要点商法 805 条は、海難救助に従事した者が油等による海洋汚染の防止・軽減措置をとったとき、救助の成否を問わず船舶所有者に特別補償料を請求できると定める。費用相当額が基礎となる。
Q · 船を救えなくても、油の流出を止めればお金をもらえるの?
もらえる。救助の成否を問わず費用を請求できる
商法 805 条により、海難救助に従事した者が油等による海洋汚染の防止・軽減措置をとった場合、たとえ船そのものを救えなくても、船舶所有者に「特別補償料」を請求できます。額は措置に必要又は有益であった費用に相当する額が基礎で、実際に汚染を防止・軽減できれば最大 3 割(特別の事情があれば最大 10 割)が上乗せされます。ただし同一海難で救助料を得る場合はその額が控除され(4 項)、救助者の過失で防げなかったときは減額されます(5 項)。「不成功無報酬」原則の正面からの例外です。
海難救助の世界には『不成功無報酬』という鉄の掟がある。船を救えなければ、どれだけ汗をかいても一円も出ない。だがこの掟には、2019年に開いた抜け穴がある。座礁したタンカーから油が流れ出し沿岸を汚しそうなとき、あなたが油の拡散を食い止める措置をとれば、たとえ船そのものを救えなくても、船主に『特別補償料』を請求できる。請求できるのは措置に必要だった費用の全額。さらに実際に汚染を防げたなら、裁判所はその費用に最大3割(特別の事情があれば最大10割)を上乗せできる。逆にあなたの過失で防げなかったなら減額される。船の価値ではなく、環境を守った労力そのものが報酬の根拠になる。これが従来の救助料と決定的に違う点だ。
特別補償料とは、船舶から排出された油その他の物による海洋汚染が広範囲の沿岸海域の環境保全に著しい障害を及ぼすおそれ等がある場合に、当該船舶の救助に従事した者が汚染の防止・軽減措置をとったとき、救助の成否を問わず船舶所有者に請求できる金銭をいう。海難救助の「不成功無報酬」原則の例外として、環境損害防止という社会的に望ましい行為に対する補償を保証する制度である。
AI 輔助整理,以條文原文為準
海難救助で油等の海洋汚染防止・軽減措置をとった者が、救助の成否を問わず船舶所有者に請求できる金銭です。商法 805 条が根拠で、措置に必要又は有益であった費用に相当する額が基礎になります。
船や積荷を救えて初めて報酬が発生する海難救助の伝統的原則です。商法 805 条の特別補償料は、汚染防止という行為に対し成否と切り離して補償を認める、この原則の正面からの例外です。
平成 30 年(2018 年)商法改正で新設され、令和元年(2019 年)4 月 1 日に施行されました。1989 年の海難救助条約 14 条を国内法化したものです。
実務上、船主が支払う特別補償料は P&I 保険(船主責任保険)が肩代わりするのが通例です。海運会社の保険料には、このリスク分が織り込まれています。
救助契約に組み込む国際標準の特別補償精算条項です。法定の特別補償料より精算が明確・迅速になり、商法 805 条 1 項の『特約があるときを除き』の特約として機能します。
海事債権には短期消滅時効が定められており、救助の措置が終了した時から起算されます。措置終了後は速やかに請求すべきです(具体的な期間は最新の改正状況をご確認ください)。
成功した場合は救助料(商法 792 条以下、793 条の基準で算定)、救助に失敗しても汚染を防げた場合は特別補償料(805 条)です。両方発生しても二重取りはできません。
減ります。救助者の過失によって汚染を防止・軽減できなかったときは、裁判所がこれを考慮して特別補償料の額を定めます(商法 805 条 5 項)。
請求できます。商法805条1項は『特約があるときを除き』船主に特別補償料を請求できると定めており、救助の成否は要件になっていません。従来の『不成功無報酬』の正面からの例外です。業界裏話ヒント:この制度は1989年の海難救助条約14条を国内法化したもので、もとは『環境を守った救助者が泣き寝入りしない』ための国際的な安全網。低価値の難破船でも油を出していれば、救助業者が動く経済的根拠になる
原則は費用の最大3割増しまでですが、その費用が汚染防止の結果に比べて『著しく少ない』など特別の事情があれば、裁判所は最大10割(倍額)まで認められます(805条3項)。業界裏話ヒント:裁判所は『どれだけの環境被害を未然に防いだか』という結果を重視する。小さな費用で広大な沿岸汚染を防いだケースほど割増率は跳ね上がる。費用の絶対額より費用対効果が効く
二重取りはできません。商法805条4項により、同一の海難で救助料の債権も持つ場合、特別補償料からその救助料の額が控除されます。業界裏話ヒント:実務では『救助料と特別補償料、どちらが高くなるか』を事故直後に試算する。船と積荷を救えた割合が高ければ救助料が、救助に失敗したが環境を守れたなら特別補償料が有利。請求の組み立てを最初に間違えると回収額を取りこぼす
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 発生要件 | 805 条 特別補償料:油等の汚染防止・軽減措置をとったこと(救助の成否不問) | — |
| 報酬の根拠 | 措置に必要又は有益であった費用+効果に応じた割増(最大 3 割/特別事情で最大 10 割) | — |
| 成否との関係 | 救助に失敗しても汚染を防げば請求可(不成功無報酬の例外) | — |
| 併存時の調整 | 同一海難で救助料があれば、その額を控除(4 項) | — |
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