要点厚生年金保険法 105 条は、98 条の届出義務に違反した事業主・被保険者・死亡の届出義務者に十万円以下の過料を科す。過料は刑罰ではなく秩序罰で、前科にはならない。
Q · 社会保険の届出を忘れて過料を取られたら、前科がついてしまうんですか?
前科にはなりません。刑罰ではなく行政上の秩序罰です
厚生年金保険法 105 条の過料は、行政上の秩序罰であって刑罰ではありません。したがって前科にはならず、履歴書の賞罰欄に書く必要もなく、警察や検察による捜査も行われません。手続は刑事訴訟ではなく非訟事件手続法にもとづき、裁判所が決定を出します。ただし納付しなければ検察官の命令で強制執行されます。また実務上の負担は過料そのものより、届出漏れによって遡って追徴される最大二年分の保険料(同法 92 条)のほうがはるかに大きくなります。
十万円以下の過料。厚生年金保険法105条が用意している制裁は、たったこれだけだ。だが多くの人事担当者も遺族も、二つの点を取り違えている。第一に、過料は罰金ではない。刑罰ではないので前科はつかず、警察も検察も捜査には来ない。裁判所が非訟事件手続法にもとづいて決定を出すだけである。第二に、名指しされているのは事業主だけではない。被保険者本人(98条2項)、そして受給権者が死亡したときの戸籍法上の死亡の届出義務者(98条4項)が並んでいる。戸籍法87条1項の届出義務者には、同居の親族だけでなく、その他の同居者、さらに家主・地主・家屋の管理人まで入る。年金を受け取っていた入居者が部屋で亡くなり身寄りがいなければ、大家であるあなたが届出義務者になりうる。もっとも98条4項にはただし書があり、日本年金機構がマイナンバーで死亡の事実を確認できる場合、その届出は不要になる。
厚生年金保険法 105 条は、届出義務違反に対する過料を定める規定である。同法 98 条 1 項の事業主の届出、2 項の被保険者の届出および申出、4 項の戸籍法上の死亡の届出義務者による届出のいずれかを怠り、または虚偽の届出をした場合に、十万円以下の過料が科される。過料は刑罰ではなく行政上の秩序罰であり、非訟事件手続法にもとづく裁判所の決定によって科される。
行政上の秩序罰で、届出義務などの手続違反に対して科される金銭的制裁です。刑罰ではないため前科にはならず、裁判所が非訟事件手続法にもとづき決定で科します。
事実の発生から五日以内が原則です(厚生年金保険法施行規則)。この期限を過ぎても届出自体は受理されますが、遡及分の保険料がまとめて発生します。
105 条 1 号は「届出をせず」だけでなく「虚偽の届出をしたとき」も過料の対象としています。手当を外して低く届け出る運用は、文言上は虚偽の届出に当たります。
戸籍法 87 条 1 項の届出義務者には家主・地主・家屋の管理人も含まれ、その者は厚生年金保険法 98 条 4 項の届出義務者にもなり得ます。105 条 3 号の対象です。
裁判所の決定が確定した後は、検察官の命令によって強制執行されます(非訟事件手続法 121 条)。放置しても消えるものではありません。
年金事務所や日本年金機構ではなく、裁判所が科します。相手が行政庁ではないため、不服申立ても行政不服審査ではなく即時抗告になります。
保険料徴収権の時効は二年です(厚生年金保険法 92 条)。最大二年分が労使合計でまとめて請求され、退職済み従業員の本人負担分は回収が困難になります。
違います。98 条 1 項の事業主、2 項の被保険者本人、4 項の戸籍法上の死亡の届出義務者の三者が並んで名宛人になっています。
なりません。過料は行政上の秩序罰で刑罰ではないため、前科にはならず賞罰欄への記載も不要です。手続も刑事訴訟ではなく、非訟事件手続法にもとづき裁判所が決定を出します。ただし納付しなければ検察官の命令で強制執行されます(同法121条)。業界裏話ヒント:不服があるときの手段は行政不服審査ではなく即時抗告です。相手が行政庁ではなく裁判所だと最初に理解しているかどうかで、出す書面が丸ごと変わります
マイナンバーが日本年金機構に収録されていれば、98条4項ただし書により死亡の届出は原則不要です。収録がなければ、死亡の日から十日以内という届出義務が残ります。業界裏話ヒント:届出が不要になっても、未支給年金の請求(厚生年金保険法37条)は自動では処理されません。遺族が請求しなければ、受け取れたはずの一、二か月分がそのまま消えます。届出不要という言葉を、手続が全部終わったと読み替えると損をします
過料を科すのは裁判所であり、年金事務所が直接処分するものではありません。実務上は職権による資格の確認と遡及届出、保険料の納付で処理される運用が通例です。業界裏話ヒント:怖いのは過料より遡及です。保険料徴収権の時効は二年(厚生年金保険法92条)で、二年分がまとめて来ます。すでに退職した従業員の本人負担分は回収がほぼ不可能で、会社が丸ごとかぶることになります
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 105 条:届出義務違反に対する過料(制裁) | — |
| 名宛人 | 事業主・被保険者・戸籍法上の死亡の届出義務者 | — |
| 効果 | 十万円以下の過料(行政上の秩序罰、前科なし) | — |
| 実務上の重さ | 上限十万円。金額としては最も軽い | — |
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