厚生年金保険法 第91条の3(審査請求と訴訟との関係)
クイックジャンプ
第九十条第一項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する社会保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない。
この条文の基本情報
審査請求と訴訟との関係とは何ですか?
定義審査請求と訴訟との関係とは、厚生年金保険法第91条の3に定められた規定で、「第九十条第一項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する社会保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない。」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 厚生年金保険法第91条の3(審査請求と訴訟との関係)は、日本の厚生年金保険法に含まれる条文です。
- 厚生年金保険法第91条の3の条文原文は「第九十条第一項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する社会保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない。」で始まります。
- 厚生年金保険法第91条の3は第六章に置かれています。
- 厚生年金保険法の公布日は昭和29年5月19日です。
- 厚生年金保険法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年10月2日時点では廃止情報はありません。
- 厚生年金保険法第91条の3の前の条は厚生年金保険法第91条の2です。
- 厚生年金保険法第91条の3の次の条は厚生年金保険法第92条です。
- 厚生年金保険法第91条の3には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第91条の3 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115 - 本サイト収録
厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第91条の3(LawPlayer 収録、取得日 令和8年10月2日)https://lawplayer.com/jp/article/329AC0000000115/91_3
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点厚生年金保険法91条の3は、同法90条1項の処分の取消訴訟は社会保険審査官の決定を経た後でなければ提起できないと定める。前置を欠いた訴えは審理されず却下される。
Q · 年金の不支給通知に納得できないとき、すぐに裁判を起こせますか?
できません。先に社会保険審査官への審査請求が必要です
厚生年金保険法91条の3により、同法90条1項の処分(被保険者の資格・標準報酬・保険給付に関する処分)の取消訴訟は、社会保険審査官の決定を経た後でなければ提起できません。前置を欠いた訴えは中身を審理されないまま却下されます。ただし審査請求から2か月を経過しても決定がないときは棄却とみなして先へ進むことができ(同法90条2項)、審査請求から3か月を経過すれば決定を待たずに提訴する道もあります(行政事件訴訟法8条2項1号)。
解説
障害厚生年金の不支給通知が届いた。納得できないから裁判所へ、と考えるのは自然だ。だがその訴状は中身を一度も見てもらえないまま却下される。厚生年金保険法91条の3は、被保険者の資格・標準報酬・保険給付に関する処分(同法90条1項)を裁判で取り消すには、まず社会保険審査官への審査請求を経て、その決定を受けた後でなければ訴えを起こせないと定めている。行政訴訟の原則は自由選択(行政事件訴訟法8条1項本文)だが、年金はその例外側に置かれている。ここで押さえるべきは二点。第一に、決定が出ないまま待たされ続けても手はある。審査請求から2か月以内に決定がなければ、棄却されたとみなして次へ進める(厚生年金保険法90条2項)。第二に、この扉が課されているのは90条1項の処分についてであり、通知の種類ごとに入口も期限も別々に走る。争う気があるかどうかより、どの順番で通るかが先に問われる。
法的な位置づけ
厚生年金保険法91条の3は、審査請求前置主義を定める規定である。同法90条1項に規定する被保険者の資格、標準報酬または保険給付に関する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する社会保険審査官の決定を経た後でなければ提起することができない。行政事件訴訟法8条1項本文が定める自由選択主義に対する個別法上の例外に位置づけられる。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.通知書の日付を確定し、3か月のカウントダウンを開始 処分通知書の日付欄と実際の受領日を撮影・記録する。知った日の翌日から3か月が審査請求の期限(社会保険審査官及び社会保険審査会法4条1項)。この起算日の証拠が後の期限争いを左右する
- 2.審査請求書と証拠資料を法廷仕様で作成 診断書、受診状況等証明書、賃金台帳、雇用契約書、同居や生計維持を示す資料を、審査請求の段階で出し尽くす。決定書に残る事実認定が後の訴訟の出発点になるため、証拠の温存は最も損をする戦術になる
- 3.社会保険審査官へ審査請求書を提出 地方厚生局に置かれた社会保険審査官宛てに提出する。提出日が2か月のみなし棄却(厚生年金保険法90条2項)の起算日になるため、控えに受付日を残す
- 4.2か月経過時点で「待つか進むか」を判断 審査請求日から2か月を経過しても決定がなければ、棄却とみなして取消訴訟へ進める(厚生年金保険法90条2項)。また審査請求から3か月無応答なら行政事件訴訟法8条2項1号でも提訴できる。時間の主導権を役所から取り戻す分岐点
- 5.決定受領後、再審査請求か取消訴訟かを逆算して選ぶ 決定書を受け取ったら、社会保険審査会への再審査請求(任意)と取消訴訟のどちらを選ぶかを、出訴期間6か月(行政事件訴訟法14条1項)から逆算して決める。再審査請求中も出訴期間の管理を止めない
よくある質問 AI による整理
Q1審査請求前置主義とは何ですか?
行政処分を裁判で争う前に、必ず行政の不服申立手続を経なければならない仕組みです。厚生年金保険法91条の3が年金処分についてこれを定めています。
Q2年金の不支給決定に不服がある場合、最初に何をすればいいですか?
社会保険審査官への審査請求です。地方厚生局に置かれた審査官宛てに審査請求書を提出します。ここを飛ばして提訴しても却下されます。
Q3審査請求はいつまでにすればいいですか?
処分があったことを知った日の翌日から3か月以内です(社会保険審査官及び社会保険審査会法4条1項)。この期間を過ぎると取消訴訟の道も事実上閉じます。
Q4審査請求したのに決定が来ないときはどうする?
審査請求から2か月を経過しても決定がないときは、棄却されたものとみなして次の手続へ進めます(厚生年金保険法90条2項)。待ち続ける義務はありません。
Q5社会保険審査会への再審査請求は必ず必要ですか?
必要ありません。平成26年(2014年)改正で二重前置は解消され、社会保険審査官の決定を経れば取消訴訟を提起できます。再審査請求は任意の選択肢です。
Q6審査請求をせずに訴えたらどうなりますか?
訴訟要件を欠くとして、請求の中身を審理されないまま却下されます。診断書や証拠をどれだけ積み上げても、判断の入口に立てません。
Q7取消訴訟の出訴期間はいつからですか?
決定があったことを知った日から6か月、決定の日から1年です(行政事件訴訟法14条1項・2項・3項)。決定書の受領日を必ず記録してください。
Q8障害厚生年金の不支給決定も91条の3の対象ですか?
対象です。保険給付に関する処分は同法90条1項に含まれるため、取消訴訟の前に社会保険審査官への審査請求を経る必要があります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1審査請求って自分で書けるものですか、それとも専門家に頼むべき?
書式自体は簡素で本人でも出せる。ただし91条の3が要求するのは「経ること」だけだが、実際に効いてくるのはそこで作られる記録の中身であり、決定書の事実認定が訴訟の出発点になる。実務のポイント:社会保険労務士は審査請求の代理はできるが、取消訴訟の代理はできない(弁護士の領域)。訴訟まで見据えるなら、審査請求の段階から両者を組ませ、資料を最初から法廷仕様で作るのが唯一の近道だ
Q2保険料の督促にも納得できないんですが、これも先に審査請求ですか?
91条の3が明文で前置を課しているのは90条1項の処分、つまり被保険者の資格・標準報酬・保険給付に関する処分である。保険料その他の徴収金に関する処分は社会保険審査会への審査請求の対象とされており(厚生年金保険法90条4項)、扱う機関も手続も別系統になる。実務のポイント:同じ調査から資格の遡及認定と保険料の賦課が同時に届くことがあり、片方の手続に集中している間にもう片方の期限が静かに切れる
間違えやすい点 AI による整理
- 審査請求が必要だということ自体は知っている人でも、その中身の重さを知らない。審査官の決定書に書かれた事実認定は、後の取消訴訟で裁判所が読む最初の資料になる。通過だけを目的に薄い書面を出すと、その薄さが判決まで尾を引く
- 「社会保険審査会の裁決まで待たないと訴えられないのでは」という問いの立て方自体が、古い法律を前提にしている。平成26年(2014年)の行政不服審査法整備に伴う改正で二重の前置は解消され、社会保険審査官の決定を経れば訴訟を提起できるようになった。改正前の記述のまま残っている解説記事は今も検索上位にある
- 決定が出るまで何もできないと思い込んで半年待つ人がいるが、審査請求から2か月経って決定がなければ、棄却されたものとみなして先へ進める(厚生年金保険法90条2項)。待つことは義務ではなく、あなたが選べる選択肢の一つにすぎない
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 条文の役割 | 厚年法91条の3:取消訴訟の前に審査請求を経ることを義務づける(前置) | 厚年法90条:どの処分をどこへ不服申立てするかの枠組みと、2か月のみなし棄却 行訴法8条:自由選択主義の原則と、個別法による前置の例外根拠 |
| 対象となる処分 | 90条1項の処分(被保険者の資格・標準報酬・保険給付) | 1項は資格・標準報酬・給付、4項は保険料その他の徴収金(社会保険審査会へ) 処分の種類を限定せず、行政処分一般 |
| 手続が止まったときの出口 | 決定を経ることが要件。決定なしでは原則として提訴できない | 審査請求から2か月で決定がなければ棄却とみなす(90条2項) 審査請求から3か月無応答なら裁決を待たず提訴可(8条2項1号) |
| 実務上の落とし穴 | 前置を欠く訴えは中身を審理されず却下される | 資格の処分と保険料の処分で申立先・期限が別系統に走る 原則が自由選択のため、個別法の前置規定を見落としやすい |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾も行政処分の取消訴訟に訴願前置を課す。労働保険の給付争いは争議審議を経て訴願、さらに行政訴訟という三段構成で、日本の審査請求前置と発想が近い
韓国も年金処分について심사청구・재심사청구の枠組みを持つ。行政訴訟法18条は任意的前置を原則としつつ個別法で前置を課す構造で、日本と類似する
ドイツは社会保険給付の取消訴訟(Anfechtungsklage)の前に Widerspruchsverfahren を経ることを原則要件とする。専門機関による事前是正という趣旨は日本と共通
米国の社会保障給付訴訟も、行政上の救済を尽くした後の final decision に対してのみ司法審査を認める。exhaustion doctrine が同様の関所として機能する
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 障害厚生年金の不支給決定通知を受け取ってから、もう2か月半が過ぎていたとしたら? 審査請求の期限は処分があったことを知った日の翌日から3か月(社会保険審査官及び社会保険審査会法4条1項)。残り2週間で請求書を出さなければ、その後どれだけ正確な診断書と主張を積み上げても、取消訴訟の扉は永久に閉じたままになる
- 顧問先の従業員について、被保険者資格を遡って取り消す処分が届いた。社会保険労務士としてまず打つ手は提訴ではなく審査請求だ。ここを飛ばせば、会社が用意した弁護士費用は一円残らず無駄になる
- 長年同居してきたパートナーを亡くし、遺族厚生年金を請求したが「生計維持関係が認められない」として不支給。家計簿も郵便物も写真も手元にある。だがその証拠を最初に出す舞台は法廷ではなく、社会保険審査官の審理だ。ここで出し惜しみすると、後の訴訟で心証はほとんど動かない
取るべき行動
被害を受けた側:1. 通知書の日付と受領日を記録、その翌日から3か月が審査請求の期限(社会保険審査官及び社会保険審査会法4条1項) 2. 診断書・賃金台帳・同居や生計維持を示す資料を、審査請求の段階で出し尽くす3. 審査請求から2か月経っても決定がなければ、みなし棄却(厚生年金保険法90条2項)で先へ進む選択肢を検討4. 決定を受け取ったら、社会保険審査会への再審査請求か取消訴訟かを、出訴期間6か月から逆算して決める
訴えられた側:前置を欠いたまま提訴し、国側から却下を求められた場合でも手は残る。第一に、審査請求から3か月を経過していれば決定を待たず提訴できる(行政事件訴訟法8条2項1号)。第二に、厚生年金保険法90条2項の2か月みなし棄却を主張する。第三に、訴訟係属中に決定が出た場合の瑕疵の治癒については実務上、解釈が分かれているため、並行して審査請求を出し直し、出訴期間の確保を優先する
時効(請求できる期限):審査請求は処分があったことを知った日の翌日から3か月以内(社会保険審査官及び社会保険審査会法4条1項)。審査請求から2か月で決定がなければ棄却とみなせる(厚生年金保険法90条2項)。取消訴訟は決定があったことを知った日から6か月、決定の日から1年(行政事件訴訟法14条1項・2項・3項)。(最新の改正状況をご確認ください)
学説
通説:年金処分の前置主義は、加入記録や障害認定など大量かつ専門技術的な判断について、専門機関による早期かつ低コストの是正回路を確保する点に趣旨がある。他方で裁判を受ける権利(憲法32条)への事実上の制約となるため、みなし棄却など出口規定とセットで理解すべきとされる。
実務的理解:前置は形式要件にとどまらず、審査官段階で形成された記録と事実認定が後続の取消訴訟における審理の出発点となる。したがって審査請求の段階から証拠を出し尽くす対応が合理的とされる。
改正沿革 AI による整理
- 平成26年(2014年)改正、平成28年(2016年)4月1日施行 行政不服審査法の全面改正に伴う関係法律の整備により、従来の二重前置(社会保険審査官の決定に加え社会保険審査会の裁決を要する構造)が解消され、社会保険審査官の決定を経れば取消訴訟を提起できることとなった。再審査請求は任意の選択肢に位置付けられた
改正の年表
- 1.昭和29年(1954年) 新設:厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)の全部改正により、年金処分に関する不服申立てと訴訟の関係が整理された
- 2.平成26年(2014年)改正・平成28年(2016年)4月1日施行 改正:行政不服審査法の全面改正に伴う関係法律の整備により、社会保険審査官の決定に加えて社会保険審査会の裁決を要する二重前置が解消され、審査官の決定を経れば取消訴訟を提起できることとなった。再審査請求は任意の選択肢に位置づけられた
ログインすると、この条文にメモを残して他の利用者と共有できます。
ログインして共同ノートを始める