刑事訴訟法 第256条
クイックジャンプ
- 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
- 2.起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
- 一被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
- 二公訴事実
- 三罪名
- 3.公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
- 4.罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。
- 5.数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。
- 6.起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。
この条文の基本情報
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 刑事訴訟法第256条は、日本の刑事訴訟法に含まれる条文です。
- 刑事訴訟法第256条の条文原文は「公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。」で始まります。
- 刑事訴訟法第256条は第二章 公訴に置かれています。
- 刑事訴訟法の公布日は昭和23年7月10日です。
- 刑事訴訟法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年9月5日時点では廃止情報はありません。
- 刑事訴訟法第256条の前の条は刑事訴訟法第255条です。
- 刑事訴訟法第256条の次の条は刑事訴訟法第256条の2です。
- 刑事訴訟法第256条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第256条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131 - 本サイト収録
刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第256条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年9月5日)https://lawplayer.com/jp/article/323AC0000000131/256
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点刑事訴訟法256条は、公訴提起を起訴状の提出により行い、公訴事実は訴因を明示して特定し、裁判官に予断を生ぜしめる書類の添付を禁じる起訴状一本主義を定める。
Q · 起訴状って、罪名と公訴事実だけで、警察が集めた証拠書類は本当に何も付いていないの?
はい。起訴状一本主義により証拠書類は添付されません。
刑事訴訟法256条6項の起訴状一本主義により、検察官は裁判官に予断を生ぜしめる書類その他の物を起訴状に添付し、又はその内容を引用してはなりません。起訴状に記載できるのは被告人を特定する事項・公訴事実・罪名だけで、供述調書や現場写真は添付されません。さらに3項により公訴事実は訴因を明示し、できる限り日時・場所・方法で特定する必要があります。裁判所はこの訴因の枠内でしか有罪にできず、起訴状の文言が被告人の防御範囲を画定します。
解説
起訴状が届いた。たった数枚の紙に、あなたの氏名、何をしたとされるか(公訴事実)、どの罪か(罪名)だけが書かれている。違和感を覚えるべきだ。警察が何か月もかけて集めた供述調書も、現場写真も、一切添付されていない。これは手抜きではなく、刑事訴訟法256条6項が検察官に厳しく禁じているからだ。「起訴状一本主義」と呼ばれるこの仕組みは、あなたを裁く裁判官が、初公判の法廷で証拠を取り調べるまで、事件について予断(先入観)を持たないことを保証する。さらに重要なのは3項。検察官は「訴因」を明示し、できる限り日時、場所、方法で罪となるべき事実を特定しなければならない。なぜこれがあなたの武器になるか。裁判所はこの訴因の枠内でしか有罪にできない。窃盗で起訴されたのに証拠が詐欺を示していても、検察官が訴因を変更しない限り、裁判官が勝手に詐欺で裁くことはできない。起訴状の一行一行が、あなたの防御範囲を画定している。
法的な位置づけ
刑事訴訟法256条は公訴提起の方式と起訴状の記載事項を定める規定である。公訴事実は訴因を明示し、できる限り日時・場所・方法により罪となるべき事実を特定して記載しなければならず、6項は裁判官に予断を生ぜしめる書類その他の物の添付・引用を禁じて起訴状一本主義を規定する。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.起訴状を受け取ったら罪名より先に訴因を読む 起訴状の「公訴事実」欄の訴因を精読し、日時・場所・方法が『できる限り特定』されているか確認する。罪名のラベルだけ見て安心せず、何の事実で起訴されたのかを正確に把握する
- 2.予断を生む余事記載がないか確認 起訴状に前科・自白の存在・被害者の処罰感情など、裁判官に予断を生ぜしめる記載が紛れ込んでいないか確認する。あれば256条6項違反として冒頭手続で指摘する材料になる
- 3.訴因が曖昧なら求釈明を準備する 日時・場所・方法が曖昧な場合、弁護人を通じて第1回公判前に求釈明を申し立て、検察に訴因の補正を迫る。補正をしぶる部分は証拠が弱い可能性が高い
- 4.冒頭手続で訴因不特定・予断記載を主張する 訴因不特定なら公訴棄却(338条4号)を、256条6項違反なら公訴提起の効力を、証拠調べが進む前の冒頭手続で主張する。手続が進んだ後では主張が通りにくくなる
よくある質問 AI による整理
Q1起訴状一本主義とは何ですか?
検察官が起訴状に裁判官の予断を生む書類を添付・引用できないとする原則です(刑訴256条6項)。裁判官は初公判の証拠調べまで事件の中身を知りません。
Q2訴因とは何ですか?
検察官が審判を求める具体的な犯罪事実の主張です。256条3項により、できる限り日時・場所・方法で特定して起訴状に明示する必要があります。
Q3公訴事実と訴因の違いは何ですか?
公訴事実は起訴の対象となる事件の枠、訴因はその枠内で検察官が審判を求める法律的に構成された具体的事実です。訴因が裁判所の審判対象を画定します。
Q4起訴状に必ず書かなければならない事項は?
被告人を特定する事項・公訴事実・罪名の3つです(256条2項)。公訴事実は訴因を明示し、罪名は適用すべき罰条を示して記載します。
Q5予断排除の原則とは何ですか?
裁判官が証拠調べ前に有罪の心証を抱かないよう、捜査記録に触れさせない原則です。起訴状一本主義はこれを制度的に担保します。
Q6訴因が特定されていないと起訴はどうなりますか?
被告人が防御の的を絞れないため、訴因不特定として公訴棄却の判決(刑訴338条4号)になりうります。
Q7起訴状一本主義に例外はありますか?
余事記載でも、訴因を特定するために必要不可欠な事実の記載は許容されます。ただし前科や自白など予断を生む記載は原則として許されません。
Q8罰条の記載を間違えたら起訴は無効ですか?
無効になりません。256条4項但書により、被告人の防御に実質的な不利益が生じない限り、罰条の誤りは公訴提起の効力に影響しません。
この条文についての質問 AI による整理
Q1起訴状って、警察の捜査書類は付いてないんですか? 裁判官は何で判断するんですか?
付いていません。これが「起訴状一本主義」(256条6項)です。検察官は裁判官に予断を与える書類を添付できず、裁判官は初公判で証拠調べが始まるまで事件の中身をほぼ知りません。実務のポイント:起訴状に前科や「自白している」といった記載が紛れ込んでいれば256条6項違反。弁護人が冒頭で指摘すれば公訴棄却(338条4号)の余地が出る。プロは本文より「書いてはいけないことが書かれていないか」を見る
Q2訴因が曖昧だと、どうなるんですか?
訴因(起訴された具体的事実)の日時、場所、方法が特定されていないと、被告人は何に対して防御すればよいか分かりません。256条3項は「できる限り特定」を求めており、これを欠くと訴因不特定として公訴棄却(338条4号)になりうる。実務のポイント:弁護人はまず求釈明で検察に特定を迫る。検察が特定をしぶる部分は、たいてい証拠が弱い。訴因の曖昧さは、検察の弱点が透けて見えるサインだ
Q3起訴されたら、もう罪名は変わらないんですか?
変わりえます。検察官は裁判の途中で「訴因変更」(312条)を請求し、裁判所の許可で訴因や罰条を追加、変更できます。ただし公訴事実の同一性の範囲内に限られます。実務のポイント:検察が途中で訴因変更を申し立てたら、それは当初の見立てが揺らいだ証拠。弁護側にとっては反撃の好機で、変更が公訴事実の同一性を超えていれば却下を主張できる。裁判の流れが変わる瞬間だ
間違えやすい点 AI による整理
- あなたから見れば「裁判官は警察の調書を全部読んで、もう有罪だと思っている」。だが法律から見れば、裁判官は起訴状一枚しか手にしておらず、捜査記録を見ることを禁じられている(256条6項)。この落差を知らないまま、最初から負けを覚悟して臨むと、争えたはずの争点を自分で手放すことになる
- 「起訴された=もう有罪」とよく言われ、確かに日本の有罪率は99% を超える。だがその深刻さの本当の理由を多くの人は誤解している。高いのは「起訴された事件の」有罪率であって、検察官が起訴便宜主義(248条)のもと、勝てる事件しか起訴しないからだ。つまり起訴状が届いた時点で、検察官は有罪の確信を固めている。だからこそ起訴状の訴因の穴を突くことが、数少ない反撃路になる
- 「罪名さえ合っていれば起訴は有効」と思われがちだが、逆に罰条(適用すべき条文番号)を多少間違えても、被告人の防御に実質的な不利益が生じない限り起訴は有効だ(256条4項但書)。本当に重要なのは罪名のラベルではなく、訴因、すなわち具体的事実がどう特定されているかである
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 256条:起訴状の方式・記載事項・起訴状一本主義 | 248条:起訴便宜主義(起訴・不起訴の裁量) 312条:訴因・罰条の追加・撤回・変更 |
| 規律する場面 | 公訴提起の時点(入口で枠を引く) | 公訴提起をするか否かの判断段階 公判係属中に枠を書き換える段階 |
| 瑕疵があるときの効果 | 訴因不特定なら公訴棄却(338条4号) | 起訴猶予は不起訴処分で公訴自体が不存在 公訴事実の同一性を超える変更は許可されない |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は起訴時に証拠書類・証拠物を裁判所へ送付する卷証併送主義を採り、起訴状一本主義を採らない点で日本と対照的。起訴状の記載事項自体は類似する
韓国は공소장일본주의(起訴状一本主義)を判例・規則上採用し、予断排除の発想を日本と共有する
ドイツは起訴状(Anklageschrift)とともに捜査記録(Akten)が裁判所へ送付されるため、日本型の起訴状一本主義は採らない。起訴状の記載事項を定める点は共通
米国は大陪審の起訴状(Indictment)が訴因を特定して提示され、予断排除は陪審制と証拠法則で担保される。日本の起訴状一本主義はこの英米型の影響を受けた
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- あなたに窃盗で起訴状が届いた。だが訴因の欄には「令和○年頃、東京都内において、他人の財物を窃取した」としか書かれていない。日時も場所も曖昧。これは256条3項の「できる限り特定」に反する疑いがある。弁護人はこの曖昧さを突き、訴因不特定による公訴棄却(338条4号)を主張できる。何に対して防御すべきかすら示されない起訴は、出発点で瑕疵を抱えている
- 起訴状を受け取ってから第1回公判までの数週間、あなたは何をすべきか。まず起訴状に「前科がある」「犯行を認めている」といった予断を生む記載が紛れ込んでいないか確認する。あれば256条6項違反であり、公訴提起そのものの効力が問われうる。本文の罪名だけ読んで安心していると、この穴を見逃す
- ニュースで「検察が訴因を変更した」と聞いたことがあるか。あれは検察官が当初の起訴状で引いた枠を、裁判の途中で書き換えた瞬間だ。裁判所はその枠の中でしか裁けない
- あなたが法廷を傍聴したとき、裁判官が起訴状を朗読させ、被告人質問の前に捜査記録を一切見ていないように振る舞うのを不思議に思うかもしれない。それは演技ではない。法律上、裁判官は本当に捜査書類を手にしていない。256条6項がそれを禁じているからだ
取るべき行動
被害を受けた側:1. あなたが被害者で加害者が起訴されたか知りたい場合、検察官に通知を求める(被害者等通知制度)2. 起訴されたら、起訴状記載事項の概要は通知請求できる3. 訴因、つまりどの行為で起訴されたかが、あなたの被害実態と食い違っていないか確認、食い違っていれば検察官に申し出る4. 公判では被害者参加制度(刑事訴訟法316条の33)により、意見陳述や情状に関する質問が可能
訴えられた側:1. 起訴状が届いたら、まず弁護人を選任する(国選または私選)2. 訴因の欄を精読し、日時、場所、方法が「できる限り特定」されているか確認、曖昧なら訴因不特定を主張3. 予断を生む余事記載(前科、自白、処罰感情)がないか確認、あれば256条6項違反を冒頭で指摘4. 罪名、罰条が事実と合っているか、ただし罰条の軽微な誤りは原則争点にならない(4項但書)5. これらは第1回公判前の準備が勝負
時効(請求できる期限):公訴提起には罪ごとに公訴時効の制限がある(刑事訴訟法250条)。起訴後、起訴状謄本が公訴提起の日から2か月以内に被告人へ送達されないときは、公訴提起は遡って効力を失う(刑事訴訟法271条2項)。訴因不特定や256条6項違反の主張は、第1回公判期日の冒頭手続で行うのが原則
学説
通説(予断排除説):起訴状一本主義(256条6項)の趣旨は、裁判官に証拠調べ前の予断を抱かせないことにあり、戦後の当事者主義への転換を象徴する。余事記載でも訴因特定に不可欠なものは許容されるが、前科・自白などの記載は原則許されないと解される。
訴因対象説(審判対象画定説):裁判所の審判対象は公訴事実そのものではなく検察官が明示した訴因であるとする見解。訴因変更(312条)の要否や公訴事実の同一性の判断も、この訴因を基準に画定されると説く。
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和23年(1948年) 新設:現行刑事訴訟法の全面制定。GHQ 占領下で当事者主義を導入し、起訴状一本主義(旧6項)と訴因明示の要請(3項)を明文化。明治期の職権主義的な予審記録送付方式を廃止した。
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める