民事訴訟法 第92条の8(知的財産に関する事件における裁判所調査官の事務)
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- 裁判所は、必要があると認めるときは、高等裁判所又は地方裁判所において知的財産に関する事件の審理及び裁判に関して調査を行う裁判所調査官に、当該事件において次に掲げる事務を行わせることができる。この場合において、当該裁判所調査官は、裁判長の命を受けて、当該事務を行うものとする。
- 一次に掲げる期日又は手続において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すこと。
- 一口頭弁論又は審尋の期日
- 二争点又は証拠の整理を行うための手続
- 三文書若しくは電磁的記録の提出義務又は検証の目的の提示義務の有無を判断するための手続
- 四争点又は証拠の整理に係る事項その他訴訟手続の進行に関し必要な事項についての協議を行うための手続
- 二証拠調べの期日において、証人、当事者本人又は鑑定人に対し直接に問いを発すること。
- 三和解を試みる期日において、専門的な知見に基づく説明をすること。
- 四裁判官に対し、事件につき意見を述べること。
この条文の基本情報
知的財産に関する事件における裁判所調査官の事務とは何ですか?
定義知的財産に関する事件における裁判所調査官の事務とは、民事訴訟法第92条の8に定められた規定で、「裁判所は、必要があると認めるときは、高等裁判所又は地方裁判所において知的財産に関する事件の審理及び裁判に関して調査を行う裁判所調査官に、当該事件において次に掲げ…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事訴訟法第92条の8(知的財産に関する事件における裁判所調査官の事務)は、日本の民事訴訟法に含まれる条文です。
- 民事訴訟法第92条の8の条文原文は「裁判所は、必要があると認めるときは、高等裁判所又は地方裁判所において知的財産に関する事件の審理及び裁判に関して調査を行う裁判所調査官に、当該事件において次に掲げ…」で始まります。
- 民事訴訟法第92条の8は第二款 知的財産に関する事件における裁判所調査官の事務等に置かれています。
- 民事訴訟法の公布日は平成8年6月26日です。
- 民事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事訴訟法第92条の8の前の条は民事訴訟法第92条の7です。
- 民事訴訟法第92条の8の次の条は民事訴訟法第92条の9です。
- 民事訴訟法第92条の8には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第92条の8 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/408AC0000000109 - 本サイト収録
民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第92条の8(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/408AC0000000109/92_8
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事訴訟法92条の8は、知財事件において裁判所調査官が当事者への発問・証人への直接尋問・和解での専門的説明・裁判官への意見陳述を行えると定める規定である。
Q · 特許の裁判では、技術が分からない裁判官だけが判断するの?
理工系の裁判所調査官が裁判官を補佐します
民事訴訟法92条の8により、知的財産に関する事件では、理工系の専門知識を持つ裁判所調査官が関与することがあります。調査官は裁判長の命を受けて、当事者への発問・立証の促し(第1号)、証人や鑑定人への直接尋問(第2号)、和解期日での専門的説明(第3号)、そして裁判官への意見陳述(第4号)を行います。技術を独力では評価しきれない裁判官を、技術が分かる人間が補佐する仕組みであり、特許の運命は法服の裁判官だけでなく、その隣の技術者の心証にも左右されます。
解説
特許権侵害で訴えられた、あるいは自社の特許を侵害されて訴えた。あなたは法廷で、黒い法服を着た裁判官だけが判断を下すと思っている。違う。知的財産に関する事件では、裁判官の隣にもう一人、理工系のバックグラウンドを持つ「裁判所調査官」が関与していることがある。この条文は、その調査官が高等裁判所や地方裁判所で何をできるかを定める。彼らは、あなたの技術説明が不十分なとき釈明を促し(第1号)、証人尋問であなたの証人に直接技術的な質問を投げ(第2号)、和解の席で専門的な見解を述べ(第3号)、そして最も重要なこととして、裁判官に対し事件について意見を述べる(第4号)。つまり、技術を独力では評価しきれない裁判官に、技術が分かる人間が耳打ちをする仕組みだ。あなたの特許の運命は、法服の裁判官だけでなく、その隣に座る技術者の心証にも左右される。
法的な位置づけ
民事訴訟法92条の8は、知的財産に関する事件における裁判所調査官の事務を定める規定である。高等裁判所または地方裁判所において、裁判長の命を受けた調査官が、訴訟関係を明瞭にするための発問、証拠調べ期日での証人等への直接尋問、和解期日での専門的説明、および裁判官への意見陳述を行うことを認める。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.技術説明会用の図解資料を準備する 裁判官より先に調査官が読み込むことが多いため、専門家でなくても10分で核心を掴める図解・実験データを最初に用意する。クレーム解釈や非侵害の論点を視覚的に整理し、調査官の第一印象を味方につける
- 2.技術者を期日に同席させ想定質問に備える 技術説明会・弁論準備手続では、技術の核心を口頭で噛み砕いて説明できる技術者を同席させる。調査官からの想定質問を洗い出し、即答できるよう事前にリハーサルする
- 3.証人尋問で調査官の質問方向から心証を読む 証拠調べ期日で調査官が直接質問してきたら(第2号)、その質問が突いてくる方向から、調査官がどちらの主張に傾いているかを読む。心証が不利なら補充の主張・立証を機動的に追加する
- 4.不利な心証は固まる前に技術的反証を投入する 心証が不利に傾いた疑いがあれば、適時提出主義(民訴156条)に注意しつつ、調査官の理解が固まる前の早い段階で技術的反証資料を追加する。時機に後れると却下される(民訴157条)
よくある質問 AI による整理
Q1裁判所調査官とは何ですか?
裁判官を補佐する裁判所の職員です。知的財産に関する事件では理工系の専門知識を持ち、技術面で裁判官の判断を支えます。設置根拠は裁判所法57条で、民訴92条の8が具体的な事務を定めます。
Q2裁判所調査官は誰がなれますか?
知財事件の調査官には、特許庁の審査官・審判官経験者など理工系のバックグラウンドを持つ人材が任命されることが多いです。技術を裁判官に翻訳する役割を担います。
Q3裁判所調査官はどんな事件に関与しますか?
民訴92条の8が対象とするのは知的財産に関する事件です。特許侵害訴訟が典型ですが、営業秘密の漏洩や実用新案・意匠など技術評価が必要な事件も含まれ得ます。
Q4裁判所調査官は証人に直接質問できますか?
できます。民訴92条の8第2号により、証拠調べ期日において証人・当事者本人・鑑定人に対し、裁判長の命を受けて直接質問できます。質問の方向から心証が読めます。
Q5裁判所調査官に不公正があったら忌避できますか?
できます。民訴92条の9が調査官の除斥・忌避を定めており、裁判官と同様に中立性が疑われる事由があれば申立てが可能です。
Q6知財事件の技術説明会とは何ですか?
当事者が裁判官・調査官に対し、争点となる技術を図解や実演で説明する非公式な手続です。調査官が最初に技術資料を読み込むことが多く、第一印象が心証に影響します。
Q7裁判所調査官は判決を出しますか?
出しません。判断主体はあくまで裁判官で、調査官は補佐にとどまります(裁判所法57条)。ただし裁判官への意見陳述(第4号)を通じて判断に実質的に影響します。
Q8裁判所調査官の意見は判決にどう影響しますか?
第4号の意見は裁判官の判断材料になりますが、原則として当事者に開示されません。何に反論すべきか見えないまま不利な心証が形成される構造的弱点が指摘されています。
この条文についての質問 AI による整理
Q1特許裁判の調査官って、結局どれくらい判決に影響するんですか?
形式的には裁判官が判断主体で、調査官はあくまで補佐です(裁判所法57条)。ただし実務では、最先端技術を独力で評価しきれない裁判官にとって、調査官の意見(民事訴訟法92条の8第4号)の影響は小さくありません。実務のポイント:知財専門部の裁判官でも、難解な技術は調査官の理解に依存する場面が多い。だから優れた代理人は、裁判官だけでなく調査官に技術が正確に伝わっているかを期日ごとに観察し、伝わっていないと感じたら図解を追加投入する。判事席だけを見ている代理人は、半分の情報しか見ていない。
Q2調査官が裁判官に何を言ったか、当事者は知ることができますか?
原則として、調査官が裁判官に述べた意見(第4号)は当事者に開示されません。ここが手続保障上の最大の論点で、実務上も開示の要否について解釈が分かれています。実務のポイント:反論したくても何に反論すべきか分からない、というのがこの制度の構造的な弱点です。だから経験豊富な代理人は、調査官が誤解しそうな技術的ポイントを先回りして潰し、不利な意見が形成される前提自体を作らせない。事後の反論より事前の予防が効く、数少ない局面の一つです。
間違えやすい点 AI による整理
- 「特許裁判は技術が分からない裁判官が判断するのだから、技術で押し切れば勝てる」と思われがちだが、実際には理工系の裁判所調査官が裁判官を補佐している。技術の難解さで裁判官を煙に巻く戦略は、調査官の存在によって通用しない
- 「調査官の意見には反論すればいい」とあなたは考えるかもしれない。だが問いの立て方そのものが間違っている。調査官が裁判官に述べる意見(第4号)は、当事者に開示されないのが原則で、何に反論すべきかすら見えないことが多い。反論の対象が見えないことこそ、この制度の構造的な弱点だ(実務上、開示の要否について解釈が分かれている)
- 調査官が関与していること自体は知っていても、その影響力の深さを知らない人が多い。調査官は証人に直接質問でき(第2号)、和解で専門的見解を述べ(第3号)、裁判官に意見する(第4号)。審理の入口から出口まで関与する。「補助者」という言葉から受ける軽い印象より、はるかに実質的に判断へ食い込んでいる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 関与する主体 | 裁判所の職員である裁判所調査官(理工系の専門知識) | 外部の専門家を任命する専門委員(92条の2) 裁判官自身が行う釈明権(149条) |
| 対象となる事件 | 知的財産に関する事件に限定 | 専門的知見を要する事件全般 すべての民事事件 |
| 裁判官への意見・説明の開示 | 裁判官への意見陳述(第4号)は原則非開示 | 当事者の面前で説明させるのが原則(透明性が高い) 公開の法廷で行われる |
| 中立性の担保手段 | 除斥・忌避の規定あり(92条の9) | 除斥・忌避の規定あり(92条の6) 裁判官自身の除斥・忌避(23条以下) |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は智慧財産及商業法院に技術審査官を置き、技術事項の調査・意見提供を行わせる。日本の調査官に最も近い制度設計
韓国は特許法院に技術審理官を置き、技術的事項の審理に関与させる。理工系専門家が裁判官を補佐する構造は日本と類似
ドイツは連邦特許裁判所に技術判事を配置し、合議体の構成員として直接判断に加わる。補佐ではなく裁判官として関与する点で日本と異なる
米国は事件ごとに技術アドバイザーや裁判所選任鑑定人を起用する運用。常設の専門官ではなく個別任命型である点が日本と異なる
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたの会社が大企業から特許侵害で訴えられた。技術説明会の場で、裁判官の隣の調査官があなたの技術者に鋭い質問を浴びせてくる。その質問が突いてくる方向で、調査官がどちらの主張に傾いているかが読める。この瞬間にどう補足するかが、判決の心証を静かに左右する
- もし証人尋問の最中、裁判官ではなく調査官が直接あなたの専門家証人に質問してきたら、どう構えるべきか。その問いは技術の核心を狙ってくる。準備不足の証人はここで言葉に詰まり、特許の有効性そのものが揺らぐ
- 和解を試みる期日で、調査官が「この特許の技術的範囲は限定的だ」と専門的見解を述べた。あなたの請求の前提が、その一言で崩れた
- 技術説明会まであと2週間。調査官の手元に届く資料は、この場でほぼ決まる。図面と実験データを今どう整理し、非専門家が10分で核心を掴める形にするかで、調査官の第一印象が固まってしまう
取るべき行動
被害を受けた側:1. 訴訟前に、自社技術を非専門家が10分で理解できる図解と実験データに整理し、調査官が最初に読む資料として最適化する2. 技術説明会・弁論準備手続では、調査官に向けて技術の核心を口頭で噛み砕いて説明し、想定質問に即答できる技術者を同席させる3. 証人尋問で調査官が直接質問してきたら(第2号)、その質問の方向から心証を読み、補充の主張・立証を機動的に追加する4. 心証が不利に傾いた疑いがあれば、弁論の全趣旨として記録に残る形で技術的反証を尽くす
訴えられた側:1. まず自社製品が特許の技術的範囲に属さない(非侵害)のか、特許自体が無効なのか、二つの防御線を整理する2. 技術説明会で調査官に「この特許の範囲は限定的だ」という理解を持たせる図解を準備し、クレーム解釈を有利な方へ誘導する3. 無効の抗弁(特許法104条の3)を出すなら、先行技術文献を調査官が検証しやすい時系列で整理する4. 調査官の質問の方向が不利なら、心証が固まる前の早い段階で技術的反論資料を追加投入する
時効(請求できる期限):この条文自体に時効はない。ただし攻撃防御方法の提出には適時提出主義(民事訴訟法156条)が適用され、技術説明会・弁論準備手続の終結後に新たな主張・立証を出すと、時機に後れたものとして却下されうる(民事訴訟法157条)。調査官の心証が固まる前の早い段階で技術的主張を尽くすことが実務上決定的(最新の運用状況をご確認ください)。
学説
通説:判断主体はあくまで裁判官であり、裁判所調査官は補佐者にとどまる(裁判所法57条)。もっとも、第4号の裁判官への意見が原則非開示である点について、手続保障・当事者の防御権との関係で開示の要否をめぐる議論が続いている。
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年) 知的財産高等裁判所の設置を含む知財訴訟改革の一環として新設。従来は裁判官の調査補助にとどまっていた裁判所調査官に、知財事件において当事者への発問・証人等への直接尋問・和解での専門的説明・裁判官への意見陳述という積極的権限を法定した
改正の年表
- 1.平成16年(2004年) 新設:知的財産高等裁判所の設置を含む知財訴訟改革の一環として新設。従来は裁判官の調査補助にとどまっていた裁判所調査官に、当事者への発問・証人等への直接尋問・和解での専門的説明・裁判官への意見陳述という積極的権限を法定した。
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