特許法 第104条の3(特許権者等の権利行使の制限)
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- 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。
- 2.前項の規定による攻撃又は防御の方法については、これが審理を不当に遅延させることを目的として提出されたものと認められるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。
- 3.第百二十三条第二項の規定は、当該特許に係る発明について特許無効審判を請求することができる者以外の者が第一項の規定による攻撃又は防御の方法を提出することを妨げない。
この条文の基本情報
特許権者等の権利行使の制限とは何ですか?
定義特許権者等の権利行使の制限とは、特許法第104条の3に定められた規定で、「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認めら…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 特許法第104条の3(特許権者等の権利行使の制限)は、日本の特許法に含まれる条文です。
- 特許法第104条の3の条文原文は「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認めら…」で始まります。
- 特許法第104条の3は第二節に置かれています。
- 特許法の公布日は昭和34年4月13日です。
- 特許法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 特許法第104条の3の前の条は特許法第104条の2です。
- 特許法第104条の3の次の条は特許法第104条の4です。
- 特許法第104条の3には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第104条の3 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121 - 本サイト収録
特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第104条の3(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000121/104_3
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点特許法104条の3は、特許侵害訴訟において当該特許が無効審判で無効にされるべきものと認められるとき、特許権者は相手方に権利を行使できないと定める無効の抗弁の規定である。
Q · 特許で訴えられたけど、その特許が無効かもしれないと思ったら、いちいち特許庁に無効審判を出すしかないの?
別途無効審判を経ず、侵害訴訟の中で特許無効を直接主張できます
特許法104条の3により、特許権侵害訴訟の被告は、当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものだと主張し、権利者の権利行使を阻止できます。これが「無効の抗弁」です。裁判所が特許登録そのものを取り消すわけではなく、その訴訟限りで差止め・損害賠償の請求を封じます。相手の出願日より前の先行技術(論文・公開特許・カタログ・製品など)を示し、新規性または進歩性の欠如を立証するのが典型的な戦い方です。ただし第2項により、審理を不当に遅延させる目的の主張は職権で却下されうるため、証拠は争点整理の早期に出し切るのが鉄則です。
解説
特許で「あなたの製品はうちの特許を侵害している、すぐ販売をやめろ、損害も払え」と訴えられたとする。多くの人はこう思い込む。特許が現に登録されている以上、その有効性を覆すには特許庁にわざわざ無効審判を起こすしかない、と。だが特許法104条の3は、その常識を真っ向から覆す。侵害訴訟のその法廷で、裁判官に向かって直接「この特許はそもそも無効にされるべきものだ」と主張できる。これが無効の抗弁だ。元になったのは2000年の最高裁キルビー判決で、それ以前は裁判所は特許の有効性に踏み込めないという建前が支配していた。今は違う。先行技術文献を一つ掘り当て、出願時点で新規性または進歩性がなかったと立証できれば、相手の特許権そのものが裁判の中で空中分解する。差止めも損害賠償も、根こそぎ請求を封じられる。訴えられた側にとって、これは最強の反撃カードである。
法的な位置づけ
特許法104条の3が定める無効の抗弁とは、特許権侵害訴訟の被告が、当該特許は無効審判により無効にされるべきものであると主張し、特許権者の権利行使を阻む防御方法をいう。裁判所は登録自体を遡及的に取り消すことはできないが、その訴訟限りで差止め・損害賠償の請求を制限できる。第2項は、審理を不当に遅延させる目的で提出された主張を職権で却下できると定める。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.相手特許の出願日を確認する 警告状または訴状を受け取ったら、まず相手の特許番号から出願日(優先日)を特定する。無効理由の判断は出願時点を基準にするため、この日付が反撃の起点になる
- 2.出願日より前の先行技術を徹底調査する 出願日より前に公開された論文・公開特許・カタログ・製品を探し、同一または類似の技術が存在したことを示す証拠を集める。自社の過去の販売記録やクラウドファンディングのページが決定的証拠になることもある
- 3.無効理由を弁理士と固める 新規性欠如・進歩性欠如・記載要件不備(サポート要件・実施可能要件)のどの無効理由で攻めるかを弁理士と確定する。複数の無効理由を組み合わせると立証が強固になる
- 4.争点整理の早期に証拠を提出する 主要な先行技術と無効理由は争点整理手続の早い段階で出し切る。第2項による却下リスクを消せるうえ、相手に反論の負担を早期に負わせ、訂正で逃げる余地を狭められる
- 5.無効審判を並行提起するか判断する 抗弁のみで戦うか、特許庁に無効審判も別途提起してダブルトラックで攻めるかを、コストと立証の確度から判断する。登録自体を遡及的に消したい場合は無効審判が必要になる
よくある質問 AI による整理
Q1無効の抗弁とは何ですか?
特許侵害訴訟の被告が、その特許は無効審判で無効にされるべきものだと主張し、権利者の差止め・損害賠償請求を封じる防御方法です。特許法104条の3が根拠で、別途無効審判を経る必要はありません。
Q2キルビー判決とは何ですか?
最判平成12年4月11日の通称で、無効理由が明らかな特許に基づく権利行使は権利の濫用にあたり許されないと示した先例です。この判例が2004年改正で104条の3として立法化されました。
Q3ダブルトラックとはどういう意味ですか?
特許庁の無効審判と、裁判所の無効の抗弁を並行して進められる二本立ての構造です。特許庁が有効と判断しても裁判所が無効と判断する食い違いが現実に起こりえます。
Q4先行技術とは何を指しますか?
特許の出願日より前に世に公開されていた技術情報です。学会論文、公開特許公報、製品カタログ、実際に販売された製品などが含まれ、新規性・進歩性を否定する証拠になります。
Q5訂正の再抗弁とは何ですか?
被告から無効の抗弁を出された特許権者が、訂正審判等で特許請求の範囲を限定し無効理由を回避したうえで、なお侵害が成立すると反論する再抗弁です。範囲を狭めすぎると被告製品が侵害から外れる危険もあります。
Q6パテントトロールに無効の抗弁は有効ですか?
有効な場合が多いです。特許を実施せず訴訟で稼ぐ主体は勝てない訴訟に深入りしない傾向があり、進歩性の薄い特許なら無効の抗弁を予告しただけで和解志向に転じることがあります。
Q7無効の抗弁と無効審判はどちらが有利ですか?
目的が異なります。無効の抗弁はその訴訟限りで権利行使を止め、無効審判は登録自体を遡及的に消滅させます。両者は並行でき、コストと立証の確度から使い分けを設計します。
Q8無効の抗弁が却下されるのはどんな場合ですか?
第2項により、審理を不当に遅延させる目的と認められる時機に後れた提出は、申立てまたは職権で却下されます。終盤に証拠を小出しにすると、内容が正しくても門前払いされる危険があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1特許庁に登録されてる特許なのに、裁判所が勝手に無効って判断していいんですか?
裁判所が特許登録そのものを取り消すわけではありません。104条の3が認めるのは、その訴訟限りで「無効にされるべきものだから権利行使はできない」と判断することです。登録を遡って消すには特許庁の無効審判(123条)が別途必要です。実務のポイント:この二本立てがダブルトラックで、裁判所が無効と見ても特許庁では有効が維持されることが現実に起こります。だからこそ、どちらの土俵で本丸を叩くかの選択が、勝敗とコストを大きく分けます
Q2無効の抗弁って、訴えられてから慌てて出しても間に合いますか?
原則として侵害訴訟の中でいつでも主張できますが、第2項に注意が必要です。審理を不当に遅らせる目的と認められると、裁判所が却下できます。証拠の収集が遅れるほど却下リスクが上がります。実務のポイント:実務では争点整理手続が終わる前に主要な先行技術を出し切るのが鉄則です。終盤で『実はこんな証拠が』と小出しにすると、内容が正しくても時機に後れたとして門前払いされ、最強カードが手元で腐ります
Q3うちみたいな小さい会社でも、大企業の特許を無効だって主張できるんですか?
できます。104条の3に会社の規模の要件はありません。被告として訴えられた立場であれば、相手の特許の出願日より前の先行技術を示して無効理由を立証すればよいだけです。実務のポイント:特許訴訟は資金力勝負に見えますが、勝敗を決めるのは多くの場合たった一枚の先行技術文献です。相手の出願前に同じ技術が論文やカタログに載っていれば、その一点で大企業の特許も崩せます。まず徹底した先行技術調査に投資するのが費用対効果として最も高い
間違えやすい点 AI による整理
- 「特許庁に登録された特許は有効が確定しているから、裁判では侵害したかどうかしか争えない」と思っている人が多い。実は逆で、登録されていても出願審査の見落としは珍しくなく、侵害訴訟の被告は無効理由を直接突ける。登録という事実は、有効性の絶対的な保証ではない
- 無効の抗弁は知っていても、「出せばいつでも認められる」とその使い方を軽く見ている人がいる。実際は第2項という落とし穴がある。審理を不当に遅らせる目的と見なされれば、裁判所は職権でその抗弁を却下できる。切り札を握っていても、出すタイミングを誤れば抜けない。早期の証拠提出こそが命綱だ
- 「無効審判(特許庁)と無効の抗弁(裁判所)のどちらか一方を選ばなければならない」と誤解されがちだが、両者は並行して進められる。これがダブルトラックと呼ばれる構造で、特許庁が有効と判断しても裁判所が無効と判断する食い違いが現実に起こりうる。どちらの土俵でどう戦うかを設計するのが戦略の核心
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 手続の場所 | 104条の3無効の抗弁:侵害訴訟の同じ法廷(裁判所) | 123条 無効審判:特許庁 100条 差止請求:侵害訴訟の中で権利者が行使 |
| 効果 | その訴訟限りで権利行使を制限(登録は残る) | 審決確定で特許を遡及的に無効化(125条) 侵害の停止・予防を命じる(104条の3で封じられる対象) |
| 誰が使うか | 訴えられた被告(無効審判請求適格者以外も可、第3項) | 利害関係人(123条2項) 特許権者・専用実施権者 |
| 並行の可否 | 無効審判と並行可能(ダブルトラック、168条で中止調整) | 侵害訴訟と並行可能、確定後は104条の4で蒸し返し制限 無効の抗弁が認められれば行使不可 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は智慧財産及商業法院が侵害訴訟の中で特許の無効事由を自ら判断できる。日本の無効の抗弁と機能的にほぼ同型
韓国は明文規定ではなく、明白に無効な特許の権利行使は権利濫用にあたるとする全員合議体判決で同種の帰結を導く
ドイツは無効を連邦特許裁判所の専権とし、侵害訴訟の裁判所は無効を判断しない。日本と正反対のバイフォーケーション
米国は無効を侵害訴訟の抗弁として正面から認める。日本の104条の3と最も近い構造
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 中小メーカーのあなたが、大手から「自社特許を侵害している」と内容証明を突きつけられた。販売差止めを食らえば事業が止まる。だが相手の特許の出願日より前に、同じ技術が学会論文や他社カタログに載っていたら? その一枚を法廷に出すだけで、相手の権利行使は104条の3で丸ごと止まる。資力で負けていても、先行技術調査で勝てる
- もしあなたがソフトウェアのスタートアップで、いわゆるパテント・トロール(特許を使わず訴訟だけで稼ぐ主体)から警告状を受け取ったら、どう動くか。相手は和解金狙いで強気だが、その特許の進歩性が薄ければ、無効の抗弁を予告した瞬間に相手のトーンが変わる。勝てない訴訟にトロールは深入りしない
- 特許権者として訴えた側のあなたが、被告から無効の抗弁を出された。慌てる必要はない。訂正審判で特許請求の範囲を限定し、無効理由を回避する訂正の再抗弁で切り返す道がある。ただし訂正で範囲を狭めれば、今度は被告製品が範囲外に逃げる恐れもある、その綱引きが勝負どころ
- あなたの会社が無効審判を特許庁に起こすか、それとも侵害訴訟の中で無効の抗弁だけで戦うか迷っている。残された準備期間はわずか。第2項があるため、争点整理が終わった終盤で無効の抗弁を持ち出すと、時機に後れたとして却下されかねない。証拠は早期に出し切るのが鉄則
取るべき行動
被害を受けた側:1. あなたが特許権者として訴え、被告から無効の抗弁を出された場合、まず主張された無効理由(新規性欠如・進歩性欠如・記載不備など)を正確に特定する2. 訂正審判または訂正の再抗弁で、特許請求の範囲を限定し無効理由を回避できないか弁理士と検討する3. ただし範囲を狭めると被告製品が侵害から外れる恐れがあるため、訂正後も侵害が成立する設計かを同時に検証する4. 特許庁での無効審判の進行状況も睨み、ダブルトラックでの判断の食い違いに備える
訴えられた側:1. 侵害で訴えられた、または警告を受けたら、相手特許の出願日を確認し、それより前の先行技術(論文・公開特許・カタログ・製品)を徹底調査する2. 新規性・進歩性・記載要件のどの無効理由で攻めるかを弁理士と固める3. 証拠は争点整理の早期に提出する、第2項による却下を避けるため終盤の小出しは厳禁4. 無効審判を別途特許庁に起こすか、抗弁のみで戦うかをコストと立証の確度で判断する
時効(請求できる期限):無効の抗弁の提出自体に特定の時効はない。ただし第2項により、審理を不当に遅延させる目的と認められる時機に後れた提出は、申立てまたは職権で却下されうる。実務上は争点整理手続の段階で証拠を出し切るのが鉄則。なお無効審判で有効が確定した後の蒸し返しは特許法104条の4により制限される(最新の運用状況をご確認ください)
学説
通説:104条の3は、無効理由を判断する権限が特許庁の専権であるとの建前に対し、侵害訴訟の一回的解決を優先して裁判所に権利行使制限の判断を認めた規定と解される。判断は訴訟限りの効力にとどまり、登録の遡及的消滅は無効審判に委ねられる
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年) 104条の3を新設。最高裁キルビー判決(最判平成12.4.11)が認めた『無効理由が明らかな場合の権利行使制限』を立法化し、明白性の要件を外してあらゆる無効理由を侵害訴訟で主張できるようにした。平成17年4月1日施行
- 平成23年(2011年) 第3項を追加し、無効審判を請求できる者以外の者も無効の抗弁を提出できることを明確化。あわせて無効審決確定後の主張を制限する104条の4を新設し、紛争の蒸し返しを防ぐ仕組みを整備した
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 新設:104条の3を新設。最高裁キルビー判決(最判平成12.4.11)が認めた無効理由が明らかな場合の権利行使制限を立法化し、明白性の要件を外してあらゆる無効理由を侵害訴訟で主張できるようにした。平成17年4月1日施行
- 2.平成23年(2011年) 改正:第3項を追加し、無効審判を請求できる者以外の者も無効の抗弁を提出できることを明確化。あわせて無効審決確定後の主張を制限する104条の4を新設し、紛争の蒸し返しを防ぐ仕組みを整備した
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