要点民事再生法 93 条は、再生債権者が手続開始後や危機を知った後に相殺目的で負担した債務の相殺を禁止する規定。ただし危機を知る前や一年以上前の原因に基づく債務は例外的に相殺できる。
Q · 取引先が民事再生したとき、いつ負った買掛金なら売掛金と相殺できるの?
危機を知る前から負っていた債務なら相殺できる
民事再生法 93 条により、相殺できるかは「いつ、相手の経営危機を知って、その債務を負ったか」で決まります。再生手続開始後に負担した債務(1 項 1 号)、支払不能・支払の停止・申立てを知った後に相殺目的で作った債務(1 項 2〜4 号)は相殺できません。逆に、危機を知る前から負っていた債務、法定の原因に基づく債務、危機の一年以上前に生じた原因に基づく債務は、例外として相殺がそのまま認められます(2 項)。相殺は再生計画の低い弁済率の中で実質 100% 回収に等しく、無担保の債権者が担保権者並みの地位を得る強力な手段です。
取引先が民事再生を申し立てた。あなたはその会社に 500 万円の売掛金(回収できるか怪しい)を持つ一方、相手から仕入れた 300 万円の買掛金(あなたが払う側)を負っている。普通に考えれば、売掛金は大幅カット、買掛金は満額払わされる、二重の損だ。だが相殺を使えば、重なる 300 万円分は「チャラ」にできる。つまりあなたの債務が、事実上の担保(優先回収の手段)に化ける。これが民事再生における相殺権の威力だ。問題は、93 条がその相殺に「待った」をかける場面を定めている点にある。鍵はすべて「いつ、相手の経営危機を知って、その債務を負ったか」だ。再生手続開始後に負った債務、支払不能や支払の停止を知った後に狙って作った債務、これらは相殺できない。逆に、危機を知る前から負っていた債務、危機の一年以上前に生じた原因に基づく債務は、相殺がそのまま生き残る。あなたが手にした「武器」を守れるか没収されるかは、取引の時系列で決まる。
民事再生法 93 条は、再生手続における相殺の禁止を定める規定である。再生債権者が再生手続開始後に負担した債務、または支払不能・支払の停止・再生手続開始の申立てを知った後に相殺を目的として負担した債務については、相殺権の行使を制限する。これにより、危機時期に作出された相殺の期待を否定し、債権者間の平等と責任財産の維持を図る趣旨をもつ。
AI 輔助整理,以條文原文為準
倒産手続で一部の債権者が抜け駆けで満額回収するのを防ぐため、危機時期に作られた相殺を制限する仕組みです。民事再生法 93 条が、開始後や危機を知った後の相殺目的の債務負担を禁止しています。
危機を知る前から負っていた債務は相殺可、開始後や危機を知った後に相殺目的で作った債務は相殺不可です。判断の分水嶺は債務を負担した時期と危機認識の前後関係にあります。
民事再生では債権届出期間の満了までに相殺するのが原則です(民事再生法 92 条 1 項)。この期間を過ぎると相殺権を行使できなくなるため、早めの書面通知が重要です。
支払不能は弁済期にある債務を一般的・継続的に弁済できない客観的状態。支払の停止は「支払えない」と外部に表示する行為で、支払不能を推認させる事実です。93 条は両者を区別して扱います。
法定の原因、危機(支払不能・支払停止・申立て)を知る前に生じた原因、申立てより一年以上前に生じた原因、この 3 つに基づく債務負担は 93 条 2 項で相殺禁止の対象外となります。
枠組みは類似します。破産法 71 条が破産手続の相殺禁止、民事再生法 93 条が再生手続の相殺禁止を並行して定めており、危機時期に作られた相殺を否定する構造は共通です。
再生手続開始の申立て等の一年以上前から存在する取引関係など、危機とは無関係に自然発生した債務原因を指します。これに基づく債務は 93 条 2 項 3 号で相殺が保護されます。
相殺自体が違法になるわけではありませんが、93 条 1 項に該当する相殺は効力を否定されます。再生債務者側・監督委員は該当性を主張して相殺を排除し、責任財産を守ることができます。
本当だ。あなたが相手に債務(買掛金)を負い、同時に債権(売掛金)を持つなら、相殺で重なる部分は実質 100% 回収できる(民事再生法 92 条)。ただし 93 条の禁止に当たらないことが条件。業界裏話ヒント:再生計画での一般債権の弁済率は 1 割から 2 割が珍しくない。相殺できる債権は満額回収に等しく、無担保なのに担保権者並みの地位を得る。だから倒産情報が出た瞬間、分かっている人はまず「自分は相手にいくら借りているか」を確認する
できない。むしろ逆効果だ。支払不能・支払の停止・再生手続開始の申立てを知った後に、相殺目的で作った債務は相殺禁止になる(93 条 1 項 2 号から 4 号)。業界裏話ヒント:この駆け込み相殺を狙う人は実は多いが、監督委員や管財人は債務の負担時期を必ず洗う。知った後の不自然な取引は真っ先に否認の標的になる。守れるのは、危機を知る前から自然に積み上がっていた債務だけだ
銀行は貸付金(債権)と預金(債務)を相殺し、預金は事実上、借金の返済に充てられる。これは銀行が再生債権者として行う相殺で、93 条の禁止に当たらない限り有効だ。業界裏話ヒント:だから資金繰りに窮した法人が再生を考えるとき、借入のあるメインバンクの口座に運転資金を置いたままだと、申立て後にごっそり相殺される。実務では、借入のない別の金融機関の口座に資金を移すかどうかで、手元に残る運転資金が大きく変わる(最新の実務状況・約款をご確認ください)
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 93 条:相殺が禁止される場面(時期による制限) | — |
| 判断の分水嶺 | 債務を負担した時期と危機認識の前後 | — |
| 効果 | 該当すると相殺不可(例外は 2 項) | — |
ログインすると、他の読者と一緒にこの条文へメモを残せます。
ログインして共同ノートを始める以下は各文が単独で意味の通る客観的事実です。引用は e-Gov法令検索を基準としてください。