民事訴訟法 第32条(被保佐人、被補助人及び法定代理人の訴訟行為の特則)
クイックジャンプ
- 被保佐人、被補助人(訴訟行為をすることにつきその補助人の同意を得ることを要するものに限る。次項及び第四十条第四項において同じ。)又は後見人その他の法定代理人が相手方の提起した訴え又は上訴について訴訟行為をするには、保佐人若しくは保佐監督人、補助人若しくは補助監督人又は後見監督人の同意その他の授権を要しない。
- 2.被保佐人、被補助人又は後見人その他の法定代理人が次に掲げる訴訟行為をするには、特別の授権がなければならない。
- 一訴えの取下げ、和解、請求の放棄若しくは認諾又は第四十八条(第五十条第三項及び第五十一条において準用する場合を含む。)の規定による脱退
- 二控訴、上告又は第三百十八条第一項の申立ての取下げ
- 三第三百六十条(第三百六十七条第二項、第三百七十八条第二項及び第三百八十一条の七第二項において準用する場合を含む。)の規定による異議の取下げ又はその取下げについての同意
この条文の基本情報
被保佐人、被補助人及び法定代理人の訴訟行為の特則とは何ですか?
定義被保佐人、被補助人及び法定代理人の訴訟行為の特則とは、民事訴訟法第32条に定められた規定で、「被保佐人、被補助人(訴訟行為をすることにつきその補助人の同意を得ることを要するものに限る。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事訴訟法第32条(被保佐人、被補助人及び法定代理人の訴訟行為の特則)は、日本の民事訴訟法に含まれる条文です。
- 民事訴訟法第32条の条文原文は「被保佐人、被補助人(訴訟行為をすることにつきその補助人の同意を得ることを要するものに限る。」で始まります。
- 民事訴訟法第32条は第一節 当事者能力及び訴訟能力に置かれています。
- 民事訴訟法の公布日は平成8年6月26日です。
- 民事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事訴訟法第32条の前の条は民事訴訟法第31条です。
- 民事訴訟法第32条の次の条は民事訴訟法第33条です。
- 民事訴訟法第32条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第32条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109 - 本サイト収録
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第32条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/408AC0000000109/32
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事訴訟法32条は、被保佐人らが相手方の訴え・上訴に防御する訴訟行為には授権を要しないが、訴えの取下げ・和解・控訴・上告など処分的行為には特別の授権を要すると定める。
Q · 保佐人がついている親が訴えられたら、本人は同意なしで反論できる?
防御は自由、和解・控訴には特別の授権が必要です。
民事訴訟法32条1項により、被保佐人・被補助人・後見人その他の法定代理人が相手方の提起した訴えや上訴に応訴する防御の訴訟行為には、保佐人・保佐監督人・補助人・補助監督人・後見監督人の同意その他の授権は要りません。答弁・反論・証拠提出は本人が単独でできます。ただし同条2項により、訴えの取下げ、和解、請求の放棄や認諾、脱退、控訴・上告などの処分的訴訟行為には特別の授権が必要です。守りは自由、攻めと放棄には鍵がかかる、という非対称が本条の核心です。
解説
認知症の親が、昔の保証契約を理由に貸金返還請求の訴状を受け取った。親には保佐人が付いている。ここで多くの家族が誤解する。「保佐人の同意がなければ、親は法廷で何も言えないのではないか」。違う。民事訴訟法32条1項は、相手から訴えられた側に立つとき、被保佐人も被補助人も後見人も、保佐人や監督人の同意なしに防御の訴訟行為ができると定める。答弁書を出す、反論する、証拠を出す、これらは全部、誰の許可もいらない。攻撃されている側が身を守る行為は、本人を害さないからだ。ところが2項は逆を向く。訴えの取下げ、和解、請求の放棄や認諾、控訴や上告。これらは本人の権利を手放したり新たな負担を背負ったりする処分行為だから、特別の授権がなければできない。守りは自由、攻めと放棄には鍵がかかる。この非対称が、判断能力が不十分な人を守る設計の核心だ。
法的な位置づけ
民事訴訟法32条は、制限行為能力者等の訴訟行為に関する授権の要否を定める規定である。相手方が提起した訴え又は上訴に対する応訴・防御の訴訟行為には保佐人・補助人・後見監督人等の同意その他の授権を要しないが、訴えの取下げ、和解、請求の放棄若しくは認諾、脱退、控訴・上告等の処分的訴訟行為には特別の授権を必要とする。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.訴状・上訴を「防御」と「処分」に仕分ける 親や本人に届いた訴状・上訴状を、防御行為(答弁・反論・証拠提出)と処分行為(取下げ・和解・請求の放棄や認諾・控訴・上告)に二分する。授権の要否はこの仕分けで決まる
- 2.防御行為は本人が単独で即着手 答弁・反論・証拠提出は32条1項により保佐人等の同意なしに本人が単独でできる。同意書を取りに行って答弁書の提出期限を逃さないよう、防御は先に着手する
- 3.後見類型かどうかを確認し主語を取り違えない 本人が成年被後見人なら32条ではなく31条が適用され、後見人が代理人として動く。保佐・補助なら本人が主語。類型を取り違えると手続全体が無効化されるリスクがある
- 4.処分行為は特別の授権を「先に」整える 和解・取下げ・請求の放棄や認諾・控訴・上告を検討するなら、行為に着手する前に特別の授権を確保する。後見監督人・保佐監督人がいれば同意を取り、必要なら家庭裁判所の手続を確認する
- 5.期限のある上訴は授権取得と並行で準備 控訴・上告には判決送達の翌日から2週間の期限がある。授権を取りに走ってから準備すると間に合わない。授権手配と控訴状作成を同時並行で動かし、上訴機会を失わない
よくある質問 AI による整理
Q1訴訟能力とは何ですか?
自ら有効に訴訟行為をし、また受ける能力です。制限行為能力者は単独では十分でなく、民事訴訟法31条・32条が法定代理や授権の要否を定めています。訴訟能力は訴訟要件で、裁判所が職権で調査します。
Q2特別の授権とは何ですか?
訴えの取下げ・和解・請求の放棄や認諾・控訴・上告など、本人の権利を処分する訴訟行為について、保佐監督人等から個別に与えられる授権です。包括的な委任とは別枠で、行為ごとの授権が要件です。
Q3被保佐人 訴えられた どうすればいい?
まず防御と処分を仕分けます。答弁・反論・証拠提出は防御で、保佐人の同意なしに本人が単独でできます(32条1項)。和解や控訴を考える段階で初めて特別の授権を整えれば足ります。
Q4成年後見人は本人のために和解できますか?
和解は32条2項の特別授権事項です。後見監督人がいればその同意その他の授権が必要で、財産処分を伴う場合は家庭裁判所の許可が別途要ることもあります。授権を欠く和解は効力を争われます。
Q5訴えの取下げに授権は必要ですか?
必要です。訴えの取下げは32条2項1号の特別授権事項で、被保佐人・被補助人・後見人が単独でした取下げは授権を欠けば効力が問題になり、訴訟がふりだしに戻る場合があります。
Q6認知症の親に訴状が届いたら何をすべき?
親に保佐・補助が付いているか、後見かをまず確認します。後見なら後見人が代理し(31条)、保佐・補助なら本人が防御を単独でできます(32条1項)。和解・控訴の段階で授権の手当てに動きます。
Q7制限行為能力者は控訴できますか?
控訴は32条2項2号の特別授権事項です。被保佐人本人が単独で控訴状を出しても授権が要ります。控訴期間(判決送達の翌日から2週間)と授権手配を並行で進める必要があります。
Q8成年被後見人に訴訟能力はありますか?
原則ありません。成年被後見人は32条ではなく31条が適用され、後見人が代理して訴訟行為をします。本人が単独で動けるのは保佐・補助のケースで、この区別を取り違えると手続全体を誤ります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1保佐人がついている家族は、訴えられても自分では何も対応できないんですか?
対応できます。民事訴訟法32条1項が、相手から起こされた訴えや上訴に対する防御の訴訟行為については、保佐人や保佐監督人の同意は要らないと定めています。答弁、反論、証拠提出は本人が単独でできます。実務のポイント:実務では「保佐が付いている=何もできない」と思い込み、わざわざ同意書を取りに行って、その間に答弁書の提出期限を逃すケースがある。防御は自由、と知っているだけで初動が変わる
Q2後見人が本人のために結んだ和解、あとから「無効だ」と言われることはありますか?
あり得ます。和解は32条2項の特別授権事項で、後見監督人がいる場合はその同意その他の授権が必要です。授権を欠いた和解は効力を争われます。実務のポイント:後見監督人が選任されているかどうかで手続が変わる。監督人がいなければ後見人単独で授権できる場面もあるが、財産処分を伴う場合は家庭裁判所の許可(民法859条関連の手続)が別途必要になることがある。和解の前に、自分の権限範囲を家裁か弁護士に確認するのが鉄則
Q3なぜ防御は自由なのに、控訴や和解には特別な許可がいるんですか?
防御は攻撃されている本人を守る行為で本人を害さないが、控訴・和解・取下げ・請求の放棄や認諾は本人の権利を手放したり負担を負ったりする処分行為だからです(32条2項各号)。判断能力が不十分な人がこれらを軽率にすると取り返しがつかない。実務のポイント:この非対称は訴訟代理人(弁護士)にも及ぶ。民事訴訟法55条2項で、弁護士でも取下げ・和解・上告などには本人の特別委任が要る。委任状に「一切の訴訟行為」とあっても、これらは別枠の授権が必要、という落とし穴がある
間違えやすい点 AI による整理
- 「保佐が付いた人が訴えられたら、まず保佐人の同意をどう取るか」と考える人が多い。だがその問い自体がずれている。1項は防御に同意を要求していない。問うべきは「どの行為が2項の特別授権事項に当たるか」であって、防御そのものに許可を探し回るのは時間の浪費だ
- 控訴や和解に特別授権がいることは知っていても、授権なしでやった行為がどうなるかを軽く見ている。授権を欠く取下げや和解は効力が否定され、確定したと思った結果がひっくり返る。手続が何か月も巻き戻り、時効や上訴期間の問題まで再燃する
- 「成年被後見人の訴訟もこの32条で本人が動く」と思われがちだが、実は成年被後見人本人には訴訟能力がなく、31条で後見人が代理する。本人が単独で動けるのは保佐・補助のケースで、後見では後見人が主語になる。この区別を取り違えると手続全体を誤る
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 対象者 | 32条:被保佐人・被補助人・後見人その他の法定代理人 | 31条:未成年者・成年被後見人(本人に訴訟能力なし) 55条:訴訟代理人(弁護士) |
| 防御行為(応訴)の授権 | 32条1項:保佐人・監督人等の同意その他の授権は不要 | 後見人が代理して訴訟行為をする 委任の範囲内で可(55条1項) |
| 処分行為(取下げ・和解・上訴等)の授権 | 32条2項:特別の授権が必要 | 後見人が代理、財産処分なら家裁許可等を要する場合あり 55条2項:本人の特別委任が必要 |
| 授権を欠いた場合 | 処分行為の効力が争われ、確定したと思った結果が覆る | 代理権の有無を職権調査、補正命令(34条) 特別委任を欠く取下げ・和解等は効力を争われる |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は訴訟能力を独立して法律行為で義務を負える能力に結びつけ、制限行為能力者は法定代理人によるとする。防御と処分の授権区分は日本ほど条文上明確ではない。
韓国も制限能力者の訴訟能力を制限し、法定代理人によらせる構造。日本同様、応訴と処分行為で扱いが分かれる解釈が採られる。
ドイツは Prozessfähigkeit を民法上の行為能力に連動させ(§ 52)、無能力者は法定代理による。日本32条の授権二分は ZPO の手続枠組みの影響下にある。
米国は minor / incompetent person を guardian や guardian ad litem が代理・保護する構造で、和解等は裁判所の承認(court approval)を要する点が日本の特別授権に機能的に近い。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 保佐が付いた父に、元取引先が貸金返還請求の訴えを起こした。父本人が答弁書を出して争えるのか、それとも保佐人の同意書が要るのか。答えは1項、相手が起こした訴えへの防御だから、父は単独で答弁・反論・証拠提出ができる。同意を待つ必要はなく、答弁書の提出期限を逃すリスクが消える
- あなたが認知症の母の成年後見人として、母を被告とする訴訟を担当している。相手から「この辺で和解しませんか」と持ちかけられ、つい合意しそうになる。だが待て。和解は2項の特別授権事項。後見監督人の同意その他の授権がなければ、あなたが結んだ和解は効力を争われる。良かれと思った一手が、後で無効リスクを抱える
- 補助が付いた兄が、自分の判断で訴えを取り下げてしまった。だがその取下げには補助人の特別授権がなかった。取下げの効力そのものが問題になり、訴訟がふりだしに戻る
- 第一審で負けた。控訴できる期間はあと数日。だが被保佐人本人が単独で控訴状を出しても、控訴は2項の特別授権事項だから授権が要る。授権の手当てと控訴期間(判決送達の翌日から2週間)が同時に迫る。この二つを今日から並行で動かさないと、控訴の機会ごと失う
取るべき行動
被害を受けた側:1. 訴状や上訴を受け取ったら、まず「防御」と「処分」を仕分ける。答弁・反論・証拠提出は防御で、保佐人や監督人の同意なしに本人が単独でできる(32条1項)、すぐ着手2. 和解・取下げ・請求の放棄や認諾、控訴・上告を検討するなら、特別授権の手当てが先。後見監督人や保佐監督人がいれば同意を取り、必要なら家裁手続を確認3. 本人が後見類型なら、本人ではなく後見人が代理人として動く(31条)、主語を取り違えない4. 期限のある上訴は授権取得と並行で準備し、間に合わせる
訴えられた側:1. 相手方に保佐・補助・後見が付いていると分かったら、相手の和解・取下げ・請求放棄に特別授権があるかを確認する。授権なしの処分行為は効力を争われ、後で和解がひっくり返るリスクがある2. 和解する場合は、相手側の授権の有無を書面で確認し、監督人の同意や家裁許可の証跡を残す3. 相手の防御行為(答弁・反論)には授権不要だから、そこを「能力がないから無効」と主張しても通らない、攻めどころを間違えない4. 相手の訴訟能力自体に疑義があれば、34条の措置(補正命令等)を裁判所に促す
時効(請求できる期限):32条自体に固有の期間はない。ただし防御や上訴には個別の期限が連動する。答弁書は指定された提出期限、控訴・上告は判決送達の翌日から2週間(民事訴訟法285条、313条)。特別授権事項を行うなら、この上訴期間内に授権を整える必要があり、授権の遅れはそのまま上訴機会の喪失につながる(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:32条は訴訟行為を『防御』と『処分』に二分し、本人を害さない応訴・防御は授権不要、本人の権利を手放す処分行為のみ特別の授権を要求する。この非対称は判断能力が不十分な者の裁判を受ける権利と保護を両立させる設計と理解される。
改正沿革 AI による整理
- 平成8年(1996年)民事訴訟法全部改正 旧民事訴訟法から全部改正され、訴訟無能力者等の訴訟行為に関する規律を現行32条に整理。相手方が提起した訴え・上訴への応訴行為に同意や授権を不要とする一方、取下げ・和解・請求の放棄認諾・上訴等を特別授権事項とする枠組みを明確化した
- 平成11年(1999年)成年後見制度導入に伴う改正 禁治産・準禁治産制度の廃止と後見・保佐・補助の新設(民法改正)に合わせ、被保佐人に加え被補助人及び補助人・補助監督人等を条文に取り込み、新たな成年後見制度に対応させた
改正の年表
- 1.平成8年(1996年) 改正:民事訴訟法全部改正。旧法から現行32条に整理され、相手方が提起した訴え・上訴への応訴行為に同意・授権を不要とする一方、取下げ・和解・請求の放棄認諾・上訴等を特別授権事項とする枠組みを明確化した。
- 2.平成11年(1999年) 改正:成年後見制度の導入(禁治産・準禁治産の廃止と後見・保佐・補助の新設)に合わせ、被補助人及び補助人・補助監督人等を条文に取り込み、新たな成年後見制度に対応させた。
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める