行政事件訴訟法 第25条(執行停止)
クイックジャンプ
- 処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
- 2.処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
- 3.裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
- 4.執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。
- 5.第二項の決定は、疎明に基づいてする。
- 6.第二項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。
- 7.第二項の申立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
- 8.第二項の決定に対する即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない。
この条文の基本情報
執行停止とは何ですか?
定義執行停止とは、行政事件訴訟法第25条に定められた規定で、「処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 行政事件訴訟法第25条(執行停止)は、日本の行政事件訴訟法に含まれる条文です。
- 行政事件訴訟法第25条の条文原文は「処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。」で始まります。
- 行政事件訴訟法第25条は第一節 取消訴訟に置かれています。
- 行政事件訴訟法の公布日は昭和37年5月16日です。
- 行政事件訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 行政事件訴訟法第25条の前の条は行政事件訴訟法第24条です。
- 行政事件訴訟法第25条の次の条は行政事件訴訟法第26条です。
- 行政事件訴訟法第25条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第25条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000139 - 本サイト収録
行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第25条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/337AC0000000139/25
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点行政事件訴訟法25条は執行不停止を原則とし、重大な損害を避ける緊急の必要があるとき、裁判所は申立てにより処分の効力・執行・手続の続行の停止をすることができる。
Q · 役所の処分に取消訴訟を起こせば、判決が出るまで処分は止まりますか?
止まりません。執行停止を別途申し立てる必要があります。
行政事件訴訟法25条1項は「執行不停止の原則」を定めており、取消訴訟を起こしただけでは処分の効力・執行・手続の続行は止まりません。止めるには25条2項の執行停止を別途申し立て、重大な損害を避ける緊急の必要があると認められる必要があります。ただし「公共の福祉に重大な影響」があるとき、または「本案について理由がないとみえる」ときは認められません(4項)。判断は疎明で足り、口頭弁論を経ずに数日から数週間で決まります。
解説
飲食店が保健所から営業停止処分を受けた。納得できないから取消訴訟を起こす。だが多くの人が知らない現実がある。裁判を起こしても、その間ずっと店は閉まったままなのだ。行政事件訴訟法25条1項は「執行不停止の原則」を定める。訴えること自体には、処分を止める力はない。役所の処分は、あなたが裁判で争っている間も粛々と執行される。これを止めるには、25条2項の「執行停止」という別の申立てを、裁判所に対して別途打たねばならない。しかも条件は厳しい。処分の続行で「重大な損害」を避ける「緊急の必要」があり、かつ「本案について理由がないとみえる」ものではなく、「公共の福祉に重大な影響」も及ぼさないこと。裁判官は本訴の判決を待たず、疎明(一応確からしいという程度の証明で足りる)だけで、数日から数週間で結論を出す。本訴で勝てるかより先に、この仮の戦いに勝てるかが、あなたの店が判決まで生き残れるかを決める。
法的な位置づけ
行政事件訴訟法25条は、取消訴訟における執行停止を定める規定である。1項で執行不停止を原則とし、2項で処分・処分の執行・手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき、裁判所が申立てにより、これらの全部または一部を停止できる旨を規定する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.処分通知を受けたら執行・続行の予定日を確認 営業停止の開始日、退去強制令書の執行日、除却命令の期限など、いつ取り返しのつかない既成事実が発生するかをまず把握する。この日が事実上の締切になる
- 2.取消訴訟と同時または先行して執行停止を申し立てる 本案の取消訴訟の訴状と執行停止申立書をセットで準備する。執行日が目前なら執行停止だけを単独で先行して出すこともある。動き出しが処分執行後では救済が無意味になる
- 3.重大な損害と緊急の必要を疎明する資料を集中投下 売上への影響、代替不能性、損害の回復困難性を示す資料を提出する。証明ではなく疎明(一応確からしいという程度)で足りる(25条5項)。同時に本案の勝ち筋も示し「理由がないとみえる」を回避する
- 4.却下されたら即時抗告で争う 申立てが却下された場合は即時抗告を申し立てる(25条7項)。ただし即時抗告自体には決定の執行を止める効力がない(8項)ため、抗告と並行した対応を検討する
よくある質問 AI による整理
Q1執行停止とは何ですか?
取消訴訟の係属中、裁判所が申立てにより処分の効力・執行・手続の続行を一時的に止める制度です。行政事件訴訟法25条2項が根拠で、判決を待つ間の救済手段です。
Q2執行停止の申立てはどこに出すのですか?
本案である取消訴訟が係属する裁判所に申し立てます。決定は疎明に基づき(25条5項)、口頭弁論を経ずに数日から数週間で出されることが多いです。
Q3執行不停止の原則とは何ですか?
取消訴訟を提起しても処分の効力・執行・手続の続行は止まらないという原則です。行政事件訴訟法25条1項が定め、行政運営の安定を確保する趣旨です。
Q4執行停止の「重大な損害」とはどの程度ですか?
損害の回復困難の程度を考慮し、損害の性質・程度や処分の内容・性質も勘案して判断します(25条3項)。2004年改正で旧「回復の困難な損害」から緩和されました。
Q5営業停止処分を裁判で止めたいときはどうすればいいですか?
取消訴訟の提起と同時または先行して執行停止を申し立てます。営業停止期間が満了すると訴えの利益を失うため、執行予定日が事実上の締切になります。
Q6内閣総理大臣の異議とは何ですか?
執行停止に対し内閣総理大臣が異議を述べる制度です(27条)。異議があると裁判所は執行停止ができず、既にした決定も取り消さねばなりません。発動例はごく僅かです。
Q7執行停止が却下されたら争えますか?
即時抗告で争えます(25条7項)。ただし即時抗告自体に決定の執行を止める効力はありません(8項)ため、別途の対応が必要です。
Q8退去強制令書が出たら執行停止で止められますか?
取消訴訟だけでは収容・送還は止まりません。送還後は事実上帰国できなくなるため、執行停止が命綱になります。緊急性の疎明が鍵です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1裁判を起こせば、判決が出るまで役所は処分を執行できないんですよね?
それは誤解です。行政事件訴訟法25条1項が「執行不停止の原則」を定めており、訴えただけでは処分の効力も執行も続行も止まりません。止めるには25条2項の執行停止を別途申し立てる必要があります。実務のポイント:弁護士は取消訴訟の訴状と執行停止の申立書をセットで準備します。本訴だけ出して安心していると、判決を待つ数か月の間に処分が執行され尽くし、勝っても救済の対象が消えている。「同時に出したか」が分水嶺です
Q2執行停止は、申し立てれば認めてもらえるんですか?
簡単ではありません。25条2項は「重大な損害を避けるため緊急の必要」を要求し、さらに4項で「公共の福祉に重大な影響」があるとき、または「本案について理由がないとみえる」ときは認めないと定めます。複数の関門があります。実務のポイント:2004年の改正で要件が「回復の困難な損害」から「重大な損害」に緩和され、以前より認められやすくなりました。古い解説書はまだ厳しい旧基準のままのことがある。3項の考慮要素(損害の回復困難の程度、性質・程度、処分の内容・性質)を具体的に疎明できるかが勝負です
Q3執行停止が認められたら、もう安心していいですか?
必ずしもそうではありません。行政事件訴訟法27条により、内閣総理大臣は執行停止に対して異議を述べることができ、異議があれば裁判所は執行停止ができず、既にした決定も取り消さなければなりません。実務のポイント:この内閣総理大臣の異議は日本独特の制度で、三権分立との関係で批判も多く、実際の発動例はごく僅かです。だが制度として残っている以上、国家の重大利益に関わる事案では、最後のリスクとして頭の片隅に入れておくべきです
Q4本訴で勝つ自信があるなら、執行停止は後回しでいいのでは?
危険です。本訴の判決まで数か月から数年かかる一方、処分の執行はその間に完了してしまいます。送還、取り壊し、営業停止期間の満了が起きれば、勝訴判決を得ても回復不能か、訴えの利益(行政事件訴訟法9条)を失います。実務のポイント:執行停止の審理は疎明(25条5項)で足り、口頭弁論を経ずに数日から数週間で決まる(6項)。スピードが命の仮の戦いです。ここで本訴の勝ち筋を先に裁判官へ見せておくと、本訴本番でも有利な心証を引き継げます
間違えやすい点 AI による整理
- 「裁判を起こせば、判決が出るまで処分の執行は止まる」と思っている人が圧倒的に多い。実際は逆で、25条1項は「執行不停止の原則」。訴えただけでは処分の効力も執行も止まらず、別途執行停止を申し立て、それが認められて初めて止まる
- 執行停止という制度があることは知っていても、その認容ハードルの高さを知らない人が多い。「重大な損害」「緊急の必要」に加え、4項で「本案について理由がないとみえる」場合は不可、「公共の福祉に重大な影響」があれば不可。三重四重の関門があり、申し立てれば自動的に通るものではない
- 「執行停止さえ認められれば、もう役所は手出しできない」と考えるのは前提が誤っている。25条で止めても、内閣総理大臣は27条に基づき異議を述べることができ、異議があれば裁判所は執行停止をすることができず、既にした決定も取り消さねばならない。三権の最後の切り札が残されている
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 制度の性質 | 25条:取消訴訟係属中の処分の執行停止(消極的に止める) | 37条の5:仮の義務付け・仮の差止め(積極的救済) 27条:内閣総理大臣の異議(停止を覆す装置) |
| 要件 | 重大な損害を避ける緊急の必要(25条2項)+ 消極要件(4項) | 償うことのできない損害 + 本案勝訴の蓋然性 公益への重大な影響の主張(理由を付して異議) |
| 判断の証明度・手続 | 疎明で足り、口頭弁論を経ずに可能(25条5・6項) | 疎明で足りるが要件はより厳格 異議があれば裁判所は停止できず既決定も取消 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も原則不停止で、例外として申立てまたは職権により停止できる。難於回復之損害・緊急必要を要件とする点で日本と類似する
韓国も執行不停止を原則とし、回復困難な損害を避けるための緊急の必要があるとき執行停止を認める。公共の福祉への影響を消極要件とする構造も近い
ドイツは取消訴訟・異議申立てに原則として執行停止効(aufschiebende Wirkung)を認め、行政庁が即時執行を命じた場合に裁判所が停止効を回復させる。日本と逆の原則設計
米国は司法審査係属中、行政庁または裁判所が正義に必要な範囲で処分の効力を停止できる。差止めの一般要件(回復不能な損害・勝訴の見込み等)が参照される
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 保健所の営業停止30日。あと数日で稼ぎ時の週末が来る。取消訴訟だけ起こして安心していると、その週末も店は閉まったまま。執行停止の申立てを今日中に出さなければ、訴訟に勝つ頃には店は資金繰りで潰れている
- もし在留資格を取り消され、退去強制令書が出されたらどうなる? 取消訴訟を起こしても、令書の執行(収容・送還)は止まらない。送還されてしまえば、たとえ後で裁判に勝っても日本へ帰ってこられない。執行停止こそが命綱になる
- あなたが自治体の担当者で、違法建築物の除却命令を出した側だとする。相手が執行停止を申し立ててきたら、取り壊しは裁判所の決定が出るまで事実上ストップする。役所側は「本案について理由がないとみえる」ことや「公共の福祉への重大な影響」を疎明で示さねば、工事は止まる
- 薬局が保険薬局の指定取消処分を受けた。保険調剤ができなければ収入はほぼゼロ。執行停止が認められれば、裁判の間も従来どおり営業を続けられる
- 建設業の許可取消処分を受けた会社。事業継続のため執行停止を求めるが、その会社に重大な手抜き工事の疑いがあると、裁判所は「公共の福祉に重大な影響」があるとして停止を認めないことがある。損害が大きいだけでは足りない、ここが落とし穴
取るべき行動
被害を受けた側:1. 処分通知を受けたら、執行・続行の予定日をまず確認、いつ取り返しのつかない事態になるかを把握2. 取消訴訟の提起と同時、または先行して執行停止を申し立てる3.「重大な損害」「緊急の必要」を疎明する資料(売上への影響、代替不能性、回復困難性)を集中投下4. 本案の勝ち筋も同時に示し「理由がないとみえる」を回避5. 却下されても即時抗告(7項)で争える、ただし即時抗告自体に決定の執行を止める効力はない(8項)
訴えられた側:1. 執行停止を申し立てられたら、「公共の福祉に重大な影響」があること、または「本案について理由がないとみえる」ことを疎明で反論(4項) 2. 重大な損害の不存在、損害の回復可能性を主張(3項の考慮要素を突く) 3. それでも停止が認められ、かつ国の重大利益に関わるなら、内閣総理大臣の異議(27条)という最終手段がある4. ただし異議は濫用できず、国会への報告義務を伴う
時効(請求できる期限):執行停止の申立て自体に固有の期間制限はないが、前提となる取消訴訟は処分があったことを知った日から6か月以内(行政事件訴訟法14条)。実務上は、処分の執行・続行が完了する前でなければ意味を失うため、執行予定日が事実上の締切となる。送還・取り壊し・営業停止期間の満了など既成事実化の後では、訴えの利益(同9条)を失う
学説
通説:25条は『原則は執行、例外は停止』の枠組みをとる。2項の積極要件(重大な損害・緊急の必要)と4項の消極要件(公共の福祉への重大な影響なし・本案に理由がないとみえないこと)を満たして初めて執行停止が認められると解する
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年)行政事件訴訟法改正 執行停止の要件を緩和。従来の「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」を「重大な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に改め、認容のハードルを下げた。あわせて3項を新設し、重大な損害の判断に当たり損害の回復困難の程度を考慮し、損害の性質・程度、処分の内容・性質も勘案すべきことを明文化した
改正の年表
- 1.昭和37年(1962年) 新設:行政事件訴訟法(法律第139号)制定。旧行政事件訴訟特例法を全面的に改め、執行不停止の原則と執行停止制度を整備
- 2.平成16年(2004年) 改正:執行停止の要件を『回復の困難な損害』から『重大な損害』に緩和し認容のハードルを下げた。あわせて3項を新設し、重大な損害の判断要素(損害の回復困難の程度、損害の性質・程度、処分の内容・性質)を明文化
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める