のレベルが一段上がる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律の対象 | 積立金の運用そのものの目的と手法基準(79条の2) | 制度全体の財政の現況及び見通しの作成(2条の4) 保険料の負担割合と徴収(82条) |
| 名宛人 | 運用主体(運用法人・実施機関) | 政府(厚生労働大臣) 事業主と被保険者 |
| 被保険者から見た論点 | この金は誰のために動いたのか(目的の適正さ) | 将来の給付水準は維持できるのか(財政の持続性) 毎月いくら負担しているのか(原資の出所) |
| 動かせるレバー | 中期目標・中期計画への意見、情報公開請求、審議会での議論 | 財政検証公表後のパブリックコメント、国会審議 標準報酬の適正化、法改正による料率変更 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は基金の運用範囲を法律で列挙する方式が中心で、日本のような「専ら被保険者の利益のために」という目的の一元化を一文で置く条文構造ではない
韓国も基金の管理・運用について長期的に安定した収益の増大を図る旨を法律で定め、基金運用委員会による統制構造を置く。目的規定+委員会統制という二層構造は日本と類似
ドイツは賦課方式が徹底しており大規模な積立金を前提としない。資金の運用については損失回避・適正収益・十分な流動性という三要素を定めるが、株式による長期運用を前提とする日本とは資産規模も設計思想も異なる
米国の公的年金信託基金は原則として特別発行の国債で運用され市場運用を行わない。他方、企業年金の受託者には ERISA の exclusive benefit rule が課され、本条の「専ら被保険者の利益のために」と発想を共有する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 株価が急落した翌週、閣僚が「年金積立金で市場を支える」と発言したとしたら、法的にはどう扱われるのか。本条の「専ら被保険者の利益のために」に照らせば、株価対策そのものを目的とする運用は目的外である。ただし基本ポートフォリオの見直しが結果として株式比率を上げる場合、それは「効率性」の判断だと説明されうる。実務上、この線引きは解釈が分かれている
- ニュースの見出しに「年金運用、四半期で十数兆円の赤字」と出る。あなたの受給額が即座に減るわけではない。給付水準を決めるのは単年度の損益ではなく、少なくとも5年ごとの財政検証(厚生年金保険法 第2条の4)だ
- 共済組合の資金運用担当者として、上層部から「地元経済に資する投資先を優先できないか」と打診された。実施機関積立金も本条の目的規定の下にある以上、地域振興は考慮してよい事情ではない。断る根拠は担当者個人の意見ではなく、条文そのものである。この一文を稟議書に引用できるかどうかで、あなたの立場の強さが変わる
- 勤め先の労働組合で年金運用について会社側と意見交換することになり、資料提出まで残り10日。GPIFの業務概況書から基本ポートフォリオと実際の資産構成の乖離、累積収益額、運用手数料率を拾い、「専ら被保険者の利益」という軸で論点を三つに絞る。損益額だけを並べた資料は、その場で反論されて終わる
取るべき行動
被害を受けた側:1. GPIFの業務概況書で、基本ポートフォリオと実際の資産構成の乖離、累積収益額、運用手数料率を確認する2. 単年度の損益ではなく、財政検証が前提とする実質的な運用利回りを満たしているかで評価する(最新の財政検証の前提値をご確認ください) 3. 疑義があれば独立行政法人等情報公開法に基づく開示請求を行う(開示決定は原則30日以内) 4. 個別の運用損を理由とする損害賠償は認められにくい。実効的な回路は国会審議、社会保障審議会年金部会への意見、パブリックコメントである
訴えられた側:1. 運用に携わる側なら、判断の根拠を本条の目的(安全性、効率性、長期性)に還元して文書化しておく2. 政治的配慮や地域振興、特定産業支援といった要請を受けた場合、他事考慮として排除した経緯を議事録に残す3. 基本ポートフォリオからの乖離は許容幅の範囲内かを常時記録し、逸脱時の復元手続を示す4. 実施機関積立金の範囲は政令で定まる。自組織のどの資産が本条の適用対象かを事前に確定させておくことが、後日の説明責任の分水嶺になる
時効(請求できる期限):本条自体に特定の時効はない。関連する期限として、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律に基づく開示決定は原則30日以内、財政の現況及び見通しの作成は少なくとも5年ごと(厚生年金保険法 第2条の4)。国家賠償を検討する場合は民法166条、724条の消滅時効が適用される
学説
通説的理解:本条は、目的の一元化(専ら被保険者の利益のために)と手法の基準(長期的な観点から、安全かつ効率的に)という二層構造をとる。前者が政策的活用の誘惑を遮断し、後者が過度な保守化と短期的な運用方針変更の双方を抑制すると解されている。
改正沿革 AI による整理
- 自主運用への移行期(改正年は要検証) 旧資金運用部への預託義務が廃止され、年金積立金を市場で自主運用する体制へ移行した際に、運用の目的規定として本条の枠組みが置かれたとみられる。具体的な改正法および施行年は人的検証が必要
- 被用者年金一元化(施行は平成27年10月) 実施機関の概念が導入され、共済各組合等が保有する積立金のうち厚生年金保険事業に係る部分を実施機関積立金として本条の対象に取り込む改正が行われた。特別会計積立金との二本立て構造はこの改正に由来する。改正法の名称および条文の具体的文言変更は人的検証が必要
改正の年表
- 1.平成13年(2001年)前後 改正:財政投融資改革により旧資金運用部への預託義務が廃止され、年金積立金を市場で自主運用する体制へ移行した時期に、運用の目的規定としての枠組みが置かれたとみられる。改正法の名称・条番号の対応関係は人的検証が必要
- 2.平成27年(2015年) 改正:被用者年金一元化の施行(同年10月)に伴い実施機関の概念が導入され、共済各組合等が保有する積立金のうち厚生年金保険事業に係る部分が実施機関積立金として本条の対象に取り込まれた。特別会計積立金との二本立て構造はこの改正に由来する
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める