要点所得税法 66 条は、工期一年以上かつ政令の規模要件(現行は請負金額 10 億円以上)を満たす長期大規模工事について、引渡し前でも工事進行基準で進捗に応じて毎年課税すると定める。
Q · 引渡しは再来年なのに、大きな工事を受注した今年から税金がかかるの?
工期一年超・10 億円以上の工事は引渡し前でも毎年課税されます
所得税法 66 条により、工期が一年以上で政令の規模要件(現行は請負金額 10 億円以上)を満たす長期大規模工事は、引渡し前でも工事進行基準で進捗に応じた収入金額と費用を毎年の事業所得に算入します(第 1 項)。ここに選択権はありません。規模要件に満たず年内に引き渡さない一般工事は、第 2 項により進行基準の任意適用が認められます。ただし途中の年で経理をやめると、翌年分以後は同じ工事に進行基準を使えなくなる片道切符です。
個人事業の建設業者にとって、この条文は「利益を先送りする自由」を国が取り上げる場面と、逆に「先送りしない自由」を選べる場面を、一本の線で切り分けている。工期が一年以上で政令の定める規模(現行は請負金額 10 億円以上。最新の改正状況をご確認ください)を超える請負は、引渡しがまだでも、進捗率に応じて毎年の収入と経費を事業所得に算入させられる。ここに選択権はない。一方、それ未満で年内に引き渡さない工事は、あなたが工事進行基準で経理するかどうかを選べる。だが第 2 項ただし書きが牙を剥く。いったん選んで、途中の年で経理をやめたら、その翌年からは二度と戻れない。青色申告の帳簿を締める前に、あなたが選ぶのは会計処理ではなく、向こう数年分の資金繰りである。
所得税法 66 条は、工事(製造及びソフトウエアの開発を含む)の請負に係る収入金額および費用の帰属時期に関する特例である。工期が一年以上で政令の規模要件を満たす長期大規模工事には工事進行基準を強制適用し、それ以外の一般工事には着工の年からの任意適用を認める。収入計上時期の原則(所得税法 36 条)に対する特則として機能する。
AI 輔助整理,以條文原文為準
工事の進捗度に応じて、引渡し前でも各年の収入金額と費用を計上する会計処理です。所得税法 66 条が根拠で、長期大規模工事では強制、一般工事では任意で用います。
着手から契約上の引渡し期日までが一年以上で、かつ政令の規模要件(現行は請負金額 10 億円以上)その他の政令要件を満たす請負工事です。要件を満たすと進行基準が強制適用されます。
進行基準は進捗度に応じて毎年計上し、完成基準は引渡し時に一括計上します。66 条の長期大規模工事は進行基準が強制で、完成基準を選ぶ余地はありません。
建設工事だけでなく、製造やソフトウエアの開発も対象です(66 条 1 項括弧書き)。工期一年超・大規模の受託開発や設備製作も正面から射程に入ります。
使えます。規模要件に満たず年内に引き渡さない一般工事は、第 2 項の任意適用として着工の年の帳簿で進行基準を選べます。強制ではなく選択です。
消費税法 17 条に工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例があります。所得税で進行基準を選び消費税を引渡し時のままにすると、両申告で売上年度がずれ調査で突かれます。
すでに進行基準で計上した収入は遡って消えません。回収不能な代金は貸倒れとして別年度に損失処理する道が残るのみで、課税年度と損失年度がずれます。
一般工事の任意適用は着工の年の帳簿を締める前に決めます。着工の年に進行基準で経理していなければ、翌年から始めることはできません。判断の窓は事業年度末の一度きりです。
長期大規模工事についてはそのとおりで、引渡し前でも進捗に応じて総収入金額に算入される(第 1 項)。ただし同時に費用も必要経費に算入されるので、課税されるのは進捗分の利益だけである。業界裏話ヒント:資金繰り上の痛点は税金そのものより、出来高請求のサイクルと課税年度がズレる点にある。進行基準を採る年は、請負代金の中間金支払時期を契約段階で前倒し交渉しておく。これをやる事業者とやらない事業者で、二年目の資金繰りが決定的に違う。
戻せない。第 2 項ただし書きは、着工の年の翌年以後のいずれかの年で進行基準の方法により経理しなかった場合、その翌年分以後についてこの限りでないと定める。片道切符である。業界裏話ヒント:ここでいう「経理しなかつた」の認定は帳簿の実態で判断されるため、進捗度の計算資料を年内に整えて帳簿に反映した記録が残っているかが分水嶺になる。決算後に作った計算書は、後付けと見られる。
違う。第 1 項の括弧書きが「工事(製造及びソフトウエアの開発を含む。)」と明記しており、長期の受託開発は正面から対象になる。工期一年以上かつ政令の規模要件を満たせば強制適用である。業界裏話ヒント:IT 業界の個人事業主やフリーランスの多くはこの括弧書きを見落としている。大型案件を一人で受けることは稀だが、法人成りを考える規模になった時点で、法人税法 64 条の同旨の規定が待っている。閾値を超える前に税理士を入れるかどうかで、初年度の申告品質が変わる。
第 3 項が、適用を受ける居住者が死亡した場合の収入金額および費用の額の処理の特例を政令に委任している。相続人は準確定申告(所得税法 125 条、相続開始を知った日の翌日から 4 か月以内)で被相続人の分を処理し、未完成工事を引き継ぐ。業界裏話ヒント:この場面で最も揉めるのは、進行基準で計上済みの収入に対応する代金がまだ入金されていないケースである。所得税は課税済み、現金は未回収、その状態で相続財産を評価することになる。事業承継を想定するなら、工事ごとの進捗計算資料を最新に保つ習慣そのものが、遺族への引き継ぎ資料になる。
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 収入の帰属時期 | 66 条:進捗度に応じ各年に計上(工事進行基準) | — |
| 適用対象 | 工期一年超の請負工事(製造・ソフトウエア開発を含む) | — |
| 選択の自由 | 長期大規模工事は強制、一般工事は任意(途中放棄は片道) | — |
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