行政事件訴訟法 第37条の4(差止めの訴えの要件)
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- 差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。
- 2.裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案するものとする。
- 3.差止めの訴えは、行政庁が一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
- 4.前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第九条第二項の規定を準用する。
- 5.差止めの訴えが第一項及び第三項に規定する要件に該当する場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきでないことがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をすることがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずる判決をする。
この条文の基本情報
差止めの訴えの要件とは何ですか?
定義差止めの訴えの要件とは、行政事件訴訟法第37条の4に定められた規定で、「差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法が…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 行政事件訴訟法第37条の4(差止めの訴えの要件)は、日本の行政事件訴訟法に含まれる条文です。
- 行政事件訴訟法第37条の4の条文原文は「差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法が…」で始まります。
- 行政事件訴訟法第37条の4は第二節 その他の抗告訴訟に置かれています。
- 行政事件訴訟法の公布日は昭和37年5月16日です。
- 行政事件訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 行政事件訴訟法第37条の4の前の条は行政事件訴訟法第37条の3です。
- 行政事件訴訟法第37条の4の次の条は行政事件訴訟法第37条の5です。
- 行政事件訴訟法第37条の4には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第37条の4 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000139 - 本サイト収録
行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第37条の4(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/337AC0000000139/37_4
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点行政事件訴訟法37条の4は、処分により重大な損害を生ずるおそれがあり、他に適当な回避方法がない場合に限り、処分が下される前に行政庁へ差止めを命じる訴えを認める。
Q · 役所から処分の予告が来たら、処分が出てから取消訴訟で争うしかないの?
いいえ、出る前に止める差止めの訴えがあります
行政事件訴訟法37条の4は、一定の処分又は裁決により重大な損害を生ずるおそれがあり、他に適当な回避方法がない場合に限り、処分が下される前に「行政庁はその処分をしてはならない」と命じる差止めの訴えを認めます。さらに本案勝訴のためには、行政庁が処分をすべきでないことが法令から明らかか、裁量権の逸脱濫用にあたることが必要です。判決を待つ間に処分が実行されないよう、仮の差止め(37条の5)を同時に申し立てるのが実務の定石です。
解説
役所がこれから下そうとしている不利益な決定。許可の取消し、営業停止命令、公務員への懲戒処分。多くの人は「処分が出てから取消訴訟で争えばいい」と思っている。だが処分が出た瞬間、あなたの店は閉まり、信用は失墜し、後で勝っても元には戻らない。行政事件訴訟法37条の4は、そこに別の扉を用意した。処分が下される前に、裁判所に「行政庁はその処分をしてはならない」と命じさせる差止めの訴えである。ただし誰でも使えるわけではない。鍵は二つ。第一に「重大な損害を生ずるおそれ」があり、しかも他に適当な回避方法がないこと。第二に、行政庁がその処分をすべきでないことが法令から明らかか、裁量権の逸脱濫用にあたると認められること。この二段の関門を越えたとき、初めて裁判所は処分の前に手を差し伸べる。あなたが知っておくべきは、この武器は「事が起きてから」ではなく「起きる前」にしか抜けないという点だ。
法的な位置づけ
行政事件訴訟法37条の4が定める差止めの訴えとは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に、その損害を避けるため他に適当な方法がないことを要件として、行政庁に当該処分又は裁決をしてはならない旨を命ずるよう裁判所に求める予防的抗告訴訟をいう。事後の取消訴訟では救済が間に合わない場面を補完する制度である。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.予定される処分を文書で特定・保存する 処分の事前通知や聴聞通知が届いたら、いつ・どの法令に基づき・どんな処分が予定されているかを文書で具体的に特定し、証拠として保存する。差止めの対象は具体的に予測される処分でなければならない
- 2.重大な損害と補充性を数字で立証準備する 処分で生じる損害が金銭賠償では回復できない重大なものであること、かつ取消訴訟など他の手段では間に合わないことを、売上・賃料・信用毀損などの具体的な数字と事実で整理する
- 3.本案勝訴要件の根拠を固める 処分の根拠法令を確認し、行政庁がその処分をすべきでないことが法令から明らかか、裁量権の逸脱濫用にあたるかを主張の柱にする。聴聞で示された理由の誤りはそのまま証拠になる
- 4.差止めの訴えと仮の差止めを同時に申し立てる 差止めの訴え(本訴・37条の4)と仮の差止め(保全・37条の5)を同時に、行政事件に強い弁護士へ依頼して申し立てる。本訴だけでは判決前に処分が実行されてしまうため二枚重ねが必須
よくある質問 AI による整理
Q1差止めの訴えとは?
行政庁が処分をする前に、裁判所が「その処分をしてはならない」と命じることを求める予防的な抗告訴訟です。行政事件訴訟法37条の4が根拠で、2004年改正で新設されました。
Q2差止めの訴えと仮の差止めの違いは?
差止めの訴え(37条の4)は本案訴訟で判決を求めるもの、仮の差止め(37条の5)は判決前に処分の執行を止める保全手続です。実務では両者をセットで申し立てます。
Q3差止めの訴えの要件は?
重大な損害を生ずるおそれ、他に適当な方法がないこと(補充性)、原告適格があること、本案で処分が法令上明らかに違法か裁量逸脱濫用であることの4点が必要です。
Q4差止めの訴えに出訴期間はありますか?
取消訴訟のような出訴期間の定めはありません。ただし対象は「これからされる処分」に限られるため、処分が実行された後は使えず、取消訴訟に移行します。
Q5義務付けの訴えとの違いは?
義務付けの訴え(37条の2・37条の3)は行政に「処分をせよ」と命じる能動型、差止めの訴え(37条の4)は「処分をするな」と命じる予防型で、対をなす関係です。
Q6差止めの訴えが認められた判例はありますか?
公立学校教職員に起立斉唱を命じる職務命令が反復継続して予想された事案で、最高裁が差止めの訴えの適法性を正面から論じた代表的先例があります(最判平成24年)。
Q7差止めの訴えと取消訴訟はどちらを選ぶ?
処分前なら差止めの訴え、処分後は取消訴訟です。回復不能な損害が予想され処分前に動けるなら差止め、すでに処分が出ているなら取消訴訟を選びます。
Q8差止めの訴えはいつまでに提起すべき?
実質的な期限は「処分が下される日」です。処分が実行されると差止めの対象が消滅するため、事前通知や聴聞通知を受けた段階で速やかに準備するのが鉄則です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1処分が出る前に裁判所に止めてもらうなんて、本当にできるんですか?
できます。それが差止めの訴え(37条の4)です。ただし二つの関門があり、金銭賠償では回復できない重大な損害が生じるおそれがあること、かつ取消訴訟など他の適当な方法では間に合わないことが必要です。実務のポイント:実務では本訴だけでなく仮の差止め(37条の5)を必ずセットで申し立てます。本訴の判決を待っていたら処分が先に実行されてしまうからです。この二枚重ねを知らずに本訴だけ出すと、勝っても手遅れになる
Q2自分は処分される本人じゃなくて、隣に変な施設ができそうな住民なんですが、私でも止められますか?
可能性があります。37条の4第3項・第4項は原告適格を『法律上の利益を有する者』とし、9条2項を準用して周辺住民などの利益が処分の根拠法令で保護されているかを判断します。実務のポイント:第三者が勝つ鍵は『その許可の根拠法令が、近隣住民の生命・健康をも保護する趣旨か』の解釈です。法令の目的規定や手続規定に住民保護の文言があるかを丹念に拾うと、原告適格が認められる確率が上がる。ここを弁護士が詰められるかで入口の勝敗が決まる
Q3『重大な損害』って、どのくらいの損害なら認められるんですか?
37条の4第2項が判断基準を定めており、損害の回復の困難の程度を重視し、損害の性質・程度と処分の内容・性質も勘案します。単なる金銭的損失だけでなく、回復不能性が重視されます。実務のポイント:処分が一回きりではなく反復継続して予想される場合、一回ごとに取消訴訟を起こす負担そのものが『重大な損害』と評価されることがあります。最高裁も教員の職務命令と懲戒処分が繰り返される事案でこの考え方を示した。単発か反復かで立証戦略が変わる
間違えやすい点 AI による整理
- 差止めの訴えという制度があることは知っていても、その敷居の高さを知らない人が多い。単に「困る」では足りず、金銭賠償では回復できないほどの重大な損害であり、かつ取消訴訟など他の手段では間に合わないことまで立証しなければならない。制度は存在するが、入口は極めて狭い
- 「処分が出る前なら、いつでも止められる」と思われがちだが、対象は具体的に予測される処分でなければならない。漠然とした不安や、まだ行政庁が何も動いていない段階では訴えの対象が定まらず、却下される。逆に処分が出てしまえば、もはや差止めの出番はなく取消訴訟に移る。使える時間の窓は想像以上に狭い
- 「裁判所が役所の判断を止めるなんて越権だ」と考える人がいるが、それは問いの立て方が逆である。37条の4第5項は、行政庁が処分をすべきでないことが法令から明らかな場合、または裁量権の逸脱濫用にあたる場合に限って差止めを命じると定める。裁判所は役所の代わりに判断するのではなく、明白な違法だけを事前に食い止める。三権分立を壊すのではなく、その隙間を埋める設計だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 訴えの方向 | 37条の4差止め:行政に「処分をするな」と命じる予防型 | 37条の2義務付け:行政に「処分をせよ」と命じる能動型 37条の5仮の差止め:判決前に執行を止める保全手段 |
| 発動のタイミング | 処分が下される前(未来の処分が対象) | 申請に対する不作為・拒否の段階 本訴と同時、判決を待たずに緊急発動 |
| 中心的要件 | 重大な損害のおそれ + 補充性 + 法令上明白な違法か裁量逸脱濫用 | 重大な損害 + 補充性 + 処分すべきことが明らか 償うことのできない損害を避ける緊急の必要 + 本案勝訴の見込み |
| 処分後の扱い | 処分が実行されると訴えの対象が消滅し使えない | 拒否処分後は拒否処分取消訴訟と併合 本訴が終了すれば保全も終了 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は差止めに対応する独立の類型を置かず、一般給付訴訟の枠内で預防性不作為之訴を認める運用。日本のような独立の重大損害要件は条文上明示されない。
韓国は予防的禁止訴訟(예방적 금지소송)を明文化しておらず、その許容性は判例・学説上の争点。日本が2004年に明文化した点と対照的。
ドイツの予防的不作為訴訟が日本の差止めの訴えの母法的発想。例外的に予防的権利保護の必要(qualifiziertes Rechtsschutzbedürfnis)がある場合に認められる点で補充性の発想を共有する。
米国は衡平法上の差止命令で行政行為を事前に止めうるが、回復不能の損害・成功の蓋然性など injunction 一般の要件によって判断され、独立の行政訴訟類型としては構成しない。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、役所からあなたの飲食店に「近く営業許可を取り消す」という事前通知が届いたら、どうするか。取消しが実行されれば客足は即座に途絶え、テナント賃料だけが残る。処分が出る前に差止めの訴えと仮の差止め(37条の5)を組めば、決定そのものを止められる可能性がある。動くなら処分が下りる前、その一点に勝負がかかっている
- 公立学校の教員に、卒業式での起立斉唱を命じる職務命令が出され、従わなければ懲戒処分が繰り返されると予告された。反復継続する処分が予想される場面では、一回ごとに取消訴訟を起こす負担が「重大な損害」と評価され、差止めが認められる余地がある。最高裁もこの類型で差止め訴訟の適法性を正面から論じている
- あなたの自宅の隣に産業廃棄物処理施設の設置許可が下りようとしている。あなたは許可を受ける事業者ではなく、その許可で健康被害を受ける近隣住民だ。第三者でも、その処分の根拠法令が周辺住民の利益を保護していると解釈できれば、原告適格(37条の4第3項、4項で9条2項を準用)が認められうる
- 残された時間はわずか。行政庁が「○月○日に処分する」と通告してきた。処分が実行された後では差止めの訴えは使えない。なぜなら、止めるべき対象がもう存在しないからだ。差止めはあくまで未来の処分を対象とする予防的な訴えであり、タイミングを逃せば取消訴訟へ切り替えるしかない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 処分の事前通知・聴聞通知が来たら、いつ・どんな処分が予定されているかを文書で特定し、保存する2. その処分で生じる損害が金銭賠償で回復できない重大なものであること、取消訴訟など他の手段では間に合わないことを、具体的な数字と事実で整理する3. 差止めの訴え(本訴)と仮の差止め(37条の5)を同時に準備、行政事件に強い弁護士へ。判決を待つ間に処分が実行されないよう保全がセット4. 処分の根拠法令を確認し、行政庁がその処分をすべきでないことが法令から明らかか、裁量権の逸脱濫用にあたるかを主張の柱にする
訴えられた側:1. あなたが処分の名宛人ではなく、許可などの利益を受ける側で、第三者から差止めを求められている場合、まずその第三者に原告適格(法律上の利益)があるかを争う2. 重大な損害の要件、他に適当な方法がない要件を満たしていないことを反論の軸にする3. 行政庁の処分が法令上適法であり、裁量の範囲内であることを具体的に立証する4. 仮の差止めが申し立てられたら、執行が止まる前に意見書を提出、保全の段階で食い止める
時効(請求できる期限):差止めの訴えに取消訴訟のような出訴期間の定めはない。ただし対象は『これからされる処分』に限られるため、処分が実行された後は差止めの訴えは使えず、取消訴訟(行政事件訴訟法14条、処分を知った日から6か月)へ移行する。実質的な期限は『処分が下される日』である(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:差止めの訴えは、重大な損害要件・補充性・原告適格・本案勝訴要件の四つを満たして初めて認められる予防的抗告訴訟であり、行政の第一次判断権を尊重しつつ回復不能の損害のみを事前に封じる制度と理解する。
有力説:重大な損害要件は、処分が一回限りでなく反復継続して予想される場合、その都度取消訴訟を起こす負担自体を損害として評価しうるとし、損害の量的把握だけでなく救済の実効性から柔軟に解すべきとする。
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年)行政事件訴訟法改正、平成17年(2005年)4月1日施行 差止めの訴えを抗告訴訟の法定類型として新設。それまで判例上の議論にとどまっていた予防的不作為訴訟を明文化し、重大な損害要件・補充性要件・原告適格・本案勝訴要件を法定した
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 新設:行政事件訴訟法改正により差止めの訴えを抗告訴訟の法定類型として新設。判例上の議論にとどまっていた予防的不作為訴訟を明文化し、重大な損害要件・補充性・原告適格・本案勝訴要件を法定(平成17年=2005年4月1日施行)。
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