刑事訴訟法 第168条
クイックジャンプ
- 鑑定人は、鑑定について必要がある場合には、裁判所の許可を受けて、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り、身体を検査し、死体を解剖し、墳墓を発掘し、又は物を破壊することができる。
- 2.裁判所は、前項の許可をするには、被告人の氏名、罪名及び立ち入るべき場所、検査すべき身体、解剖すべき死体、発掘すべき墳墓又は破壊すべき物並びに鑑定人の氏名その他裁判所の規則で定める事項を記載した許可状を発して、これをしなければならない。
- 3.裁判所は、身体の検査に関し、適当と認める条件を附することができる。
- 4.鑑定人は、第一項の処分を受ける者に許可状を示さなければならない。
- 5.前三項の規定は、鑑定人が公判廷でする第一項の処分については、これを適用しない。
- 6.第百三十一条、第百三十七条、第百三十八条及び第百四十条の規定は、鑑定人の第一項の規定によつてする身体の検査についてこれを準用する。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第168条は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第168条の条文原文は「鑑定人は、鑑定について必要がある場合には、裁判所の許可を受けて、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り、身体を検査し、死体を解剖し、墳墓を…」で始まります。
- 刑事訴訟法第168条は第十二章 鑑定に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第168条の前の条は刑事訴訟法第167条の2です。
- 刑事訴訟法第168条の次の条は刑事訴訟法第169条です。
- 刑事訴訟法第168条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第168条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第168条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/168
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法168条は、鑑定人が裁判所の許可を受けて身体検査・死体解剖・墳墓発掘・物の破壊を行える権限を定める規定。処分を受ける者には許可状の提示が必要となる。
Q · 採血や解剖を拒否したいとき、鑑定人の処分はどこまで強制できるの?
裁判所の許可状があれば身体検査も解剖も強制できる
刑事訴訟法168条により、鑑定人は鑑定に必要な場合、裁判所の許可状を背景に住居への立入り、身体検査、死体解剖、墳墓の発掘、物の破壊を行えます。飲酒運転の強制採血や司法解剖がその例です。許可状には罪名・対象・鑑定人名が記載され(2項)、処分を受ける者への提示が義務づけられます(4項)。身体検査には131条が準用され、性別や健康状態への配慮、女性への女性立会いといった歯止めがあります(6項)。遺体の解剖は遺族の同意が法律上の要件ではありません。
解説
鑑定人、つまり裁判所から専門的判断を委ねられた医師や科学者は、ただ意見を述べるだけの存在ではない。刑事訴訟法168条は、彼らに踏み込んだ権限を与えている。人の住居に立ち入り、身体を検査し、死体を解剖し、埋葬された墓を掘り起こし、物を壊す。これらすべてが、裁判所の発する許可状一枚で可能になる。飲酒運転で採血を拒んだあなたの血、不審死した家族の埋葬済みの遺体、これらは鑑定人の手が届く範囲にある。ただし無制限ではない。許可状には被告人の氏名、罪名、立ち入る場所、検査する身体が具体的に記載されていなければならず(2項)、処分を受けるあなたにそれを示す義務がある(4項)。さらに身体検査には、性別や健康状態への配慮、女性には女性の立会いといった歯止めが準用される(6項、131条)。権限の大きさと、それを縛る令状主義、この緊張関係が一条に凝縮されている。
法的な位置づけ
刑事訴訟法168条は鑑定処分の許可を定める規定であり、鑑定人が鑑定に必要な場合に裁判所の許可を受けて、住居等への立入り、身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊を行えることを規定する。許可状には対象事項が特定され、処分を受ける者への提示が義務づけられる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.提示された許可状の記載をその場で確認 鑑定人から処分を受けるとき、まず4項に基づき提示される許可状を確認する。被告人氏名・罪名・立ち入る場所・検査すべき身体・鑑定人名が自分の事件と一致するかを照合する
- 2.記載と処分の食い違いを記録化 罪名・場所・対象が空欄や曖昧、または事件と食い違っていれば、その場で疑義を述べ、日時・担当者名とともに記録に残す。後の違法収集証拠排除の布石になる
- 3.身体検査前に配慮義務を求める 身体検査の場合、検査を受ける前に131条準用の配慮(性別・健康状態への配慮、女性への女性立会い)と3項の付加条件を求める。侵襲後の抗議では遅い
- 4.弁護人を呼び適法性を即時に詰める 被疑者・被告人なら直ちに弁護人を呼び、許可状の罪名・場所・対象の特定性と処分の必要性を確認させる。正当な理由なき拒否は過料・罰金の対象となりうるため線引きを明確にする
よくある質問 AI による整理
Q1鑑定処分許可状とは何ですか?
鑑定人が住居立入り・身体検査・死体解剖・墳墓発掘・物の破壊を行うために裁判所が発する許可状です。被告人氏名・罪名・対象を記載します(刑訴168条2項)。
Q2強制採血に必要な令状は何ですか?
実務では鑑定処分許可状と身体検査令状の二枚をセットで請求します。両方そろえば鑑定人が腕から強制的に採血でき、拒否は事実上通りません。
Q3司法解剖と行政解剖の違いは?
司法解剖は犯罪の疑いがある死体について刑訴168条等で行い遺族同意は不要。行政解剖は死因究明目的で死体解剖保存法に基づき扱いが異なります。
Q4墳墓の発掘に遺族の同意は必要ですか?
犯罪捜査の鑑定処分としての発掘は刑訴168条に明文の権限があり、遺族の同意は法律上の要件ではありません。心情とは別の次元で進みます。
Q5鑑定人の身体検査にはどんな配慮がありますか?
131条が準用され、被検査者の性別・健康状態への配慮、女性には原則として成年女性の立会いが求められます(刑訴168条6項)。
Q6鑑定留置と鑑定処分は何が違いますか?
鑑定留置(167条)は鑑定のため病院等に身体を拘束する処分、鑑定処分(168条)は身体検査・解剖など侵襲的行為を行う権限で、目的が異なります。
Q7公判廷での鑑定処分にも許可状はいりますか?
不要です。刑訴168条5項により、鑑定人が公判廷で行う処分には許可状の発付・記載・提示の規定は適用されません。
Q8鑑定処分許可は誰が請求しますか?
公判段階は裁判所が許可しますが、捜査段階では225条により捜査機関の請求で裁判官が許可します。実務上は捜査機関主導で動きます。
この条文についての質問 AI による整理
Q1お酒を飲んで運転して、採血を拒否したらどうなるんですか?
呼気検査を拒んでも逃げ切れません。捜査機関は裁判官から鑑定処分許可状(225条が168条を準用)と身体検査令状を取り、鑑定人が血液を採取します。正当な理由なき拒否は過料・罰金の対象にもなりえます。実務のポイント:実務では二枚の令状をセットで請求し採血はほぼ確実に実現する。拒否は通らない上、非協力的な態度が量刑で不利に響くので、拒むより手続の適法性を弁護人に確認させる方が賢い。
Q2亡くなった家族の解剖を、遺族として断ることはできますか?
断れません。犯罪の疑いがある死体の司法解剖は刑事訴訟法168条・229条に基づき、遺族の同意は法律上の要件ではないからです。遺族の承諾が要る承諾解剖とは別制度です。実務のポイント:解剖自体は止められませんが、解剖結果(鑑定書)の開示を担当検察官に求める交渉余地はある。納得できないまま見送るより結果説明を要望する方が、後の民事や真相究明で役立つ情報を得られます。
Q3精神鑑定で病院に入れられる期間って、どれくらいですか?
法律上、明確な上限日数はありません。鑑定留置(167条)は鑑定に必要な期間とされ、実務では数週間から2、3か月に及ぶこともあります。実務のポイント:鑑定留置の期間は、後に有罪となった場合に未決勾留日数として刑期に算入されうる(刑法21条)。期間が長引くほど身体拘束は重くなるので、弁護人は鑑定の必要性と期間の相当性を争います。長さは交渉と異議の対象です(最新の改正状況をご確認ください)。
間違えやすい点 AI による整理
- 鑑定人は法廷で意見を述べるだけの中立な専門家だと思われがちだが、実際は住居への立入り、身体検査、死体解剖、墳墓の発掘、物の破壊という強い強制処分の権限を、許可状を背景に行使できる立場にある
- 採血を拒否できないことは何となく知っていても、その拒否が単に無効なだけでなく、過料・罰金の対象になり(137・138条準用)、さらに量刑で不利な情状として扱われる二重三重の不利益を生むことまでは見えていない
- 「遺族として解剖に同意するか」を問われていると思い込む人がいるが、犯罪の疑いがある司法解剖ではそもそも同意は要件ではない。あなたが立てている「断れるか」という問いそのものが、制度の入口を読み違えている
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 処分の内容 | 168条:住居立入り・身体検査・解剖・発掘・破壊 | 167条:鑑定のための留置(身体拘束) 165条:裁判所による鑑定命令 |
| 侵襲の対象 | 身体・遺体・墳墓・住居・物 | 被告人の身体(病院等への留置) 対象なし(鑑定の委任のみ) |
| 許可状の要否 | 原則必要(公判廷での処分は5項で不要) | 鑑定留置状が必要 不要(命令により実施) |
| 本人保護の歯止め | 131条準用の配慮・3項の条件・4項の提示 | 未決勾留日数算入(刑法21条)の余地 鑑定人の中立性・忌避制度 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も鑑定人による身体検査・解剖・発掘・物の破壊に審判長または検察官の許可書を要求し、採血等の採取は別途規定する点で日本と近い構造
韓国も鑑定に必要な処分として他人の住居立入り・身体検査・死体解剖・墳墓発掘を許可状(감정처분허가장)で統制し、日本法の影響が色濃い
ドイツは身体検査・採血を§81aで、死体解剖(Leichenöffnung)を§87で個別に規律し、原則として裁判官の命令を要する
米国は強制採血を第4修正のもとで令状原則と緊急性の例外で判断し、医学的に相当な方法を要求する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 飲酒運転の検問で呼気検査を拒んだら、それで逃げ切れるのか。答えはノーだ。捜査機関は裁判官の許可状を取り、鑑定人があなたの腕から強制的に血を採る。拒否は時間稼ぎにしかならず、その態度自体が悪情状として後で響く
- 殺人事件で起訴され、弁護人が責任能力を争うことになった。あなたは精神鑑定のため数週間、指定の病院に留置される(167条の鑑定留置)。その間の生活も、鑑定人による検査も、すべてこの168条の権限の上に成り立っている
- 不審死した親族が、すでに土葬されていた。検察官の請求で裁判所が許可状を出す。墓は掘り起こされ、遺体は解剖台へ。遺族の「やめてほしい」は、法律上の停止ボタンにはならない
- あなたの会社の従業員が労災で死亡し、原因を巡って刑事捜査が始まった。司法解剖までの数日、遺族は葬儀も進められず宙吊りになる。解剖が終わるまで遺体は戻らない、その期間の見通しを誰も教えてくれない
取るべき行動
被害を受けた側:第三者として身体検査や、亡くなった家族の解剖・墓の発掘の対象になった場合、まず示された許可状(4項)の記載を確認する。罪名、対象、鑑定人名が空欄や曖昧なら、その場で疑義を述べ記録に残す。身体検査なら131条準用で性別・健康状態への配慮や女性の立会いを求められる(6項)。遺体の解剖は遺族の同意が法律上の要件ではないため拒否で止められないが、立会いや鑑定結果の説明を求める交渉余地はある。
訴えられた側:被疑者・被告人として採血や精神鑑定の対象になったら、まず弁護人を呼び、許可状の罪名・場所・対象が自分の事件と一致するか確認させる。記載のない場所への立入りや対象外の検査は違法収集証拠排除の根拠になりうる。身体検査を正当な理由なく拒むと過料や罰金の対象となりえ(6項、137・138条準用)、違法でない処分には応じる義務がある。その線引きを弁護人と即座に詰める。精神鑑定に伴う鑑定留置(167条)は身体拘束なので、期間と条件を必ず確認する。
時効(請求できる期限):本条の処分自体に消滅時効のような期限はない。ただし許可状の記載や処分が違法だと考える場合、その証拠の証拠能力を争うのは公判の証拠調べ手続の中であり、漫然と認めると違法収集証拠排除の主張機会を失う。捜査段階で裁判官が出した許可(225条)への不服は準抗告で争う余地がある。
学説
通説:168条の鑑定処分は重大な強制処分であるため、許可状による事前統制・記載事項の特定・本人への提示・131条準用の配慮義務によって、令状主義の趣旨が手続的に担保されると解される。
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める