民事訴訟法 第308条
クイックジャンプ
- 前条本文に規定する場合のほか、控訴裁判所が第一審判決を取り消す場合において、事件につき更に弁論をする必要があるときは、これを第一審裁判所に差し戻すことができる。
- 2.第一審裁判所における訴訟手続が法律に違反したことを理由として事件を差し戻したときは、その訴訟手続は、これによって取り消されたものとみなす。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事訴訟法第308条は、日本の民事訴訟法に含まれる条文です。
- 民事訴訟法第308条の条文原文は「前条本文に規定する場合のほか、控訴裁判所が第一審判決を取り消す場合において、事件につき更に弁論をする必要があるときは、これを第一審裁判所に差し戻すことができる。」で始まります。
- 民事訴訟法第308条は第一章 控訴に置かれています。
- 民事訴訟法の公布日は平成8年6月26日です。
- 民事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事訴訟法第308条の前の条は民事訴訟法第307条です。
- 民事訴訟法第308条の次の条は民事訴訟法第309条です。
- 民事訴訟法第308条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第308条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109 - 本サイト収録
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第308条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/408AC0000000109/308
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事訴訟法308条は、控訴裁判所が第一審判決を取り消し、更に弁論が必要なときに、自判せず事件を第一審へ差し戻せる任意的差戻しを定める規定である。
Q · 控訴審で勝ったのに「第一審に差し戻す」と書いてあったら、裁判はまだ終わっていないの?
終わっていません。第一審に戻って審理がやり直されます
民事訴訟法308条の任意的差戻しは、控訴裁判所が第一審判決を取り消したうえで、事件についてさらに弁論をする必要があるとき、自ら結論を出さず事件を第一審裁判所に戻す制度です。第一審判決の取消しはあなたの主張が認められた証拠ですが、自判ではなく差戻しになると、事件は地裁に戻り新たな期日でまた審理が続きます。第2項により、第一審の手続が違法だったために差し戻した場合、その違法な手続は取り消されたものとみなされ、その部分はやり直しになります。
解説
あなたが長い裁判の末、控訴審で逆転勝訴を勝ち取ったとする。「やっと終わった」と胸をなで下ろした瞬間、判決文の最後にこう書いてある。「本件を第一審裁判所に差し戻す」。事件は終わっていない。もう一度、第一審からやり直しだ。民訴308条が定める任意的差戻しは、控訴裁判所が第一審判決を取り消したうえで、さらに弁論が必要なときに、自分で結論を出さず事件を第一審に戻す制度である。なぜこんな仕組みがあるのか。「審級の利益」を守るためだ。第一審で十分に審理されなかった争点を、控訴審がいきなり一回で確定させてしまうと、あなたは事実上、二段階の審理を受ける権利を一つ失う。さらに2項は、第一審の手続が違法だったために差し戻したとき、その違法な手続を「なかったこと」にすると定める。やり直しは、汚れた手続をリセットする意味も持つ。
法的な位置づけ
民事訴訟法308条は任意的差戻しを定める規定であり、控訴裁判所が第一審判決を取り消す場合において、事件につき更に弁論をする必要があるときは、自判によらず事件を第一審裁判所に差し戻すことができる旨を規定する。第2項は、手続違法を理由とする差戻しの際、その訴訟手続が取り消されたものとみなされる効果を定める。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.判決書の主文を最初に確認する 控訴審の判決書を受け取ったら、理由から読むのではなく主文の末尾を真っ先に確認する。「第一審裁判所に差し戻す」とあれば事件は終わっておらず、自判で確定したのか差戻しなのかを最初に見極める
- 2.自判を求めるか差戻しを求めるか方針を決める 控訴理由書を書く段階で、早期決着を望むなら自判を、第一審の審理不足を突いて争点を立て直したいならあえて差戻しを主張する。同じ勝ちでも狙う出口で組み立てる主張が変わる
- 3.第一審の手続違反を具体的に指摘する 証拠調べの欠落や釈明義務違反など第一審の手続違法があれば、306条と併せて控訴理由書で具体的に指摘する。2項により違法手続は取り消されたものとみなされ、差戻し後にその部分を一から組み直せる
- 4.差戻し後の新期日に向け主張・証拠を再構成する 差戻しになったら戻り先の第一審で新たな口頭弁論期日が指定される。何が適法に生き残り何がリセットされたかを整理し、足りなかった証拠を補い、相手の反撃を読んで主張を立て直す
よくある質問 AI による整理
Q1任意的差戻しとは何ですか?
控訴裁判所が第一審判決を取り消した後、自ら結論を出さず事件を第一審に戻すことができる制度です。民訴308条が根拠で、更に弁論をする必要があるときに認められます。
Q2必要的差戻しと任意的差戻しの違いは何ですか?
307条の必要的差戻しは不適法却下判決を取り消したとき差戻しが原則義務となります。308条の任意的差戻しは、更に弁論が必要なとき控訴審が裁量で差し戻すかを選べます。
Q3控訴審はどんなときに事件を差し戻すのですか?
第一審判決を取り消したうえで、まだ十分に審理が尽くされておらず更に弁論が必要なときです。審級の利益を守るため、自判せず第一審に審理させる選択をします。
Q4差し戻された後の第一審判決にまた控訴できますか?
できます。差戻し後の第一審判決に不服があれば再び控訴でき、理論上は同じ事件で審級を往復しうるため、訴訟が長期化する原因になります。
Q5民訴308条2項の「取り消されたものとみなす」とはどういう意味ですか?
第一審の手続が違法だったために差し戻した場合、その違法な訴訟手続を法律上なかったものとして扱い、差戻し後にその部分を一からやり直すという意味です。
Q6差戻しと自判はどちらが早く終わりますか?
自判は控訴審がその場で最終結論を出すため早く終わります。差戻しは第一審に戻って審理が続くため、さらに一年以上長期化することがあります。
Q7行政訴訟でも差戻しはありますか?
あります。行政事件訴訟法7条により民訴の例によるため、行政訴訟の控訴審でも308条の任意的差戻しが準用されます。
Q8差戻しになると訴訟費用はどれくらい増えますか?
第一審が再開され期日が重なるため、弁護士費用・出廷費用・時間コストが追加で発生します。事案によっては数十万円単位で膨らみ、和解の損益分岐点を再計算すべきです。
この条文についての質問 AI による整理
Q1控訴審で勝ったのに「差し戻し」と言われました。これは負けたんですか?
勝ちです。第一審判決の取消しは、あなたの主張が控訴審で認められた証拠。ただし民訴308条の差戻しは、控訴審が自ら最終結論を出さず、事件を第一審に戻してさらに審理させる仕組みなので、『勝ったが終わっていない』状態になります。実務のポイント:弁護士の中には、第一審の審理が薄いケースであえて差戻しを狙う人もいます。控訴審で一発勝負するより、第一審に戻して争点を立て直す方が、最終的に有利な結論を引き出せることがあるからです
Q2差し戻されたら、また最初から全部やり直しなんですか?
完全な振り出しではありません。民訴308条2項が取り消すのは、法律に違反した訴訟手続の部分だけで、適法に行われた主張や証拠調べは効力を保ちます。だから『どこが違法でリセットされ、どこが生き残るか』の見極めが勝負を分けます。実務のポイント:差し戻されると形式上は第一審の審理がやり直しになりますが、前の手続で提出した適法な訴訟資料はそのまま引き継がれます。『ゼロからやり直し』と誤解して同じ主張を一から繰り返すと、時間と費用を無駄にする。何が生きていて何が消えたかを整理してから臨むのが、コストを抑える鍵です
間違えやすい点 AI による整理
- 「控訴審で勝てば裁判は終わる」と思っているが、差戻しになれば事件は第一審に戻り、審理は振り出しに近い形で続く。第一審判決の取消しは終着点ではなく、新しいスタート地点になることがある
- 差戻しという制度があること自体は知っていても、その「重さ」を知らない人が多い。差戻し後の第一審判決に不服なら再び控訴でき、理論上は同じ事件で何度も審級を往復しうる。一回の差戻しが、さらに数年の訴訟と費用を生む深刻さを、多くの人は見積もれていない
- 「控訴審はどんな事件でも自分で最終結論を出せる」という前提そのものが誤っている。法は控訴審に自判と差戻しの選択肢を与え、審級の利益という観点から、あえて第一審に判断を譲る場面を残した。あなたが『早く終わらせたい』と願っても、制度は『正しい手続を踏ませること』を優先する場合がある
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 差戻しの性質 | 308条:任意的差戻し(控訴審の裁量) | 307条:必要的差戻し(原則義務) 305条:取消し後の自判(差し戻さない) |
| 適用場面 | 第一審判決を取り消し、更に弁論をする必要があるとき | 訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消すとき 第一審判決が不当で、控訴審が自ら結論を出せるとき |
| 審理がどこで続くか | 第一審に戻り、新たな期日で審理がやり直される | 第一審に戻り、本案について審理させる 控訴審がその場で最終結論を確定させる |
| 手続のリセット | 手続違法が理由なら当該手続は取り消されたとみなす(2項) | 却下判決の前提が崩れ本案審理を新たに行う リセットなし、控訴審までの資料で判断 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も第二審が原判決を廃棄して第一審に発回更審できる。手続違背を理由とする発回の構造は日本の308条2項と類似する
韓国は環送(差戻し)を規定し、必要的環送と任意的環送の区別を置く。審級保障の趣旨は日本と共通する
ドイツは原則として控訴審が自判し(§ 538 Abs. 1)、一定の重大な手続瑕疵がある場合に限り差戻しを認める(§ 538 Abs. 2)。自判原則が強い点で日本と運用感覚が異なる
米国の連邦控訴裁判所は判決を affirm・reverse・remand する広い裁量を持ち、事実審理が必要なときは remand する。差戻しが日常的な処理である点は日本の任意的差戻しに近い
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 何年も争ってきた損害賠償訴訟、控訴審であなたの主張が認められ第一審判決が取り消された。勝った、と思った。だが主文には「第一審裁判所に差し戻す」。事件は地裁に戻り、新たな期日でまた一から弁論。終わったはずの戦いが、さらに一年以上続くことになる
- もし第一審の裁判官が、本来審理すべき中心争点をまったく判断せずに門前払いに近い判決を出していたら、どうなる? 控訴審がその場で全部決めてしまえば、あなたは事実上、二段階で争う機会を一つ奪われる。だから法は、まず第一審に戻してきちんと審理させる道を残している
- 第一審の裁判官が、あなたが適法に提出した重要証拠の取調べを飛ばして判決を書いた。控訴審はこれを手続違反と認定。事件は第一審に差し戻され、その違法な手続は法律上なかったものとみなされる(2項)。
- 差戻し後の第一審が再開し、新たな口頭弁論期日が指定された。あなたに残された準備期間はわずか三週間。前回の主張を立て直し、足りなかった証拠を整え、相手の反撃を読む。時間との戦いがもう一度始まる
- あなたが第一審で勝った被控訴人。ところが控訴審で逆転され、事件は第一審に差し戻された。今度は守勢に回り、第一審からやり直す立場になる。控訴審の「勝ち負け」は、必ずしもその場で確定する決着ではない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 控訴理由書で第一審判決の取消しを求める際、自判(控訴審で決着)と差戻し(第一審へ戻す)のどちらを求めるかを戦略的に決める2. 第一審で十分に審理されなかった争点があるなら、審級の利益を理由に差戻しを主張し、判断材料を整え直す3. 第一審の手続違反(証拠調べの欠落、釈明義務違反など)があれば306条と併せて具体的に指摘し、2項の取消し効果を引き出す4. 差戻しになった場合、戻り先の第一審で指定される新たな期日に備え、主張と証拠を再構成する
訴えられた側:1. 第一審で勝った被控訴人として控訴審に臨むなら、相手の差戻し主張が単なる時間稼ぎでないか見極め、自判による早期決着を求める余地を探る2. 第一審の審理は尽くされていたと主張し、『更に弁論をする必要』がないとして差戻しの要件自体を否定する3. 仮に差し戻されても、2項で取り消されるのは違法な手続部分のみで、適法に積み上げた主張・証拠は活きる。何が残るかを整理する4. 長期化に備え、訴訟費用と和解の損益分岐点を再計算する
時効(請求できる期限):差戻しそのものに固有の時効はないが、差戻し後の第一審で指定される新たな口頭弁論期日に遅れれば、主張・立証の機会を失う。なお控訴自体は、判決書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない(民訴285条)。この入口を逃すと、差戻しを論じる土俵にすら立てない
学説
通説:308条1項の任意的差戻しは控訴審の裁量に委ねられ、自判するか差し戻すかは審級の利益と紛争の早期解決の調整として判断される。2項は手続違法を理由とする差戻しの場合に当該手続を取り消されたものとみなし、差戻し後の手続の基礎を整理するものと解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成8年(1996年)民事訴訟法全部改正 旧民事訴訟法の差戻し規定を整理し、現行308条として任意的差戻し(控訴裁判所が取消し後に更に弁論を要する場合に第一審へ差し戻せること)と、手続違法を理由とする差戻し時の手続取消しみなし(2項)を明文化した
改正の年表
- 1.平成8年(1996年) 改正:民事訴訟法全部改正により、旧法の差戻し規定を整理して現行308条として任意的差戻しと、手続違法を理由とする差戻し時の手続取消しみなし(2項)を明文化した。
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める