民事再生法 第92条(相殺権)
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- 再生債権者が再生手続開始当時再生債務者に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が第九十四条第一項に規定する債権届出期間の満了前に相殺に適するようになったときは、再生債権者は、当該債権届出期間内に限り、再生計画の定めるところによらないで、相殺をすることができる。債務が期限付であるときも、同様とする。
- 2.再生債権者が再生手続開始当時再生債務者に対して負担する債務が賃料債務である場合には、再生債権者は、再生手続開始後にその弁済期が到来すべき賃料債務(前項の債権届出期間の満了後にその弁済期が到来すべきものを含む。次項において同じ。)については、再生手続開始の時における賃料の六月分に相当する額を限度として、前項の債権届出期間内に限り、再生計画の定めるところによらないで、相殺をすることができる。
- 3.前項に規定する場合において、再生債権者が、再生手続開始後にその弁済期が到来すべき賃料債務について、再生手続開始後その弁済期に弁済をしたときは、再生債権者が有する敷金の返還請求権は、再生手続開始の時における賃料の六月分に相当する額(同項の規定により相殺をする場合には、相殺により免れる賃料債務の額を控除した額)の範囲内におけるその弁済額を限度として、共益債権とする。
- 4.前二項の規定は、地代又は小作料の支払を目的とする債務について準用する。
この条文の基本情報
相殺権とは何ですか?
定義相殺権とは、民事再生法第92条に定められた規定で、「再生債権者が再生手続開始当時再生債務者に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が第九十四条第一項に規定する債権届出期間の満了前に相殺に適するように…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 民事再生法第92条(相殺権)は、日本の民事再生法に含まれる条文です。
- 民事再生法第92条の条文原文は「再生債権者が再生手続開始当時再生債務者に対して債務を負担する場合において、債権及び債務の双方が第九十四条第一項に規定する債権届出期間の満了前に相殺に適するように…」で始まります。
- 民事再生法第92条は第一節 再生債権者の権利に置かれています。
- 民事再生法の公布日は平成11年12月22日です。
- 民事再生法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 民事再生法第92条の前の条は民事再生法第91条です。
- 民事再生法第92条の次の条は民事再生法第93条です。
- 民事再生法第92条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第92条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225 - 本サイト収録
民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第92条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/411AC0000000225/92
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点民事再生法92条は、再生債権者が再生債務者に負う債務と自らの債権が債権届出期間の満了前に相殺適状となれば、届出期間内に限り再生計画によらず相殺できると定める。
Q · 取引先が民事再生を申し立てたら、売掛金はもう数割しか戻らないの?
届出期間内に相殺すれば重なった債権は満額残せます
民事再生法92条により、再生手続開始時にあなたが相手に債務(買掛金・前受金など)を負い、その債権と債務の双方が債権届出期間の満了前に相殺適状となれば、届出期間内に限り再生計画によらず相殺できます。重なった部分はカットを免れ、満額回収と同じ効果になります。ただし相殺は債権届出期間内に意思表示しなければならず、一日過ぎればこの権利は失われます。賃料債務と敷金返還請求権には6か月分を限度とする特則もあります。
解説
取引先から「民事再生を申し立てました」という通知が届く。多くの経営者はここで肩を落とす。売掛金は再生計画でカットされ、戻ってくるのは数割だろうと。だが、もしあなたがその取引先に対して買掛金や借入金を負っていたら、話は一変する。民事再生法92条は、再生手続開始時にあなたが相手に債務を負っていて、その債権と債務が債権届出期間の満了前に相殺適状になっていれば、再生計画によらずに相殺できると定める。相殺とは、あなたの売掛金とあなたの買掛金を帳消しにすること。つまり重なった部分は、カットされず満額回収したのと同じ効果になる。一般債権者が数割しか受け取れない再生手続の中で、相殺できる債権者だけが事実上の優先弁済を手にする。これが倒産局面における最強の自衛手段の一つだ。ただし鉄の制約がある。相殺は債権届出期間内にしなければならない。一日過ぎれば、この武器は手から消える。
法的な位置づけ
民事再生法92条は再生手続における相殺権を定める規定であり、再生債権者が再生手続開始当時に再生債務者へ債務を負う場合、その債権と債務が債権届出期間の満了前に相殺適状となったときは、届出期間内に限り再生計画の定めによらず相殺できることを規定する。賃料債務および敷金返還請求権については6か月分を限度とする特則を置く。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.開始通知を受けたら自社の債務を即洗い出す 再生手続開始の通知を受けたら、まず自社が相手に負う債務(買掛金・前受金・預り保証金)を台帳で全部洗い出す。どれでも相殺の弾になる。回収を諦める前に、消せる債務がないかを最優先で確認する
- 2.相殺適状を確認し、期限の利益を放棄 自社の債権と相手への債務が債権届出期間の満了前に相殺適状にあるか確認する。自社債務の弁済期がまだ来ていなくても、期限の利益を放棄すれば相殺適状を前倒しで作り出せる(92条1項後段)
- 3.届出期間内に相殺の意思表示を内容証明で送付 債権届出期間内に相殺の意思表示を内容証明郵便で送付し、到達日の証拠を残す。相殺は黙っていても自動では成立しないため、必ずこちらから意思表示する。一日の遅れで満額確保が数割カットに変わる
- 4.賃借人なら開始後の賃料を払い続け敷金を守る 大家(不動産会社)が再生した場合、手続開始後の賃料を弁済期に遅れず払い続ける。これにより敷金返還請求権が賃料6か月分を限度に共益債権となり優先回収できる。払うのをやめた瞬間に保護が外れる
よくある質問 AI による整理
Q1再生手続の相殺権とは何ですか?
再生債権者が再生債務者に債務を負う場合、双方が債権届出期間の満了前に相殺適状となれば、届出期間内に限り再生計画によらず相殺できる権利です(民事再生法92条)。
Q2相殺はいつまでにすればよいですか?
相殺適状が債権届出期間の満了前に生じ、かつ届出期間内に相殺の意思表示をする必要があります。期間は数週間で満了することもあり、一日過ぎると相殺できません。
Q3まだ期限が来ていない自分の債務でも相殺できますか?
できます。92条1項後段は債務が期限付でも相殺できると定め、期限の利益を放棄すれば相殺適状を前倒しで作り出せます。
Q4大家が民事再生に入ったら敷金は戻りますか?
放置すれば再生債権として数割ですが、開始後の賃料を弁済期に払い続ければ、敷金返還請求権が賃料6か月分を限度に共益債権となり優先回収できます(92条3項)。
Q5破産と民事再生で相殺のルールは違いますか?
大枠は似ますが、民事再生は債権届出期間内という明確な時間制限がある点が決定的に異なります。破産法(67条以下)より窓が狭くなる場面があります。
Q6相殺が禁止される場合はありますか?
危機時期に作られた債権債務など、93条・93条の2に該当する場合は相殺が禁止されます。不当な相殺は再生債務者側から拒絶されます。
Q7相殺の意思表示はどう証拠を残すべきですか?
内容証明郵便で送付し、到達日を明確に記録します。届出期間内に到達したことが後日の争いを防ぐ決定的証拠になります。
Q8地代や小作料の債務でも敷金の特則は使えますか?
使えます。92条4項が賃料に関する2項・3項の規定を地代・小作料の支払を目的とする債務に準用しています。
この条文についての質問 AI による整理
Q1取引先が民事再生に入ったら、こっちの借金も払わなくていいんですか?
いいえ、あなたが負う買掛金などの債務は原則として満額払う義務が残ります。消せるのは、あなたが相手に持つ債権と相殺した範囲だけです(92条1項)。相殺の意思表示をしないと、債務は満額、債権は再生計画で数割という非対称になります。実務のポイント:相殺は黙っていても自動ではなく、こちらから意思表示して初めて効力が出る。経理任せにして届出期間を逃すと、満額確保できたはずの債権が消える。
Q2借りているオフィスの大家(不動産会社)が倒産したら、敷金は戻ってきますか?
放置すれば敷金返還請求権は再生債権として数割しか戻りません。ただし92条3項により、手続開始後の賃料を弁済期にきちんと払えば、賃料6か月分を限度に敷金返還請求権が共益債権となり、優先して回収できます。実務のポイント:大家が倒産したから家賃を払わないという対応は最悪手。払い続けることこそが敷金を守る法的条件で、止めた瞬間に保護が外れる。
Q3まだ支払期限が来ていない自分の債務でも相殺できますか?
できます。92条1項後段は債務が期限付きでも相殺できると定め、期限の利益を放棄すれば相殺適状を作れます。重要なのは、相殺適状が債権届出期間の満了前に整っていることです。実務のポイント:弁護士はこの期限の利益放棄で相殺適状を前倒しするテクニックを当然に使うが、自社の経理だけでは気付かないことが多い。期限未到来を理由に諦める前に専門家に相談する価値がある。
Q4破産のときと民事再生のときで、相殺のルールは同じですか?
大枠は似ていますが、民事再生では債権届出期間内という明確な時間制限がある点が決定的に違います(92条、94条)。破産法(67条以下)より相殺できる窓が狭くなる場面があります。実務のポイント:同じ取引先でも、選ばれた手続が破産か民事再生かで相殺の締切が変わる。再生のほうが急がされるケースがあり、通知を受けたらまず手続の種類を確認するのが鉄則。
間違えやすい点 AI による整理
- 「相手が再生に入ったら、こちらの債務もチャラになる」と思っている人がいるが逆。あなたが負う買掛金は満額払う義務が残る。消せるのは、あなたが相手に持つ債権と相殺した範囲だけ。相殺の意思表示をしなければ、債務は満額、債権は数割という最悪の非対称が起きる
- 相殺できること自体は知っていても、その締切の厳しさを甘く見ている人が多い。民事再生では債権届出期間内という明確な時間制限がある(94条)。この期間は手続開始から数週間で満了することもあり、気付いたときには扉が閉じている。「いつでも相殺できる」という感覚が命取りになる
- 「敷金は預けた金だから当然戻る」という前提自体が、大家の倒産局面では崩れる。敷金返還請求権はあくまで再生債権の一つで、放置すれば数割しか戻らない。92条3項の共益債権化という保護は、手続開始後の賃料を弁済期に払い続けることが条件。払うのをやめた瞬間、保護は外れる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 相殺の根拠 | 民再92条:再生手続の相殺権(届出期間内に限る) | 破産法67条:破産手続の相殺権 民再85条:再生債権の弁済禁止(相殺はその例外) |
| 時間的制限 | 債権届出期間の満了前に相殺適状 + 届出期間内に意思表示 | 破産手続では相殺の時期的制限が民再より緩やかな場面がある 弁済は原則禁止、相殺は例外的に許容 |
| 禁止類型 | 危機時期の債権債務等(民再93条・93条の2) | 破産法71条・72条による相殺禁止 — |
| 賃料・敷金の特則 | 賃料6か月分を限度に相殺・敷金の共益債権化(92条2〜4項) | 破産法にも類似の特則あり — |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も破産債権について相殺を認めるが、日本の民事再生法のような届出期間内という厳格な時間制限の建付けは異なる
韓国の統合倒産法も回生手続における相殺権を規定し、債権申告期間内の相殺という点で日本と類似する
ドイツ倒産法は手続開始前に相殺権が成立していれば手続によって影響されないとし、日本法より相殺権保護が広い場面がある
米国連邦倒産法は倒産前に生じた相互債務の相殺権を原則として保存するが、自動的停止(automatic stay)により相殺の実行には裁判所の許可が必要な場面がある
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたの会社は得意先 A 社に800万円の売掛金がある。同時に A 社から仕入れていて買掛金500万円。A 社が民事再生を申し立てた。届出期間内に相殺すれば500万円分は満額確保、残り300万円だけが再生債権としてカット対象になる。相殺しなければ、800万円全額が数割に削られたうえ、買掛金500万円は満額払わされる。同じ事実で天と地の差。
- あなたの会社が借りているオフィスビル、その所有者である不動産会社が民事再生を申し立てた。預けた敷金は戻るのか不安になる。92条3項は、手続開始後の賃料を弁済期にきちんと払えば、敷金返還請求権が賃料6か月分を限度に共益債権になると定める。共益債権は再生債権に優先して弁済される。つまり払い続けることが、敷金を守る条件になる。
- もし、あなたの会社が相殺できる債権を持っているのに、債権届出期間を一日でも過ぎてしまったら? その瞬間、相殺権は失われ、満額確保できたはずの債権が再生計画の数割カットの対象に落ちる。届出期間の満了日は、あなたの財布の分水嶺だ。
- 債務者の民事再生開始通知が届いた。残された相殺のタイムリミットは届出期間の満了まで。経理がこの一通を見落として机に積めば、会社の数百万円が静かに溶ける。
- あなたが再生を申し立てる債務者側なら、視点は逆になる。大口の取引先が相殺を主張してくれば、その分の自社債務は消えるが、回収予定だった売掛金も同時に消える。どの債権者が相殺カードを握っているかを申立て前に把握しておかないと、再生計画の弁済原資を読み違える。
取るべき行動
被害を受けた側:1. 開始通知を受けたら即、自社が相手に負う債務(買掛金・前受金・預り保証金)を全部洗い出す。2. 自社の債権と相手への債務が、債権届出期間の満了前に相殺適状にあるか確認。期限未到来の自社債務は期限の利益を放棄すれば相殺可能。3. 届出期間内に相殺の意思表示を内容証明郵便で送付し、到達日の証拠を残す。4. 賃借人の立場で大家が再生なら、開始後の賃料を遅れず払い続け、敷金返還請求権を共益債権として守る。
訴えられた側:再生を申し立てる側なら、どの債権者が相殺カードを持つかを申立て前に棚卸しする。1. 相殺されると回収見込みの売掛金が消え、弁済原資が痩せて再生計画の弁済率に直接響く。2. 相殺が禁止される類型(93条・93条の2、危機時期に作られた債権債務など)に当たらないかを精査し、不当な相殺は拒絶する。3. 賃料・敷金がからむ場合は6か月分の上限と共益債権化のコストを資金繰りに織り込む。
時効(請求できる期限):相殺は債権届出期間(民事再生法94条1項)の満了前に相殺適状が生じ、かつ届出期間内に相殺の意思表示をする必要がある。届出期間は手続開始決定で定められ、数週間で満了することも多い。起算点は開始決定で定められた届出期間の初日、満了日を一日でも過ぎると相殺権は行使できない(最新の改正状況をご確認ください)。
学説
通説:民再92条の相殺権は相殺の担保的機能を保護する趣旨であり、相殺適状が債権届出期間の満了前に整い、かつ届出期間内に意思表示すれば、再生計画によらず相殺できる。ただし危機時期に作出された債権債務は93条・93条の2により相殺が禁止される。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.平成11年(1999年) 新設:民事再生法の制定(法律第225号)に伴い相殺権を明文化。米国チャプター11型の再建手続を導入しつつ、相殺を債権届出期間内に限る時間的制約を設けた
- 民事再生法 第85条再生債権の弁済禁止の原則、相殺はその例外
- 民事再生法 第93条相殺が禁止される場合の定め
- 民事再生法 第93条の2再生債務者に債務を負う者の相殺禁止
- 民事再生法 第94条債権届出期間、相殺の時間的限界
- 民事再生法 第119条共益債権となる請求権、敷金返還請求権の優先
- 破産法 第67条破産手続における相殺権の対応規定
- 民法 第505条相殺の一般的要件、相殺適状の基本
- 民法 第622条の2敷金の定義と返還請求権の根拠
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