雇用保険法 第86条
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- 法人(法人でない労働保険事務組合を含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
- 2.前項の規定により法人でない労働保険事務組合を処罰する場合においては、その代表者又は管理人が訴訟行為につきその労働保険事務組合を代表するほか、法人を被告人とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 雇用保険法第86条は、日本の雇用保険法に含まれる条文です。
- 雇用保険法第86条の条文原文は「法人(法人でない労働保険事務組合を含む。」で始まります。
- 雇用保険法第86条は第八章 罰則に置かれています。
- 雇用保険法の公布日は昭和49年12月28日です。
- 雇用保険法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 雇用保険法第86条の前の条は雇用保険法第85条です。
- 雇用保険法第86条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第86条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116 - 本サイト収録
雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第86条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/349AC0000000116/86
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点雇用保険法86条は両罰規定であり、従業者が業務に関して83条から85条の違反をしたとき、行為者に加えて法人または事業主にも各本条の罰金刑を科す。法人には罰金刑のみが科される。
Q · 従業員が雇用保険の届出を偽ったら、会社も罰せられるんですか?
行為者本人だけでなく、会社にも同じ罰金刑が科されます
雇用保険法86条により、法人または人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が業務に関して同法83条から85条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人または人に対しても各本条の罰金刑が科されます。法人に科されるのは罰金刑のみで、拘禁刑には及びません。判例は両罰規定を無過失責任とは読まず、事業主の選任監督上の過失を推定する構造と解しているため、争点は「知っていたか」ではなく「注意を尽くした記録を示せるか」に移ります。また1項は法人でない労働保険事務組合も法人に含めます。
解説
従業員が勝手にやったことだ、会社は無関係。その理屈は雇用保険法の罰則の前では通らない。86条は、法人の代表者や代理人、使用人その他の従業者が業務に関して前三条(83条から85条)の違反をしたとき、実際に手を動かした行為者を罰したうえで、さらにその法人または個人事業主にも各本条の罰金刑を科すと定める。押さえるべきは二点である。第一に、法人に科されるのは罰金刑だけで、法人が拘禁刑を受けることはない。第二に、判例は両罰規定を単純な無過失責任とは読まず、事業主が従業者の選任監督について注意を尽くしたことを示せれば免れる余地を認めている。つまり本当の争点は「部下がやった」ではなく「あなたの会社に管理体制の記録があったか」に移る。さらに2項は、法人格を持たない労働保険事務組合まで被告人の席に座らせる。商工会や事業協同組合の役員が「うちは法人ではないから」と考えているなら、その前提はすでに崩れている。
法的な位置づけ
雇用保険法86条は両罰規定を定める条文であり、法人または人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が業務に関して同法83条から85条の違反行為をした場合に、行為者の処罰に加えて事業主たる法人または人にも各本条の罰金刑を科す。1項は法人でない労働保険事務組合を法人に含め、2項はその訴訟行為の代表と、法人を被告人とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定の準用を定める。
よくある質問 AI による整理
Q1両罰規定とは何ですか?
違反行為をした従業者本人を罰するだけでなく、その事業主である法人または個人にも同じ条文の罰金刑を科す仕組みです。雇用保険法では86条がこれを定めます。
Q2雇用保険法86条の罰金はいくらですか?
86条自体は金額を定めていません。法人に科されるのは「各本条の罰金刑」、つまり83条から85条それぞれが定める罰金の範囲です。金額は違反した条文によって変わります。
Q3会社が両罰規定の罰金を免れる方法はありますか?
判例は両罰規定を過失推定の構造と読むため、従業者の選任監督について注意を尽くした事実を立証できれば免れる余地があります。事後に作った書類ではなく、違反前から存在する記録が必要です。
Q4両罰規定で社長個人も罰せられますか?
社長が自ら違反行為をしたなら行為者として罰せられます。行為者が部下の場合、86条が処罰するのは行為者と法人であり、代表者個人が当然に罰せられるわけではありません。
Q5労働保険事務組合に委託していれば事業主は免責されますか?
免責されません。委託しても事業主自身の届出義務は残り、事務組合側の違反は85条・86条で別途処罰されます。委託先の処理体制を確認する責任は事業主に残ります。
Q6雇用保険の届出違反はどうやって発覚しますか?
退職者による雇用保険法8条の確認請求、ハローワークの職権調査、助成金申請時の突合、労働保険料の年度更新時の齟齬などが典型的な端緒です。
Q7両罰規定の公訴時効は何年ですか?
罰金に当たる罪の公訴時効は3年(刑事訴訟法250条2項6号)で、起算点は犯罪行為が終わった時です。法人の時効を行為者の法定刑で計るかは実務上解釈が分かれています。
Q8労働基準法121条と雇用保険法86条は何が違いますか?
どちらも事業主への処罰を及ぼす同型の規定ですが、労基法121条は代表者・代理人の行為について事業主を行為者とみなす構造、雇用保険法86条は行為者処罰に加えて法人に罰金刑を科す構造です。
この条文についての質問 AI による整理
Q1従業員が勝手にやったことでも、会社が罰金を払うんですか?
払うことになる。86条は行為者を罰するほか、その法人または人にも各本条の罰金刑を科すと定める。ただし無過失責任ではなく、判例は事業主の選任監督上の過失を推定する構造と読むので、注意を尽くしたことを立証できれば免れる余地がある。実務のポイント:この立証は事後に作った書類ではまず通らない。違反発覚より前から存在するダブルチェック記録や研修受講簿だけが効く
Q2うちの事務組合は法人格のない任意団体なんですが、それでも起訴されるんですか?
される。86条1項は法人でない労働保険事務組合を法人に含むと明記し、2項は代表者または管理人が訴訟行為につき組合を代表すると定め、法人を被告人とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。実務のポイント:事務組合の実務は事務局長一人に集中していることが多い。委託する事業主側も委託先の処理体制を契約前に確認しておくと、後で自社の管理責任を説明しやすくなる
Q3会社に罰金の前科がつくと、実際のところ何が起きますか?
罰金を納付すれば刑事手続は終わるが、法人の犯歴は残る。雇用関係助成金の不支給要件、業種によっては許認可の欠格事由、公共調達の指名停止に連鎖しうる(最新の要件をご確認ください)。実務のポイント:罰金額そのものは各本条の定める範囲にとどまっても、失う助成金や受注機会の方が桁違いに大きい。略式命令を安易に受け入れる前に、行政上の波及を業種ごとに確認する
間違えやすい点 AI による整理
- 「社長は知らなかったのに、なぜ会社が罰せられるのか」という問いの立て方そのものがずれている。両罰規定について判例は、従業者の違反があった時点で事業主側の選任監督上の過失を推定する構造を採る。問われているのは知っていたかどうかではなく、注意を尽くした事実を記録で示せるかどうかである
- 両罰規定の存在自体は知っている人でも、法人に罰金刑が確定することの重さを見落としている。罰金は納付して終わりではなく、雇用関係助成金の不支給要件、業種によっては許認可の欠格事由、公共調達の指名停止といった行政上の連鎖に接続していく(最新の要件をご確認ください)
- あなたから見れば労働保険事務組合は会費と持ち回りで運営される任意団体だが、法律から見れば86条2項によって被告人席に座る主体である。この落差が、無報酬で理事を引き受けただけの人を刑事手続の当事者側に引きずり込む
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 86条:両罰規定(責任を事業主に及ぼす配線) | 83条:事業主の届出義務違反等に対する実体的罰則 85条:労働保険事務組合に対する実体的罰則 |
| 処罰される主体 | 行為者に加えて法人または人(法人でない事務組合を含む) | 違反行為をした事業主・行為者 違反行為をした労働保険事務組合の側 |
| 科される刑 | 法人には各本条の罰金刑のみ(拘禁刑は及ばない) | 各本条が定める拘禁刑または罰金 各本条が定める罰金等 |
| 主な防御の筋 | 選任監督上の注意を尽くした記録の提出(過失推定の反証) | 違反事実そのもの(届出の有無・内容)を争う 事務処理の事実関係と委託範囲を争う |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も労働法規に同型の兩罰規定を置き、行為者処罰に加えて法人に罰鍰・罰金を科す。行政罰法15条は法人の代表者等の故意過失を法人の故意過失とみなす構造を採る
韓国も両罰規定を採るが、憲法裁判所が免責条項のない양벌규정を責任主義違反として違憲と判断した経緯があり、現在は「相当の注意と監督を怠らなかった場合は免責」の但書が法文上明記される点が日本と異なる
ドイツは法人に刑罰を科さず、秩序違反法上の Verbandsgeldbuße(団体過料)で対応する。§ 130の監督義務違反が実質的に日本の選任監督過失に対応する
米国は respondeat superior により、従業員が職務範囲内で会社の利益のために行った犯罪について法人自体に刑事責任を認める。日本より広く、免責法理よりも訴追裁量とコンプライアンス体制の評価で調整される
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、あなたの会社の総務担当者が、退職者と揉めたくないという理由だけで離職票の離職理由を書き換えていたとしたら? 発覚したとき罰金を払うのは担当者だけではない。86条によって会社にも同じ罰金刑が科され、法人の犯歴として記録に残る。担当者は退職すれば現場から離れられるが、会社は逃げられない
- 派遣元の営業所長が、被保険者資格取得届を数か月分まとめて放置していた。手を動かしたのは所長一人だが、処罰対象になるのは所長と法人の両方である。所長が「会社の指示ではない」と言っても、86条は指示の有無を要件にしていない
- ハローワークの調査が入り、書類の任意提出を求められた。検察官が法人まで起訴するか行為者一人で終えるかを判断するまでの数週間が、あなたの会社にとって唯一の勝負どころになる。この期間に選任監督の記録を整えて出せるかどうかで結論が分かれる。任意提出の期限まであと14日
- 商工会が運営する労働保険事務組合の事務局長が、委託事業主から預かった保険関係の処理について虚偽の報告をした。事務組合は法人格を持たない任意団体だが、86条1項は法人でない労働保険事務組合を法人に含むと明記し、2項は代表者または管理人が訴訟行為につき組合を代表すると定める。「うちは法人ではない」は防御にならない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 自分の被保険者資格や離職理由が事実と違うなら、まずハローワークに雇用保険法8条の確認請求を行う。これは労働者本人が単独でできる2. 事業主が確認請求を理由に不利益な扱いをしたら73条違反であり、罰則の対象になる3. 資格取得届の未提出や虚偽届出は職権調査の端緒になるので、給与明細、タイムカード、雇用契約書を時系列で揃えて申告する4. 会社自体の責任を問うなら、行為者だけでなく法人も86条の処罰対象になる点を明示して申告する
訴えられた側:1. 争点は違反事実の有無より「選任監督上の注意を尽くしたか」に移る。判例は両罰規定を過失推定の構造と読むため、事実上の立証負担はあなた側にある2. 就業規則、業務マニュアル、届出のダブルチェック記録、担当者研修の受講簿を揃える3. 発覚後は速やかに訂正届出と是正報告を行い、その日付を証拠化する4. 行為者個人と法人は利害が対立しうるので、弁護人を分けるかどうかを早期に判断する
時効(請求できる期限):86条自体に固有の期間規定はない。法人に科されるのは罰金刑であり、罰金に当たる罪の公訴時効は3年(刑事訴訟法250条2項6号)、起算点は犯罪行為が終わった時(同253条)。ただし両罰規定における法人の公訴時効を行為者の法定刑で計るか法人に科される罰金刑で計るかは実務上、解釈が分かれている。届出義務違反のように違反状態が続く類型では、行為の終了時点の認定自体が争点になる
学説
通説(過失推定説):両罰規定は責任主義に反しないよう、事業主の選任監督上の過失を推定した規定と解する。事業主が必要な注意を尽くしたことを立証すれば免責されるが、実務上その立証は違反発覚前から存在する客観的記録によらなければ困難とされる
少数説(無過失責任説):取締法規の実効性確保を重視し、事業主の処罰を政策的な無過失責任と解する立場。ただし判例が過失推定構造を採用して以降、実務上の支持は限定的である
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和49年(1974年) 新設:失業保険法に代わる雇用保険法(昭和49年法律第116号)の制定に伴い、罰則章の末尾に両罰規定として置かれた。法人でない労働保険事務組合を法人に含める建て付けを採用
- 雇用保険法 第83条事業主の届出義務違反等に対する罰則、両罰の対象行為
- 雇用保険法 第84条確認請求を理由とする不利益取扱い等に対する罰則
- 雇用保険法 第85条労働保険事務組合に対する罰則、2項の処罰の実体的根拠
- 雇用保険法 第8条被保険者資格の確認請求、違反発覚の端緒
- 雇用保険法 第73条確認請求を理由とする不利益取扱いの禁止
- 刑事訴訟法 第27条法人被告人を代表者が代表する手続、2項の準用先
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第33条労働保険事務組合の委託と認可の根拠
- 労働基準法 第121条労働法分野における同型の事業主処罰規定
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