刑事訴訟法 第165条
クイックジャンプ
裁判所は、学識経験のある者に鑑定を命ずることができる。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第165条は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第165条の条文原文は「裁判所は、学識経験のある者に鑑定を命ずることができる。」で始まります。
- 刑事訴訟法第165条は第十二章 鑑定に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第165条の前の条は刑事訴訟法第164条です。
- 刑事訴訟法第165条の次の条は刑事訴訟法第166条です。
- 刑事訴訟法第165条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第165条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第165条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/165
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法165条は、裁判所が学識経験のある者に鑑定を命じることができると定める。精神鑑定や DNA 鑑定がその例で、鑑定意見は裁判所を拘束しない。
Q · 精神鑑定で『心神喪失』と出たら、その判断がそのまま裁判の結論になるの?
ならない。鑑定意見は証拠の一つで裁判所を拘束しない
刑事訴訟法165条により、裁判所は学識経験のある者に鑑定を命じることができます。精神鑑定・DNA 鑑定がその典型です。ただし鑑定意見は証拠資料の一つにすぎず、その評価は裁判所の自由心証に委ねられます(318条)。精神科医が『心神喪失』と判断しても、裁判官が合理的理由を挙げて責任能力ありと認定することは実際にあります。逆に不利な鑑定が出ても、私的鑑定や鑑定人尋問で信頼性を争う余地が残ります。
解説
「裁判所は、学識経験のある者に鑑定を命ずることができる。」たった一行だが、この条文が殺人事件の被告人を無罪にも無期にもしうる。鍵は「精神鑑定」だ。あなたの家族が事件を起こし、明らかに様子がおかしかったとする。精神鑑定で「心神喪失」と判断されれば刑法39条で無罪、「心神耗弱」なら刑が減軽される。だが多くの人が知らないのは、鑑定人を選ぶのは裁判所であり、その意見は裁判所を拘束しないという点だ(318条、自由心証主義)。精神科医が「心神喪失」と書いても、裁判官が合理的理由を挙げて覆せる。さらに精神鑑定には、留置場で短時間に済ます「簡易鑑定」と、数ヶ月の鑑定留置を伴う「本鑑定」があり、どちらになるかで結論の精度がまるで違う。DNA鑑定も同じだ。一行の条文の裏で、科学と法のせめぎ合いが起きている。
法的な位置づけ
刑事訴訟法165条は鑑定命令を定める規定であり、裁判所が、自らは有しない専門的知識(医学・DNA・工学等)を要する事項について、学識経験のある者を鑑定人に選任し意見を求める権限を定める。鑑定意見は証拠資料の一つであり、その評価は裁判所の自由心証に委ねられる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.責任能力に疑いがあれば本鑑定を請求 留置場での簡易鑑定で済ませず、鑑定留置を伴う本鑑定を弁護人を通じて請求する。簡易鑑定の形式的な結論がそのまま通るのを防ぐ
- 2.鑑定は公判前整理手続の段階で請求 証拠調べが始まる前に争点として確立させる。証拠調べが進んでからの私的鑑定は『後付け』と評価され効果が半減するため、タイミングを逃さない
- 3.検察側鑑定に対抗する私的鑑定を取得 検察側鑑定に納得できなければ、弁護側で別途私的鑑定を依頼する。DNA 鑑定なら試料が残っているか、どう保存されたかを確認し、再鑑定の可否を判断する
- 4.鑑定人尋問で前提資料・手法の不備を一点突き 法廷で鑑定人を尋問し、鑑定の前提資料や手法の不備を一点に絞って突く。鑑定書全体を崩せなくても、結論の信頼性に合理的疑いを生めれば採用がためらわれる
よくある質問 AI による整理
Q1鑑定命令とは何ですか?
裁判所が専門的知見を要する事項について、学識経験のある者を鑑定人に選任して意見を求めることです。刑事訴訟法165条が根拠で、精神鑑定や DNA 鑑定が典型例です。
Q2簡易鑑定と本鑑定の違いは何ですか?
簡易鑑定は留置場などで短時間に行う簡略な鑑定で形式的になりがちです。本鑑定は鑑定留置を伴い数ヶ月かけて精密に行います。責任能力が争点なら本鑑定が結論を分けます。
Q3鑑定留置とはどういう制度ですか?
精神鑑定などのため被告人を病院等に留め置く処分です(刑訴167条)。身柄拘束が数ヶ月延びる不利益と、精密な鑑定で得られる利益を天秤にかける必要があります。
Q4鑑定人は誰が選ぶのですか?
裁判所が選任します(刑訴165条)。当事者が推薦しても最終的に決めるのは裁判所です。捜査段階では検察官・警察が鑑定を嘱託することもあります(223条)。
Q5鑑定人尋問とは何ですか?
法廷で鑑定人に対し、鑑定の前提資料や手法、結論の根拠を問いただす手続です。弁護側が検察側鑑定の弱点を突き、信頼性に合理的疑いを生むための武器になります。
Q6私的鑑定は証拠になりますか?
当事者が独自に依頼した私的鑑定も証拠として提出でき、裁判所が自由心証で評価します(318条)。公的鑑定一本で押し切られるのを防ぐ対抗手段になります。
Q7鑑定にはどのくらい時間がかかりますか?
簡易鑑定なら数時間から数日ですが、鑑定留置を伴う本鑑定は数ヶ月かかることがあります。その間、身柄拘束が延びる点も考慮が必要です。
Q8鑑定費用は誰が負担しますか?
裁判所が命じた鑑定の費用は訴訟費用に含まれ、有罪なら被告人負担となることがあります。弁護側の私的鑑定は依頼者が負担します。
この条文についての質問 AI による整理
Q1精神鑑定で『心神喪失』と出たら、無罪は確定ですか?
確定しません。鑑定意見は証拠の一つにすぎず、裁判所を拘束しません(刑訴318条、自由心証主義)。精神科医が心神喪失と判断しても、裁判官が合理的な理由を挙げて責任能力ありと認定することは実際にあります。実務のポイント:精神鑑定には留置場で短時間に行う『簡易鑑定』と、鑑定留置を伴う『本鑑定』があり、簡易鑑定は形式的になりがちです。責任能力が本当に争点なら、弁護人を通じて本鑑定を求めるかどうかが結論を分ける
Q2検察が出したDNA鑑定に納得いかないんですが、もう一回鑑定できますか?
弁護側で再鑑定や私的鑑定を請求・取得できます。DNA鑑定は『絶対』と思われがちですが、試料の採取・保存・手法で結果が左右されます。実務のポイント:足利事件では旧式DNA鑑定の誤りで無実の人が17年服役し、再鑑定で再審無罪になりました。試料がまだ残っているか、どう保存されていたかを確認することが、再鑑定の成否を分けます。残っていなければ再鑑定そのものができない
Q3鑑定人って中立なんですよね? 弁護側は何もできないんですか?
鑑定人は裁判所が選びますが(165条)、弁護側が手をこまねく必要はありません。私的鑑定を別途依頼し、法廷で鑑定人尋問を通じて検察側鑑定の弱点を突けます。実務のポイント:鑑定意見は裁判所を拘束しないという原則(318条)は、不利な鑑定が出たときの弁護側の武器でもあります。鑑定の前提資料や手法に一点でも合理的疑いを生めれば、裁判所はその採用に慎重になる
間違えやすい点 AI による整理
- 「精神鑑定で心神喪失と出れば無罪は決まり」と思われているが、鑑定意見は証拠の一つにすぎず裁判所を拘束しない(318条、自由心証主義)。精神科医が心神喪失と判断しても、裁判官が合理的理由を挙げて責任能力ありと認定することは実際にある。鑑定は結論ではなく材料だ
- 「鑑定人は裁判所が選ぶ中立の専門家だから、弁護側は何もできない」と多くの人が思っている。だが弁護側は私的鑑定を別途依頼し、法廷で鑑定人尋問を通じて検察側鑑定の弱点を突ける。手をこまねくのは、武器を放棄しているのと同じだ
- DNA鑑定は『絶対に正しい』と信じられているが、その深刻な落とし穴を知らない人が多い。試料の採取・保存・鑑定手法によって結果は左右される。足利事件では旧式DNA鑑定の誤りで、無実の人が17年も服役した。科学の名がつくほど、人はその誤りを疑わなくなる
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 鑑定を命じる主体 | 165条:裁判所が公判段階で鑑定を命じる | 167条:裁判所が鑑定留置を命じる(身柄拘束を伴う) 223条:捜査機関(検察官・警察)が捜査段階で鑑定を嘱託 |
| 身柄への影響 | 鑑定命令自体は身柄拘束を伴わない | 鑑定留置として病院等に数ヶ月留め置く 嘱託鑑定は任意捜査が原則、留置は別途要件 |
| 意見の証拠評価 | 318条の自由心証で評価、裁判所を拘束しない | 留置の当否は裁判所が判断 公判で証拠能力・信用性が改めて争われる |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も裁判所(または検察官)が鑑定人を選任する構造で日本と類似。鑑定結果の証拠評価は自由心証に委ねられる点も共通する。
韓国も『法院は学識経験ある者に鑑定を命ずることができる』とほぼ同文の規定を持ち、日本法の継受が色濃い。
ドイツは鑑定人選任を裁判所の裁量とし、当事者は特定の鑑定人を申し立てられる。鑑定人の中立性確保のための忌避制度が整備されている。
米国は当事者がそれぞれ専門家証人を立てる対審構造が原則で、裁判所選任の中立鑑定人は例外的。専門家証言の信頼性は Daubert 基準で審査される。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- もし、あなたの家族が事件を起こし、以前から精神科に通院していたとしたら? 精神鑑定を請求できるが、検察が留置場での『簡易鑑定』で短く済ませようとすることがある。本鑑定を求めるかどうかで、心神喪失や心神耗弱の認定可能性が大きく変わる。請求しなければ、簡易鑑定の形式的な結論がそのまま通る
- あなたが身に覚えのない事件で、検察側のDNA鑑定が『一致』と出た。だが試料の採取・保存に不備があれば、その結論は揺らぐ。弁護側で再鑑定や鑑定人尋問を請求できる。検察側鑑定を絶対視せず、前提資料の不備を一点突けるかどうかが分水嶺になる
- 鑑定留置が決定された。あなたの身柄拘束は数ヶ月延びる。その不利益と、精密な鑑定で得られる利益を、今すぐ弁護人と天秤にかける
- 医療過誤で家族を失った。過失と死亡の因果関係を証明する鍵は、専門医による鑑定だ。だが鑑定人が加害医師と同じ業界・同じ地域の医師だと、身内に甘い結論が出ることもある。中立性に疑問があれば、その時点で異議を出せる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 因果関係や被害を立証するには専門家の鑑定が要る。医療過誤なら診療記録・検査画像をすぐ保全し、改ざんを防ぐ2. 刑事では捜査段階の鑑定嘱託(223条)を促す上申、民事では鑑定の申立てを検討3. 鑑定人が加害者と同業・同地域だと身内に甘い結論が出やすい、中立性に疑問があれば異議を出す4. 私的鑑定を別途取得し、公的鑑定と対峙させる準備をする
訴えられた側:1. 責任能力に疑いがあれば、留置場での簡易鑑定で済ませず、鑑定留置を伴う本鑑定を弁護人を通じて請求2. 検察側鑑定に納得できなければ、弁護側の私的鑑定を取得して対抗3. 鑑定人尋問で前提資料・手法の不備を突き、結論の信頼性に合理的疑いを生む4. 鑑定意見は裁判所を拘束しない(318条)ことを逆手に、不利な鑑定でも弁論で覆す余地を残す
時効(請求できる期限):鑑定の請求自体に固有の時効はないが、公判前整理手続または証拠調べの段階で行うのが原則で、遅れると採用されにくい。確定判決後でも、新たなDNA再鑑定等が無罪を明らかにする場合、再審請求は期間の制限なく可能(刑訴435条)
学説
通説:鑑定は裁判官が有しない専門的知見を訴訟に取り込む制度であり、その意見は証拠資料の一つにすぎない。証明力の評価は自由心証主義(318条)に委ねられ、裁判所は合理的理由を示せば鑑定意見と異なる認定をなしうる。ただし専門的知見を要する事項を恣意的に排斥すれば経験則違反となる。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和23年(1948年) 新設:現行刑事訴訟法の制定に伴い、裁判所による鑑定命令を定める規定として整備。戦後の当事者主義化の中で、専門知の活用と裁判所の最終判断権の均衡を図る位置づけとなった。
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める