刑事訴訟法 第312条
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- 裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
- 2.裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。
- 3.第一項の請求は、書面を提出してしなければならない。
- 4.検察官は、第一項の請求と同時に、被告人に送達するものとして、前項の書面(以下「訴因変更等請求書面」という。)の謄本を裁判所に提出しなければならない。
- 5.裁判所は、前項の規定による訴因変更等請求書面の謄本の提出があつたときは、遅滞なくこれを被告人に送達しなければならない。
- 6.第三項の規定にかかわらず、被告人が在廷する公判廷においては、第一項の請求は、口頭ですることができる。この場合においては、第四項の規定は、適用しない。
- 7.裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に十分な防御の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第312条は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第312条の条文原文は「裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。」で始まります。
- 刑事訴訟法第312条は第一節 公判準備及び公判手続に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第312条の前の条は刑事訴訟法第311条です。
- 刑事訴訟法第312条の次の条は刑事訴訟法第312条の2です。
- 刑事訴訟法第312条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
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下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第312条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第312条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/312
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法312条は、検察官の請求により、公訴事実の同一性を害しない限度で起訴状の訴因・罰条を追加・変更できると定める。防御に不利益が生じれば公判手続を停止できる。
Q · 起訴された罪名は、裁判の途中で変わることがあるの?
変わりうる。ただし公訴事実の同一性の枠内に限られる
刑事訴訟法312条により、裁判所は検察官の請求があれば、公訴事実の同一性を害しない限度で起訴状の訴因・罰条の追加・撤回・変更を許可します。傷害から傷害致死、窃盗から強盗のように重い訴因へ変わることもあります。ただし変更できるのは同じ社会的事実の枠内だけで、別事件への滑り込みは許されません。さらに7項により、変更で防御に実質的な不利益が生じるおそれがあるときは、被告人・弁護人の請求で公判手続を停止し、防御準備の時間を確保できます。
解説
起訴状に書かれた罪名と事実、それが裁判の最後まで動かないと思っているなら、その前提から疑った方がいい。刑事訴訟法312条は、検察官が審理の途中で「訴因」(検察官が裁判所に判断を求める犯罪事実の枠組み)や「罰条」(適用する条文)を追加・撤回・変更できると定める。あなたが傷害罪で起訴されたつもりでいたら、審理の途中で殺人未遂に「変更」されることもありうる。ただし無制限ではない。検察官が組み替えられるのは「公訴事実の同一性を害しない限度」、つまり同じ社会的事実の枠内だけだ。この見えない柵が、あなたを守る最後の防壁になる。さらに知っておくべきは7項。訴因変更で防御に実質的な不利益が生じるおそれがあるとき、あなたまたは弁護人は請求によって公判手続を止め、防御の準備期間を勝ち取れる。検察官が標的を組み替えた瞬間、時計を止める権利が、あなたの側にある。
法的な位置づけ
刑事訴訟法312条は訴因変更の手続を定める規定であり、裁判所が検察官の請求に基づき、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因または罰条の追加・撤回・変更を許可する仕組みを規律する。あわせて、訴因変更による防御上の実質的不利益を回避するための公判手続停止の請求権を被告人側に保障する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.訴因変更請求書面の謄本を受領し新旧訴因を対比 検察官から訴因変更等請求書面の謄本が送達されたら、旧訴因と新訴因を並べ、どの事実・罰条が加わり、どの要素が消えたかを弁護人と逐一突き合わせる
- 2.公訴事実の同一性の有無を精査し争点化 新旧訴因の基本的事実関係が共通するか、両立しない択一関係かを検討する。同一性がないと判断できれば、訴因変更の許可自体に異議を述べ、別事件としての起訴を要求する
- 3.防御の実質的不利益を示し公判手続停止を請求 同一性があり変更が避けられない場合は、新訴因に対する防御準備が不足する具体的事情を示し、7項に基づき公判手続の停止を請求して準備期間を確保する
- 4.新訴因に対応する証拠と弁護方針を再構築 確保した期間で、新訴因に対応する証拠・証人を洗い直し、自白の射程や示談の範囲が新訴因をカバーするかを再確認して弁護方針を組み直す
よくある質問 AI による整理
Q1訴因変更とは何ですか?
検察官が裁判の途中で、起訴状に記載した訴因(犯罪事実の枠組み)や罰条を追加・撤回・変更する手続です。刑事訴訟法312条が根拠で、公訴事実の同一性を害しない範囲に限られます。
Q2公訴事実の同一性とは何ですか?
訴因変更が許される外枠で、基本的事実関係が共通するかで判断されます。窃盗と占有離脱物横領のような両立しない択一関係にも同一性が認められることがあります。
Q3訴因変更はいつまでできますか?
事実審(第一審・控訴審)の口頭弁論終結前まで可能です。終結後は変更できません。固有の時効はありませんが、審理の段階に応じて防御への配慮が問われます。
Q4訴因変更で罪が重くなることはありますか?
あります。傷害から傷害致死、窃盗から強盗のように、公訴事実の同一性の枠内であれば重い訴因へ変わることがあります。法定刑が跳ね上がる場合もあります。
Q5訴因変更命令と訴因変更請求の違いは何ですか?
請求は検察官が行う申立てで、命令(2項)は裁判所が検察官に変更を促すものです。判例上、命令に形成力はなく、検察官が請求しない限り訴因は変わりません。
Q6公判手続の停止はどう請求しますか?
訴因変更により防御に実質的不利益が生じるおそれがあるとき、被告人・弁護人が請求し、裁判所が決定で停止します(7項)。許可された直後に請求するのが最も効果的です。
Q7訴因変更に被告人の同意は必要ですか?
必要ありません。同一性の枠内であれば裁判所は許可しなければならず(1項)、被告人の同意は要件ではありません。被告人側は同一性や防御不利益を争うことで対抗します。
Q8訴因逸脱認定とは何ですか?
審判の対象である訴因の範囲を超えて裁判所が事実を認定することです。これは絶対的控訴理由となり(378条3号)、判決が破棄される原因になります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1起訴されたあとに罪名が重い方に変えられることって、本当にあるんですか?
あります。312条は公訴事実の同一性を害しない限度で訴因・罰条の追加・変更を認めるので、傷害から傷害致死、窃盗から強盗のように重い訴因へ変わることもあります。判例は基本的事実が共通すれば同一性を広めに認めます。実務のポイント:変更が許可される前なら、弁護人は同一性そのものを争えます。同一性が否定されれば検察官は別事件として起訴し直すしかなく、立証を一からやり直す負担を負う。罪名が重くなる場面こそ、まず同一性を争点化するのが定石です
Q2裁判所が「訴因を変えなさい」と言ったら、検察官は従うしかないんですか?
従う義務はありません。2項の訴因変更命令について、最高裁は原則として形成力を認めておらず(最大判昭和40.4.28)、裁判所が命じても検察官が請求しなければ訴因は変わりません。実務のポイント:裁判所が訴因変更を促すのは、現在の訴因では無罪にせざるを得ないと見ているサインのことが多い。弁護側にとっては、検察の立証が崩れている兆候を裁判所自身が示してくれた局面でもある。命令が出た背景を読むと、防御の方向性が見えてきます
間違えやすい点 AI による整理
- 訴因変更は検察官と裁判所の事務手続で、被告人は受け身で見ているしかないと思われている。実際は逆。7項は被告人・弁護人に公判手続停止の請求権を与えており、防御に実質的不利益が生じるなら裁判所は手続を止めなければならない。動く権利は検察官だけのものではない
- 「公訴事実の同一性さえあれば検察官は何にでも変えられる」と理解している人は、その同一性の射程を甘く見ている。判例は基本的事実関係の共通性に加え、両立しない択一関係(窃盗と占有離脱物横領など)にまで同一性を認めることがある。あなたが「別の事件だから無関係」と思っている罪名が、実は同一性の枠内で襲ってくる
- 訴因変更命令(2項)が出れば訴因は自動的に変わると思われがちだが、最高裁は原則としてこの命令に形成力を認めていない(最大判昭和40.4.28)。裁判所が命じても、検察官が請求しなければ訴因は動かない。命令と請求は別物で、引き金を握るのは依然として検察官だ
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 規律内容 | 312条:審理中の訴因・罰条の追加・撤回・変更 | 256条:起訴状における訴因・罰条の記載と特定 378条:訴因逸脱認定など絶対的控訴理由 |
| 適用される場面 | 公判審理の途中(事実審の口頭弁論終結前) | 公訴提起の時点(起訴状作成) 控訴審での原判決の当否審査 |
| 主たる効果 | 審判対象の組み替え+防御準備のための停止請求権 | 審判対象の枠組み(訴因)の確定 訴因を逸脱した認定の破棄 |
| 被告人側の手札 | 同一性を争う/7項で公判手続停止を請求 | 訴因不特定を理由に釈明・公訴棄却を求める 訴因逸脱認定を控訴理由として記録に残す |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は訴因制度を採らず、起訴された犯罪事実の範囲で裁判所が適用法条を変更できる構造。日本の訴因変更とは出発点が異なる。
韓国は日本と同様に訴因制度を採り、公訴事実の同一性の範囲で公訴状変更を認める。被告人の防御権配慮も類似。
ドイツは職権主義を基礎とし、審判の対象は『行為(Tat)』。法的観点が変わる場合は裁判所の告知義務(§ 265)で防御権を担保する点が訴因変更と機能的に対応。
米国は大陪審起訴では起訴状の実質的変更(constructive amendment)を厳格に制限し、被告人の防御権を保障する。日本の同一性の枠と問題意識が共通する。
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたが窃盗で起訴され、認めるつもりで公判に臨んだ。ところが審理の途中で検察官が「強盗に訴因変更を請求します」と言い出した。暴行の事実が新たに加わり、法定刑が跳ね上がる。ここで黙って受け入れるか、公訴事実の同一性を争うか、防御準備のための公判手続停止を求めるか、その判断で刑期が何年も変わる
- もし、検察側の立証が崩れかけたとき、裁判所自身が「訴因を変更すべき」と検察官に促してきたら? これは2項の訴因変更命令の周辺問題。判例上この命令には原則として強制力(形成力)がなく、検察官が従わなければ訴因は変わらない。裁判所が有罪に誘導しようとしても、最後の引き金は検察官が引く
- 弁護人が訴因変更請求書面の謄本を受け取った。あなたに残された時間は次回期日まで。防御方針を一から組み直すには足りない。7項の手続停止を請求しなければ、準備不足のまま新しい訴因と戦う羽目になる
取るべき行動
被害を受けた側:1. 検察官から訴因変更請求書面の謄本が送達されたら、新旧の訴因を並べて「公訴事実の同一性」があるか弁護人とその場で精査する2. 同一性がないと判断できれば、訴因変更の許可自体に異議を述べ、別事件としての起訴を要求する3. 同一性があり変更が避けられない場合は、防御の実質的不利益を具体的に示し、7項に基づく公判手続の停止を請求して準備期間を確保する4. 新訴因に対応する証拠・証人を洗い直し、弁護方針を組み直す
訴えられた側:1. 起訴状を受け取った段階から、検察官が同一性の枠内でどこまで訴因を動かしうるかを弁護人と先読みしておく2. 自白の範囲は新訴因に流用されうるため、供述は弁護人と詰めてから行う3. 審理中に変更命令(2項)が裁判所から示唆されても、それ自体に形成力はないと理解し、検察官が請求するまで訴因は変わらないことを前提に対応する4. 控訴審を見据え、訴因逸脱認定(審判の対象を超えた認定)があれば絶対的控訴理由になることを記録に残す
時効(請求できる期限):訴因変更請求に固有の時効はないが、請求できるのは事実審(第一審・控訴審)の口頭弁論終結前まで。終結後は変更できない。防御準備のための公判手続停止の請求は、訴因変更が許可された後速やかに行わなければ実質的な意味を失う
学説
通説:312条の訴因変更は公訴事実の同一性の範囲内でのみ許され、その判断は基本的事実関係の共通性を基礎とする。訴因変更命令には形成力がなく(2項)、防御の実質的不利益があれば公判手続停止により手続的公正を担保すると解されている。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和23年(1948年) 新設:現行刑事訴訟法の制定により、英米法の当事者主義を継受して訴因制度を導入。審判の対象を訴因に画し、その変更手続として312条を設けた。
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