要点厚生年金保険法78条の9は、離婚時の年金分割で標準報酬が改定された場合、老齢厚生年金と障害厚生年金の額を標準報酬改定請求のあった日の属する月の翌月から改定すると定める規定である。
Q · 年金分割が決まったら、私の年金はいつから増えるんですか?
離婚日ではなく請求した月の翌月から増えます
厚生年金保険法78条の9により、離婚時の年金分割で標準報酬が改定されても、老齢厚生年金・障害厚生年金の額が実際に改定されるのは標準報酬改定請求のあった日の属する月の翌月からです。離婚日に遡っての支給はありません。請求自体の期限は原則として離婚等をした日の翌日から2年(78条の2第1項)です。また障害厚生年金で被保険者期間を300月とみなす最低保障が適用されている場合、離婚時みなし被保険者期間は計算の基礎に加えられません(78条の9第2項ただし書)。
離婚届を出した瞬間に自分の年金が増える、と思っている人は多い。78条の9はその期待を静かに裏切る。年金分割で標準報酬が書き換えられても、老齢厚生年金の額が実際に動き出すのは「標準報酬改定請求のあった日の属する月の翌月」からである。離婚から請求まで半年空ければ、その半年分は後から遡って支払われることはない。しかも請求できる期限は原則として離婚等をした日の翌日から2年。この2年を1日でも過ぎれば、分割の権利そのものが消える。第2項は障害厚生年金にも同じ改定ルールを及ぼすが、ただし書で、300月みなしの最低保障が効いている障害厚生年金には離婚時みなし被保険者期間を足さないと釘を刺している。受け取る側だけでなく、渡す側の障害厚生年金が下がる場面もこの条文の射程に入っている。
厚生年金保険法78条の9は、離婚時の年金分割に伴う年金額改定の効力発生時期を定める規定である。第78条の6により標準報酬が改定・決定されたときは、老齢厚生年金は第43条第1項の特則として改定後の標準報酬を計算の基礎とし、障害厚生年金とともに、標準報酬改定請求のあった日の属する月の翌月から年金額が改定される。
標準報酬改定請求のあった日の属する月の翌月からです(78条の9)。離婚が成立した日には遡りません。請求が遅れた月数分の年金は後から支払われることはありません。
婚姻期間中の厚生年金の標準報酬記録を按分割合に従って書き換えるよう、日本年金機構に求める請求です。この請求が受理された月が、年金額改定の起点になります。
年金事務所(日本年金機構)の窓口です。按分割合が合意できない場合は、先に家庭裁判所へ調停・審判を申し立て、確定した審判書等を添えて年金事務所で請求します。
年金事務所に請求すれば、離婚前でも当事者の一方が単独で取得できます。婚姻期間や対象期間標準報酬総額が記載され、按分割合の交渉を数字ベースに引き戻せます。
渡す側の減額も同じく標準報酬改定請求のあった日の属する月の翌月からです。増える側と減る側は同じ日を起点に動きます。過去分の返還請求は生じません。
国民年金第3号被保険者だった期間があれば、事実婚の解消でも分割の対象になりうるとされています。籍を入れていなくても射程に入る場面があるため年金事務所で確認してください。
標準報酬改定請求書、婚姻期間等を明らかにする戸籍謄本類、按分割合を定めた公正証書・公証人認証の私署証書または家庭裁判所の審判書等、本人確認書類が基本です。
一度改定された標準報酬の記録は、再婚しても元に戻りません。分割によって書き換えられた記録は本人の記録として残り続けます。
原則として請求できない(厚生年金保険法78条の2第1項)。ただし2年が経過する前に按分割合を定める調停や審判を申し立てていて、確定が2年経過後になった場合の救済規定がある(最新の改正状況をご確認ください)。業界裏話ヒント:窓口では「2年で終わりです」としか言われないことが多い。係属中または確定した家事事件があるかどうかで結論が変わるので、申立書や審判書を持参して相談する
増えるのは厚生年金の報酬比例部分だけで、老齢基礎年金は動かない。しかも増額が現実の振込に現れるのは、あなた自身に老齢厚生年金の受給権が生じてからである(78条の9第1項)。業界裏話ヒント:情報通知書に載る「対象期間標準報酬総額」は年金額そのものではない。年金事務所では分割後の見込額の試算を頼める。数字を見て「思ったより少ない」となる人が非常に多い
合意分割で標準報酬が改定されれば、その記録を基礎とする障害厚生年金の額も請求月の翌月から改定される(78条の9第2項)。受け取る側でも、被保険者期間を300月とみなす最低保障が適用されている障害厚生年金には離婚時みなし被保険者期間は加算されない(同項ただし書、50条1項)。業界裏話ヒント:3号分割(78条の14)には特定被保険者が障害厚生年金の受給権者である場合の適用除外が定められており、合意分割と扱いが異なる。この違いは窓口説明で飛ばされやすい
もらえない可能性がある。離婚時みなし被保険者期間は年金額の計算基礎には入るが、老齢年金を受け取るための受給資格期間には算入されない。自分自身で資格期間を満たしていなければ、分割された記録は使われないまま眠る。業界裏話ヒント:この場合は国民年金の任意加入や未納分の追納で資格期間を作る方が先。按分割合を0.4から0.5へ上げる交渉より、自分の記録の穴を埋める方が生涯受取額へのインパクトが大きいことがある
| dimension | thisArticle | alternatives |
|---|---|---|
| 規定の役割 | 78条の9:改定後の標準報酬に基づく年金額改定の効力発生時期 | — |
| 起算点 | 標準報酬改定請求のあった日の属する月の翌月 | — |
| 対象となる給付 | 老齢厚生年金(1項)・障害厚生年金(2項) | — |
| 見落とされやすい制限 | 300月みなしの最低保障が効く障害厚生年金には離婚時みなし被保険者期間を加算しない | — |
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