不動産登記法 第77条(所有権の登記の抹消)
クイックジャンプ
所有権の登記の抹消は、所有権の移転の登記がない場合に限り、所有権の登記名義人が単独で申請することができる。
この条文の基本情報
所有権の登記の抹消とは何ですか?
定義所有権の登記の抹消とは、不動産登記法第77条に定められた規定で、「所有権の登記の抹消は、所有権の移転の登記がない場合に限り、所有権の登記名義人が単独で申請することができる。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 不動産登記法第77条(所有権の登記の抹消)は、日本の不動産登記法に含まれる条文です。
- 不動産登記法第77条の条文原文は「所有権の登記の抹消は、所有権の移転の登記がない場合に限り、所有権の登記名義人が単独で申請することができる。」で始まります。
- 不動産登記法第77条は第二款 所有権に関する登記に置かれています。
- 不動産登記法の公布日は平成16年6月18日です。
- 不動産登記法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 不動産登記法第77条の前の条は不動産登記法第76条の6です。
- 不動産登記法第77条の次の条は不動産登記法第78条です。
- 不動産登記法第77条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第77条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 - 本サイト収録
不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第77条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/416AC0000000123/77
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点不動産登記法77条は、所有権の移転の登記がない場合に限り、所有権の登記名義人が単独で所有権の登記の抹消を申請できると定める。利害関係人がいれば承諾書が必要となる。
Q · 自分の名義で入っている建物の登記、ひとりで消すことはできますか?
移転登記がなければ名義人ひとりで申請できます
不動産登記法77条により、所有権の移転の登記がない場合に限り、所有権の登記名義人は単独で所有権の登記の抹消を申請できます。共同申請主義(同法60条)の例外です。ただし抵当権者や差押債権者など登記上の利害関係を有する第三者があるときは、同法68条によりその承諾を証する情報がなければ申請は却下されます。抹消すると甲区が空になり、表題部所有者の登記が職権で回復されます。
解説
登記の世界には鉄の原則がある。権利に関する登記は、登記権利者と登記義務者が二人そろって申請する(不動産登記法60条)。相手が実印を出さないと言えば、そこで止まる。77条はその原則に、条件付きの抜け道を一本だけ通した。所有権の登記を消す場面で、しかも所有権の移転の登記が一度も入っていない場合に限り、名義人はひとりで抹消を申請できる。典型は、新築建物に誤った名義で保存登記を入れてしまったケースだ。ただし、あなたが知っておくべき落とし穴が二つある。ひとつ、抹消すれば甲区が空になり、職権で表題部所有者の登記が戻るだけで、所有権が誰かに移るわけではない。ふたつ、抵当権者や差押債権者がいれば、その承諾書がない限り申請は通らない(68条)。単独申請は、誰の同意も要らないという意味ではない。
法的な位置づけ
不動産登記法77条は、所有権の登記の抹消における単独申請の要件を定める規定であり、所有権の移転の登記がない場合に限って、所有権の登記名義人が単独で抹消を申請できる旨を規定する。共同申請主義を定める同法60条の例外として位置づけられ、抹消により表題部所有者の登記が職権で回復される。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.登記事項証明書で甲区を確認する 対象不動産の登記事項証明書を取得し、甲区に所有権の移転の登記があるか、抵当権・差押えなど登記上の利害関係を有する第三者の登記があるかを確認する。この二点で使える手続が分岐する
- 2.抹消の実体的原因を裏づける資料を揃える 誤った保存登記、重複登記、原因行為の無効・取消しなど、登記が実体を欠く理由を資金の出所・建築確認の名義・請負契約書・領収書で裏づける。実体の説明ができない申請は補正で止まる
- 3.利害関係人の承諾を証する情報を取得する 抵当権者・差押債権者がいる場合、不動産登記法68条により承諾を証する情報(承諾書+印鑑証明書)が必須となる。金融機関は完済または担保の差替えを求めることが多く、ここが最も時間を要する
- 4.抹消登記を単独で申請する 所有権の登記名義人として、登記原因証明情報・登記識別情報・承諾を証する情報を添えて抹消を申請する。名義人が死亡している場合は一般承継人が同法62条により申請する
- 5.保存登記の再申請まで連件で処理する 抹消により甲区が空になり表題部所有者の登記が職権回復されるため、真実の所有者が同法74条により保存登記を申請する。空白期間に差押えが割り込む余地を消すため、抹消と保存は連件申請にする
よくある質問 AI による整理
Q1所有権の登記の抹消とは何ですか?
実体を欠く所有権の登記を登記記録から消し、公示を実体に合わせる手続です。抹消すると甲区が空になり、表題部所有者の登記が職権で回復されます。
Q2不動産登記法77条の単独申請の要件は?
所有権の移転の登記がないこと、申請人が所有権の登記名義人であることの二つです。移転登記が一度でも入っていれば単独申請はできません。
Q3重複登記が見つかったらどうすればいい?
同一建物に登記記録が二つある場合、片方の所有権の登記を抹消しないと移転登記は進みません。移転登記が未了なら77条で名義人が単独申請できます。
Q4抹消登記の登録免許税はいくら?
抹消登記は原則として不動産1個につき1,000円です(同一申請で20個を超える場合の上限あり)。最新の税額は登録免許税法をご確認ください。
Q5抵当権が付いている場合、承諾書は誰からもらう?
抵当権者などその所有権の登記を前提に権利を有する第三者からです(不動産登記法68条)。金融機関は完済または担保差替えを求めるのが通例です。
Q6名義人が死亡している場合、相続人は申請できますか?
一般承継人として申請できます(不動産登記法62条)。ただし相続人が複数の場合の申請人適格は運用が分かれ、法務局への事前照会が事実上必須です。
Q7名義人が抹消に応じないときはどうする?
抹消登記手続を求める訴えを提起し、確定判決を得て単独で申請します(不動産登記法63条1項)。並行して利害関係人の承諾取得も進めます。
Q8所有権の登記の抹消に期限はありますか?
申請期限の定めはありません。ただし移転登記が入った時点で単独申請の適格は失われ、相手方が取得時効を完成させれば請求自体ができなくなります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1自分の名前で入ってる登記なんだから、勝手に消せるんじゃないんですか?
所有権の移転の登記が入っていなければ、名義人ひとりで申請できる(不動産登記法77条)。ただし抵当権や差押えなど登記上の利害関係を有する第三者がいると、その承諾書がない限り申請は却下される(同68条)。実務のポイント:銀行は担保が消える方向の承諾に極めて慎重で、完済か担保の差し替えを求めてくる。融資実行の前に登記の誤りを直せるかどうかで、所要期間が数日と数か月に分かれる。
Q2登記を消したら、その家って誰のものになるんですか?
消えるのは公示だけで、所有権そのものは動かない。抹消すると甲区が空になり、職権で表題部所有者の登記が戻るので、そこから真実の所有者が改めて保存登記を申請する(不動産登記法74条)。実務のポイント:抹消から新しい保存登記までの空白の間は甲区が無い状態になり、差押えが割り込む余地が生まれる。だから実務では抹消と保存を連件で申請し、同日に処理させる。
間違えやすい点 AI による整理
- 「単独申請できる=誰の同意も要らない」と読んでしまうが、これは77条だけを見た結論だ。登記の抹消には別に68条があり、抵当権者・差押債権者など登記上の利害関係を有する第三者がいれば、その承諾がない限り申請そのものが通らない。外れるのは相手方当事者の関与だけで、第三者の関門は残っている
- 「登記を消したら、その家は誰のものになるのか」という問いの立て方自体がずれている。登記の抹消は公示を実体に合わせる作業であって、所有権を動かす作業ではない。実体上の所有者は最初から所有者であり続けている。問うべきは「誰のものになるか」ではなく「消したあと、誰の名義で登記を入れ直すか」だ
- 「移転登記がなければ単独申請」という条件文は多くの人が覚えている。だがその条件が破れたときの深刻さまで想像している人は少ない。所有権の移転の登記が一度でも入れば、単独申請の道はその場で閉じる。以後はまず移転登記の抹消を共同申請で処理するか、抹消登記手続を求める訴訟で判決を取るしかない。数万円と数か月の差ではなく、数十万円と数年の差になる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 申請の形態 | 77条:所有権の登記名義人の単独申請 | 60条:登記権利者と登記義務者の共同申請 63条1項:確定判決による単独申請 |
| 使える前提条件 | 所有権の移転の登記がないこと | 相手方が協力すること(実印・登記識別情報) 抹消登記手続を命ずる確定判決があること |
| 第三者の関与 | 68条により利害関係人の承諾が別途必要 | 68条により利害関係人の承諾が別途必要 判決があっても68条の承諾は免除されない |
| 所要コストの目安 | 書類が揃えば数日〜数週間、費用は登録免許税と報酬程度 | 相手方の協力次第、交渉が難航すれば数か月 訴訟提起から確定まで数か月〜数年、弁護士費用が加算 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も塗銷登記(抹消登記)を共同申請の例外として単独申請できる場合を規則で列挙する。日本と異なり登記名義人の単独申請の可否を条文単位で切り出さず、単独申請事由の一覧方式を採る
韓国は「所有権保存登記およびその抹消登記は登記名義人が単独で申請する」と規定し、日本77条より対象が保存登記に明示的に絞られている。日本法を経由した共通の骨格を持ちつつ切り分けが異なる
ドイツは不実登記の是正を Berichtigung(更正)として一元的に扱い、不実であることの証明があれば承諾なしに更正できる。登記に公信力を与える前提から、是正のハードルと保護構造が日本と根本的に異なる
米国は登記官による審査型の登記制度ではなく記録制度であるため、権原の争いは裁判所での quiet title action で解決する。行政手続として単独で記録を消す仕組みは基本的に存在しない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 決済まであと三日で、対象の建物に登記記録が二つ存在すると判明したら、どうなる? 片方の所有権の登記を抹消しない限り、買主への移転登記は流れない。移転登記がまだ入っていなければ名義人の単独申請で消せるが、抵当権が付いていれば承諾書の取り付けだけで一週間は溶ける。決済日を動かすかどうかの判断は、今日中に迫られる
- 父の資金で建てた家に、あなたの名義で保存登記を入れてしまった。まだ誰にも売っていないなら、あなたひとりで消せる。ただし消した瞬間に表題部所有者の登記が復活するので、そこに誰の名前が記録されているかで次の一手が変わる
- 友人が「亡くなった親の名義で建物の登記が残っているが、実はその建物は他人のものだった」と相談してきた。移転登記がなければ、名義人の地位を承継した相続人が一般承継人として抹消を申請できる(不動産登記法62条)。ただし相続人が複数いる場合の申請人適格の扱いは実務上の運用が分かれる場面があり、法務局への事前照会が事実上必須になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 登記事項証明書を取得し、甲区に所有権の移転の登記があるか、抵当権や差押えの登記があるかを確認する2. 移転登記がなければ、名義人本人に77条による単独抹消申請を求める3. 名義人が応じないなら、抹消登記手続を求める訴えを提起し、確定判決を得て単独で申請する(不動産登記法63条1項) 4. 利害関係人がいる場合は、承諾書の取得を訴訟と並行して進める。承諾が取れないと判決があっても抹消できない
訴えられた側:1. 本当に自分の登記が実体を欠くのかを、資金の出所・建築確認の名義・請負契約書で検証する2. 安易に抹消に応じると、自分の持分や共有主張の機会を失う3. 応じる場合でも、名義の移動が贈与と評価されないか税理士に確認してから動く4. 争うなら、抹消登記請求訴訟の場で実体的な所有権の帰属そのものを争点に据える。登記手続の話に見えて、中身は所有権の帰属の争いである
時効(請求できる期限):所有権の登記の抹消に、申請期限を定める規定はない。ただし所有権の移転の登記が入った瞬間に単独申請の適格は失われる。実体上の抹消登記請求権は所有権に基づく妨害排除請求として構成されるため、所有権自体が消滅時効にかからない以上、時効消滅しないと解されている。ただし相手方が取得時効(民法162条、占有開始が善意無過失なら10年、それ以外は20年)を完成させれば所有権を失い、請求できなくなる(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:所有権の移転の登記がない段階では、抹消により直接不利益を受ける前主が登記記録上に存在しないため、共同申請主義を維持する必要性が低い。77条の単独申請はこの構造的理由に基づく限定的例外であり、第三者保護は68条の承諾要件が担うと解される。
実務運用:名義人が死亡した場合、相続人が一般承継人として同法62条により抹消を申請できるとされるが、相続人が複数のときの申請人適格や全員関与の要否は運用が分かれる場面があり、管轄法務局への事前照会が事実上不可欠となる。
改正沿革 AI による整理
- 平成16年(2004年)不動産登記法全部改正(平成16年法律第123号、平成17年3月7日施行) 明治32年制定の旧不動産登記法を全部改正し、オンライン申請への対応と条文の現代語化を実施。所有権の登記の抹消における単独申請の可否も、この全部改正により現行77条として整理された。実質的な規律の方向性は旧法下の取扱いを承継している
改正の年表
- 1.明治32年(1899年) 新設:旧不動産登記法(明治32年法律第24号)を制定し、民法の物権変動の対抗要件制度を支える登記手続法として整備。所有権の登記の抹消に関する取扱いもこの体系の中で形成された
- 2.平成16年(2004年) 改正:不動産登記法全部改正(平成16年法律第123号、平成17年3月7日施行)。オンライン申請への対応と条文の現代語化を実施し、所有権の登記の抹消における単独申請の可否を現行77条として整理した
- 不動産登記法 第60条共同申請主義の原則、本条はその例外
- 不動産登記法 第62条相続人など一般承継人による申請
- 不動産登記法 第63条判決による単独申請、単独申請不可時の代替経路
- 不動産登記法 第68条抹消登記における第三者の承諾要件
- 不動産登記法 第74条所有権保存登記の申請適格者、抹消後の再登記の根拠
- 民法 第177条不動産物権変動の対抗要件、登記の実体法的意義
- 民法 第121条取消しの遡及的無効、抹消の実体的原因
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める