民事再生法 第93条(相殺の禁止)
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- 再生債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。
- 一再生手続開始後に再生債務者に対して債務を負担したとき。
- 二支払不能(再生債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。以下同じ。)になった後に契約によって負担する債務を専ら再生債権をもってする相殺に供する目的で再生債務者の財産の処分を内容とする契約を再生債務者との間で締結し、又は再生債務者に対して債務を負担する者の債務を引き受けることを内容とする契約を締結することにより再生債務者に対して債務を負担した場合であって、当該契約の締結の当時、支払不能であったことを知っていたとき。
- 三支払の停止があった後に再生債務者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。
- 四再生手続開始、破産手続開始又は特別清算開始の申立て(以下この条及び次条において「再生手続開始の申立て等」という。)があった後に再生債務者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、再生手続開始の申立て等があったことを知っていたとき。
- 2.前項第二号から第四号までの規定は、これらの規定に規定する債務の負担が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない。
- 一法定の原因
- 二支払不能であったこと又は支払の停止若しくは再生手続開始の申立て等があったことを再生債権者が知った時より前に生じた原因
- 三再生手続開始の申立て等があった時より一年以上前に生じた原因
この条文の基本情報
相殺の禁止とは何ですか?
定義相殺の禁止とは、民事再生法第93条に定められた規定で、「再生債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事再生法第93条(相殺の禁止)は、日本の民事再生法に含まれる条文です。
- 民事再生法第93条の条文原文は「再生債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。」で始まります。
- 民事再生法第93条は第一節 再生債権者の権利に置かれています。
- 民事再生法の公布日は平成11年12月22日です。
- 民事再生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事再生法第93条の前の条は民事再生法第92条です。
- 民事再生法第93条の次の条は民事再生法第93条の2です。
- 民事再生法第93条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第93条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225 - 本サイト収録
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第93条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/411AC0000000225/93
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事再生法93条は、再生債権者が手続開始後や危機を知った後に相殺目的で負担した債務の相殺を禁止する規定。ただし危機を知る前や一年以上前の原因に基づく債務は例外的に相殺できる。
Q · 取引先が民事再生したとき、いつ負った買掛金なら売掛金と相殺できるの?
危機を知る前から負っていた債務なら相殺できる
民事再生法93条により、相殺できるかは「いつ、相手の経営危機を知って、その債務を負ったか」で決まります。再生手続開始後に負担した債務(1項1号)、支払不能・支払の停止・申立てを知った後に相殺目的で作った債務(1項2〜4号)は相殺できません。逆に、危機を知る前から負っていた債務、法定の原因に基づく債務、危機の一年以上前に生じた原因に基づく債務は、例外として相殺がそのまま認められます(2項)。相殺は再生計画の低い弁済率の中で実質100% 回収に等しく、無担保の債権者が担保権者並みの地位を得る強力な手段です。
解説
取引先が民事再生を申し立てた。あなたはその会社に500万円の売掛金(回収できるか怪しい)を持つ一方、相手から仕入れた300万円の買掛金(あなたが払う側)を負っている。普通に考えれば、売掛金は大幅カット、買掛金は満額払わされる、二重の損だ。だが相殺を使えば、重なる300万円分は「チャラ」にできる。つまりあなたの債務が、事実上の担保(優先回収の手段)に化ける。これが民事再生における相殺権の威力だ。問題は、93条がその相殺に「待った」をかける場面を定めている点にある。鍵はすべて「いつ、相手の経営危機を知って、その債務を負ったか」だ。再生手続開始後に負った債務、支払不能や支払の停止を知った後に狙って作った債務、これらは相殺できない。逆に、危機を知る前から負っていた債務、危機の一年以上前に生じた原因に基づく債務は、相殺がそのまま生き残る。あなたが手にした「武器」を守れるか没収されるかは、取引の時系列で決まる。
法的な位置づけ
民事再生法93条は、再生手続における相殺の禁止を定める規定である。再生債権者が再生手続開始後に負担した債務、または支払不能・支払の停止・再生手続開始の申立てを知った後に相殺を目的として負担した債務については、相殺権の行使を制限する。これにより、危機時期に作出された相殺の期待を否定し、債権者間の平等と責任財産の維持を図る趣旨をもつ。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.対相手の債権・債務を即座に棚卸しする 取引先の信用不安を察知したら、自社が相手に持つ債権(売掛金等)と負う債務(買掛金等)を帳簿で洗い出し、相殺可能な重なり額を把握する
- 2.各債務を時系列化し危機認識との前後を確定 各債務を「いつ、どの取引で負ったか」を契約書・発注書で時系列に整理し、支払不能・支払の停止・再生手続開始の申立てを知った時点との前後関係を確定する
- 3.相殺可能な債務を切り分ける 危機を知る前から負っていた債務、法定の原因や一年以上前の原因に基づく債務は相殺可(93条2項)。開始後や危機認識後に相殺目的で作った債務は相殺不可なので区別し、無理に使わない
- 4.債権届出期間内に書面で相殺の意思表示をする 相殺可能な部分について、債権届出期間内に配達証明付き書面で相殺の意思表示を行う。相殺は一方的意思表示で成立し(民法506条)、相手の同意は不要
よくある質問 AI による整理
Q1相殺の禁止とは何ですか?
倒産手続で一部の債権者が抜け駆けで満額回収するのを防ぐため、危機時期に作られた相殺を制限する仕組みです。民事再生法93条が、開始後や危機を知った後の相殺目的の債務負担を禁止しています。
Q2民事再生で相殺できる債権とできない債権の違いは?
危機を知る前から負っていた債務は相殺可、開始後や危機を知った後に相殺目的で作った債務は相殺不可です。判断の分水嶺は債務を負担した時期と危機認識の前後関係にあります。
Q3相殺の意思表示はいつまでにすればいいですか?
民事再生では債権届出期間の満了までに相殺するのが原則です(民事再生法92条1項)。この期間を過ぎると相殺権を行使できなくなるため、早めの書面通知が重要です。
Q4支払不能と支払の停止の違いは何ですか?
支払不能は弁済期にある債務を一般的・継続的に弁済できない客観的状態。支払の停止は「支払えない」と外部に表示する行為で、支払不能を推認させる事実です。93条は両者を区別して扱います。
Q5相殺禁止の例外にはどんなものがありますか?
法定の原因、危機(支払不能・支払停止・申立て)を知る前に生じた原因、申立てより一年以上前に生じた原因、この3つに基づく債務負担は93条2項で相殺禁止の対象外となります。
Q6破産と民事再生で相殺のルールは違いますか?
枠組みは類似します。破産法71条が破産手続の相殺禁止、民事再生法93条が再生手続の相殺禁止を並行して定めており、危機時期に作られた相殺を否定する構造は共通です。
Q7一年以上前に生じた原因とはどういう意味ですか?
再生手続開始の申立て等の一年以上前から存在する取引関係など、危機とは無関係に自然発生した債務原因を指します。これに基づく債務は93条2項3号で相殺が保護されます。
Q8相殺は違法になることがありますか?
相殺自体が違法になるわけではありませんが、93条1項に該当する相殺は効力を否定されます。再生債務者側・監督委員は該当性を主張して相殺を排除し、責任財産を守ることができます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1取引先が民事再生したら、買掛金は払わずに売掛金とチャラにできるって本当ですか?
本当だ。あなたが相手に債務(買掛金)を負い、同時に債権(売掛金)を持つなら、相殺で重なる部分は実質100% 回収できる(民事再生法92条)。ただし93条の禁止に当たらないことが条件。実務のポイント:再生計画での一般債権の弁済率は1割から2割が珍しくない。相殺できる債権は満額回収に等しく、無担保なのに担保権者並みの地位を得る。だから倒産情報が出た瞬間、分かっている人はまず「自分は相手にいくら借りているか」を確認する
Q2取引先が危ないと聞いてから、急いで相手から仕入れて買掛金を増やせば、相殺枠を広げられますか?
できない。むしろ逆効果だ。支払不能・支払の停止・再生手続開始の申立てを知った後に、相殺目的で作った債務は相殺禁止になる(93条1項2号から4号)。実務のポイント:この駆け込み相殺を狙う人は実は多いが、監督委員や管財人は債務の負担時期を必ず洗う。知った後の不自然な取引は真っ先に否認の標的になる。守れるのは、危機を知る前から自然に積み上がっていた債務だけだ
Q3銀行に預金があって同じ銀行に借金もある状態で、自分が再生を申し立てたら預金はどうなりますか?
銀行は貸付金(債権)と預金(債務)を相殺し、預金は事実上、借金の返済に充てられる。これは銀行が再生債権者として行う相殺で、93条の禁止に当たらない限り有効だ。実務のポイント:だから資金繰りに窮した法人が再生を考えるとき、借入のあるメインバンクの口座に運転資金を置いたままだと、申立て後にごっそり相殺される。実務では、借入のない別の金融機関の口座に資金を移すかどうかで、手元に残る運転資金が大きく変わる(最新の実務状況・約款をご確認ください)
間違えやすい点 AI による整理
- 「取引先が倒産したら、買掛金は当然そのまま払うしかない」と思い込んでいる。実際は売掛金とぶつけて相殺でき、重なる分は払わずに済む。あなたの債務は損失ではなく回収手段だ
- 相殺できること自体は知っていても、その価値を桁違いに過小評価している。再生計画では一般債権の弁済率が1割台に沈むことも珍しくない。その中で相殺は実質100% 回収に等しい。無担保のあなたが、担保権者並みの地位を手にする話だと気付いていない
- 「相殺できるかどうかは相手の同意しだい」と考えているなら、問いの立て方が間違っている。相殺は一方的な意思表示で成立する(民法506条)。本当の勝負どころは相手の首を縦に振らせることではなく、債務を負った時期がいつかという時系列にある
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 93条:相殺が禁止される場面(時期による制限) | 92条:相殺権の発生根拠と行使期間 93-2条:再生債権の取得による相殺禁止の補充 |
| 判断の分水嶺 | 債務を負担した時期と危機認識の前後 | 相殺の意思表示が債権届出期間内か 再生債権を取得した時期と危機認識の前後 |
| 効果 | 該当すると相殺不可(例外は2項) | 期間内なら相殺可、徒過で相殺権喪失 該当すると相殺不可 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も破産手続で相殺(抵銷)を原則認めつつ、危機時期に取得・負担した債権債務については114条で制限する。時期で線を引く構造は日本と共通。
韓国の統合倒産法も回生手続における相殺の禁止を定める。危機認識後に相殺目的で負担した債務を排除する点で日本93条と類似する。
ドイツ倒産法は §§ 94-95で相殺を認めつつ § 96で相殺の許されない場合を列挙。危機時期に取得した債権による相殺を否定する発想が日本法の母法にあたる。
米国連邦倒産法は相殺権(setoff)を承認しつつ、申立前90日以内の債権取得等について制限を設ける。時期基準で相殺を制約する点は共通するが、期間の切り方が異なる。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先が今朝、民事再生を申し立てたとの一報。あなたは相手に買掛金800万円、売掛金1,200万円。「今から追加発注して買掛金を増やせば相殺枠が広がる」と考えたら危険だ。申立てを知った後の債務負担は相殺禁止(93条1項4号)。残された手は、すでに負っている債務での相殺のみ。動けるのは今日中、債権届出期間内に意思表示を固めないと武器ごと失う
- もし、その買掛金が半年前から続く通常取引で生じたもので、相手の支払停止を知る前のものだとしたら? それは「知った時より前に生じた原因」(93条2項2号)に当たり、相殺禁止の例外として生き残る。問いは「相殺できるか」ではなく「いつ負ったか」だ
- あなたが再生債務者側、あるいは監督委員・代理人の立場なら見え方は逆になる。大口債権者が申立て直前に駆け込みで債務を作って相殺してきたら、その相殺は93条で排除できる。相殺禁止は、一部の債権者だけが抜け駆けで満額回収するのを止める防波堤だ
- 銀行に預金があり、同じ銀行から借入もある。取引先ではなくあなた自身が再生を申し立てた。銀行は貸付金と預金を相殺して優先回収する。これも93条の射程内だ
取るべき行動
被害を受けた側:1. 相手の信用不安を察知したら即座に、自社の対相手の債権(売掛金等)と債務(買掛金等)を棚卸しする2. 各債務を「いつ、どの取引で負ったか」を契約書・発注書で時系列化し、支払の停止・支払不能・申立てを知った時点との前後関係を確定する3. 知る前から負っていた債務、または一年以上前の原因に基づく債務は相殺可、債権届出期間内に書面(配達証明付き)で相殺の意思表示をする4. 開始後・危機認識後に作った債務は相殺不可なので、無理に使わず切り分ける
訴えられた側:1. 再生債務者側・監督委員側として大口債権者の相殺主張を受けたら、その債務の負担時期を精査する2. 支払不能・支払の停止・申立てを知った後に、専ら相殺目的で作られた債務でないか(93条1項2号から4号)を検証する3. 該当すれば相殺禁止を主張して相殺の効力を否定し、責任財産を守る4. 相手が持ち出すであろう例外事由(法定の原因、知る前の原因、一年以上前の原因、93条2項)に当たらないかを先回りで潰す
時効(請求できる期限):相殺自体に固有の消滅時効はないが、民事再生では相殺は債権届出期間の満了までに行うのが原則(民事再生法92条1項)。この期間を過ぎると相殺権を行使できなくなる。起算点は再生手続開始決定で定められる債権届出期間(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:相殺は当事者の合理的期待を保護する制度であり、平時は自由に行使できる(相殺の担保的機能)。倒産局面では一部債権者による抜け駆け回収を防ぐため、危機時期に作出された相殺の期待は否定される。93条2項の例外事由(法定の原因・知る前の原因・一年以上前の原因)に該当すれば、相殺は保護される。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成11年(1999年) 新設:民事再生法制定(平成11年法律第225号)。旧和議法に代わる再生型倒産手続として、相殺権(92条)とその禁止(93条)を明文化し、破産法と整合する相殺規律を整備した。
- 民事再生法 第92条相殺権の発生根拠と行使期間の制限
- 民事再生法 第93条の2再生債権の取得による相殺禁止の補充
- 民法 第505条相殺の一般的要件、本条が修正する基礎法
- 民法 第506条相殺は一方的意思表示で成立する原則
- 破産法 第71条破産手続における相殺禁止の並行規定
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