国税徴収法 第172条(差押動産等の搬出の制限)
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第五十八条第二項(滞納者の動産等を占有する第三者に対する引渡命令)に規定する引渡命令を受けた第三者が、その命令に係る財産が滞納者の所有に属していないことを理由として、その命令につき不服申立てをしたときは、その不服申立ての係属する間は、当該財産の搬出をすることができない。
この条文の基本情報
差押動産等の搬出の制限とは何ですか?
定義差押動産等の搬出の制限とは、国税徴収法第172条に定められた規定で、「第五十八条第二項(滞納者の動産等を占有する第三者に対する引渡命令)に規定する引渡命令を受けた第三者が、その命令に係る財産が滞納者の所有に属していないことを理由と…」と規定しています。
出典:e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 国税徴収法第172条(差押動産等の搬出の制限)は、日本の国税徴収法に含まれる条文です。
- 国税徴収法第172条の条文原文は「第五十八条第二項(滞納者の動産等を占有する第三者に対する引渡命令)に規定する引渡命令を受けた第三者が、その命令に係る財産が滞納者の所有に属していないことを理由と…」で始まります。
- 国税徴収法第172条は第八章に置かれています。
- 国税徴収法の公布日は昭和34年4月20日です。
- 国税徴収法について、LawPlayer が e-Gov法令検索から取得した令和8年7月4日時点では廃止情報はありません。
- 国税徴収法第172条の前の条は国税徴収法第171条です。
- 国税徴収法第172条の次の条は国税徴収法第173条です。
- 国税徴収法第172条には、要件・効果とよくある質問をまとめた解説が本ページにあります。
この条文を引用する
下の三行はそのまま引用に使えます(法令番号・条番号・出典・取得日を含みます)。
- 正式書式
国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第172条 - 官報・e-Gov
e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147 - 本サイト収録
国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第172条(LawPlayer 収録、取得日 令和8年7月4日)https://lawplayer.com/jp/article/334AC0000000147/172
わかりやすく解説 AI による整理。効力は条文原文が基準です
要点国税徴収法172条は、引渡命令を受けた第三者が「滞納者の所有ではない」ことを理由に不服申立てをした場合、その係属中は当該差押財産を搬出できないと定める。
Q · 取引先の税金滞納で自分の機械に引渡命令が来た。争っている間に持って行かれてしまうの?
差押えは続くが、搬出という物理的な運び出しだけは止まる
国税徴収法172条により、同法58条2項の引渡命令を受けた第三者が「その財産は滞納者の所有に属していない」ことを理由として不服申立てをすると、申立てが係属する間は当該財産を搬出できません。ただし国税の不服申立ては原則として執行不停止(国税通則法105条)であり、差押えの効力そのものは続きます。理由欄に所有権の不帰属を明記しない申立てでは、この搬出制限は働きません。
解説
税務署から突然「その動産を引き渡せ」という命令書が届く。滞納しているのはあなたではない。取引先が税金を滞納していて、たまたまあなたの倉庫にその会社の機械が置かれている、あるいはあなたが所有権留保で売った商品が滞納者の店に並んでいる。国税徴収法58条2項はこの状況で第三者に引渡命令を出す権限を徴収職員に与えている。ここで多くの人が知らないのが172条だ。あなたが「これは滞納者の物ではない、私の物だ」という理由で不服申立てをすれば、その申立てが係属している間、税務署は差し押さえた動産を倉庫から運び出せなくなる。財産を物理的に運び去られてしまえば、後で勝っても現物は戻らず、価値も毀損している。この条文が守っているのは、争っている最中に既成事実を作られない権利である。ただし守備範囲は狭い。理由が「所有権が滞納者にない」であることが要件で、単に手続に不満があるという申立てでは搬出は止まらない。
法的な位置づけ
国税徴収法172条は搬出の制限を定める規定であり、同法58条2項の引渡命令を受けた第三者が、当該財産が滞納者の所有に属しないことを理由に不服申立てをした場合、その係属中の搬出を禁ずる。差押えの効力や換価準備を停止するものではなく、原状回復が不可能となる物理的移動のみを凍結する手続的制約である。
手順・フロー
AI による整理。効力は条文原文が基準です
手順
- 1.引渡命令書の記載を即日確認・記録する 命令書の日付、対象財産の特定内容(型式・製造番号・数量)、指定期限を確認し、現物の所在を写真で記録する。特定が曖昧な場合は、自社所有物が巻き込まれている範囲を明確にする
- 2.所有権を裏付ける証拠を集める 売買契約書の所有権留保条項、リース契約書、寄託契約書、代金の未収を示す請求書・入金記録、入出庫記録を収集する。外形上は滞納者が占有しているため、実体的な権利関係を書面で示す必要がある
- 3.理由欄に「滞納者の所有に属していない」と明記して不服申立てを提出 再調査の請求または審査請求の理由欄に、所有権が滞納者に帰属しないことを第一の理由として明記する。手続への不満だけを書いた申立てでは172条の搬出制限は働かない。証拠書類を添付して提出する
- 4.申立ての係属を担当部署に通知し、搬出予定を確認する 提出後、収受の記録を保全し、徴収担当部署に申立てが係属している事実を伝える。搬出の段取りが組まれる前に係属させることが、現物を現場に残す実務上の分岐点になる
- 5.並行して民事上の救済と換価対策を検討する 搬出制限は換価手続や差押えの効力までは止めない。所有権に基づく民事の救済(第三者異議に相当する訴え)や、換価の制限に関する手当ての要否を弁護士・税理士と検討し、同時並行で走らせる
よくある質問 AI による整理
Q1引渡命令が届いたらまず何をすべき?
命令書の対象財産の特定内容と日付を確認し、所有権を裏付ける契約書・支払記録を即日集めます。そのうえで「滞納者の所有に属しない」ことを理由と明記した不服申立てを出すのが最短の手当てです。
Q2国税徴収法172条の搬出制限はいつまで続く?
不服申立てが係属している間だけです。裁決や決定で手続が終われば制限は解け、申立てが却下・取下げになった時点でも搬出は可能になります。期間の長短は審理の進行によります。
Q3引渡命令の不服申立ての期限はいつまで?
処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内が原則です(国税通則法77条)。期間を過ぎると搬出制限を起動させる足場そのものを失います。
Q4搬出が止まっても公売は進む?
172条が制限するのは搬出だけです。換価手続の制限は別条(同法173条)が扱い、差押えの効力も存続します。公売リスクを止めたいなら別の手当てが要ります。
Q5倉庫に預かった他人の荷物が差し押さえられたらどうなる?
寄託物でも占有者である倉庫業者に引渡命令が向かうことがあります。所有者が誰かを寄託契約書と入出庫記録で示し、所有権を理由とする不服申立てで搬出を止めるのが実務の型です。
Q6搬出制限を無視して運び出されたら違法?
172条は搬出を法律上できないと定めるため、要件を満たす申立ての係属中に強行すれば違法な執行と評価されうる行為です。国家賠償請求の検討対象になります。
Q7所有権留保で売った商品も守られる?
所有権が売主に留保されていれば「滞納者の所有に属していない」と主張できます。契約書の所有権留保条項と代金未収の証憑が、そのまま搬出を止める材料になります。
Q8不服申立ての理由は複数書ける?
書けます。ただし172条の搬出制限を起動するのは所有権の不帰属という理由です。第一の理由として明記したうえで、手続上の主張を並べるのが実務の順序になります。
この条文についての質問 AI による整理
Q1不服申立てを出せば、差押え自体もなくなるんですか?
なくなりません。国税の不服申立ては原則として執行不停止(国税通則法105条)で、差押えの効力は続きます。172条が止めるのは搬出という物理的行為だけです。実務のポイント:徴収の現場で最も価値が失われるのは、現物が倉庫から運び出されて保管場所に移る瞬間です。搬出を止めれば、稼働中の機械はそのまま使い続けられる場合があり、事業停止を回避できる。差押解除を勝ち取る前に、まず物を動かさせないことが実務の第一手になります。
Q2理由を「所有権が自分にある」と書けば、どんな申立てでも搬出は止まりますか?
172条は「その命令に係る財産が滞納者の所有に属していないことを理由として」不服申立てをした場合に限って搬出を制限しています。手続違反や税額そのものを争う申立てでは条文の要件を満たしません。実務のポイント:申立書の理由欄は複数書けます。所有権の不帰属を第一の理由として明記したうえで、他の主張を並べるのが実務の型。順序と明示の有無で、担当職員の扱いが変わります。
Q3リース物件が差し押さえられました。リース会社と借主、どちらが動くべきですか?
所有権を主張できるのは所有者であるリース会社です。172条の引渡命令は動産を占有する第三者に向けられるため(国税徴収法58条2項)、占有者と所有者が分かれる場合は双方の立場整理が要ります。実務のポイント:リース契約書に「借主は本物件が差押えを受けた場合、直ちにリース会社に通知する」条項があるのが通例です。この通知が遅れると、リース会社が申立期間内に動けず、搬出を止められなくなる。契約書の通知条項は飾りではなく、この条文を起動させるためのスイッチです。
間違えやすい点 AI による整理
- 「不服申立てをすれば差押えの効力が止まる」と理解している人が多いが、国税の不服申立ては原則として執行不停止(国税通則法105条)。差押えそのものは続く。172条が止めるのは搬出という物理的行為だけであり、この落差を知らずに「申し立てたから安心」と構えていると、権利関係は争われたまま手続だけが進行する。
- 第三者の立場からは「自分の物なのだから当然守られる」と見えるが、徴収の現場からは「滞納者が占有している以上、外形上は滞納者の財産」と見える。この視角の落差が問題の本質で、所有権を主張する側が能動的に不服申立てという形式を踏まなければ、外形が実体を上書きしてしまう。
- 「搬出が止まるなら公売も止まる」と考えるのは早計だ。172条の文言が制限しているのは搬出であって、差押えの効力や換価手続全体ではない。第三者異議の訴え(民事訴訟)や換価の猶予など、別の手当てを併走させるかどうかで最終的な結果が変わる。
| 比較の観点 | この条文 | ほかの条文 |
|---|---|---|
| 止まるもの | 172条:差押財産の搬出(物理的な運び出し)のみ | 173条:換価手続(公売等)の制限 国税通則法105条:原則として何も止まらない(執行不停止) |
| 起動要件 | 引渡命令に対し「滞納者の所有に属しない」ことを理由とする不服申立ての係属 | 滞納処分に関する不服申立ての係属(換価段階の制限) 不服申立ての提起だけでは執行は停止しない |
| 主な利用者 | 動産を占有する第三者(倉庫業者・リース会社・所有権留保の売主) | 滞納者本人および利害関係人 不服申立てをするすべての当事者 |
| 期間との関係 | 申立てが係属している間のみ効力あり、期間徒過で足場を失う | 171条の期限の特例と併せて期間管理が必要 国税通則法77条の3か月の申立期間が前提 |
他国ではどう定めているか 4 か国
台湾は行政執行に民事の強制執行手続を準用し、第三者は第三人異議之訴で争う。日本の172条のように行政手続内で搬出だけを凍結する明文の仕組みは持たず、裁判所の停止決定に依存する点が異なる
韓国も第三者の所有権主張は民事の異議の訴えが中心で、執行停止は裁判所の判断による。行政庁の手続内で自動的に搬出が止まる構造とは設計思想が異なる
ドイツは租税の自力執行を認めつつ、第三者の権利主張は裁判所への Drittwiderspruchsklage に振り分ける。争いの入口が行政不服か裁判所かという分岐点で日本と対照的
米国は IRS の levy に対し、納税者以外の第三者が連邦地裁に wrongful levy 訴訟を提起する。行政段階の申立てで物理的搬出のみを止めるという中間的な手当ては置かれていない
AI による対応参考であり、公式の対照ではありません。各国の原文が基準です
想定される場面と対応 AI による整理
こんなときに使う
- 取引先が法人税を滞納し、あなたの倉庫に預けられていた相手方の設備に差押えが入った。同時に、あなたが所有権留保付きで納入した機械も「滞納者の占有下にある」として引渡命令の対象に含まれた。所有権留保の契約書と代金未収の証憑を添えて不服申立てを出す。申立てが係属している間、その機械は搬出されない。
- リース会社の担当者として、リース先の飲食店が消費税を滞納し、厨房機器一式に引渡命令が来た。リース物件の所有権はリース会社にある。ここで争わずに引き渡せば、後で取り戻すのは公売後の第三者からになる。所有権を理由に申し立てるか否かで、資産回収の難易度が桁違いに変わる。
- もし不服申立ての理由を「所有権がない」ではなく「手続が乱暴だ」と書いたらどうなるか。搬出制限は働かない。理由の書き方一つで、財産が今日運び出されるか、争いが終わるまで現場に残るかが分かれる。
- あなたが徴収の現場に立つ側だとする。第三者から所有権を理由とする不服申立てが出た時点で、搬出は法律上できない。無理に運び出せば違法な執行として国家賠償の対象になりうる。申立書の理由欄を読む一分が、後の数百万円を左右する。
- 引渡命令書に記載された期限まであと数日。所有権の証拠書類(売買契約書、リース契約書、代金支払記録)を集めきれないまま期限が来れば、争う足場ごと失う。証拠の収集と申立書の起案を同時並行で走らせる必要がある。
取るべき行動
被害を受けた側:1. 引渡命令書の日付と対象財産の特定内容を確認、写真で現物の所在も記録する2. 所有権を裏付ける書類(売買契約書の所有権留保条項、リース契約、寄託契約、代金未収の証憑)を即日集める3. 「命令に係る財産が滞納者の所有に属していない」ことを理由と明記した不服申立てを提出、これが172条の搬出制限を起動する要件4. 並行して第三者異議の訴え(民事執行法上の類似手続を含む所有権に基づく救済)の要否を弁護士に相談
訴えられた側:1. 徴収側であれば、第三者から所有権を理由とする不服申立てが出た時点で搬出を停止する、強行すれば違法執行のリスク2. 滞納者側であれば、第三者所有物が混在していないか事前に整理し、対象財産の特定を争う3. 所有権の帰属に争いがある場合は、外形上の占有だけでなく実体的な権利関係の資料を提出させる4. 手続の適法性を記録に残し、後の国家賠償請求に備える
時効(請求できる期限):不服申立ての期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内(国税通則法77条、審査請求)。再調査の請求も同様の期間制限がある。搬出制限は申立てが係属している間のみ働くため、期間を徒過すれば足場そのものを失う(最新の改正状況をご確認ください)
改正沿革 AI による整理
改正の年表
- 1.昭和34年(1959年) 改正:明治期の旧国税徴収法を全部改正し、現行の国税徴収法(昭和34年法律第147号)を制定。滞納処分の手続と不服申立てに関する規定が体系的に整備され、搬出の制限もこの体系の中に置かれた
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